私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
22 / 99

2-2 ピンチ直前

しおりを挟む
「いないなぁ……白蛙さん……」

 クロードが明らかに落胆した様子で肩を落としている。

「もう少し探してみましょう。あんなに身体が小さいのですからそう遠くには行っていないと思いますよ。それにあの蛙さんはとても私達に懐いていましたから、他所に行くことは無いと思いますけど」

「ホーウッ!ホーウッホウッ‼」
(そう!そのとおりよ庭師さん!!)

 私は2人の頭上を飛び回りながらホウホウと鳴いた。

「それにしてもこのフクロウ……何故僕達の回りを飛んでいるんだろう?」

 クロードがチラリと私を見る。

「そうですね……ですがフクロウの考えは我々には分かりませんからね」

「とにかく、手分けして探そう。白蛙さんが心配だ」

「ええ、分かりました!」

 そしクロードさんは花壇の周囲を、庭師さんは池の周囲を探し始めた。

「ホーウッ!ホーウッホウッ‼ホーウッ!ホーウッホウッ‼」
(ちょっと!何処探してるの‼違うって!私はここよっ‼)


 必死で鳴いても当然2人に伝わるはずもなく……そしてついに……。

「クロード様っ!いました!白蛙さんがいましたよーっ‼」

 庭師さんが両手で何かを包み込んでいるかのような手付きでこちらへ向かって駆け寄ってきた。

「え?!見つかったのかい?!」

 クロードが嬉しそうに笑った。

「ホウッ?!ホーゥッ?!」
(ええーっ?!嘘でしょうっ?!)

 そんなバカなっ!私はここにいるのに?!それとも私は今迄私だと思っていたのに、本当は全くの別人だったのだろうか?!
 
 パニックのあまり、自分で訳の分からない考えに陥っている。

「その手の平の中にいるのかい?」

 クロードが庭師さんに尋ねた。

「はい、そうです。ピョンピョン飛び跳ねるので捕まえるのに苦労しましたよ。ほら、白蛙さんです」

 庭師さんは上から覆いかぶせていた手をそっと外した。
 
 その蛙を目にし……衝撃を受けた。何とその蛙は確かに白ではあるけれども所々に灰色のまだら模様の姿をしていた。

(何これっ‼ちっとも似ていないじゃないのっ‼)

 私はホウホウと庭師さんに文句を言う。

「う~ん……本当にこれが白蛙さんかい?何だか随分身体も大きいし……まだら模様じゃないか」

「ええ、そこが重要です。いいですか?あの白蛙さんはまだ成長途中の赤ちゃんだったのです。けれど、我々が知らないところで脱皮をして成長したのですよ」

「成程、脱皮か……それは少しも気づかなかった」

 ウンウンと腕組みして頷くクロード。
 
(そうか……確かに蛙は脱皮をする……って、ちがーう‼そうじゃないでしょう!!)

 猛反発してホウホウ鳴くのに、2人は少しも取り合ってくれない。まずい!これでは私の地位が得体の知れない蛙のせいで脅かされてしまう!!

(ちょっと!それは全く別の蛙!私じゃないんだってば!)

 必死になって2人の上を飛び回るも、クロードはうるさそうに私を見る。

「何だい?このフクロウは。さっきから僕達にまとわりついて……」

 ガーンッ‼
 クロードに冷たい態度を取られてしまった‼

 挙げ句に余計な話をする庭師さん。

「クロード様、よくよく考えてみたのですが……ほら、見て下さい。この蛙。目が青ではありません。黒ですよ。あの白蛙さんは綺麗な青い目をしていました」

 は?!それでよく私だといいきれたものだ。

「本当だ……確かにそうだね」

 頷くクロード。

「それで考えたのですが……ひょっとするとこのフクロウが食べてしまったのではないですか?」

 あろうことか、今迄私の味方だと思っていた庭師さんがとんでもないことを言ってきた――。
 


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

処理中です...