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第66話 あの時の謝罪
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カチコチカチコチ…
静かな部屋に時計の秒針の音が聞こえている。
私はフィリップの寝息を聞きながら、彼の傍らで真新しい白いハンカチに刺繍をしていた。
刺繍をしているモチーフは『ユニコーン』。
伝承上の生き物であるユニコーンの角には病を治す力があると言われている。
お守り程度にしかならないだろうけど、少しでもフィリップの病の回復を祈って一針一針心を込めて刺繍をしていた。
その時…。
ボーン
ボーン
ボーン
18時になったことを告げる振り子時計が鳴り響く。
「う…」
フィリップが軽く身じろぎし…ゆっくり目を開けて私を見た。
「あ…れ…もしかして…エルザ…?」
虚ろな瞳で私を見つめるフィリップ。
「ええ、そう。私よ。目が覚めたのね?」
静かな声で返事をすると、フィリップが目を擦った。
「ご、ごめん…すっかり眠ってしまって…今起きるよ」
「いいのよ。そんな事気にしないで」
刺繍の手を休めて起き上がろうとするフィリップの身体を支えて手伝ってあげた。
「ありがとう、エルザ」
フィリップは笑みを浮かべて私を見た。薬が効いたのか、フィリップの顔色はすっかり良くなっていた。
「良かったわ。顔色が良くなって」
「うん、痛み止めが効いたからね。でも…眠ってごめん。あの薬を飲むと眠気に襲われて…だからあまり普段は飲まないようにしているんだけどね…」
フィリップは申し訳なさげに私を見た。
「そうだったの…」
「…あれは刺繍かい?」
その時フィリップがテーブルの上に置かれた刺繍枠にはめられたハンカチに気付いた。
「ええ、貴方が眠っている間に刺繍をしていたの」
「…見せてくれるかな?」
「ええ」
まだ未完成のハンカチをフィリップに手渡した。
「これは…馬…だね?」
刺繍枠にはめ込まれたハンカチをフィリップはじっと見つめている。
「ええ、馬には違いないけど…ユニコーンなの」
「ユニコーン…?あの一角獣の…?」
「ええ、あの角には病を治す力があると言われているの。お守り代わりでも構わないから…貴方にプレゼントしたくて」
「僕の為に?プレゼントをしてくれるのかい?」
「ええ。受け取ってもらえるかしら…?」
「当然だよ…。ありがとう」
フィリップの腕が伸びてきて、私を強く抱きしめてきた。
「エルザ。あの時は本当にごめん。刺繍入りのハンカチを差し出された時…本当は涙が出そうな程、嬉しかったんだ。だけど…僕は君に嫌われる為にわざとあんなことを言ってしまって…本当はずっと謝りたかったんだ…。ごめん…」
抱きしめられている為、フィリップの顔は見えなかったけれどもその声は涙声だった。
「もういいの。そのことは…でも、これからはもう…わざと私を遠ざけないで?貴方の側にいさせて貰いたいの」
フィリップの胸に顔を埋めながら私は泣きたい気持ちを必死にこらえた。だって私が悲しめば彼を苦しめることになってしまうから。
「うん…もう二度と…あんな真似はしないと誓うよ…どうか僕の側にいて欲しい…」
その時―
コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
フィリップが扉に向かって声を掛けた。
『私です。チャールズです。お夕食の準備が整いました』
「分かった、今行くよ」
フィリップは返事をすると、次に私を見た。
「行こう?エルザ」
「ええ」
そして私達は手を取り合った―。
静かな部屋に時計の秒針の音が聞こえている。
私はフィリップの寝息を聞きながら、彼の傍らで真新しい白いハンカチに刺繍をしていた。
刺繍をしているモチーフは『ユニコーン』。
伝承上の生き物であるユニコーンの角には病を治す力があると言われている。
お守り程度にしかならないだろうけど、少しでもフィリップの病の回復を祈って一針一針心を込めて刺繍をしていた。
その時…。
ボーン
ボーン
ボーン
18時になったことを告げる振り子時計が鳴り響く。
「う…」
フィリップが軽く身じろぎし…ゆっくり目を開けて私を見た。
「あ…れ…もしかして…エルザ…?」
虚ろな瞳で私を見つめるフィリップ。
「ええ、そう。私よ。目が覚めたのね?」
静かな声で返事をすると、フィリップが目を擦った。
「ご、ごめん…すっかり眠ってしまって…今起きるよ」
「いいのよ。そんな事気にしないで」
刺繍の手を休めて起き上がろうとするフィリップの身体を支えて手伝ってあげた。
「ありがとう、エルザ」
フィリップは笑みを浮かべて私を見た。薬が効いたのか、フィリップの顔色はすっかり良くなっていた。
「良かったわ。顔色が良くなって」
「うん、痛み止めが効いたからね。でも…眠ってごめん。あの薬を飲むと眠気に襲われて…だからあまり普段は飲まないようにしているんだけどね…」
フィリップは申し訳なさげに私を見た。
「そうだったの…」
「…あれは刺繍かい?」
その時フィリップがテーブルの上に置かれた刺繍枠にはめられたハンカチに気付いた。
「ええ、貴方が眠っている間に刺繍をしていたの」
「…見せてくれるかな?」
「ええ」
まだ未完成のハンカチをフィリップに手渡した。
「これは…馬…だね?」
刺繍枠にはめ込まれたハンカチをフィリップはじっと見つめている。
「ええ、馬には違いないけど…ユニコーンなの」
「ユニコーン…?あの一角獣の…?」
「ええ、あの角には病を治す力があると言われているの。お守り代わりでも構わないから…貴方にプレゼントしたくて」
「僕の為に?プレゼントをしてくれるのかい?」
「ええ。受け取ってもらえるかしら…?」
「当然だよ…。ありがとう」
フィリップの腕が伸びてきて、私を強く抱きしめてきた。
「エルザ。あの時は本当にごめん。刺繍入りのハンカチを差し出された時…本当は涙が出そうな程、嬉しかったんだ。だけど…僕は君に嫌われる為にわざとあんなことを言ってしまって…本当はずっと謝りたかったんだ…。ごめん…」
抱きしめられている為、フィリップの顔は見えなかったけれどもその声は涙声だった。
「もういいの。そのことは…でも、これからはもう…わざと私を遠ざけないで?貴方の側にいさせて貰いたいの」
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「うん…もう二度と…あんな真似はしないと誓うよ…どうか僕の側にいて欲しい…」
その時―
コンコン
扉をノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
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『私です。チャールズです。お夕食の準備が整いました』
「分かった、今行くよ」
フィリップは返事をすると、次に私を見た。
「行こう?エルザ」
「ええ」
そして私達は手を取り合った―。
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