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第111話 セシルとの話し合い
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「セシル…。それは確かに私も出来ることならそうしたいけど…。多分無理かもしれないわ」
「無理…何故だ?何か理由でもあるのか?」
「フィリップが…それを望んでいないみたいなの…」
「兄さんが?」
「ええ。今から話すこと、絶対誰にも言わないと約束してくれる?」
「分かった、約束するよ」
セシルが頷く。
「実はね、お姉さまから手紙を貰ったの」
「え?もしかしてローズさんから?」
「ええ」
「ひょっとして…エルザはローズさんと手紙のやり取りをしていたのか?」
セシルの眉が少しだけ険しくなる。
やはりセシルも姉のことを良く思っていないのだろうか?
「いいえ、手紙のやりとりはしていなかったわ。だって私は姉の住所を知らないもの。差出人を記載しないで姉は手紙を送ってきたのよ」
「そうだったのか…。なら連絡を取り合うのは無理だな。それで?ローズさんは何と言ってきたんだ?」
「ええ。実は連絡を取り合っていたのはフィリップの方だったのよ。フィリップは私宛の伝言を姉に伝えておいたのね。きっと…自分からは伝えにくかったんだわ」
「そうか…。それで?兄さんはどんな伝言をローズさんに頼んでいたんだ?」
「それは…自分が死んだら私は子供を連れて実家に戻っていいと伝えて欲しいって…」
あの手紙の内容を思い出すだけで涙が出そうになってしまう。
「…ッ…」
「エルザ…やっぱり昨日泣いていたのって…その手紙が原因だったんだな?」
「え…?」
セシルの突然の言葉に驚いた。
「ど、どうして…知っているの…?」
「実は…昨日兄さんに用があって、この部屋を訪ねたんだよ。すると扉が少し開いていたんだ」
「そうだったの…?」
手紙を受け取った時にきちんと閉めなかったのかもしれない。
「そして扉の隙間からエルザの鳴き声が聞こえてきて…兄さんがいなくなった後もここに置かせてほしいと言って泣いていただろう?」
「え?み、見ていたのっ?!」
どうしよう、まさかあんなに泣いている姿をセシルに見られていたなんて…!
途端に羞恥で私の頬が赤く染まる。
「ごめん、エルザ。本当に盗み見するつもりは無かったんだ。だけど、突然泣き出したものだから、部屋の前を去ることも…声を掛けることも出来なかったんだよ」
「セシル…」
確かにいざ、自分がそのような場面に出くわしてしまったらセシルと同じような行動をしていたかもしれない。
「本当に…ごめん。怒ってるか…?」
「いいのよ。怒ってないわ。私だって同じようなことをしていたかもしれないもの」
「そうか、ありがとう。エルザ」
セシルが胸をなでおろした様子で息を吐いた。
「それでさっきの話の続きだけど、いくら兄さんに自分に万一のことがあった場合、実家に戻っていいと言われたって泣くほど嫌なら帰らなければいいじゃないか。生まれてくる子供はアンバー家の跡取りでもあるわけだし…エルザと子供の面倒くらい、この家で見たってどうってことは無い。きっと、父さんと母さんも喜ぶに決まっている!」
セシルは身を乗り出してきた。
「で、でも…両親が何て言うか…」
仮に未亡人となってしまったとして…いつまでも亡き夫の家に住んでいれば世間はどう思うのだろうか…?
「2人の説得がエルザ一人では難しいなら、俺が一緒に説得したっていい。とにかく、この屋敷に残ること…前向きに考えておいてもらえるか?」
「わ、分かったわ…」
頷く私の頭を不意にセシルは撫でてきた。
「キャッ!な・何っ?!突然!」
「あ…ご、ごめん!ここに残ることを前向きに考えてくれることが嬉しくてつい…」
セシルは顔を赤くすると、腕をひっこめた。
「そうだったのね?」
今まで一度もセシルからそのようなことをされなかっただけに驚いた。
「悪かったよ…。俺、もう戻るから」
「え?ええそうね。どのみち、フィリップには会えないから」
「…そうだな。それじゃ」
「ええ、またね」
すると一瞬セシルは悲し気な表情を浮かべるとソファから立ち上がり、私の方を見ることも無く部屋から去って行った―。
「無理…何故だ?何か理由でもあるのか?」
「フィリップが…それを望んでいないみたいなの…」
「兄さんが?」
「ええ。今から話すこと、絶対誰にも言わないと約束してくれる?」
「分かった、約束するよ」
セシルが頷く。
「実はね、お姉さまから手紙を貰ったの」
「え?もしかしてローズさんから?」
「ええ」
「ひょっとして…エルザはローズさんと手紙のやり取りをしていたのか?」
セシルの眉が少しだけ険しくなる。
やはりセシルも姉のことを良く思っていないのだろうか?
「いいえ、手紙のやりとりはしていなかったわ。だって私は姉の住所を知らないもの。差出人を記載しないで姉は手紙を送ってきたのよ」
「そうだったのか…。なら連絡を取り合うのは無理だな。それで?ローズさんは何と言ってきたんだ?」
「ええ。実は連絡を取り合っていたのはフィリップの方だったのよ。フィリップは私宛の伝言を姉に伝えておいたのね。きっと…自分からは伝えにくかったんだわ」
「そうか…。それで?兄さんはどんな伝言をローズさんに頼んでいたんだ?」
「それは…自分が死んだら私は子供を連れて実家に戻っていいと伝えて欲しいって…」
あの手紙の内容を思い出すだけで涙が出そうになってしまう。
「…ッ…」
「エルザ…やっぱり昨日泣いていたのって…その手紙が原因だったんだな?」
「え…?」
セシルの突然の言葉に驚いた。
「ど、どうして…知っているの…?」
「実は…昨日兄さんに用があって、この部屋を訪ねたんだよ。すると扉が少し開いていたんだ」
「そうだったの…?」
手紙を受け取った時にきちんと閉めなかったのかもしれない。
「そして扉の隙間からエルザの鳴き声が聞こえてきて…兄さんがいなくなった後もここに置かせてほしいと言って泣いていただろう?」
「え?み、見ていたのっ?!」
どうしよう、まさかあんなに泣いている姿をセシルに見られていたなんて…!
途端に羞恥で私の頬が赤く染まる。
「ごめん、エルザ。本当に盗み見するつもりは無かったんだ。だけど、突然泣き出したものだから、部屋の前を去ることも…声を掛けることも出来なかったんだよ」
「セシル…」
確かにいざ、自分がそのような場面に出くわしてしまったらセシルと同じような行動をしていたかもしれない。
「本当に…ごめん。怒ってるか…?」
「いいのよ。怒ってないわ。私だって同じようなことをしていたかもしれないもの」
「そうか、ありがとう。エルザ」
セシルが胸をなでおろした様子で息を吐いた。
「それでさっきの話の続きだけど、いくら兄さんに自分に万一のことがあった場合、実家に戻っていいと言われたって泣くほど嫌なら帰らなければいいじゃないか。生まれてくる子供はアンバー家の跡取りでもあるわけだし…エルザと子供の面倒くらい、この家で見たってどうってことは無い。きっと、父さんと母さんも喜ぶに決まっている!」
セシルは身を乗り出してきた。
「で、でも…両親が何て言うか…」
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「2人の説得がエルザ一人では難しいなら、俺が一緒に説得したっていい。とにかく、この屋敷に残ること…前向きに考えておいてもらえるか?」
「わ、分かったわ…」
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「…そうだな。それじゃ」
「ええ、またね」
すると一瞬セシルは悲し気な表情を浮かべるとソファから立ち上がり、私の方を見ることも無く部屋から去って行った―。
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