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第157話 目覚めたセシル
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翌朝9時――
ホテルで朝食を取り、ルークの授乳とおむつ交換を済ませると私はセシルの入院している病室に行く準備を始めた。
セシルの病室では手持ち無沙汰にならないように、本や刺繍の道具、ルークのおむつを作る材料をボストンバッグに詰めると母に声を掛けた。
「お母様、それではセシルの病室に付き添いに行ってきますね」
「ええ、分かったわ。たった今授乳したばかりだから後3時間は大丈夫ね?お昼頃に連れて行くから一緒に食事をしましょう?」
「はい、お母様。ルークのことを宜しくお願いね」
そして眠っているルークにキスをすると、私はボストンバッグを持ってセシルの入院する病室へ向かった――。
****
病院の総合受付でセシルの病室を尋ねると、やはり義父母が話していた通り特別個室に移動していた。
そこで場所を尋ねた私は早速特別個室へ行くことにした。
「ここがセシルの入院している病室なのね」
特別個室は3階の一番奥の部屋にあり、入り口の扉から他の病室とは別格だった。
重厚そうな木の扉は両開きになっている。
「一応…ノックはした方がいいかしら……?」
セシルは今も眠りについてはいるものの、ノックをするのは礼儀だろう。
コンコン
「失礼します……」
カチャリと扉を開けると、目の前には広々とした部屋が広がり、大きな窓からは病院に植えられた木々が揺れている様子が見えた。
壁も床も真っ白で、寄木張りの床は美しいモザイク柄を描き出している。
病室内には応接セットに、大きなクローゼットが備え付けられていた。
「何て…立派な部屋なのかしら。本当に……ここは病室なのかしら?」
私が今宿泊しているスイートルーム並みの部屋の造りに思わず気後れしてしまいそうになった。
部屋の中に入ると、左奥にベッドが置かれていることに気付いた。
「ひょっとすると…‥‥あのベッドの上にセシルは眠っているのかしら?」
ボストンバッグを持ったままベッドに近付いてみると、やはりそこには体中に包帯を巻かれたセシルがベッドの上に寝かされていた。
「セシル……」
セシルの名を呟くと、私は病室に置かれたソファに座った。
そしてルークのオムツを縫う為に持参してきた裁縫セットと、上質なリネンの生地をボストンバックから取り出すと、早速縫物を始めた。
カチコチカチコチ……
時計の音が静かに秒針を刻んでいる。
私はこの静かな空間で、集中して布おむつを縫っていた時‥‥。
「うぅ~ん‥‥」
セシルの呻く声が聞こえた。
「セシル?!」
まさかこんなに早く目が覚めたのだろうか?
急いでセシルの眠っていたベッドに近付くと、そこには目を開けてボンヤリした表情で天井を見つめているセシルの姿があった。
「セシル?まさか……目が覚めたのね?良かった‥‥」
思わず安堵と嬉しさで目に涙が浮かんだ。
「エルザ‥‥?どうして泣いているんだ?それに一体ここは…?うっ!」
セシルは身体を起こそうとして、痛みに呻いてベッドに身体を沈めた。
「駄目よ!セシル!いきなり起きようとしたら……貴方は馬車事故に遭って大変だったのよ?」
「馬車事故……?俺が……?一体、いつ事故に遭ったんだ?」
「そ、そんな……だって、貴方はコレット様を庇って事故にあったのよ?」
「コレット‥‥誰だって?」
「え……?」
私はセシルの言葉に息を呑んだ――。
ホテルで朝食を取り、ルークの授乳とおむつ交換を済ませると私はセシルの入院している病室に行く準備を始めた。
セシルの病室では手持ち無沙汰にならないように、本や刺繍の道具、ルークのおむつを作る材料をボストンバッグに詰めると母に声を掛けた。
「お母様、それではセシルの病室に付き添いに行ってきますね」
「ええ、分かったわ。たった今授乳したばかりだから後3時間は大丈夫ね?お昼頃に連れて行くから一緒に食事をしましょう?」
「はい、お母様。ルークのことを宜しくお願いね」
そして眠っているルークにキスをすると、私はボストンバッグを持ってセシルの入院する病室へ向かった――。
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病院の総合受付でセシルの病室を尋ねると、やはり義父母が話していた通り特別個室に移動していた。
そこで場所を尋ねた私は早速特別個室へ行くことにした。
「ここがセシルの入院している病室なのね」
特別個室は3階の一番奥の部屋にあり、入り口の扉から他の病室とは別格だった。
重厚そうな木の扉は両開きになっている。
「一応…ノックはした方がいいかしら……?」
セシルは今も眠りについてはいるものの、ノックをするのは礼儀だろう。
コンコン
「失礼します……」
カチャリと扉を開けると、目の前には広々とした部屋が広がり、大きな窓からは病院に植えられた木々が揺れている様子が見えた。
壁も床も真っ白で、寄木張りの床は美しいモザイク柄を描き出している。
病室内には応接セットに、大きなクローゼットが備え付けられていた。
「何て…立派な部屋なのかしら。本当に……ここは病室なのかしら?」
私が今宿泊しているスイートルーム並みの部屋の造りに思わず気後れしてしまいそうになった。
部屋の中に入ると、左奥にベッドが置かれていることに気付いた。
「ひょっとすると…‥‥あのベッドの上にセシルは眠っているのかしら?」
ボストンバッグを持ったままベッドに近付いてみると、やはりそこには体中に包帯を巻かれたセシルがベッドの上に寝かされていた。
「セシル……」
セシルの名を呟くと、私は病室に置かれたソファに座った。
そしてルークのオムツを縫う為に持参してきた裁縫セットと、上質なリネンの生地をボストンバックから取り出すと、早速縫物を始めた。
カチコチカチコチ……
時計の音が静かに秒針を刻んでいる。
私はこの静かな空間で、集中して布おむつを縫っていた時‥‥。
「うぅ~ん‥‥」
セシルの呻く声が聞こえた。
「セシル?!」
まさかこんなに早く目が覚めたのだろうか?
急いでセシルの眠っていたベッドに近付くと、そこには目を開けてボンヤリした表情で天井を見つめているセシルの姿があった。
「セシル?まさか……目が覚めたのね?良かった‥‥」
思わず安堵と嬉しさで目に涙が浮かんだ。
「エルザ‥‥?どうして泣いているんだ?それに一体ここは…?うっ!」
セシルは身体を起こそうとして、痛みに呻いてベッドに身体を沈めた。
「駄目よ!セシル!いきなり起きようとしたら……貴方は馬車事故に遭って大変だったのよ?」
「馬車事故……?俺が……?一体、いつ事故に遭ったんだ?」
「そ、そんな……だって、貴方はコレット様を庇って事故にあったのよ?」
「コレット‥‥誰だって?」
「え……?」
私はセシルの言葉に息を呑んだ――。
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