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第169話 アンバー家への帰宅
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2台の馬車に乗って私達はアンバー家に向かうことになった。
そして…当然のように私はセシルと一緒の馬車に乗り込んだ――。
ガラガラガラガラ……
「大丈夫、セシル。怪我に響いたりしない?」
いくつものクッションで身体を支えるように座っているセシルに声を掛けた。
「ああ、平気だよ。そういうエルザこそ大丈夫なのか?」
「ええ。私なら大丈夫だけど、何故そんなことを聞くの?」
「いや、ルークを抱いて馬車に乗るのは辛くないかと思ったからだよ。俺が怪我していなければルークを抱いたのにな」
「いいのよ、そんなこと気にしなくても」
複雑な気持ちを抱えながら返事をした。
「だけど……エルザはあの『ラベンダー』の部屋で暮らすんだろう?なのに俺は本館で暮らすなんて…何か納得いかないな。どうして妻が離れで暮らしているのに俺は違う場所で暮らさなければならないんだろう?」
首を傾げながら何処か納得いかない様子のセシル。
その様子から、全くセシルの記憶が全く戻っていないのは一目瞭然だった。
「それは私はあの『ラベンダー』の部屋が落ち着くからよ。やっぱり自分が落ち着ける場所で子育てをしたいの。それに離れには働いている使用人の人達が圧倒的に不足しているのよ。セシルはまだそんな身体だし…やっぱり十分な人出もあって、設備の整った本館で暮らしたほうがいいわよ」
どうかその間にセシルの記憶が戻りますように……。
そのことを願いながらセシルに説明した。傍から聞けば言い訳じみた内容に聞こえるかもしれないけれど、彼は私の話を信じてくれた。
「まぁ、確かにエルザの言う通りかもしれないな……。俺は今、見ての通りの怪我人だし、車椅子で移動することしか出来ない…。でも、毎日ルークを連れて会いに来てくれるよな?」
まるで子供のようなお願いをしてくるセシル。
まさかセシルにこんな一面があるとは思わなかった。
「どうなんだ?エルザ、黙っていないで返事を貰えないか?」
「え?ええ。勿論よ。お散歩がてら、毎日行くわ」
「ありがとう、嬉しいよ」
そしてセシルは笑いながら私を見た――。
****
約40分後――
馬車がアンバー家の本館の前で止まると、ドアが開かれてセシルは大勢の使用人達の手を借りて、馬車を降りて行った。
そして再び扉が閉ざされると、馬車は離れに向かって走り出した。
「随分久しぶりに感じるわ……」
馬車の窓から離れを見つめ…私は少しの間、フィリップと過ごした日々を回想した。
「フィリップ……」
もっと長く一緒にいられると思ったのに…。
私を残して死んでいかなければならなかったフィリップは…一体どんな気持ちで日々を過ごしていたのだろう。
フィリップのことを思い出しながら、腕の中で眠るルークを抱きしめた――。
そして…当然のように私はセシルと一緒の馬車に乗り込んだ――。
ガラガラガラガラ……
「大丈夫、セシル。怪我に響いたりしない?」
いくつものクッションで身体を支えるように座っているセシルに声を掛けた。
「ああ、平気だよ。そういうエルザこそ大丈夫なのか?」
「ええ。私なら大丈夫だけど、何故そんなことを聞くの?」
「いや、ルークを抱いて馬車に乗るのは辛くないかと思ったからだよ。俺が怪我していなければルークを抱いたのにな」
「いいのよ、そんなこと気にしなくても」
複雑な気持ちを抱えながら返事をした。
「だけど……エルザはあの『ラベンダー』の部屋で暮らすんだろう?なのに俺は本館で暮らすなんて…何か納得いかないな。どうして妻が離れで暮らしているのに俺は違う場所で暮らさなければならないんだろう?」
首を傾げながら何処か納得いかない様子のセシル。
その様子から、全くセシルの記憶が全く戻っていないのは一目瞭然だった。
「それは私はあの『ラベンダー』の部屋が落ち着くからよ。やっぱり自分が落ち着ける場所で子育てをしたいの。それに離れには働いている使用人の人達が圧倒的に不足しているのよ。セシルはまだそんな身体だし…やっぱり十分な人出もあって、設備の整った本館で暮らしたほうがいいわよ」
どうかその間にセシルの記憶が戻りますように……。
そのことを願いながらセシルに説明した。傍から聞けば言い訳じみた内容に聞こえるかもしれないけれど、彼は私の話を信じてくれた。
「まぁ、確かにエルザの言う通りかもしれないな……。俺は今、見ての通りの怪我人だし、車椅子で移動することしか出来ない…。でも、毎日ルークを連れて会いに来てくれるよな?」
まるで子供のようなお願いをしてくるセシル。
まさかセシルにこんな一面があるとは思わなかった。
「どうなんだ?エルザ、黙っていないで返事を貰えないか?」
「え?ええ。勿論よ。お散歩がてら、毎日行くわ」
「ありがとう、嬉しいよ」
そしてセシルは笑いながら私を見た――。
****
約40分後――
馬車がアンバー家の本館の前で止まると、ドアが開かれてセシルは大勢の使用人達の手を借りて、馬車を降りて行った。
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「フィリップ……」
もっと長く一緒にいられると思ったのに…。
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フィリップのことを思い出しながら、腕の中で眠るルークを抱きしめた――。
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