挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
177 / 204

第175話 夕食会後…

しおりを挟む
 ルークを抱いて、車椅子に乗ったセシルと2人でエントランスに向かいながら尋ねた。

「セシル、離れの屋敷までは馬車で行くの?」

「いや、車椅子だから乗り降りするのは大変だからな。このまま車椅子に乗って離れに行くつもりだよ」

「え…?大丈夫なの?まさか…1人で行くつもりなの?」

「もちろん、1人で行くさ」

もう夜だというのに大丈夫なのだろうか?

「本当に…大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。骨折が治って歩けるようになるには3ヶ月はかかると言われているんだ。だからなるべく自分一人で移動出来るようにしておかなければいけないからな」

「そう…。私はルークを抱いているから車椅子を押してあげることは出来ないし……」

「俺を心配してくれるのか?ありがとう、エルザ」

セシルが嬉しそうに私を見る。

「ええ、それは当然よ。いくら敷地内とは言っても夜だし……」

屋敷からは離れまでは歩くと5分ほどかかる。夜道を車椅子で移動するのは大変なのではないだろうか?

「夜だと言っても今夜は満月で月明かりもあるし、それに庭にはガス燈が所々灯っているから大丈夫さ。だからエルザは俺のことは気にせずに馬車で先に離へ戻っていてくれよ」

「分かったわ」

私はセシルの言葉に頷いた――。



****


「お帰りなさいませ、エルザ様。お食事会はいかがでしたか?」

馬車が離れに到着し、屋敷に戻るとチャールズさんが出迎えてくれた。

「はい、とても美味しい食事でした。ところでチャールズさん、セシルが今夜からここで暮らすと言う話を聞いたのですけど…」

するとチャールズさんが申し訳なさそうに頭を下げてきた。

「はい。その通りでございます。実はセシル様からエルザ様には自分から離れで暮らすことを告げるので、黙っているようにと口止めされておりましたので…」

「そうだったのですね。チャールズさんは言いつけを守っただけなのですから気になさらないで下さい。それに元々この離れの屋敷もアンバー家のものです。フィリップが亡くなってしまった今となっては、私はこの屋敷の居候のようなものですから…。アンバー家の方々に何も言うことはありません」

「エルザ様……」

「セシルが後ほど車椅子で1人で戻って来ます。私はルークがいるので先に部屋に戻っていますね」

「はい、承知致しました。セシル様の出迎えは私にお任せ下さい」

「よろしくお願いします」

そして私は自室へ戻った――。


****


  離れに到着したセシルはすぐにでも、この部屋を訪ねてくるだろうと
 自室へ戻り、ルークをベビーベッドに寝かせつけてもまだセシルが来る様子は無かった。

ひょっとすると、セシルはこの部屋に来る気はないのかもしれない。

そこで私はルークがぐっすり眠っている姿を確認すると、入浴する為にバスルームへと向かった――。



「ふぅ…気持ちよかったわ」

入浴を終え、夜着に着替えた私はベビーベッドで眠っているルークの様子を覗いてみた。

「ふふふ……よく眠っているわ」

時刻は22時半になろうとしている。

少しだけ読書をしてから寝ようと思い、ライティングデスクの本を手に取った時…。

コンコン

部屋の扉がノックされる音が聞こえた。

「あら?誰かしら……?」

その時、扉の外で声が聞こえた。

『エルザ。今、ちょっといいか?』

その声はセシルのものだった――。


しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

あなたが捨てた花冠と后の愛

小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。 順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。 そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。 リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。 そのためにリリィが取った行動とは何なのか。 リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。 2人の未来はいかに···

処理中です...