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第2章 4 微妙な変化
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「アイリス様、もうご自分で歩けるのではないですか?」
私を抱き上げ、大股で歩くオスカーに追いすがりながらタバサは私を見あげて話しかけて来た。
「え、ええ・・そうですね。オスカー様。もう私は1人で歩けます。大丈夫ですので降ろしてください。」
「駄目だ、降ろす訳にはいかない。お前・・・物凄く青ざめた顔をしているぞ?また倒れたらどうする。」
オスカーは私と目を合わす事も無く答える。そこへタバサが言った。
「オスカー様、アイリス様が1人で歩けると仰っているのですから降ろして差し上げて下さい。」
するとオスカーが言った。
「うるさいっ!お前・・・タバサとか言ったか?王族の俺に指図するつもりか?!」
そして鋭い眼光でタバサを睨み付ける。過去の世界ではあんな目をタバサに向けた事は一度も無かったのに・・・。
「ヒッ!」
タバサは怯えたようにビクリとし、震えながらオスカーを見上げると頭を下げた。
「も、申し訳ございませんっ!オスカー様っ!わ、私は決してオスカー様に指図をするつもりは無く、ただ・・。」
「黙れっ!」
次にオスカーはタバサに怒鳴りつけた。
「!」
タバサは真っ青な顔でオスカーを見ている。その瞳は今にも泣きそうになっていた。身体は恐怖の為か小刻みに身体を震わせ、その姿が過去の自分と重なり痛ましくてこのまま黙ってはいられなくなってしまった。
「あ、あの・・オスカー様・・。」
私は遠慮がちにオスカーに声を掛けた。
「何だ?アイリス・イリヤ。」
「お願いがあります・・・どうか・・タバサ様を・・許してあげて頂けないでしょうか・・・?タバサ様は恐らく、私を抱きかかえているオスカー様を気遣って・・言われた事だと思いますので・・。」
「!」
タバサは私を見上げたが・・・その瞳からは何の感情も読み取れなかった。
「ふ~ん・・・。」
私の言葉を聞いたオスカーはタバサに視線を戻すと言った。
「去れ。」
「え?あ、あの・・・。」
タバサはオスカーに視線を移した。
「聞こえなかったのか?アイリスの言葉に免じてお前の失礼な態度は許してやる。さっさと俺の前から今すぐ消え失せろ。」
「オスカー様・・。」
それでもタバサは去ろうとしない。
「お前・・・斬られたいのか?俺はそれ程慈悲深くは無い人間だぞ?」
「も、申し訳ございません!」
タバサは頭を下げると、逃げるように走り去って行った。
「・・・・。」
私はオスカーの腕の中にいるのが、怖くなってきた。この男は本気だ。その気になれば暴力だけでなく、いつでも人を躊躇いなく斬る事も出来るのだ・・・。
「煩いのがようやくいなくなったな。」
オスカーは再び歩き出すと私に視線を移し、言った。その目は・・・先程タバサに向けた目とは違い、何処か優し気に見えた。こんな時・・どうしよう・・私はオスカーに何と声を掛ければ良い?
70年間の記憶を掘り起こし・・最適と思われる物言いを考えるんだ・・・。
「有難うございます・・・。オスカー様。」
私はオスカーの目を見て礼を述べた。
「何故礼を言う?俺はお前に感謝されるようなことは何もしていなぞ?」
オスカーが不思議そうに首を傾げる。
「タバサ様のオスカー様に対する態度を許して頂いて・・・。」
「だが、俺は最後あの女に『斬られたいのか?』と言ったぞ?あんな言い方をしたのだぞ?」
「はい、それでもです。結局オスカー様は最終的にタバサ様をお許しになり、斬ろうともしませんでした。その事についての感謝です。」
真面目な顔で言う。すると・・・。
「プッ!」
突然オスカーが私から顔を背け、吹き出した。
「あ、あの・・?オスカー様・・?」
しかし、オスカーは歩きながら小刻みに肩を震わせているばかりなので、私も黙ってオスカーの腕に抱き上げられていた。
やがてこれから4年間世話になる学び舎が見えてきた。校舎前には大きな掲示板が張り出され、多くの新入生たちがクラス分けを確認している。するとその人混みをかき分け、レイフが私達に駆け寄ってきた。
「オスカー様。クラスを確認して参りました。私達は全員Aクラスになっております。」
「ああ、そうか。御苦労だったな。」
「いえ、とんでもございません。」
レイフはオスカーに頭を下げ、チラリとオスカーに抱き上げられている私を見た。
う・・・な、なんだか気まずい・・。
するとオスカーが言った。
「顔色も大分良くなってきたな。1人で歩けるか?」
その声は優し気だった。
「は、はい。大丈夫です。」
するとオスカーは私を降ろし、フッと笑うと言った。
「また後でな。アイリス。」
「!」
アイリス・・・前回の世界では一度もそんな風に呼ばれた事は無かったのに・・・。
そしてオスカーは背を向けると、校舎の中へと消えていった―。
私を抱き上げ、大股で歩くオスカーに追いすがりながらタバサは私を見あげて話しかけて来た。
「え、ええ・・そうですね。オスカー様。もう私は1人で歩けます。大丈夫ですので降ろしてください。」
「駄目だ、降ろす訳にはいかない。お前・・・物凄く青ざめた顔をしているぞ?また倒れたらどうする。」
オスカーは私と目を合わす事も無く答える。そこへタバサが言った。
「オスカー様、アイリス様が1人で歩けると仰っているのですから降ろして差し上げて下さい。」
するとオスカーが言った。
「うるさいっ!お前・・・タバサとか言ったか?王族の俺に指図するつもりか?!」
そして鋭い眼光でタバサを睨み付ける。過去の世界ではあんな目をタバサに向けた事は一度も無かったのに・・・。
「ヒッ!」
タバサは怯えたようにビクリとし、震えながらオスカーを見上げると頭を下げた。
「も、申し訳ございませんっ!オスカー様っ!わ、私は決してオスカー様に指図をするつもりは無く、ただ・・。」
「黙れっ!」
次にオスカーはタバサに怒鳴りつけた。
「!」
タバサは真っ青な顔でオスカーを見ている。その瞳は今にも泣きそうになっていた。身体は恐怖の為か小刻みに身体を震わせ、その姿が過去の自分と重なり痛ましくてこのまま黙ってはいられなくなってしまった。
「あ、あの・・オスカー様・・。」
私は遠慮がちにオスカーに声を掛けた。
「何だ?アイリス・イリヤ。」
「お願いがあります・・・どうか・・タバサ様を・・許してあげて頂けないでしょうか・・・?タバサ様は恐らく、私を抱きかかえているオスカー様を気遣って・・言われた事だと思いますので・・。」
「!」
タバサは私を見上げたが・・・その瞳からは何の感情も読み取れなかった。
「ふ~ん・・・。」
私の言葉を聞いたオスカーはタバサに視線を戻すと言った。
「去れ。」
「え?あ、あの・・・。」
タバサはオスカーに視線を移した。
「聞こえなかったのか?アイリスの言葉に免じてお前の失礼な態度は許してやる。さっさと俺の前から今すぐ消え失せろ。」
「オスカー様・・。」
それでもタバサは去ろうとしない。
「お前・・・斬られたいのか?俺はそれ程慈悲深くは無い人間だぞ?」
「も、申し訳ございません!」
タバサは頭を下げると、逃げるように走り去って行った。
「・・・・。」
私はオスカーの腕の中にいるのが、怖くなってきた。この男は本気だ。その気になれば暴力だけでなく、いつでも人を躊躇いなく斬る事も出来るのだ・・・。
「煩いのがようやくいなくなったな。」
オスカーは再び歩き出すと私に視線を移し、言った。その目は・・・先程タバサに向けた目とは違い、何処か優し気に見えた。こんな時・・どうしよう・・私はオスカーに何と声を掛ければ良い?
70年間の記憶を掘り起こし・・最適と思われる物言いを考えるんだ・・・。
「有難うございます・・・。オスカー様。」
私はオスカーの目を見て礼を述べた。
「何故礼を言う?俺はお前に感謝されるようなことは何もしていなぞ?」
オスカーが不思議そうに首を傾げる。
「タバサ様のオスカー様に対する態度を許して頂いて・・・。」
「だが、俺は最後あの女に『斬られたいのか?』と言ったぞ?あんな言い方をしたのだぞ?」
「はい、それでもです。結局オスカー様は最終的にタバサ様をお許しになり、斬ろうともしませんでした。その事についての感謝です。」
真面目な顔で言う。すると・・・。
「プッ!」
突然オスカーが私から顔を背け、吹き出した。
「あ、あの・・?オスカー様・・?」
しかし、オスカーは歩きながら小刻みに肩を震わせているばかりなので、私も黙ってオスカーの腕に抱き上げられていた。
やがてこれから4年間世話になる学び舎が見えてきた。校舎前には大きな掲示板が張り出され、多くの新入生たちがクラス分けを確認している。するとその人混みをかき分け、レイフが私達に駆け寄ってきた。
「オスカー様。クラスを確認して参りました。私達は全員Aクラスになっております。」
「ああ、そうか。御苦労だったな。」
「いえ、とんでもございません。」
レイフはオスカーに頭を下げ、チラリとオスカーに抱き上げられている私を見た。
う・・・な、なんだか気まずい・・。
するとオスカーが言った。
「顔色も大分良くなってきたな。1人で歩けるか?」
その声は優し気だった。
「は、はい。大丈夫です。」
するとオスカーは私を降ろし、フッと笑うと言った。
「また後でな。アイリス。」
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アイリス・・・前回の世界では一度もそんな風に呼ばれた事は無かったのに・・・。
そしてオスカーは背を向けると、校舎の中へと消えていった―。
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