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第2章 9 オスカーの心情
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「どうだ?アイリス・イリヤ・・・いや、アイリス。少しは具合良くなったか?」
学生食堂に面したテラスの人気のないベンチに2人並んで座り、オスカーが私に尋ねてきた。
「はい、お陰様で大分良くなりました。」
言いながら私は学生食堂の方をチラリと見た。タバサは・・・・まだ学食にいるのだろうか?
それにしても危ない所だった。あの時私がオスカーを連れ出していなければ・・もし70年前の私と今のタバサの立場が完全に入れ替わっていたとしたら・・・・あの後タバサはオスカーの激しい怒りを買い、突き飛ばされて床に倒れ込んで足をくじき、全治2週間の怪我をしてしまっていただろう。それに何より大勢の学生達の前で飛んだ恥をかかされてしまう事になっていたはずだ。
あれは・・・・屈辱的な出来事だった。
すると、少しだけ沈黙していたオスカーが口を開いた。
「あの・・・タバサとか言う女・・・。気に入らない。」
「え?」
そんな・・嘘でしょう?
私は信じられない気持ちでオスカーを見上げた。だって70年前はオスカーは私を捨て、タバサを選び・・・そして2人であらぬ罪を被せて私を島流しにしたのに?
私は自分の考えが顔に出ていたのだろうか?オスカーが怪訝そうな顔で語りかけてきた。
「何だ?その意外そうな顔は・・・?」
「い、いえ・・・。てっきり私は・・。」
そこで言葉を切るとオスカーは言った。
「言いたい事があるなら、はっきり言え。」
ここで変に胡麻化せばオスカーの機嫌を損ねかねない。だから私は慎重に言葉を選びながら言った。
「あの・・・タバサ様は・・まだ入学したばかりなのに『天使の美声』を持つ者達しか入れない貴重な聖歌隊のメンバーの1人ですよ・・?それに・・とても外見も可愛らしくて・・た、大抵の男の人なら・・・皆好意を持つのでは無いかと思いまして・・。」
言いながらチラリとオスカーを見た。今の言い方・・気に障らなかっただろうか?
緊張していると、オスカーがため息をついた。
「アイリス・・・。」
18歳とは思えないバリトンの落ち着いたトーンでオスカーは私を見た。
「は、はい。」
「お前の目には・・・俺があの女に興味を持っている用に見えるのか?」
じっと私の目を見て語りかけて来る。
知らなかった・・・。今迄オスカーの荒々しい部分しか見てこなかったので、今目の前にいる落ち着いたオスカーがまるで別人のように私の目に映っている。
「わ、私は・・・。」
どうしよう・・・何と答えれば良いのだろうか・・・?だが、今のオスカーになら自分の素直な気持ちを語っても大丈夫な気がしてきた。
「私には・・・よく分かりません。」
「分からない?何故だ?」
「それは・・・私がオスカー様の事を・・まだ殆ど知らないからです・・。お会いしたのも・・今日が初めて・・ですから・・・」
最期の方は消え入りそうな声になりながら私は制服のスカートをギュッと握り締めた。
「本当は・・・ずっと会いたいと・・思っていたのだ・・・。婚約が決まった時から・・・。」
オスカーは正面にある温室をじっと見つめながら口を開いた。
「え?」
私は思わず耳を疑った。嘘・・・・?オスカーが私に会いたがっていた・・?13年間も・・?
思わずオスカーを見つめると、その視線に気づいたのか私の方を振り向いた。
「信じられないような目で・・俺を見ているな?だが、嘘ではない。本当の事だ・・・。俺は知らなかったんだ。王族より身分が下の者はこちらから声をかけない限り、城に来てはいけないのだと言う事を。誰もそんな事は教えてはくれなかったからな。それなのに・・・あいつ等は・・大事な事は告げずに、俺にこう教えて来たんだ。『婚約者には男の方からは絶対に会いに行ってはいけない』と。そんな決まりは無かった事だって・・アカデミー入学直前に父と家臣達の会話を偶然立ち聞きして知った位だからな。俺は・・・赤毛に生まれたと言うだけで・・・忌み嫌われて来たんだ。だからこそ・・・尚更自分の婚約者に会ってみたいと、ずっと願ってきたのだ。王族では無いお前なら・・俺の事を少しは理解してくれるのでは無いかと思ったんだ・・。」
オスカーはじっと私の目から視線をそらさずに言った―。
学生食堂に面したテラスの人気のないベンチに2人並んで座り、オスカーが私に尋ねてきた。
「はい、お陰様で大分良くなりました。」
言いながら私は学生食堂の方をチラリと見た。タバサは・・・・まだ学食にいるのだろうか?
それにしても危ない所だった。あの時私がオスカーを連れ出していなければ・・もし70年前の私と今のタバサの立場が完全に入れ替わっていたとしたら・・・・あの後タバサはオスカーの激しい怒りを買い、突き飛ばされて床に倒れ込んで足をくじき、全治2週間の怪我をしてしまっていただろう。それに何より大勢の学生達の前で飛んだ恥をかかされてしまう事になっていたはずだ。
あれは・・・・屈辱的な出来事だった。
すると、少しだけ沈黙していたオスカーが口を開いた。
「あの・・・タバサとか言う女・・・。気に入らない。」
「え?」
そんな・・嘘でしょう?
私は信じられない気持ちでオスカーを見上げた。だって70年前はオスカーは私を捨て、タバサを選び・・・そして2人であらぬ罪を被せて私を島流しにしたのに?
私は自分の考えが顔に出ていたのだろうか?オスカーが怪訝そうな顔で語りかけてきた。
「何だ?その意外そうな顔は・・・?」
「い、いえ・・・。てっきり私は・・。」
そこで言葉を切るとオスカーは言った。
「言いたい事があるなら、はっきり言え。」
ここで変に胡麻化せばオスカーの機嫌を損ねかねない。だから私は慎重に言葉を選びながら言った。
「あの・・・タバサ様は・・まだ入学したばかりなのに『天使の美声』を持つ者達しか入れない貴重な聖歌隊のメンバーの1人ですよ・・?それに・・とても外見も可愛らしくて・・た、大抵の男の人なら・・・皆好意を持つのでは無いかと思いまして・・。」
言いながらチラリとオスカーを見た。今の言い方・・気に障らなかっただろうか?
緊張していると、オスカーがため息をついた。
「アイリス・・・。」
18歳とは思えないバリトンの落ち着いたトーンでオスカーは私を見た。
「は、はい。」
「お前の目には・・・俺があの女に興味を持っている用に見えるのか?」
じっと私の目を見て語りかけて来る。
知らなかった・・・。今迄オスカーの荒々しい部分しか見てこなかったので、今目の前にいる落ち着いたオスカーがまるで別人のように私の目に映っている。
「わ、私は・・・。」
どうしよう・・・何と答えれば良いのだろうか・・・?だが、今のオスカーになら自分の素直な気持ちを語っても大丈夫な気がしてきた。
「私には・・・よく分かりません。」
「分からない?何故だ?」
「それは・・・私がオスカー様の事を・・まだ殆ど知らないからです・・。お会いしたのも・・今日が初めて・・ですから・・・」
最期の方は消え入りそうな声になりながら私は制服のスカートをギュッと握り締めた。
「本当は・・・ずっと会いたいと・・思っていたのだ・・・。婚約が決まった時から・・・。」
オスカーは正面にある温室をじっと見つめながら口を開いた。
「え?」
私は思わず耳を疑った。嘘・・・・?オスカーが私に会いたがっていた・・?13年間も・・?
思わずオスカーを見つめると、その視線に気づいたのか私の方を振り向いた。
「信じられないような目で・・俺を見ているな?だが、嘘ではない。本当の事だ・・・。俺は知らなかったんだ。王族より身分が下の者はこちらから声をかけない限り、城に来てはいけないのだと言う事を。誰もそんな事は教えてはくれなかったからな。それなのに・・・あいつ等は・・大事な事は告げずに、俺にこう教えて来たんだ。『婚約者には男の方からは絶対に会いに行ってはいけない』と。そんな決まりは無かった事だって・・アカデミー入学直前に父と家臣達の会話を偶然立ち聞きして知った位だからな。俺は・・・赤毛に生まれたと言うだけで・・・忌み嫌われて来たんだ。だからこそ・・・尚更自分の婚約者に会ってみたいと、ずっと願ってきたのだ。王族では無いお前なら・・俺の事を少しは理解してくれるのでは無いかと思ったんだ・・。」
オスカーはじっと私の目から視線をそらさずに言った―。
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