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第3章 7 傍若無人な振舞
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「よし、それでは行くぞ。」
オスカーは再び私の左手首を捕らえると言った。
「え・・?あ、あの・・・行くって一体どこへ・・?」
「決まっているだろう?昼食を食べに行くのだ。お前は食事をしないで午後の授業を受けるつもりだったのか?」
言いながらオスカーは教室を出て廊下を歩いて行く。手首を捕まえられている私はなすすべもなく黙ってオスカーの後を付いて歩くしか無かった。
「おい!貴様らどけっ!」
カフェテリアに入るなり、オスカーは周囲にいる学生達を威嚇し、勝手に順番待ちをしている人達の一番前の列に並んでしまった。
「い、いらっしゃいませ・・・・。何になさいますか・・?」
女性店員は青ざめながら対応してきた。
「そうだな・・・Aランチにしておくか。お前もそれでいいな?」
オスカーは私にチラリと視線を送って来た。
「はい、いいです。」
そう答えたたものの、Aランチは今の私にとっては重すぎる。肉厚ステーキにライス、サラダのセットなど私にはとてもでは無いが食べれそうにない。本当なら無難なところでサンドイッチにしたかったのだが・・。だが、今のオスカーには私の意見が通用するとは思えない。仕方が無く大人しく彼に従う事にした。
やがてトレーの上に出来たての2人分のステーキセットが乗せられた。
「ほら、行くぞ。」
トレーを持った私の方を振り向きもせずに、オスカーはカフェテリア内を歩き、窓際の一番眺めが良さそうな席にやって来た。しかし、既にそこの席には2人の女子学生の先約がいる。
彼女達は髪の色が真っ赤のオスカーを見あげ、ギョッとした顔をした。
「おい、お前達・・・そこをどけ。」
どすの聞いた声でオスカーは2人の女子学生に命じる。
「あ、あの・・・・。」
可哀そうに、2人の女子学生は半分涙目になってオスカーを見上げている。彼女達は私達よりも1学年上の先輩だったようだが、恐らくはオスカーが王族なのは知っているのだろう。
「も、申し訳ございませんでした!」
「す、すみませんっ!」
2人の女子学生は自分達の食事の乗ったトレーを持つと慌てて席を立って逃げるように去って行く。そんな様子を周りの学生達は怯えた目つきで見ていた。
「アイリス・イリヤ。席が空いたぞ。座れ。」
空いた・・ではなく無理矢理開けさせたのでは?
70年前の私なら正義感に溢れ、オスカーに言ったかもしれない。けれど、今の私は・・・。
「はい、分かりました。それでは失礼致します。」
私はトレーをテーブルの上に置くと椅子に座った。
「ほう・・。」
それを見たオスカーは満足げに私を見つめる。
「おまえ・・・中々やるじゃないか。・・・気に入った。」
「・・有難うございます・・。」
オスカーに気に入られるなんて、私に取っては死が一歩近付い来るようで、冗談では無いと心の中で思ったが、何とか冷静に返事をした。
「よし、それじゃ食べるか。」
「はい・・・。」
私はフォークとナイフを手に持ったが、先程怯えた目で走り去って行く女子学生の顔が頭に浮かんで、とてもでは無いか食欲など皆無であった。
それでもここで食事を拒めば、オスカーの怒りに触れてしまう。仕方なしにステーキを小さく切って口に運びながら、私はオスカーの様子を伺った。
言葉や行動は乱暴ではあるが、流石王族である。洗練されたテーブルマナーは完璧であった。
しかし・・・。
「何だっ貴様らはっ!さっきからジロジロと見やがって・・俺達は見世物では無いのだっ!とっとと失せろっ!」
オスカーは周囲にいた学生達を一喝すると、彼らは稀えた様子で蜘蛛の子を散らすように逃げだして行き、私達の周囲には学生達はいなくなってしまった。
カフェテリアは学園内には5か所ある。恐らく彼等は他のカフェテリアに逃げてしまったのかもしれない。
私は心の中でため息をついた。
全く・・・オスカーのせいで私まで他の学生達から悪女として見られてしまったかもしれない—と。
オスカーは再び私の左手首を捕らえると言った。
「え・・?あ、あの・・・行くって一体どこへ・・?」
「決まっているだろう?昼食を食べに行くのだ。お前は食事をしないで午後の授業を受けるつもりだったのか?」
言いながらオスカーは教室を出て廊下を歩いて行く。手首を捕まえられている私はなすすべもなく黙ってオスカーの後を付いて歩くしか無かった。
「おい!貴様らどけっ!」
カフェテリアに入るなり、オスカーは周囲にいる学生達を威嚇し、勝手に順番待ちをしている人達の一番前の列に並んでしまった。
「い、いらっしゃいませ・・・・。何になさいますか・・?」
女性店員は青ざめながら対応してきた。
「そうだな・・・Aランチにしておくか。お前もそれでいいな?」
オスカーは私にチラリと視線を送って来た。
「はい、いいです。」
そう答えたたものの、Aランチは今の私にとっては重すぎる。肉厚ステーキにライス、サラダのセットなど私にはとてもでは無いが食べれそうにない。本当なら無難なところでサンドイッチにしたかったのだが・・。だが、今のオスカーには私の意見が通用するとは思えない。仕方が無く大人しく彼に従う事にした。
やがてトレーの上に出来たての2人分のステーキセットが乗せられた。
「ほら、行くぞ。」
トレーを持った私の方を振り向きもせずに、オスカーはカフェテリア内を歩き、窓際の一番眺めが良さそうな席にやって来た。しかし、既にそこの席には2人の女子学生の先約がいる。
彼女達は髪の色が真っ赤のオスカーを見あげ、ギョッとした顔をした。
「おい、お前達・・・そこをどけ。」
どすの聞いた声でオスカーは2人の女子学生に命じる。
「あ、あの・・・・。」
可哀そうに、2人の女子学生は半分涙目になってオスカーを見上げている。彼女達は私達よりも1学年上の先輩だったようだが、恐らくはオスカーが王族なのは知っているのだろう。
「も、申し訳ございませんでした!」
「す、すみませんっ!」
2人の女子学生は自分達の食事の乗ったトレーを持つと慌てて席を立って逃げるように去って行く。そんな様子を周りの学生達は怯えた目つきで見ていた。
「アイリス・イリヤ。席が空いたぞ。座れ。」
空いた・・ではなく無理矢理開けさせたのでは?
70年前の私なら正義感に溢れ、オスカーに言ったかもしれない。けれど、今の私は・・・。
「はい、分かりました。それでは失礼致します。」
私はトレーをテーブルの上に置くと椅子に座った。
「ほう・・。」
それを見たオスカーは満足げに私を見つめる。
「おまえ・・・中々やるじゃないか。・・・気に入った。」
「・・有難うございます・・。」
オスカーに気に入られるなんて、私に取っては死が一歩近付い来るようで、冗談では無いと心の中で思ったが、何とか冷静に返事をした。
「よし、それじゃ食べるか。」
「はい・・・。」
私はフォークとナイフを手に持ったが、先程怯えた目で走り去って行く女子学生の顔が頭に浮かんで、とてもでは無いか食欲など皆無であった。
それでもここで食事を拒めば、オスカーの怒りに触れてしまう。仕方なしにステーキを小さく切って口に運びながら、私はオスカーの様子を伺った。
言葉や行動は乱暴ではあるが、流石王族である。洗練されたテーブルマナーは完璧であった。
しかし・・・。
「何だっ貴様らはっ!さっきからジロジロと見やがって・・俺達は見世物では無いのだっ!とっとと失せろっ!」
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カフェテリアは学園内には5か所ある。恐らく彼等は他のカフェテリアに逃げてしまったのかもしれない。
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