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第3章 9 異変
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目が覚めた時、私は自分がどこにいるのか分からなかった。見慣れぬ高い天井、広々とした部屋には家具らしきものは見当たらず、あるのは私が寝かされていたキングサイズのベッドのみだった。しかも床は冷たそうな石畳で、ベッドが無ければ一瞬、牢屋のようにも見える。
牢屋・・・。
そこで私は両肩を抱きかかえ、ゾクリとした。70年前、自分が牢屋に入れられた記憶を思い出したからだ。
部屋の中は妙に薄暗く、明かりと言えば壁の天井に取り付けられた数個のランタンのみだ。何故こんなに部屋の中が暗いのか・・・そこで私は気が付いた。
そうだ、この部屋には窓が無いのだ。だからこんなにも暗いのだ。
部屋を見渡し、私はドアを発見した。
「に・・逃げなくちゃ!」
何故かは分からないが、私の中で警鐘が鳴っている。このままこの部屋にいては危険だと・・・。
ベッドから降りると、私は急いで扉へ向かって走った。けれど・・。
「う・・嘘っ?!開かない?!」
いくら扉をガチャガチャ回そうにも手ごたえは無い。どうやら外側から鍵を掛けられているようだ。
「そ、そんな・・・閉じ込められた・・・?」
私は絶望的な気持ちになって床の上に座り込んでしまった。けれど、石畳の床はあまりに冷たく、自分の体温を奪ってゆく。
「寒い・・・。」
私は立ち上がると自分の身体を抱きしめるように抱えて、自分が先ほどまで眠っていたベッドへと歩き始めた。
「ここは・・・何所なの・・・?」
ベッドの上でブランケットを頭からかぶり、両膝を抱えているとドアがガチャガチャとなる音が聞こえてきた。
え・・?誰か来る・・・?
私は本能的に恐怖を感じ、気付けばベッドから降りて入口から一番遠い壁にへばりついていた。
ギイイイ・・。
部屋中にドアノブが回り、ドアが開く鈍い音が響き渡る。
「・・・。」
私はその様子を部屋の隅で固唾を飲んで見守った。そして何者かが部屋の中へ入って来ると、闇の中で言った。
「何だ、アイリス・イリヤ。目が覚めていたのか?」
そして暗闇から現れたのは・・。
「オ・・・オスカー様・・・?」
私は声を震わせ、オスカーを見た。
「ああ、そうだ。俺だ。」
オスカーは私から1m程の距離を空けると、立ち止まった。
「オスカー様・・・ここは何所でしょうか?」
何とか心を落ち着け、私は尋ねた。
「ここか?ここは俺の部屋だ。」
「え・・・?」
私はその言葉に驚いた。
「こ、この部屋が・・・オスカー様の部屋なのですか・・・?」
自分の声が震えているのが分かった。まさか・・・窓一つない、まるで石の牢獄みたいなこの部屋が・・・オスカーの・・?
私のこわばった表情を見て、オスカーは私の言いたいことが分かったのだろう。
「何だ?その顔は・・・こんな部屋が俺の部屋だとは信じられない・・・とでも思っているのか?」
オスカーは腕組みをしながらニヤリと笑った。
「は、はい・・。」
「まあ・・・正確に言えば・・・この部屋はもう1人の俺の部屋・・とでも言うべきかな・・・?」
「え・・?もう1人の・・・?」
それは・・・影武者のオスカーの事なのだろうか?
「とにかく、そいつは凶暴な性格でな・・・。この部屋は・・いわばそいつを隔離する為の部屋なのさ。今は眠ってくれているけど・・・もうこれ以上・・俺の力では抑えて置く事が出来そうに無い・・。」
いつの間にか、気付けば目の前のオスカーは苦痛に顔を歪めながら語っている。額には脂汗が浮かんでいた。
どうしたのだろう?オスカーの様子がおかしい・・・。
「オ・・・オスカー様・・・?一体どうされたのですか・・・?」
「グッ・・・!」
するとオスカーは頭を押さえて苦し気に呻きだした。
「だ・・・駄目だ・・・やめろ・・・。」
「え・・?駄目・・何が駄目なのですか?」
こんな姿のオスカーを今まで一度も見たことが無い私は戸惑ってしまった。しかし次の瞬間・・・。
「う・・・に、逃げろ・・・アイリス・・・。」
え?逃げろ・・?
その時、突如として恐ろしい咆哮が壁の向こうから聞こえてきた―。
牢屋・・・。
そこで私は両肩を抱きかかえ、ゾクリとした。70年前、自分が牢屋に入れられた記憶を思い出したからだ。
部屋の中は妙に薄暗く、明かりと言えば壁の天井に取り付けられた数個のランタンのみだ。何故こんなに部屋の中が暗いのか・・・そこで私は気が付いた。
そうだ、この部屋には窓が無いのだ。だからこんなにも暗いのだ。
部屋を見渡し、私はドアを発見した。
「に・・逃げなくちゃ!」
何故かは分からないが、私の中で警鐘が鳴っている。このままこの部屋にいては危険だと・・・。
ベッドから降りると、私は急いで扉へ向かって走った。けれど・・。
「う・・嘘っ?!開かない?!」
いくら扉をガチャガチャ回そうにも手ごたえは無い。どうやら外側から鍵を掛けられているようだ。
「そ、そんな・・・閉じ込められた・・・?」
私は絶望的な気持ちになって床の上に座り込んでしまった。けれど、石畳の床はあまりに冷たく、自分の体温を奪ってゆく。
「寒い・・・。」
私は立ち上がると自分の身体を抱きしめるように抱えて、自分が先ほどまで眠っていたベッドへと歩き始めた。
「ここは・・・何所なの・・・?」
ベッドの上でブランケットを頭からかぶり、両膝を抱えているとドアがガチャガチャとなる音が聞こえてきた。
え・・?誰か来る・・・?
私は本能的に恐怖を感じ、気付けばベッドから降りて入口から一番遠い壁にへばりついていた。
ギイイイ・・。
部屋中にドアノブが回り、ドアが開く鈍い音が響き渡る。
「・・・。」
私はその様子を部屋の隅で固唾を飲んで見守った。そして何者かが部屋の中へ入って来ると、闇の中で言った。
「何だ、アイリス・イリヤ。目が覚めていたのか?」
そして暗闇から現れたのは・・。
「オ・・・オスカー様・・・?」
私は声を震わせ、オスカーを見た。
「ああ、そうだ。俺だ。」
オスカーは私から1m程の距離を空けると、立ち止まった。
「オスカー様・・・ここは何所でしょうか?」
何とか心を落ち着け、私は尋ねた。
「ここか?ここは俺の部屋だ。」
「え・・・?」
私はその言葉に驚いた。
「こ、この部屋が・・・オスカー様の部屋なのですか・・・?」
自分の声が震えているのが分かった。まさか・・・窓一つない、まるで石の牢獄みたいなこの部屋が・・・オスカーの・・?
私のこわばった表情を見て、オスカーは私の言いたいことが分かったのだろう。
「何だ?その顔は・・・こんな部屋が俺の部屋だとは信じられない・・・とでも思っているのか?」
オスカーは腕組みをしながらニヤリと笑った。
「は、はい・・。」
「まあ・・・正確に言えば・・・この部屋はもう1人の俺の部屋・・とでも言うべきかな・・・?」
「え・・?もう1人の・・・?」
それは・・・影武者のオスカーの事なのだろうか?
「とにかく、そいつは凶暴な性格でな・・・。この部屋は・・いわばそいつを隔離する為の部屋なのさ。今は眠ってくれているけど・・・もうこれ以上・・俺の力では抑えて置く事が出来そうに無い・・。」
いつの間にか、気付けば目の前のオスカーは苦痛に顔を歪めながら語っている。額には脂汗が浮かんでいた。
どうしたのだろう?オスカーの様子がおかしい・・・。
「オ・・・オスカー様・・・?一体どうされたのですか・・・?」
「グッ・・・!」
するとオスカーは頭を押さえて苦し気に呻きだした。
「だ・・・駄目だ・・・やめろ・・・。」
「え・・?駄目・・何が駄目なのですか?」
こんな姿のオスカーを今まで一度も見たことが無い私は戸惑ってしまった。しかし次の瞬間・・・。
「う・・・に、逃げろ・・・アイリス・・・。」
え?逃げろ・・?
その時、突如として恐ろしい咆哮が壁の向こうから聞こえてきた―。
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