53 / 152
第4章 6 敵、襲来
しおりを挟む
「ここは隠し通路へと繋がっているんだ。この集落の家屋は全て隠し通路が備え付けられてあり、最終的には一か所で合流するようになっている。さらに隠し通路には特殊な魔法をかけているのだ。」
薄暗いトンネル状になっている石畳の通路をオスカーは説明しながらシモンと一緒に私を抱き上げたまま歩き続ける。何か魔法でもかけてあるのだろうか?アーチ形の壁はところどころ鈍く青白い光を放っている。
「隠し通路・・?でも、一体何の為に・・?」
私が言いかけた時、シモンが足を止めた。
「しっ!何か・・・聞こえます。」
「え?」
その時・・・。
ヒュッ!
何か風を切るような音が私のすぐ側を通り過ぎ、前方で軽い音を立て、地面に落下した。その落下物を目にしたとき、私は凍り付いた。それは弓矢だったのだ。
「追手ですっ!オスカー様っ!」
シモンが叫ぶ。
「クッ・・・!さては・・突破されたか?!」
オスカーは悔しそうに言う。
その直後―。
「ギャアアアッ!!」
背後で恐ろしい断末魔のような叫び声が聞こえ、背後からこちらへ駆け寄ってくる音が聞こえてきた。
それだけではない。さらに前方からこちらへ向かって走ってくる足音までもが聞こえてきた。まさか・・追手に行く手を挟まれた・・?
怖くて思わずオスカーのシャツをギュッと握りしめ、震えながら顔をオスカーの胸に埋めると、彼は言った。
「大丈夫だ、安心しろ。アルマンゾとヘルマンだ。」
顔を上げると、やはりオスカーの言う通り駆けつけてきたのは先程集落で出会った2人だった。
「オスカー様。申し訳ございません。ほとんどの敵は倒したのですが・・・。」
「数名、集落に入りこんでしまいました。どうやら連中の中に腕の立つ魔術師がいたようで封印を解かれてしまったのです。」
アルマンゾが説明する。
「それで、敵の数はあとどのくらいだ?封印の方はどうなった?」
「はい、先程ヨーゼフが封印魔法をかけに向いました。敵の数は残り約10名ほどかと思われます。」
ヘルマンが刀をしまいながら言った。
「そうか・・たかだかこの集落を襲うのに魔術師迄連れてくるとはな・・・父上め、とうとう完全に気がふれたか?」
「オスカー様、おそらく陛下は血眼になってオスカー様とイリヤ様を追っていると思われます。急いでここからお逃げ下さい。」
シモンが言う。
「ああ、分かっている。」
そしてオスカーは私を見ると言った。
「いいか、イリヤ。必ずお前を両親のもとへ連れ帰ってやる。だから・・・俺を信じろ!」
オスカーは真剣な表情で私を見る。
どうしよう・・・今のオスカーを私は完全に信用していいのだろうか?この世界に戻ってきてまだ日も浅い。オスカーの事はほとんど私は知らないのに・・・。
だから・・・私はオスカーの心を読むことにした。
「・・・。」
私は指輪をはめた右手でそっとオスカーの胸に手を触れた。途端に頭の中に流れ込んでくるオスカーの思考・・・。そこには何としても私を助けたいと願うオスカーの気持ちが溢れていた。
信じよう・・・今、目の前にいるオスカーの事を。
「はい、オスカー様。私は貴方を信じます。」
するとオスカーはフッと笑みを浮かべると、シモン、ヘルマン、アルマンゾに言う。
「お前たち・・・この集落を頼む!」
「「「はい!」」」
3人は力強くうなずく。
「よし、行くぞっ!アイリスッ!この先に馬がいるっ!それに乗って逃げるぞっ!」
そしてオスカーは私を抱きかかえたまま走り出した。
オスカーは荒い息を吐きながら走り続ける。そしてついに、洞窟の先に光が見えた。
「出口だっ!アイリスッ!」
オスカーはより一層走る速度を上げ・・ついに洞窟の外へと飛び出した。
「え・・・?」
私は目の前の光景が信じられなかった。そこは深い森の中。背後を振り向いても私たちが逃げてきた洞窟は見当たらず、小さな木造の小屋が1軒たっているのみである。
そして小屋のすぐ側には蔵のついた馬がロープでくくり付けられている。
一体ここは・・・・?
その時
「お待ちしておりました。オスカー様。」
背後から声を掛けられ、オスカーは体ごと振り返る。するとそこには片目に眼帯をした一人の若者が小屋の前に立っていた―。
薄暗いトンネル状になっている石畳の通路をオスカーは説明しながらシモンと一緒に私を抱き上げたまま歩き続ける。何か魔法でもかけてあるのだろうか?アーチ形の壁はところどころ鈍く青白い光を放っている。
「隠し通路・・?でも、一体何の為に・・?」
私が言いかけた時、シモンが足を止めた。
「しっ!何か・・・聞こえます。」
「え?」
その時・・・。
ヒュッ!
何か風を切るような音が私のすぐ側を通り過ぎ、前方で軽い音を立て、地面に落下した。その落下物を目にしたとき、私は凍り付いた。それは弓矢だったのだ。
「追手ですっ!オスカー様っ!」
シモンが叫ぶ。
「クッ・・・!さては・・突破されたか?!」
オスカーは悔しそうに言う。
その直後―。
「ギャアアアッ!!」
背後で恐ろしい断末魔のような叫び声が聞こえ、背後からこちらへ駆け寄ってくる音が聞こえてきた。
それだけではない。さらに前方からこちらへ向かって走ってくる足音までもが聞こえてきた。まさか・・追手に行く手を挟まれた・・?
怖くて思わずオスカーのシャツをギュッと握りしめ、震えながら顔をオスカーの胸に埋めると、彼は言った。
「大丈夫だ、安心しろ。アルマンゾとヘルマンだ。」
顔を上げると、やはりオスカーの言う通り駆けつけてきたのは先程集落で出会った2人だった。
「オスカー様。申し訳ございません。ほとんどの敵は倒したのですが・・・。」
「数名、集落に入りこんでしまいました。どうやら連中の中に腕の立つ魔術師がいたようで封印を解かれてしまったのです。」
アルマンゾが説明する。
「それで、敵の数はあとどのくらいだ?封印の方はどうなった?」
「はい、先程ヨーゼフが封印魔法をかけに向いました。敵の数は残り約10名ほどかと思われます。」
ヘルマンが刀をしまいながら言った。
「そうか・・たかだかこの集落を襲うのに魔術師迄連れてくるとはな・・・父上め、とうとう完全に気がふれたか?」
「オスカー様、おそらく陛下は血眼になってオスカー様とイリヤ様を追っていると思われます。急いでここからお逃げ下さい。」
シモンが言う。
「ああ、分かっている。」
そしてオスカーは私を見ると言った。
「いいか、イリヤ。必ずお前を両親のもとへ連れ帰ってやる。だから・・・俺を信じろ!」
オスカーは真剣な表情で私を見る。
どうしよう・・・今のオスカーを私は完全に信用していいのだろうか?この世界に戻ってきてまだ日も浅い。オスカーの事はほとんど私は知らないのに・・・。
だから・・・私はオスカーの心を読むことにした。
「・・・。」
私は指輪をはめた右手でそっとオスカーの胸に手を触れた。途端に頭の中に流れ込んでくるオスカーの思考・・・。そこには何としても私を助けたいと願うオスカーの気持ちが溢れていた。
信じよう・・・今、目の前にいるオスカーの事を。
「はい、オスカー様。私は貴方を信じます。」
するとオスカーはフッと笑みを浮かべると、シモン、ヘルマン、アルマンゾに言う。
「お前たち・・・この集落を頼む!」
「「「はい!」」」
3人は力強くうなずく。
「よし、行くぞっ!アイリスッ!この先に馬がいるっ!それに乗って逃げるぞっ!」
そしてオスカーは私を抱きかかえたまま走り出した。
オスカーは荒い息を吐きながら走り続ける。そしてついに、洞窟の先に光が見えた。
「出口だっ!アイリスッ!」
オスカーはより一層走る速度を上げ・・ついに洞窟の外へと飛び出した。
「え・・・?」
私は目の前の光景が信じられなかった。そこは深い森の中。背後を振り向いても私たちが逃げてきた洞窟は見当たらず、小さな木造の小屋が1軒たっているのみである。
そして小屋のすぐ側には蔵のついた馬がロープでくくり付けられている。
一体ここは・・・・?
その時
「お待ちしておりました。オスカー様。」
背後から声を掛けられ、オスカーは体ごと振り返る。するとそこには片目に眼帯をした一人の若者が小屋の前に立っていた―。
39
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
[完結]困窮令嬢は幸せを諦めない~守護精霊同士がつがいだったので、王太子からプロポーズされました
緋月らむね
恋愛
この国の貴族の間では人生の進むべき方向へ導いてくれる守護精霊というものが存在していた。守護精霊は、特別な力を持った運命の魔術師に出会うことで、守護精霊を顕現してもらう必要があった。
エイド子爵の娘ローザは、運命の魔術師に出会うことができず、生活が困窮していた。そのため、定期的に子爵領の特産品であるガラス工芸と共に子爵領で採れる粘土で粘土細工アクセサリーを作って、父親のエイド子爵と一緒に王都に行って露店を出していた。
ある時、ローザが王都に行く途中に寄った町の露店で運命の魔術師と出会い、ローザの守護精霊が顕現する。
なんと!ローザの守護精霊は番を持っていた。
番を持つ守護精霊が顕現したローザの人生が思いがけない方向へ進んでいく…
〜読んでいただけてとても嬉しいです、ありがとうございます〜
悪役令嬢は間違えない
スノウ
恋愛
王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。
その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。
処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。
処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。
しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。
そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。
ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。
ジゼットは決意する。
次は絶対に間違えない。
処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。
そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。
────────────
毎日20時頃に投稿します。
お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
2度目の結婚は貴方と
朧霧
恋愛
前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか?
魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。
重複投稿作品です。(小説家になろう)
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる