57 / 152
第4章 10 ウィンザード家とオスカーの秘密
しおりを挟む
「オスカー様・・・その話・・どうしてご存じなのですか?今から何百年も昔の話なのですよね?」
「そうだ・・・。だが、当時の国王の日記が残されていて・・詳細にその内容が綴られている。ウィンザード家の国王は、王家の記録を子々孫々迄残す為、王位を継いだものは日々の日記を書くことを義務付けられるのだ。」
オスカーは手綱を引きながら話を続ける。
「それで・・オスカー様はその話をご存じだったのですね?」
「ああ。悪魔は魔術師の描いた魔法陣の上に現れたらしい。そして国王はエルトリア家の呪いを解除する方法を悪魔に頼んだのだ。」
「・・・・。」
私は俯いてその話を聞いていたが、自分の手を固く握りしめると意を決してオスカーに尋ねることにした。
「オスカー様、よくお話の世界では悪魔は無償では人の願いは聞き入れないと言われております。例えば死んだときに魂を奪われるとか・・まさか、ウィンザード家も悪魔と契約を結んだときに何か・・代償を支払ったのですか?」
尋ねながら私の身体は震えていた。
「よく知っているな?その通り・・・。代々王位を継いだ者は死を迎える時に魂を悪魔に渡す事を約束させられた。それだけではない。悪魔という者は実体を持たない。なので悪魔に自分の身体をささげ、憑りつく事も条件に付けくわえられた。」
「ま・・まさか・・・それでは今の国王陛下は・・・?」
「そうだ。今の父には・・悪魔が憑りついている。悪魔は隙があれば宿主の身体を乗っ取ろうとする。だが・・・父は気高い人間だった・・。その強い精神力で何度も押さえつけてきたのだが・・徐々に正気を保っていられる時間の感覚が狭まってきている。」
私はオスカーの今の言葉で合点がいった。先程状況次第では城に戻ると言っていたが・・つまりフリードリッヒ3世が今は正気を保っているならば城に戻れるという意味だのだ。
「そういえば・・オスカー様。悪魔は・・どうやってエルトリア家の呪いを解いたのですか?」
するとオスカーは言った。
「いや・・・呪いは解かれていない・・・。所詮悪魔の力をもってしてもエルトリア家の呪いを解くことは出来なかった。」
「え?それでは悪魔がとったのはどのような方法だったのですか?」
「呪いの緩和化だ。」
「呪いの緩和化・・?一体それはどういう事ですか?」
「分かりやすく言えば・・・悪魔はウィンザード家の血を引く者たちの魂を3等分に分けたのだ。一番多くの呪いを引き継ぐ魂、2番目に多い呪いを引き継ぐ魂、そして・・わずかな呪いを持つ魂という具合にな。だが・・・そのせいで弊害が起きた。」
「弊害・・?ですか?」
「ああ。もともと一つの魂を無理に3等分に分けた。そのせいで・・身体も時々分裂するようになってしまったのだ。」
「え・・?」
オスカーは頭を押さえた。
「夜眠っている時や・・・体調不良のような時は魂が分離しやすい。そして分離した身体は勝手な行動を取ることもしばしばある。特に一番問題を起こすのは・・最も多くの呪いを引き受ける魂を持つ者だ。アイリス、お前も城で目を覚ました時に見たのだろう?犬をけしかけてお前を襲わせようとしたあのオスカーが・・・最も強い呪いの影響を受けているもう一人の俺なんだ。本当に・・あの時はお前に悪い事をしてしまった。あんなにも・・お前を怖がらせ・・危険な目にあわせてしまって・・・。だが、何とかすぐに魂を融合させることが出来たが・・あの呪いを持つオスカーの飼い犬に攻撃をされて・・・呪いを受けてしまったんだ。」
そしてオスカーは私を見ると言った。
「アイリス・・・お前・・どうやって俺をあの呪いから救ってくれたんだ?」
「え・・?」
「あのままでは俺は確実に死んでいただろう。なのに・・お前が急激に広がった俺の呪いを鎮めてくれたんだ。今までは教会で祈りをささげてもらわない限りは三日三晩身体をむしばむ呪いに苦しめられてきたのに・・・。お前は俺をいとも簡単に救ってくれたのだ。」
そしてオスカーは足を止めると私の右手を取り、甲にキスを落とすと戸惑う私をじっと見つめてきた―。
「そうだ・・・。だが、当時の国王の日記が残されていて・・詳細にその内容が綴られている。ウィンザード家の国王は、王家の記録を子々孫々迄残す為、王位を継いだものは日々の日記を書くことを義務付けられるのだ。」
オスカーは手綱を引きながら話を続ける。
「それで・・オスカー様はその話をご存じだったのですね?」
「ああ。悪魔は魔術師の描いた魔法陣の上に現れたらしい。そして国王はエルトリア家の呪いを解除する方法を悪魔に頼んだのだ。」
「・・・・。」
私は俯いてその話を聞いていたが、自分の手を固く握りしめると意を決してオスカーに尋ねることにした。
「オスカー様、よくお話の世界では悪魔は無償では人の願いは聞き入れないと言われております。例えば死んだときに魂を奪われるとか・・まさか、ウィンザード家も悪魔と契約を結んだときに何か・・代償を支払ったのですか?」
尋ねながら私の身体は震えていた。
「よく知っているな?その通り・・・。代々王位を継いだ者は死を迎える時に魂を悪魔に渡す事を約束させられた。それだけではない。悪魔という者は実体を持たない。なので悪魔に自分の身体をささげ、憑りつく事も条件に付けくわえられた。」
「ま・・まさか・・・それでは今の国王陛下は・・・?」
「そうだ。今の父には・・悪魔が憑りついている。悪魔は隙があれば宿主の身体を乗っ取ろうとする。だが・・・父は気高い人間だった・・。その強い精神力で何度も押さえつけてきたのだが・・徐々に正気を保っていられる時間の感覚が狭まってきている。」
私はオスカーの今の言葉で合点がいった。先程状況次第では城に戻ると言っていたが・・つまりフリードリッヒ3世が今は正気を保っているならば城に戻れるという意味だのだ。
「そういえば・・オスカー様。悪魔は・・どうやってエルトリア家の呪いを解いたのですか?」
するとオスカーは言った。
「いや・・・呪いは解かれていない・・・。所詮悪魔の力をもってしてもエルトリア家の呪いを解くことは出来なかった。」
「え?それでは悪魔がとったのはどのような方法だったのですか?」
「呪いの緩和化だ。」
「呪いの緩和化・・?一体それはどういう事ですか?」
「分かりやすく言えば・・・悪魔はウィンザード家の血を引く者たちの魂を3等分に分けたのだ。一番多くの呪いを引き継ぐ魂、2番目に多い呪いを引き継ぐ魂、そして・・わずかな呪いを持つ魂という具合にな。だが・・・そのせいで弊害が起きた。」
「弊害・・?ですか?」
「ああ。もともと一つの魂を無理に3等分に分けた。そのせいで・・身体も時々分裂するようになってしまったのだ。」
「え・・?」
オスカーは頭を押さえた。
「夜眠っている時や・・・体調不良のような時は魂が分離しやすい。そして分離した身体は勝手な行動を取ることもしばしばある。特に一番問題を起こすのは・・最も多くの呪いを引き受ける魂を持つ者だ。アイリス、お前も城で目を覚ました時に見たのだろう?犬をけしかけてお前を襲わせようとしたあのオスカーが・・・最も強い呪いの影響を受けているもう一人の俺なんだ。本当に・・あの時はお前に悪い事をしてしまった。あんなにも・・お前を怖がらせ・・危険な目にあわせてしまって・・・。だが、何とかすぐに魂を融合させることが出来たが・・あの呪いを持つオスカーの飼い犬に攻撃をされて・・・呪いを受けてしまったんだ。」
そしてオスカーは私を見ると言った。
「アイリス・・・お前・・どうやって俺をあの呪いから救ってくれたんだ?」
「え・・?」
「あのままでは俺は確実に死んでいただろう。なのに・・お前が急激に広がった俺の呪いを鎮めてくれたんだ。今までは教会で祈りをささげてもらわない限りは三日三晩身体をむしばむ呪いに苦しめられてきたのに・・・。お前は俺をいとも簡単に救ってくれたのだ。」
そしてオスカーは足を止めると私の右手を取り、甲にキスを落とすと戸惑う私をじっと見つめてきた―。
38
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
2度目の結婚は貴方と
朧霧
恋愛
前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか?
魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。
重複投稿作品です。(小説家になろう)
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
悪役令嬢は間違えない
スノウ
恋愛
王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。
その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。
処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。
処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。
しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。
そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。
ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。
ジゼットは決意する。
次は絶対に間違えない。
処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。
そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。
────────────
毎日20時頃に投稿します。
お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた
桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、
婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が
部屋に閉じこもってしまう話からです。
自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。
※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる