101 / 152
第7章 6 夢の世界の侵入者
しおりを挟む
「アイリス、君は今自分が危険な立場に置かれてるって分かっている?」
アスターは私の部屋の1人掛けソファに座ると尋ねてきた。
「え、ええ・・もちろん分かってるつもりよ。」
私もアスターの向かい側に座った。
「オスカーは今・・王宮の地下牢に閉じ込められているよ。邪眼の持主の監視下に置かれている。」
アスターの言葉に私は驚いた。
「アスター・・貴女、邪眼の事を知ってるの?」
「当り前だよ。僕を誰だと思っているんだい?精霊なんだよ?そして僕は君の守護精霊でもある・・。だから君を助けに来たんだ。」
「助けるって・・・どうやって・・?」
「そうだな。一番手っ取り早いのは・・君をここから逃がして2人で誰も知らない場所へ移動する。何、空間移動位僕にはお手の物さ。アイリスの行きたいところ・・それこそ世界の果てにだって飛んでいけるよ?」
それを聞いて私は慌てた。
「駄目よ、そんな事出来るはず無いでしょう?イリヤ家の屋敷には王宮の兵士たちによって取り囲まれているのよ?私だけが逃げたら・・皆はどうなってしまうの?」
「それ位なら僕は何とかできるよ?人間を一瞬のうちに眠らせてしまう位どうって事は無いからね。君の屋敷を見張っている兵士達を何処か遠い場所へ捨ててくればいい。」
サラリと恐ろしいことを言うアスター。
「それでも駄目よ・・・。だって・・・。」
オスカーを・・助け出さなければ・・。思わずうつむくとアスターが声を掛けてきた。
「アイリス。まさか・・・君・・。」
アスターは私の頬を両手で挟むと言った。
「オスカーを助け出そうと思ってる?でも・・君は忘れたの?70年前・・オスカーは婚約者だった君を捨てて邪眼の持ち主のあの女を選んだんだよ?しかも言われなき罪で酷い暴力を受けた上、裁かれて・・・挙句の果てにあの流刑島へ流されたんだよね?しかも死ぬまであの島から出る事も無く・・。あの時、僕の力は未熟でね・・・今みたいに力があればあんな島、君を連れて逃げることだって出来たのに・・。それだけが今も悔やまれるけど・・・。」
「アスター・・・。」
「だから、今世ではアイリス。絶対君を助けようと決めたんだ。オスカーなんて放っておこうよ。だって彼はもう君の婚約者でもないし、王族の身分を剥奪されたただの犯罪者なんだよ?それより、一番心配なのは君なんだよ。アイリス・・君は悪魔に狙われているんだよ?」
「悪魔・・・。アスター・・・やはり私を狙っているのは悪魔だったの?今の国王に取りついている・・。」
「そうだよ。彼はね、オスカーを囮にしてアイリス。君を我が物にしようと狙っているんだ。だから・・・彼を助けに行けば君は間違いなく悪魔に捕まってしまうかもしれないよ?」
アスターはいつになく真剣な瞳で私を見つめている。だけど、どうしてもわからないことがある。何故?何故悪魔は私を狙っているのだろう?その理由がさっぱり分らなかった。でも・・・何となくアスターはその理由を知っている気がしたので、彼に尋ねてみる事にした。
「ねえ・・教えて。アスター。どうして私が・・・悪魔に狙われているのか分かる・・?」
「それはね・・・。」
そこまで言いかけた時・・・。
突然バチッと火花のはじけるような音が聞こえた。そして次の瞬間、アスターの苦し気なうめき声が聞こえて来る。
「ウッ・・・!」
見ると、アスターの首に黒い靄のようなものが巻き付き、首をしめ挙げていたのだ。
「ク・・ッ!し、しまった・・・!」
すると、黒い靄がさらに大きくなり・・徐々に人の姿を象ってゆく。やがてどす黒い靄に覆い尽くされ、アスターの首を片手で掴み、宙にぶら下げている人物が現れたのだ。それは・・・フリードリッヒ3世だった。
黒い靄に覆われた国王は私を振り向くと言った。
「アイリス・・・ついに見つけたぞ?まさか・・こんなところにいたとはな・・・。」
国王はギリギリとアスターの首を締め上げたまま私を見る。アスターはその手から逃れようと必死で足をばたばたさせてもがいているが、一向にその手を振りほどけずにいた。そして私を見ると言った。
「やめろ・・・アイリスに・・・手を出すな・・・。」
するとフリードリッヒ3世は言った。
「黙れっ!まだ目覚めたばかりのお前にこの私を止める力など無いっ!」
そしてさらに首を締め上げる。
「ク・・・ッ!ア・・・アイリス・・・目を覚ませ・・・っ!」
突如アスターが叫ぶと、眩しい光が彼の身体から放たれた。
「ギャアアアアッ!!」
激しい悲鳴と共に、突如私の部屋がまるで紙を破くようにベリベリと引き裂かれ・・私はそのまま意識を失ってしまった―。
アスターは私の部屋の1人掛けソファに座ると尋ねてきた。
「え、ええ・・もちろん分かってるつもりよ。」
私もアスターの向かい側に座った。
「オスカーは今・・王宮の地下牢に閉じ込められているよ。邪眼の持主の監視下に置かれている。」
アスターの言葉に私は驚いた。
「アスター・・貴女、邪眼の事を知ってるの?」
「当り前だよ。僕を誰だと思っているんだい?精霊なんだよ?そして僕は君の守護精霊でもある・・。だから君を助けに来たんだ。」
「助けるって・・・どうやって・・?」
「そうだな。一番手っ取り早いのは・・君をここから逃がして2人で誰も知らない場所へ移動する。何、空間移動位僕にはお手の物さ。アイリスの行きたいところ・・それこそ世界の果てにだって飛んでいけるよ?」
それを聞いて私は慌てた。
「駄目よ、そんな事出来るはず無いでしょう?イリヤ家の屋敷には王宮の兵士たちによって取り囲まれているのよ?私だけが逃げたら・・皆はどうなってしまうの?」
「それ位なら僕は何とかできるよ?人間を一瞬のうちに眠らせてしまう位どうって事は無いからね。君の屋敷を見張っている兵士達を何処か遠い場所へ捨ててくればいい。」
サラリと恐ろしいことを言うアスター。
「それでも駄目よ・・・。だって・・・。」
オスカーを・・助け出さなければ・・。思わずうつむくとアスターが声を掛けてきた。
「アイリス。まさか・・・君・・。」
アスターは私の頬を両手で挟むと言った。
「オスカーを助け出そうと思ってる?でも・・君は忘れたの?70年前・・オスカーは婚約者だった君を捨てて邪眼の持ち主のあの女を選んだんだよ?しかも言われなき罪で酷い暴力を受けた上、裁かれて・・・挙句の果てにあの流刑島へ流されたんだよね?しかも死ぬまであの島から出る事も無く・・。あの時、僕の力は未熟でね・・・今みたいに力があればあんな島、君を連れて逃げることだって出来たのに・・。それだけが今も悔やまれるけど・・・。」
「アスター・・・。」
「だから、今世ではアイリス。絶対君を助けようと決めたんだ。オスカーなんて放っておこうよ。だって彼はもう君の婚約者でもないし、王族の身分を剥奪されたただの犯罪者なんだよ?それより、一番心配なのは君なんだよ。アイリス・・君は悪魔に狙われているんだよ?」
「悪魔・・・。アスター・・・やはり私を狙っているのは悪魔だったの?今の国王に取りついている・・。」
「そうだよ。彼はね、オスカーを囮にしてアイリス。君を我が物にしようと狙っているんだ。だから・・・彼を助けに行けば君は間違いなく悪魔に捕まってしまうかもしれないよ?」
アスターはいつになく真剣な瞳で私を見つめている。だけど、どうしてもわからないことがある。何故?何故悪魔は私を狙っているのだろう?その理由がさっぱり分らなかった。でも・・・何となくアスターはその理由を知っている気がしたので、彼に尋ねてみる事にした。
「ねえ・・教えて。アスター。どうして私が・・・悪魔に狙われているのか分かる・・?」
「それはね・・・。」
そこまで言いかけた時・・・。
突然バチッと火花のはじけるような音が聞こえた。そして次の瞬間、アスターの苦し気なうめき声が聞こえて来る。
「ウッ・・・!」
見ると、アスターの首に黒い靄のようなものが巻き付き、首をしめ挙げていたのだ。
「ク・・ッ!し、しまった・・・!」
すると、黒い靄がさらに大きくなり・・徐々に人の姿を象ってゆく。やがてどす黒い靄に覆い尽くされ、アスターの首を片手で掴み、宙にぶら下げている人物が現れたのだ。それは・・・フリードリッヒ3世だった。
黒い靄に覆われた国王は私を振り向くと言った。
「アイリス・・・ついに見つけたぞ?まさか・・こんなところにいたとはな・・・。」
国王はギリギリとアスターの首を締め上げたまま私を見る。アスターはその手から逃れようと必死で足をばたばたさせてもがいているが、一向にその手を振りほどけずにいた。そして私を見ると言った。
「やめろ・・・アイリスに・・・手を出すな・・・。」
するとフリードリッヒ3世は言った。
「黙れっ!まだ目覚めたばかりのお前にこの私を止める力など無いっ!」
そしてさらに首を締め上げる。
「ク・・・ッ!ア・・・アイリス・・・目を覚ませ・・・っ!」
突如アスターが叫ぶと、眩しい光が彼の身体から放たれた。
「ギャアアアアッ!!」
激しい悲鳴と共に、突如私の部屋がまるで紙を破くようにベリベリと引き裂かれ・・私はそのまま意識を失ってしまった―。
32
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
[完結]困窮令嬢は幸せを諦めない~守護精霊同士がつがいだったので、王太子からプロポーズされました
緋月らむね
恋愛
この国の貴族の間では人生の進むべき方向へ導いてくれる守護精霊というものが存在していた。守護精霊は、特別な力を持った運命の魔術師に出会うことで、守護精霊を顕現してもらう必要があった。
エイド子爵の娘ローザは、運命の魔術師に出会うことができず、生活が困窮していた。そのため、定期的に子爵領の特産品であるガラス工芸と共に子爵領で採れる粘土で粘土細工アクセサリーを作って、父親のエイド子爵と一緒に王都に行って露店を出していた。
ある時、ローザが王都に行く途中に寄った町の露店で運命の魔術師と出会い、ローザの守護精霊が顕現する。
なんと!ローザの守護精霊は番を持っていた。
番を持つ守護精霊が顕現したローザの人生が思いがけない方向へ進んでいく…
〜読んでいただけてとても嬉しいです、ありがとうございます〜
悪役令嬢は間違えない
スノウ
恋愛
王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。
その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。
処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。
処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。
しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。
そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。
ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。
ジゼットは決意する。
次は絶対に間違えない。
処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。
そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。
────────────
毎日20時頃に投稿します。
お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
2度目の結婚は貴方と
朧霧
恋愛
前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか?
魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。
重複投稿作品です。(小説家になろう)
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる