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第7章 12 月に祈る
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カウンターの中へ入った私とユリアナ。
ユリアナは酒棚から一番大きな瓶を取り除くと、そこにはレバーが付いていた。
そしてユリアナは無言でレバーを掴み、勢いよく下に下げた。
すると・・・
ガコン・・・
突如、右側から何かが動くような音が聞こえた。
「え?」
音の方向を見ると、そこは何も無いただの木の壁だったはずが、いつの間にか奥へ続く空間が現れていた。よく見ると壁だと思っていたのは跳ね上げ式のドアになっていたのだ。
「さ、誰かに見られる前に先へ進みましょう。」
ユリアナに促され、私は隠し扉の中へ入った。
ガコン・・・
すると背後で再び、音が聞こえ、振り向くと入口は閉ざされていた。
「私たちが中へ入ったのでキデオンが入口を閉めたのです。あ・・キデオンと言うのは先ほどカウンターにいた男性です。彼の役目は・・おもに王宮の情報を集める仕事と・・資金を集める事なのです。」
そこは倉庫置き場なのだろうか、テーブルや椅子、木箱等様々なものが乱雑に置かれ、大きな窓からは頭上に月が見えていた。板で出来ている倉庫の中を歩きながらユリアナが説明してくれた。
「そうですか・・酒場でお客から情報と収入源を得る・・・とても効率の良い方法ですね。これも皆さんで考えた方法ですか?」
「ええ、そうです。オスカー様もよく変装してあの酒場に足を運んでいました。・・最も時々『黒いオスカー』が現れる事もありましたが・・。」
ユリアナは苦笑しながら言う。
ああ・・・ひょとすると酒場で暴れていたオスカーの事なのだろう・・。
私は窓の外を見た。大きな月が窓から見える。いつかオスカーと2人で見た月が思い出され、思わずポツリと呟いてしまった。
「オスカー様・・。」
すると前を歩いていたユリアナが立ち止まると振り返り、私に言った。
「やはり・・アイリス様も・・・オスカー様の事を思ってらっしゃるのですね。」
ユリアナまでもがアルマンゾと同じような言い方をする。
だけど、私は・・。
・・・情けないことに私は前世と合わせれば100年近い時を生きていると言うのに・・本当の恋を経験したことが無かった。レイフに思いを寄せていたことはあったけれども、それは今考えてみれば子供の時の淡い恋。そしてオスカーと婚約をしていた時は、イリヤ家の繁栄の為にとオスカーの将来の良き妻になれるように努力したが・・無駄だった。挙句の果てに国王とタバサの手に堕ちたオスカーは私に酷い暴力を振るい・・流刑島に私を捨てて行ったのだ。
そこで過ごしたアスターとの70年間。そして再びタイムリープした私はオスカーと再会して・・彼が本当は私を愛していると言う事を知った。
「アルマンゾも貴女も・・・私がオスカー様を思っていると言うけど・・本当にそうなのか・・私はオスカー様をどう思っているのか自分で自分の気持ちが・・よく分らないのよ・・。」
私は今の自分の正直な気持ちを語った。
「・・・。」
するとユリアナは私の事をじっと見つめると、言った。
「アイリス様は・・何故今オスカー様の名前を口にしたのですか?」
「え?ええ・・それは・・月がとても美しかったから・・オスカー様といつか2人でみた月を思い出して・・それで・・。」
「美しい景色を誰かと見たことが思い出されるというのは・・やはりその方を思っている証拠だと思いますよ?」
ユリアナはニッコリ微笑むと私に言った。
「そういう・・・もの・・なの・・?」
「はい、私はそう思います。」
「そう・・・。」
私は呟き、再び空を見上げて月を見た。
オスカー・・どうか・・無事でいて下さい・・。
気付けば私は月に祈っていた―。
ユリアナは酒棚から一番大きな瓶を取り除くと、そこにはレバーが付いていた。
そしてユリアナは無言でレバーを掴み、勢いよく下に下げた。
すると・・・
ガコン・・・
突如、右側から何かが動くような音が聞こえた。
「え?」
音の方向を見ると、そこは何も無いただの木の壁だったはずが、いつの間にか奥へ続く空間が現れていた。よく見ると壁だと思っていたのは跳ね上げ式のドアになっていたのだ。
「さ、誰かに見られる前に先へ進みましょう。」
ユリアナに促され、私は隠し扉の中へ入った。
ガコン・・・
すると背後で再び、音が聞こえ、振り向くと入口は閉ざされていた。
「私たちが中へ入ったのでキデオンが入口を閉めたのです。あ・・キデオンと言うのは先ほどカウンターにいた男性です。彼の役目は・・おもに王宮の情報を集める仕事と・・資金を集める事なのです。」
そこは倉庫置き場なのだろうか、テーブルや椅子、木箱等様々なものが乱雑に置かれ、大きな窓からは頭上に月が見えていた。板で出来ている倉庫の中を歩きながらユリアナが説明してくれた。
「そうですか・・酒場でお客から情報と収入源を得る・・・とても効率の良い方法ですね。これも皆さんで考えた方法ですか?」
「ええ、そうです。オスカー様もよく変装してあの酒場に足を運んでいました。・・最も時々『黒いオスカー』が現れる事もありましたが・・。」
ユリアナは苦笑しながら言う。
ああ・・・ひょとすると酒場で暴れていたオスカーの事なのだろう・・。
私は窓の外を見た。大きな月が窓から見える。いつかオスカーと2人で見た月が思い出され、思わずポツリと呟いてしまった。
「オスカー様・・。」
すると前を歩いていたユリアナが立ち止まると振り返り、私に言った。
「やはり・・アイリス様も・・・オスカー様の事を思ってらっしゃるのですね。」
ユリアナまでもがアルマンゾと同じような言い方をする。
だけど、私は・・。
・・・情けないことに私は前世と合わせれば100年近い時を生きていると言うのに・・本当の恋を経験したことが無かった。レイフに思いを寄せていたことはあったけれども、それは今考えてみれば子供の時の淡い恋。そしてオスカーと婚約をしていた時は、イリヤ家の繁栄の為にとオスカーの将来の良き妻になれるように努力したが・・無駄だった。挙句の果てに国王とタバサの手に堕ちたオスカーは私に酷い暴力を振るい・・流刑島に私を捨てて行ったのだ。
そこで過ごしたアスターとの70年間。そして再びタイムリープした私はオスカーと再会して・・彼が本当は私を愛していると言う事を知った。
「アルマンゾも貴女も・・・私がオスカー様を思っていると言うけど・・本当にそうなのか・・私はオスカー様をどう思っているのか自分で自分の気持ちが・・よく分らないのよ・・。」
私は今の自分の正直な気持ちを語った。
「・・・。」
するとユリアナは私の事をじっと見つめると、言った。
「アイリス様は・・何故今オスカー様の名前を口にしたのですか?」
「え?ええ・・それは・・月がとても美しかったから・・オスカー様といつか2人でみた月を思い出して・・それで・・。」
「美しい景色を誰かと見たことが思い出されるというのは・・やはりその方を思っている証拠だと思いますよ?」
ユリアナはニッコリ微笑むと私に言った。
「そういう・・・もの・・なの・・?」
「はい、私はそう思います。」
「そう・・・。」
私は呟き、再び空を見上げて月を見た。
オスカー・・どうか・・無事でいて下さい・・。
気付けば私は月に祈っていた―。
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