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第9章 8 荷馬車の中で
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ガラガラガラガラ・・・・・
私とオスカーは御者を務めるヴィンサントの駆る幌を掛けた荷馬車に揺られていた。他のレジスタンスの仲間たちは徒歩でそれぞれ行商人などの姿に変装し、独自のルートで王宮を目指していた。
コートのフードを目深に被り、荷台にうずくまって座る私にオスカーが気づかわし気に声を掛けてくる。
「アイリス・・・大丈夫か?」
「ええ・・大丈夫です。多少・・緊張してはおりますが・・。」
私は嘘をついた。本当は怖くて怖くてたまらないのに、オスカーを・・皆を心配させるわけにはいかない。特にオスカー。私は愛しい人の顔をじっと見つめた。
いつもなら気丈に振舞っているのに・・その瞳は不安げに揺れていた。顔には悲壮感が漂い、疲れきった表情を見せている。
「アイリス・・俺は・・本当は今でもこんなやり方に反対なんだ・・。何故・・お前を父に引き渡さなければならない?お前を誰にも渡したくないのに・・っ!」
オスカーは私を抱きよせると、髪に顔をうずめ・・・苦し気に言う。
「オスカー様・・・。」
私はオスカーの背中に手を回し、胸に顔を押し付けた。すると、規則正しく波を打つように心臓の音が聞こえてくる。こうしているだけで、自分の心が落ち着いて来るのを感じる。
「オスカー様・・・私なら大丈夫です。今はまだ・・言えませんが、私にある秘策があります。大丈夫、絶対に・・・悪魔に憑りつかれた・・・陛下の思うようにはさせません。なので・心配しないで下さい。必ず、私は皆の・・オスカー様の元へ帰ってきます。」
「アイリス・・・。」
オスカーが私の頬に手を当てて顔を近づけてくるので、私はそっと瞳を閉じた。
するとオスカーの唇が触れ・・いつしかそれは深い口づけに代わり・・私たちは飽きることなく口付けを交わした―。
「そこの馬車!どこへ行く気だ!止まれっ!」
王宮の正門に到着したのだろうか?見慣れぬ男の声が聞こえ、馬車の動きが止まった。
「アイリス・・・どうやら王宮の正門に到着したようだ。」
オスカーは荷物の背後に身体を隠すと言った。
「ええ、そうですね・・・。ではオスカー様・・私・・行きます。」
「アイリス・・・!」
オスカーは私の右手首を掴むと自分の方へ引きよせ、再度口づけをしてきた。
《 愛してる・・・!絶対にお前を助けに行くからな・・・! 》
それはほんの一瞬の出来事だったが、オスカーの私に対する深い愛が感じられた。
「オスカー様・・・行ってきますっ!」
そして私はオスカーの手を離すと荷台から声を上げた。
「アイリス・イリヤです!国王陛下の命により・・・人質交換で参りました!」
そして荷台から外に出ると、正門に絶つ兵士の前に姿を現し、フードを外した。
「おお・・その姿は・・・まぎれもなくアイリス殿だな・・・?さあ、すぐにこちらへ!」
兵士が私に手を伸ばすのをヴィンサントが制した。
「お待ちください!」
すると兵士は恐ろしい目でヴィンサントを睨みつけた。
「何だ・・・?貴様は・・・?」
「まずは本日この城にて処刑命令を下されている若者を連れてきて下さい。それがアイリス様をそちらに渡す条件ですっ!」
「何だと・・生意気な・・・!」
兵士の目に殺気が走った。その瞬間・・・。
「よせ!」
兵士の背後から大柄な男性がやってきた。その兵士の背後には・・・顔中酷いあざだらけでまるでボロ雑巾のような姿になったレイフを引きずっている。
「レイフッ!」
私は荷台から叫んだがレイフはピクリとも動かない。
「ま・・・まさか・・・レイフを殺したのっ?!」
「ヘッ・・まさか・・・マぁかろうじて生きているってところですか?さぁ、姫さん。約束通り男を連れてきたんだ。こっちへ来い。」
男は乱暴にレイフを蹴飛ばして転がした。
「やめてっ!これ以上レイフに酷い事はしないでっ!」
「アイリス様・・・。」
ヴィンサントは心配そうな顔で私を見ている。
「大丈夫・・・レイフを・・お願いできる?」
「はい、ただいま。」
私はヴィンサントの助けを借りて荷台から降りた―。
私とオスカーは御者を務めるヴィンサントの駆る幌を掛けた荷馬車に揺られていた。他のレジスタンスの仲間たちは徒歩でそれぞれ行商人などの姿に変装し、独自のルートで王宮を目指していた。
コートのフードを目深に被り、荷台にうずくまって座る私にオスカーが気づかわし気に声を掛けてくる。
「アイリス・・・大丈夫か?」
「ええ・・大丈夫です。多少・・緊張してはおりますが・・。」
私は嘘をついた。本当は怖くて怖くてたまらないのに、オスカーを・・皆を心配させるわけにはいかない。特にオスカー。私は愛しい人の顔をじっと見つめた。
いつもなら気丈に振舞っているのに・・その瞳は不安げに揺れていた。顔には悲壮感が漂い、疲れきった表情を見せている。
「アイリス・・俺は・・本当は今でもこんなやり方に反対なんだ・・。何故・・お前を父に引き渡さなければならない?お前を誰にも渡したくないのに・・っ!」
オスカーは私を抱きよせると、髪に顔をうずめ・・・苦し気に言う。
「オスカー様・・・。」
私はオスカーの背中に手を回し、胸に顔を押し付けた。すると、規則正しく波を打つように心臓の音が聞こえてくる。こうしているだけで、自分の心が落ち着いて来るのを感じる。
「オスカー様・・・私なら大丈夫です。今はまだ・・言えませんが、私にある秘策があります。大丈夫、絶対に・・・悪魔に憑りつかれた・・・陛下の思うようにはさせません。なので・心配しないで下さい。必ず、私は皆の・・オスカー様の元へ帰ってきます。」
「アイリス・・・。」
オスカーが私の頬に手を当てて顔を近づけてくるので、私はそっと瞳を閉じた。
するとオスカーの唇が触れ・・いつしかそれは深い口づけに代わり・・私たちは飽きることなく口付けを交わした―。
「そこの馬車!どこへ行く気だ!止まれっ!」
王宮の正門に到着したのだろうか?見慣れぬ男の声が聞こえ、馬車の動きが止まった。
「アイリス・・・どうやら王宮の正門に到着したようだ。」
オスカーは荷物の背後に身体を隠すと言った。
「ええ、そうですね・・・。ではオスカー様・・私・・行きます。」
「アイリス・・・!」
オスカーは私の右手首を掴むと自分の方へ引きよせ、再度口づけをしてきた。
《 愛してる・・・!絶対にお前を助けに行くからな・・・! 》
それはほんの一瞬の出来事だったが、オスカーの私に対する深い愛が感じられた。
「オスカー様・・・行ってきますっ!」
そして私はオスカーの手を離すと荷台から声を上げた。
「アイリス・イリヤです!国王陛下の命により・・・人質交換で参りました!」
そして荷台から外に出ると、正門に絶つ兵士の前に姿を現し、フードを外した。
「おお・・その姿は・・・まぎれもなくアイリス殿だな・・・?さあ、すぐにこちらへ!」
兵士が私に手を伸ばすのをヴィンサントが制した。
「お待ちください!」
すると兵士は恐ろしい目でヴィンサントを睨みつけた。
「何だ・・・?貴様は・・・?」
「まずは本日この城にて処刑命令を下されている若者を連れてきて下さい。それがアイリス様をそちらに渡す条件ですっ!」
「何だと・・生意気な・・・!」
兵士の目に殺気が走った。その瞬間・・・。
「よせ!」
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「レイフッ!」
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「ま・・・まさか・・・レイフを殺したのっ?!」
「ヘッ・・まさか・・・マぁかろうじて生きているってところですか?さぁ、姫さん。約束通り男を連れてきたんだ。こっちへ来い。」
男は乱暴にレイフを蹴飛ばして転がした。
「やめてっ!これ以上レイフに酷い事はしないでっ!」
「アイリス様・・・。」
ヴィンサントは心配そうな顔で私を見ている。
「大丈夫・・・レイフを・・お願いできる?」
「はい、ただいま。」
私はヴィンサントの助けを借りて荷台から降りた―。
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