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「オスカー様・・・一体何故その話を・・。」
しかし、オスカーはそれには答えず、寂しげに笑うと突然強く抱きしめてきた。
「アイリス・・・すまなかった・・!俺は・・・前の世界で生きた時、お前にいわれなき罪を被せ・・婚約を破棄しただけでなく、何度も何度もお前に暴力を振るって・・挙句に島流しの刑に・・怖かっただろう?俺が・・憎かっただろう?なのに・・・!」
オスカーは震えながら私を抱きしめている。一方の私はオスカーの話を信じられない思いで聞いていた。何故その記憶を・・・?タイムリープしたのは私だけでは無かったの?
私が何を考えているのか気づいたようにオスカーが言った。
「アイリス・・お前の女神の命が・・俺の身体に吹き込まれた時・・お前の前世の記憶が俺の中に入ってきたんだ・・・。それで俺も今までの記憶を取り度したんだ。」
オスカーは私から身体を離し、両肩に手を置いて私をじっと見つめると言った。
「アイリス・・・俺とお前は・・何度も何度も同じ時を生きてきた・・・そして必ず俺はお前を・・・この手で殺していた・・。全ては俺のせいなのに・・お前は何も悪くは無かったのに・・。」
オスカーは震える両手でそっと私の頬を包み込むと言った。その瞳は・・涙で濡れていた。
「オスカー様のせいではありません。私は・・女神なのに貴方を愛してしまった。だから神は私に罰を与えただけです。でも・・少しも後悔していません。だって・・私は貴方と出会えて、愛を知ったのだから・・。」
「アイリス・・・!」
オスカーは私を強く抱きしめ、深い口づけをすると耳元で囁く様に言った。
「アイリス・・・今夜は・・離れたくない。ずっと・・俺の傍にいてくれるか・・?」
「はい・・私も離れたくありません・・。」
オスカーの首に両腕を回し・・・私も自分の気持ちを伝えた。
そしてこの夜・・・空が白むまで私たちは互いの身体を求め合った―。
翌日―
私とオスカーの正式な婚約が国中に発表され、この日から私は花嫁修業と称し、ウィンザード家で暮らすようになった。
そんなある日の事・・。
この日、オスカーは王宮で式典の準備がある為にアカデミーを欠席し、珍しく私1人で登校してきた。
教室に向かって歩いていると、背後で私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「アイリスーッ!」
振り向くとレイフが手を振りながら駆け寄って来る。
「まあ、レイフッ!もう身体の具合は大丈夫なの?」
「ああ、おかげさまでな・・・それでアイリスにどうしても礼を伝えたくて。」
2人で並んで廊下を歩きながらレイフが言う。
「お礼・・?」
私は首を傾げた。
「ああ、お礼だ。アイリスがオスカー様に直談判して腕の良い神官に俺の治療を頼んでくれたのだろう?俺を治療してくれたシモン様がそう話してくれたんだ。」
「そう・・・シモンが・・・。」
私はポツリと呟いた。
オスカーのレジスタンスだった彼らは皆、もとの王宮にいたそれぞれの場所で、今はウィンザード家の家臣として仕えている。彼らがレジスタンスとして活動していたことを咎める者は・・誰もいなかった。
2人で並んで教室に入ると、不意にレイフが言った。
「なあ・・・アイリス。この教室に入って気が付いたんだが・・あの席に誰か座っていなかったか?」
レイフはかつてタバサが座っていた席を指さした。あの日・・タバサがチリになって消えてしまってからは、彼女の事を覚えている人間は私しかいなかった。オスカーはおろか、フリードリッヒ3世すらもタバサの事を覚えていなかったのだ。
可愛そうなタバサ・・・。でも私だけは・・絶対に彼女の事を覚えおこう。だから私は言った。
「そうね・・・美しい精霊が座っていたかもしれないわね?」
その時・・・
「おい!お前・・俺のアイリスから離れろっ!」
突如背後でオスカーの声が響いた。
慌てて振り向くとそこにはオスカーが険しい顔で立っていた。
「す、すみませんっ!」
レイフは頭を下げると逃げるように自分の席へ向かった。
「オ、オスカー様・・何故ここに・・・?今日は式典の準備ではなかったですか?」
「ああ、そうだ。だが・・その準備も終わったのでここへやって来たのだ。それなのに・・くそっ!レイフの奴め・・・俺のアイリスに馴れ馴れしく・・・!」
オスカーは殺気をみなぎらせながらレイフを睨み付け・・・可哀そうなレイフはビクビクしながら背後をうかがっている。
私は苦笑しながら言った。
「オスカー様・・。まだ私の気持ちを疑うのですか?私がこの世界で愛する人は貴方だけです。たとえ何度生まれ変わっても・・。」
「ア、アイリス・・・。」
オスカーは頬を赤らめると、突然私の手を握り締め・・廊下に出て行く。
「え?オ、オスカー様?一体どちらへ?」
手を引かれて歩きながら私はオスカーに尋ねた。
「・・・城へ帰る。どうせ明日はアカデミーは休みになるしな・・。」
え?一体どういう事なのだろう?戸惑っているとオスカーが突然ピタリと足を止めて人目もはばからず抱き上げてくると耳元で囁いた。
「あんまりお前が嬉しいことを言ってくれるから・・お前を愛したくなった。」
「!」
今度は私が顔を赤らめる番だった―。
翌日、オスカーの言葉通りにアカデミーは休みになった。
何故なら急遽、私とオスカーの婚約式が執り行われ・・さらにその3か月後・・私とオスカーは国民に盛大に祝福されながら正式に夫婦となった―。
****
1年後―
「アイリスッ!」
オスカーが周囲の反対を押し切り、出産を終えて間もない私の元へ駆けつけてきた。
「オスカー様・・。」
私は弱々しくも笑みを浮かべた。
出産の疲れで横たわったままの私の隣には先ほどまで産声を上げて泣いていた可愛い赤子が眠っている。
周りのメイド達は困ったように互いの顔を見渡したが、私は言った。
「いいのよ。皆。少しだけ・・・私達だけにしてくれる?」
するとメイド達は頭を下げ、部屋を出て行った。オスカーは私の元に跪くと言った。
「よく頑張ったな・・アイリス・・。本当に・・・ありがとう・・。」
そして愛し気に赤子たちを見つめるとオスカーは尋ねてきた。
「それで?子供達の名前だが・・。以前から考えていたあの名前でいいのか?」
「はい、男の子はアスター。女の子の名前は・・・タバサと付けたいと思います。いいですよね?」
オスカーは優しく笑うと言った。
「ああ・・・いい名前だ・・アスター。タバサ・・生まれ来てくれてありがとう。」
そして双子の娘と息子にオスカーはそっとキスをすると、私を見つめた。
「アイリス・・これからもずっと一緒だ。変わらぬ愛をお前に誓うよ。」
「はい・・・私もオスカー様に永遠の愛を誓います。」
そして私たちは幸せに包まれながら口づけを交わした―。
<終>
しかし、オスカーはそれには答えず、寂しげに笑うと突然強く抱きしめてきた。
「アイリス・・・すまなかった・・!俺は・・・前の世界で生きた時、お前にいわれなき罪を被せ・・婚約を破棄しただけでなく、何度も何度もお前に暴力を振るって・・挙句に島流しの刑に・・怖かっただろう?俺が・・憎かっただろう?なのに・・・!」
オスカーは震えながら私を抱きしめている。一方の私はオスカーの話を信じられない思いで聞いていた。何故その記憶を・・・?タイムリープしたのは私だけでは無かったの?
私が何を考えているのか気づいたようにオスカーが言った。
「アイリス・・お前の女神の命が・・俺の身体に吹き込まれた時・・お前の前世の記憶が俺の中に入ってきたんだ・・・。それで俺も今までの記憶を取り度したんだ。」
オスカーは私から身体を離し、両肩に手を置いて私をじっと見つめると言った。
「アイリス・・・俺とお前は・・何度も何度も同じ時を生きてきた・・・そして必ず俺はお前を・・・この手で殺していた・・。全ては俺のせいなのに・・お前は何も悪くは無かったのに・・。」
オスカーは震える両手でそっと私の頬を包み込むと言った。その瞳は・・涙で濡れていた。
「オスカー様のせいではありません。私は・・女神なのに貴方を愛してしまった。だから神は私に罰を与えただけです。でも・・少しも後悔していません。だって・・私は貴方と出会えて、愛を知ったのだから・・。」
「アイリス・・・!」
オスカーは私を強く抱きしめ、深い口づけをすると耳元で囁く様に言った。
「アイリス・・・今夜は・・離れたくない。ずっと・・俺の傍にいてくれるか・・?」
「はい・・私も離れたくありません・・。」
オスカーの首に両腕を回し・・・私も自分の気持ちを伝えた。
そしてこの夜・・・空が白むまで私たちは互いの身体を求め合った―。
翌日―
私とオスカーの正式な婚約が国中に発表され、この日から私は花嫁修業と称し、ウィンザード家で暮らすようになった。
そんなある日の事・・。
この日、オスカーは王宮で式典の準備がある為にアカデミーを欠席し、珍しく私1人で登校してきた。
教室に向かって歩いていると、背後で私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「アイリスーッ!」
振り向くとレイフが手を振りながら駆け寄って来る。
「まあ、レイフッ!もう身体の具合は大丈夫なの?」
「ああ、おかげさまでな・・・それでアイリスにどうしても礼を伝えたくて。」
2人で並んで廊下を歩きながらレイフが言う。
「お礼・・?」
私は首を傾げた。
「ああ、お礼だ。アイリスがオスカー様に直談判して腕の良い神官に俺の治療を頼んでくれたのだろう?俺を治療してくれたシモン様がそう話してくれたんだ。」
「そう・・・シモンが・・・。」
私はポツリと呟いた。
オスカーのレジスタンスだった彼らは皆、もとの王宮にいたそれぞれの場所で、今はウィンザード家の家臣として仕えている。彼らがレジスタンスとして活動していたことを咎める者は・・誰もいなかった。
2人で並んで教室に入ると、不意にレイフが言った。
「なあ・・・アイリス。この教室に入って気が付いたんだが・・あの席に誰か座っていなかったか?」
レイフはかつてタバサが座っていた席を指さした。あの日・・タバサがチリになって消えてしまってからは、彼女の事を覚えている人間は私しかいなかった。オスカーはおろか、フリードリッヒ3世すらもタバサの事を覚えていなかったのだ。
可愛そうなタバサ・・・。でも私だけは・・絶対に彼女の事を覚えおこう。だから私は言った。
「そうね・・・美しい精霊が座っていたかもしれないわね?」
その時・・・
「おい!お前・・俺のアイリスから離れろっ!」
突如背後でオスカーの声が響いた。
慌てて振り向くとそこにはオスカーが険しい顔で立っていた。
「す、すみませんっ!」
レイフは頭を下げると逃げるように自分の席へ向かった。
「オ、オスカー様・・何故ここに・・・?今日は式典の準備ではなかったですか?」
「ああ、そうだ。だが・・その準備も終わったのでここへやって来たのだ。それなのに・・くそっ!レイフの奴め・・・俺のアイリスに馴れ馴れしく・・・!」
オスカーは殺気をみなぎらせながらレイフを睨み付け・・・可哀そうなレイフはビクビクしながら背後をうかがっている。
私は苦笑しながら言った。
「オスカー様・・。まだ私の気持ちを疑うのですか?私がこの世界で愛する人は貴方だけです。たとえ何度生まれ変わっても・・。」
「ア、アイリス・・・。」
オスカーは頬を赤らめると、突然私の手を握り締め・・廊下に出て行く。
「え?オ、オスカー様?一体どちらへ?」
手を引かれて歩きながら私はオスカーに尋ねた。
「・・・城へ帰る。どうせ明日はアカデミーは休みになるしな・・。」
え?一体どういう事なのだろう?戸惑っているとオスカーが突然ピタリと足を止めて人目もはばからず抱き上げてくると耳元で囁いた。
「あんまりお前が嬉しいことを言ってくれるから・・お前を愛したくなった。」
「!」
今度は私が顔を赤らめる番だった―。
翌日、オスカーの言葉通りにアカデミーは休みになった。
何故なら急遽、私とオスカーの婚約式が執り行われ・・さらにその3か月後・・私とオスカーは国民に盛大に祝福されながら正式に夫婦となった―。
****
1年後―
「アイリスッ!」
オスカーが周囲の反対を押し切り、出産を終えて間もない私の元へ駆けつけてきた。
「オスカー様・・。」
私は弱々しくも笑みを浮かべた。
出産の疲れで横たわったままの私の隣には先ほどまで産声を上げて泣いていた可愛い赤子が眠っている。
周りのメイド達は困ったように互いの顔を見渡したが、私は言った。
「いいのよ。皆。少しだけ・・・私達だけにしてくれる?」
するとメイド達は頭を下げ、部屋を出て行った。オスカーは私の元に跪くと言った。
「よく頑張ったな・・アイリス・・。本当に・・・ありがとう・・。」
そして愛し気に赤子たちを見つめるとオスカーは尋ねてきた。
「それで?子供達の名前だが・・。以前から考えていたあの名前でいいのか?」
「はい、男の子はアスター。女の子の名前は・・・タバサと付けたいと思います。いいですよね?」
オスカーは優しく笑うと言った。
「ああ・・・いい名前だ・・アスター。タバサ・・生まれ来てくれてありがとう。」
そして双子の娘と息子にオスカーはそっとキスをすると、私を見つめた。
「アイリス・・これからもずっと一緒だ。変わらぬ愛をお前に誓うよ。」
「はい・・・私もオスカー様に永遠の愛を誓います。」
そして私たちは幸せに包まれながら口づけを交わした―。
<終>
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