3 / 20
第3話 美少年との出会い
しおりを挟む
「それじゃ、マッチを売りに行ってくるから」
大量のマッチをカゴに入れ、準備を終えると扉を開けた。
「お、おう。気をつけて行って来いよ」
見送りに出てきた父親は恨めしそうな目で私を見る。
「何よ、その目は。何か文句でもあるの?」
「それにしても酷い娘だ……我が家の全財産を持って出かけるなんて……」
「こういうときだけ娘扱いするのはやめてくれる? それにね、これは必要な軍資金なのよ。見てなさい、このお金を何倍にもして帰ってくるから」
「ああ、期待せずに待ってるよ」
まるで馬鹿にしたような言い方をすり父親は、背を向けて家の中に入ると乱暴にドアを閉めてしまった。
全くなんて態度なのだろう。
「あれでも親なの!? 日本だったら訴えられるレベルよ!」
見てなさいよ! うんと儲けてやるんだから!
こうして、私はマッチを売りに町へと向かった――
****
夕暮の町は大晦日ということもあり、大勢の買い物客でひしめき合っていた。
「それにしても驚きね。この世界のお金の単位がエンだなんて。ちょっと出来過ぎみたい」
そう、何とこの世界は貨幣単位がエンだったのだ。これは分かりやすくて助かる。
「さってと……飲み屋さんはどこかな?」
別に私はお酒が飲みたいわけではない。それに大体どう見てもアンナは未成年にしか見えない。飲み屋に入ったって店側がお酒を出すのを拒否するだろう。私が飲み屋を探しているのには別の目的があったのだ。
「そ、それにしても人混みが激しいわね……」
通りを歩く人たちに気をつけながら歩いていたそのとき――
ドンッ!
前方から歩いてきた人にぶつかり、カゴからマッチがボロボロと落ちてしまった。
「あ! マッチが!」
商売道具が雪道で濡れたら大変だ。
「すみません!」
私にぶつかってきたのは同じ年くらいの少年だった。彼はすぐに道端にしゃがみ込むと落ちたマッチ箱を拾い集め、差し出してきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お礼を述べて、マッチをカゴに入れると少年を見つめる。……物凄い美少年だった。金色の髪に緑の瞳。天使がいるとすれば、彼のような姿をしているのかもしれない。
それに、良いところのお坊っちゃまなのだろうか? 見るからに高そうなコートを着ている。
「あの、何か?」
私があまりにもジロジロ見ているからだろう。首を傾げて尋ねてきた。
「いえ。何でもありません。それでは失礼します」
「あ、ちょっと待って!」
不意に呼び止められ、振り向いた。
「何でしょうか?」
「その箱……もしかしてマッチかな?」
「ええ、そうですけど?」
すると少年の顔に笑みが浮かぶ。
「やっぱりマッチだったんだ! 実は以前からマッチが欲しくて売っている店を探していたところなんだ。でもまだ貴重なものらしく、店に出回っていないから諦めていたんだよ。まさかこんなにマッチを持っている人に会えるとは思わなかった。もしよければ売ってもらえないかな?」
「それは構いませんけど……高いですよ?」
元々売るために持ってきたのだ。目の前の彼に売るのは全く持って構わない。
ただ問題は金額だ。
いや、別にこれは儲けようと思って口にした言葉ではない。実際にマッチは高かったのだ。
あの父親にマッチ1箱の値段を尋ねたときは本当に驚いてしまった。
何しろ、たった20本しか入っていないマッチが1箱1000エンもするのだから。
「いくら高くても構わないよ。それで幾らかな?」
うん。これは心を鬼にしよう。
「20本入が1箱1500円ですけど?」
「え? そんなに安くていいの? それじゃ10箱もらえるかな? あるよね?」
「え、ええ! 勿論です!」
まさか即答されるとは思わなかった。
10箱どころか100箱以上は持ってきている。
「それじゃ、ここで……」
少年はお金を出そうとし、辺りを見渡した。
「この辺は人が多いから、何処かで支払わせてもらえるかな?」
「それなら、お店にしましょう。実は飲み屋さんを探しているんですよ」
飲み屋さんで、彼にマッチを買ってもらえればさらに注目されるに違いない。
「え? まさかお酒でも飲むつもりなのかい? だって、君……どう見てもまだ未成年だよね?」
「はい、でも別にお酒を飲むつもりはありません。だって他にジュースくらいはあるはずですよね?」
「う~ん……多分あると思うけど……分かった。それじゃ飲み屋さんに行こう。確かこの近くにあるはずだから。案内するよ」
「お願いします」
こうして運良く私は早速マッチを買ってくれる客に遭遇することが出来た。
これは幸先良いかもしれない。
私は心の中でほくそ笑んだ――
大量のマッチをカゴに入れ、準備を終えると扉を開けた。
「お、おう。気をつけて行って来いよ」
見送りに出てきた父親は恨めしそうな目で私を見る。
「何よ、その目は。何か文句でもあるの?」
「それにしても酷い娘だ……我が家の全財産を持って出かけるなんて……」
「こういうときだけ娘扱いするのはやめてくれる? それにね、これは必要な軍資金なのよ。見てなさい、このお金を何倍にもして帰ってくるから」
「ああ、期待せずに待ってるよ」
まるで馬鹿にしたような言い方をすり父親は、背を向けて家の中に入ると乱暴にドアを閉めてしまった。
全くなんて態度なのだろう。
「あれでも親なの!? 日本だったら訴えられるレベルよ!」
見てなさいよ! うんと儲けてやるんだから!
こうして、私はマッチを売りに町へと向かった――
****
夕暮の町は大晦日ということもあり、大勢の買い物客でひしめき合っていた。
「それにしても驚きね。この世界のお金の単位がエンだなんて。ちょっと出来過ぎみたい」
そう、何とこの世界は貨幣単位がエンだったのだ。これは分かりやすくて助かる。
「さってと……飲み屋さんはどこかな?」
別に私はお酒が飲みたいわけではない。それに大体どう見てもアンナは未成年にしか見えない。飲み屋に入ったって店側がお酒を出すのを拒否するだろう。私が飲み屋を探しているのには別の目的があったのだ。
「そ、それにしても人混みが激しいわね……」
通りを歩く人たちに気をつけながら歩いていたそのとき――
ドンッ!
前方から歩いてきた人にぶつかり、カゴからマッチがボロボロと落ちてしまった。
「あ! マッチが!」
商売道具が雪道で濡れたら大変だ。
「すみません!」
私にぶつかってきたのは同じ年くらいの少年だった。彼はすぐに道端にしゃがみ込むと落ちたマッチ箱を拾い集め、差し出してきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お礼を述べて、マッチをカゴに入れると少年を見つめる。……物凄い美少年だった。金色の髪に緑の瞳。天使がいるとすれば、彼のような姿をしているのかもしれない。
それに、良いところのお坊っちゃまなのだろうか? 見るからに高そうなコートを着ている。
「あの、何か?」
私があまりにもジロジロ見ているからだろう。首を傾げて尋ねてきた。
「いえ。何でもありません。それでは失礼します」
「あ、ちょっと待って!」
不意に呼び止められ、振り向いた。
「何でしょうか?」
「その箱……もしかしてマッチかな?」
「ええ、そうですけど?」
すると少年の顔に笑みが浮かぶ。
「やっぱりマッチだったんだ! 実は以前からマッチが欲しくて売っている店を探していたところなんだ。でもまだ貴重なものらしく、店に出回っていないから諦めていたんだよ。まさかこんなにマッチを持っている人に会えるとは思わなかった。もしよければ売ってもらえないかな?」
「それは構いませんけど……高いですよ?」
元々売るために持ってきたのだ。目の前の彼に売るのは全く持って構わない。
ただ問題は金額だ。
いや、別にこれは儲けようと思って口にした言葉ではない。実際にマッチは高かったのだ。
あの父親にマッチ1箱の値段を尋ねたときは本当に驚いてしまった。
何しろ、たった20本しか入っていないマッチが1箱1000エンもするのだから。
「いくら高くても構わないよ。それで幾らかな?」
うん。これは心を鬼にしよう。
「20本入が1箱1500円ですけど?」
「え? そんなに安くていいの? それじゃ10箱もらえるかな? あるよね?」
「え、ええ! 勿論です!」
まさか即答されるとは思わなかった。
10箱どころか100箱以上は持ってきている。
「それじゃ、ここで……」
少年はお金を出そうとし、辺りを見渡した。
「この辺は人が多いから、何処かで支払わせてもらえるかな?」
「それなら、お店にしましょう。実は飲み屋さんを探しているんですよ」
飲み屋さんで、彼にマッチを買ってもらえればさらに注目されるに違いない。
「え? まさかお酒でも飲むつもりなのかい? だって、君……どう見てもまだ未成年だよね?」
「はい、でも別にお酒を飲むつもりはありません。だって他にジュースくらいはあるはずですよね?」
「う~ん……多分あると思うけど……分かった。それじゃ飲み屋さんに行こう。確かこの近くにあるはずだから。案内するよ」
「お願いします」
こうして運良く私は早速マッチを買ってくれる客に遭遇することが出来た。
これは幸先良いかもしれない。
私は心の中でほくそ笑んだ――
91
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
お妃さま誕生物語
すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。
小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
婚約破棄された公爵令嬢は数理魔法の天才
希羽
ファンタジー
この世界では、魔法は神への祈りとされる神聖な詠唱によって発動する。しかし、数学者だった前世の記憶を持つ公爵令嬢のリディアは、魔法の本質が「数式による世界の法則への干渉」であることを見抜いてしまう。
彼女が編み出した、微分積分や幾何学を応用した「数理魔法」は、従来の魔法を遥かに凌駕する威力と効率を誇った。しかし、その革新的な理論は神への冒涜とされ、彼女を妬む宮廷魔術師と婚約者の王子によって「異端の悪女」の烙印を押され、婚約破棄と国外追放を宣告される。
追放されたリディアは、魔物が蔓延る未開の地へ。しかし、そこは彼女にとって理想の研究場所だった。放物線を描く最適な角度で岩を射出する攻撃魔法、最小の魔力で最大範囲をカバーする結界術など、前世の数学・物理知識を駆使して、あっという間に安全な拠点と豊かな生活を確立する。
そんな中、彼女の「数理魔法」に唯一興味を示した、一人の傭兵が現れる。感覚で魔法を操る天才だった彼は、リディアの理論に触れることで、自身の能力を飛躍的に開花させていく。
やがて、リディアを追放した王国が、前例のない規模の魔物の大群に襲われる。神聖な祈りの魔法では全く歯が立たず、国が滅亡の危機に瀕した時、彼らが頼れるのは追放したはずの「異端の魔女」ただ一人だった。
公爵閣下のご息女は、華麗に変身する
下菊みこと
ファンタジー
公爵家に突然引き取られた少女が幸せになるだけ。ただのほのぼの。
ニノンは孤児院の前に捨てられていた孤児。服にニノンと刺繍が施されていたので、ニノンと呼ばれ育てられる。そんな彼女の前に突然父が現れて…。
小説家になろう様でも投稿しています。
醜悪令息レオンの婚約
オータム
ファンタジー
醜悪な外見ゆえに誰からも恐れられ、避けられてきたレオン。
ある日、彼は自分が前世で遊んでいたシミュレーションRPGの世界に転生しており、
しかも“破滅が確定している悪役令嬢の弟”として生きていることに気付く。
このままでは、姉が理不尽な運命に呑まれてしまう。
怪しまれ、言葉を信じてもらえなくとも、レオンはただ一人、未来を変えるために立ち上がる――。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる