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第15話 声をかける人
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この日のマッチ棒クイズ(あえて、この場ではマッチ棒ゲームと命名)も大盛りあがりだった。
今回のクイズはマッチ棒で簡単な式を作り(ただし、誤り)、指定した本数を動かして正しい式に直すというものだった。
勿論、このクイズも定番中の定番だったが当然この世界の人たちには解ける者は一人もいなかった。
そこで私がマッチ棒をチョイチョイ動かして、正しい式に直すと途端に拍手喝采。
そしてマッチは1時間もしない内に全て完売となったのだった――
****
20時――
「すごかったよ、アンナ。今夜もあっという間にマッチが完売したね」
隣に座るハンスが興奮気味に話しかけてくる。
「ええ、そうですね~昨晩よりも繁盛しましたよ」
すると、私達の前にグラスに入ったオレンジジュースが置かれた。
「お疲れ様、アンナさん」
顔を上げると、笑顔で私を見下ろす店のオーナー。
「これは店の売上に貢献してくれたお礼だよ」
「ありがとうございます」
「え? 僕もいいんですか?」
お礼を述べると、ハンスは驚きの顔でオーナーに尋ねる。
「何しろアンナちゃんの特別な人なのだろう?」
すっかりオーナーは砕けた口調になっている。
そして何故か顔を赤らめるハンス。きっと彼はこういう話に慣れていないのかもしれない。何しろお坊っちゃまなのだから。
「オーナー、妙な言い方をしないで下さい。彼が困っているじゃないですか?」
「あ、そうか……それは悪かった。ところで明日もマッチを売ってくれるのかい?」
早速商売の話になるオーナー。
「そうですね……でも明日で最後になると思います」
「え? 何故だい?」
「本当なの? アンナ」
オーナーとハンスが尋ねてくる。
「マッチの在庫があまり無いからです。多分明日の販売で終わりでしょう」
「そうなのか……それじゃ、売り終わったらどうするんだい?」
「え?」
オーナーの質問に思わず固まる。
そうだ……私はもうこの世界で生きていかなければならないのだ。マッチを売り切ってしまえば仕事が無くなる。
マッチを仕入れればいいのだろうが、ハンスの話から推測するに仕入れるのも難しいかも知れない。
……一応、今夜あの父親に尋ねてみよう。
「もし、働き口が無いならこの店で仕事してみるかい? アンナちゃんは美人だからお客も増えそうだ」
「え? でも私、未成年ですよ?」
アンナの年齢は16歳、果たしてこの様な飲み屋さんで働いても良いのだろうか?
「あぁ、そんなことなら気にしなくていい。化粧していれば、年齢位ごまかせるさ」
……中々悪いオーナーだ。
その時。
「駄目だよアンナ! この店で働くなんて!」
今まで口を閉ざしていたハンスが突然大きな声を出した。
「「え? どうして」」
私とオーナーが同時に尋ねる。
「だ、だって……の、飲み屋さんのお客なんて……だ、男性客ばかりだし……危ないよ! 危険だってば!」
必死でハンスが反対する。
けれど、何故今更そんなことを言うのだろう? 昨夜から散々この店で大勢の男性客を前にマッチの店頭販売? を行ったのに。
「ははぁ~ん……なるほど、やはりそういうことかい」
オーナーがハンスをじっと見る。
「アンナちゃんに悪い虫がつかないか、心配しているんだろう?」
「え? そうだったんですか?」
するとハンスが顔を赤らめて頷く。
「そ、そう……だけど?」
何故か不明だが、ハンスは私に懐いたようだ。
「大丈夫ですって。私はここで働くつもりはないですから」
「本当? 絶対に働かない?」
ハンスがじっと見つめる。
「ええ。本当です」
「何だ、そうなのか~残念だな。アンナちゃんなら看板娘になれるのに」
残念そうにするオーナー。
「申し訳ありませんが、私は未成年なので法律を守りたいんです。その後の話はマッチを売りきった後で考えます」
その時――
「すみません。少しお話いいですか?」
背後から声をかけられ、振り向くと見知らぬ男性が立っていた――
今回のクイズはマッチ棒で簡単な式を作り(ただし、誤り)、指定した本数を動かして正しい式に直すというものだった。
勿論、このクイズも定番中の定番だったが当然この世界の人たちには解ける者は一人もいなかった。
そこで私がマッチ棒をチョイチョイ動かして、正しい式に直すと途端に拍手喝采。
そしてマッチは1時間もしない内に全て完売となったのだった――
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20時――
「すごかったよ、アンナ。今夜もあっという間にマッチが完売したね」
隣に座るハンスが興奮気味に話しかけてくる。
「ええ、そうですね~昨晩よりも繁盛しましたよ」
すると、私達の前にグラスに入ったオレンジジュースが置かれた。
「お疲れ様、アンナさん」
顔を上げると、笑顔で私を見下ろす店のオーナー。
「これは店の売上に貢献してくれたお礼だよ」
「ありがとうございます」
「え? 僕もいいんですか?」
お礼を述べると、ハンスは驚きの顔でオーナーに尋ねる。
「何しろアンナちゃんの特別な人なのだろう?」
すっかりオーナーは砕けた口調になっている。
そして何故か顔を赤らめるハンス。きっと彼はこういう話に慣れていないのかもしれない。何しろお坊っちゃまなのだから。
「オーナー、妙な言い方をしないで下さい。彼が困っているじゃないですか?」
「あ、そうか……それは悪かった。ところで明日もマッチを売ってくれるのかい?」
早速商売の話になるオーナー。
「そうですね……でも明日で最後になると思います」
「え? 何故だい?」
「本当なの? アンナ」
オーナーとハンスが尋ねてくる。
「マッチの在庫があまり無いからです。多分明日の販売で終わりでしょう」
「そうなのか……それじゃ、売り終わったらどうするんだい?」
「え?」
オーナーの質問に思わず固まる。
そうだ……私はもうこの世界で生きていかなければならないのだ。マッチを売り切ってしまえば仕事が無くなる。
マッチを仕入れればいいのだろうが、ハンスの話から推測するに仕入れるのも難しいかも知れない。
……一応、今夜あの父親に尋ねてみよう。
「もし、働き口が無いならこの店で仕事してみるかい? アンナちゃんは美人だからお客も増えそうだ」
「え? でも私、未成年ですよ?」
アンナの年齢は16歳、果たしてこの様な飲み屋さんで働いても良いのだろうか?
「あぁ、そんなことなら気にしなくていい。化粧していれば、年齢位ごまかせるさ」
……中々悪いオーナーだ。
その時。
「駄目だよアンナ! この店で働くなんて!」
今まで口を閉ざしていたハンスが突然大きな声を出した。
「「え? どうして」」
私とオーナーが同時に尋ねる。
「だ、だって……の、飲み屋さんのお客なんて……だ、男性客ばかりだし……危ないよ! 危険だってば!」
必死でハンスが反対する。
けれど、何故今更そんなことを言うのだろう? 昨夜から散々この店で大勢の男性客を前にマッチの店頭販売? を行ったのに。
「ははぁ~ん……なるほど、やはりそういうことかい」
オーナーがハンスをじっと見る。
「アンナちゃんに悪い虫がつかないか、心配しているんだろう?」
「え? そうだったんですか?」
するとハンスが顔を赤らめて頷く。
「そ、そう……だけど?」
何故か不明だが、ハンスは私に懐いたようだ。
「大丈夫ですって。私はここで働くつもりはないですから」
「本当? 絶対に働かない?」
ハンスがじっと見つめる。
「ええ。本当です」
「何だ、そうなのか~残念だな。アンナちゃんなら看板娘になれるのに」
残念そうにするオーナー。
「申し訳ありませんが、私は未成年なので法律を守りたいんです。その後の話はマッチを売りきった後で考えます」
その時――
「すみません。少しお話いいですか?」
背後から声をかけられ、振り向くと見知らぬ男性が立っていた――
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