元バリキャリ、マッチ売りの少女に転生する〜マッチは売るものではなく、買わせるものです

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
15 / 20

第15話 声をかける人

しおりを挟む
 この日のマッチ棒クイズ(あえて、この場ではマッチ棒ゲームと命名)も大盛りあがりだった。
今回のクイズはマッチ棒で簡単な式を作り(ただし、誤り)、指定した本数を動かして正しい式に直すというものだった。

勿論、このクイズも定番中の定番だったが当然この世界の人たちには解ける者は一人もいなかった。
そこで私がマッチ棒をチョイチョイ動かして、正しい式に直すと途端に拍手喝采。

そしてマッチは1時間もしない内に全て完売となったのだった――


****

20時――

「すごかったよ、アンナ。今夜もあっという間にマッチが完売したね」

隣に座るハンスが興奮気味に話しかけてくる。

「ええ、そうですね~昨晩よりも繁盛しましたよ」

すると、私達の前にグラスに入ったオレンジジュースが置かれた。

「お疲れ様、アンナさん」

顔を上げると、笑顔で私を見下ろす店のオーナー。

「これは店の売上に貢献してくれたお礼だよ」

「ありがとうございます」

「え? 僕もいいんですか?」

お礼を述べると、ハンスは驚きの顔でオーナーに尋ねる。

「何しろアンナちゃんの特別な人なのだろう?」

すっかりオーナーは砕けた口調になっている。
そして何故か顔を赤らめるハンス。きっと彼はこういう話に慣れていないのかもしれない。何しろお坊っちゃまなのだから。

「オーナー、妙な言い方をしないで下さい。彼が困っているじゃないですか?」

「あ、そうか……それは悪かった。ところで明日もマッチを売ってくれるのかい?」

早速商売の話になるオーナー。

「そうですね……でも明日で最後になると思います」

「え? 何故だい?」

「本当なの? アンナ」

オーナーとハンスが尋ねてくる。

「マッチの在庫があまり無いからです。多分明日の販売で終わりでしょう」

「そうなのか……それじゃ、売り終わったらどうするんだい?」

「え?」

オーナーの質問に思わず固まる。
そうだ……私はもうこの世界で生きていかなければならないのだ。マッチを売り切ってしまえば仕事が無くなる。
マッチを仕入れればいいのだろうが、ハンスの話から推測するに仕入れるのも難しいかも知れない。
……一応、今夜あの父親に尋ねてみよう。

「もし、働き口が無いならこの店で仕事してみるかい? アンナちゃんは美人だからお客も増えそうだ」

「え? でも私、未成年ですよ?」

アンナの年齢は16歳、果たしてこの様な飲み屋さんで働いても良いのだろうか?

「あぁ、そんなことなら気にしなくていい。化粧していれば、年齢位ごまかせるさ」

……中々悪いオーナーだ。

その時。

「駄目だよアンナ! この店で働くなんて!」

今まで口を閉ざしていたハンスが突然大きな声を出した。

「「え? どうして」」

私とオーナーが同時に尋ねる。

「だ、だって……の、飲み屋さんのお客なんて……だ、男性客ばかりだし……危ないよ! 危険だってば!」

必死でハンスが反対する。
けれど、何故今更そんなことを言うのだろう? 昨夜から散々この店で大勢の男性客を前にマッチの店頭販売? を行ったのに。

「ははぁ~ん……なるほど、やはりそういうことかい」

オーナーがハンスをじっと見る。

「アンナちゃんに悪い虫がつかないか、心配しているんだろう?」

「え? そうだったんですか?」

するとハンスが顔を赤らめて頷く。

「そ、そう……だけど?」

何故か不明だが、ハンスは私に懐いたようだ。

「大丈夫ですって。私はここで働くつもりはないですから」

「本当? 絶対に働かない?」

ハンスがじっと見つめる。

「ええ。本当です」

「何だ、そうなのか~残念だな。アンナちゃんなら看板娘になれるのに」

残念そうにするオーナー。

「申し訳ありませんが、私は未成年なので法律を守りたいんです。その後の話はマッチを売りきった後で考えます」


その時――
 
「すみません。少しお話いいですか?」

背後から声をかけられ、振り向くと見知らぬ男性が立っていた――

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

「ときめかない」ものなど捨てておしまいなさい

megane-san
ファンタジー
私、クリスティーナは、前世で国税調査官として残業漬けの日々を送っていましたが、どうやら過労でぶっ倒れそのまま今の世界に転生してきたようです。 転生先のグリモード伯爵家は表向きは普通の商会を営んでおりますが裏では何やら諜報や暗部の仕事をしているらしく…。そんな表と裏の家業を手伝いながら、前世で汚部屋生活をしていた私は、今世で断捨離に挑戦することにしたのですが、なんと断捨離中に光魔法が使えることが発覚! 魔力があることを国にバレないようにしながら、魔術師の最高峰である特級魔術師を目指します!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

醜悪令息レオンの婚約

オータム
ファンタジー
醜悪な外見ゆえに誰からも恐れられ、避けられてきたレオン。 ある日、彼は自分が前世で遊んでいたシミュレーションRPGの世界に転生しており、 しかも“破滅が確定している悪役令嬢の弟”として生きていることに気付く。 このままでは、姉が理不尽な運命に呑まれてしまう。 怪しまれ、言葉を信じてもらえなくとも、レオンはただ一人、未来を変えるために立ち上がる――。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。

イジメられっ子は悪役令嬢( ; ; )イジメっ子はヒロイン∑(゚Д゚)じゃあ仕方がないっ!性格が悪くても(⌒▽⌒)

音無砂月
ファンタジー
公爵令嬢として生まれたレイラ・カーティスには前世の記憶がある。 それは自分がとある人物を中心にイジメられていた暗黒時代。 加えて生まれ変わった世界は従妹が好きだった乙女ゲームと同じ世界。 しかも自分は悪役令嬢で前世で私をイジメていた女はヒロインとして生まれ変わっていた。 そりゃないよ、神様。・°°・(>_<)・°°・。 *内容の中に顔文字や絵文字が入っているので苦手な方はご遠慮ください。 尚、その件に関する苦情は一切受け付けませんので予めご了承ください。

処理中です...