16 / 20
第16話 営業トーク
しおりを挟む
「えっと……どちらさまですか?」
声をかけてきたのはスーツ姿の品の良い青年だった。
「はい、実は私は出版社に努めている、こういう者です」
青年は名刺を差し出してきたので、受けとった。
「……ドリーム出版……編集者、ジェイソン・ヘイリー……」
ジェイソンという言葉に有名なホラー映画を連想し、思わず顔がしかめっ面になってしまう。そんな私に気付く様子もなく、ジェイソン氏は語る。
「この店は私の行きつけの店でして、昨夜もあなたのマッチ棒ゲームを拝見させていただいたのです。いや~本当にお見事でした。私もそうですが、全員があなたのだしたゲームが出来なかったのですから」
「そうですか、ありがとうございます」
とりあえず褒めてもらえているようだから、お礼の言葉を述べる。
しかし謎だ。
一体この人物は何の目的で声をかけてきたのだろう。名前のせいだろうか……何だか怪しい人間にしか思えない。
「アンナ、この人……怪しく見えないかい?」
ハンスも私と同じことを考えたのか、耳打ちしてくる。
「そんな、私は決して怪しい人物ではありませんから」
青年は慌てた様子で否定する。どうやら耳打ちした内容がバッチリ聞かれていたようだ。
「それでは、何故声をかけてきたんです?」
オーナーが私の代わりに質問する。おおっ! 何だか保護者みたいだ!
「ええ。マッチ棒を見事な戦略で売られていたので、感心して声をかけさせていただいたのです。それで、聞くところによると……そろそろマッチ棒の在庫が無くなりそうなのですよね?」
「ええ。そうですよ」
一体何処まで私達の話を聞いていたのだろう。
「そこで提案です。私と一緒にマッチを売ってみませんか?」
「「「は?」」」
青年の突拍子もない言葉に私達の声がハモる。
「一緒にって、どういうふうにですか?」
私の代わりにハンスが尋ねる。
「はい、マッチを手に入れるルートなら我が出版社なら確保できます。何しろ優秀な記者が大勢おりますから。彼らの情報収集能力は非常に高いですから、ご安心下さい」
「ですがマッチを確保できたからといって、その後はどうするのですか?」
バリキャリの私も、まだ彼の意図が良くわからない。
「ちなみに……まだ他にもマッチ棒ゲームのネタをお持ちですか?」
「ええ。あります」
するとジェイソン氏は益々笑顔になる。
「ああ、やはりそうでしたか! 素晴らしい! どうです? 我々と一緒に本を作って売り出しませんか? マッチをセットにして、あなたの本を出版するのですよ!」
「本を出版……?」
つまり、彼はマッチ棒を付録につけてマッチ棒クイズの本を出版しようとしているのか。
紙の本とマッチをセットにして売る……万一、燃えたら大変なことになりそうな気もするが……。
こんな美味しい話、乗らないほうがどうかしているでしょう!
「はい! 是非お願いします!」
私は大きな声で返事をした――
声をかけてきたのはスーツ姿の品の良い青年だった。
「はい、実は私は出版社に努めている、こういう者です」
青年は名刺を差し出してきたので、受けとった。
「……ドリーム出版……編集者、ジェイソン・ヘイリー……」
ジェイソンという言葉に有名なホラー映画を連想し、思わず顔がしかめっ面になってしまう。そんな私に気付く様子もなく、ジェイソン氏は語る。
「この店は私の行きつけの店でして、昨夜もあなたのマッチ棒ゲームを拝見させていただいたのです。いや~本当にお見事でした。私もそうですが、全員があなたのだしたゲームが出来なかったのですから」
「そうですか、ありがとうございます」
とりあえず褒めてもらえているようだから、お礼の言葉を述べる。
しかし謎だ。
一体この人物は何の目的で声をかけてきたのだろう。名前のせいだろうか……何だか怪しい人間にしか思えない。
「アンナ、この人……怪しく見えないかい?」
ハンスも私と同じことを考えたのか、耳打ちしてくる。
「そんな、私は決して怪しい人物ではありませんから」
青年は慌てた様子で否定する。どうやら耳打ちした内容がバッチリ聞かれていたようだ。
「それでは、何故声をかけてきたんです?」
オーナーが私の代わりに質問する。おおっ! 何だか保護者みたいだ!
「ええ。マッチ棒を見事な戦略で売られていたので、感心して声をかけさせていただいたのです。それで、聞くところによると……そろそろマッチ棒の在庫が無くなりそうなのですよね?」
「ええ。そうですよ」
一体何処まで私達の話を聞いていたのだろう。
「そこで提案です。私と一緒にマッチを売ってみませんか?」
「「「は?」」」
青年の突拍子もない言葉に私達の声がハモる。
「一緒にって、どういうふうにですか?」
私の代わりにハンスが尋ねる。
「はい、マッチを手に入れるルートなら我が出版社なら確保できます。何しろ優秀な記者が大勢おりますから。彼らの情報収集能力は非常に高いですから、ご安心下さい」
「ですがマッチを確保できたからといって、その後はどうするのですか?」
バリキャリの私も、まだ彼の意図が良くわからない。
「ちなみに……まだ他にもマッチ棒ゲームのネタをお持ちですか?」
「ええ。あります」
するとジェイソン氏は益々笑顔になる。
「ああ、やはりそうでしたか! 素晴らしい! どうです? 我々と一緒に本を作って売り出しませんか? マッチをセットにして、あなたの本を出版するのですよ!」
「本を出版……?」
つまり、彼はマッチ棒を付録につけてマッチ棒クイズの本を出版しようとしているのか。
紙の本とマッチをセットにして売る……万一、燃えたら大変なことになりそうな気もするが……。
こんな美味しい話、乗らないほうがどうかしているでしょう!
「はい! 是非お願いします!」
私は大きな声で返事をした――
85
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お妃さま誕生物語
すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。
小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
予言姫は最後に微笑む
あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。
二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
醜悪令息レオンの婚約
オータム
ファンタジー
醜悪な外見ゆえに誰からも恐れられ、避けられてきたレオン。
ある日、彼は自分が前世で遊んでいたシミュレーションRPGの世界に転生しており、
しかも“破滅が確定している悪役令嬢の弟”として生きていることに気付く。
このままでは、姉が理不尽な運命に呑まれてしまう。
怪しまれ、言葉を信じてもらえなくとも、レオンはただ一人、未来を変えるために立ち上がる――。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。
【完結】 学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです
はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にて掲載しています。
とある国のお話。
※
不定期更新。
本文は三人称文体です。
同作者の他作品との関連性はありません。
推敲せずに投稿しているので、おかしな箇所が多々あるかもしれません。
比較的短めに完結させる予定です。
※
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる