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第3話 バックレろ

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「酷い…どうして私ばかり責めるんですか…?そ、それは確かに私はビクトリアさんのように異性の気を引けるような魅力的な女性では無い事位十分に理解していますけど…」

言いながらますます惨めな気持ちになり、再び眼尻に涙が浮かぶ。

「あーっ!ったく…本当に鬱陶しい女だ…だから婚約者に逃げられたんだろう?自業自得だろうが?」

「さっきから…一体何なんですか?!私ばかり責めるような事ばかり言って…だったらこちらも言わせて頂きますけど、そもそも貴方がビクトリアさんに相手にされなかったのはその乱暴でがさつな性格が原因なのではありませんか?少なくともアルトは貴方のような人ではありません。とても優しいお方なのですよっ?!」

流石にもう我慢出来なくて、相手は年上の人だったけども食って掛かるような言い方をしてしまった。

「どこが優しいんだよ?!優しければなぁ…何も婚約式の日に婚約破棄を発表するはずないだろう?!俺だったら事前に婚約破棄を告げて、婚約式を中止するけどな。どう考えてもお前に対する嫌がらせだと思わないのかよ!」

「そ、それって…。アルトは私の事をそこまで嫌っているからわざと婚約式の日を狙って婚約破棄を突きつけるって事なんですか…?」

何とも情けない声が出てしまう。

「ああ、俺はそう思うね」

腕組みしながら彼は頷く。

「だ、だったら…うぐっ、そ、そこまで…ぐずっ…わ、私を嫌ってるなら…ううぅ…婚約破棄、受け入れます…」

涙交じりに言うと彼が一喝してきた。

「はぁっ?!ふっざけんなよっ!冗談じゃないっ!お前、本当にそれでいいのかよ!俺は絶対に認めないからなっ!お前が婚約破棄したらビクトリアはあいつと婚約してしまうかもしれないじゃないかよ!」

「だ、だったら…どうすればいいんですか…?」

「いいか?お前は婚約者に捨てられたくない。そして俺はビクトリアをあいつから奪いたい。つまり俺達の利害は一致してるって事だ。だからここはひとつ協力関係を結ぶんだよ」

「きょ、協力…関係…?」

一体どういう事だろう?

「ああ、そうだ。お前は全力であの男からの婚約破棄を回避する。そして俺は何としてもビクトリアの心を俺の物にする。そうすれば全て丸く収まるだろう?」

「そんなに…うまくいくのですか…?大体後1時間後に始まる婚約式で…わ、私は婚約破棄を告げられるんですよ…?」

無理だ。時間が無さすぎる。

「大丈夫だ、俺にいい考えがある。」

「いい考え…?」

「ああ、婚約破棄発表を中断させる良い考えがな」

「どんな考えですか?」

私の涙はいつの間にか止っていた。

「バックレろ」

「…は?」

「仮病を使って、このパーティー会場から逃げるんだ。なーに、具合の悪い人間を前にいくら人でなしでも婚約破棄発表などしないだろう。ほら、あいつが会場に入る前にさっさと逃げろ。後の事は俺がなんとかしてやるから」

彼…トビーはとんでもないことを言って来た―。
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