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連載
ケリー ①
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「2人きりにして大丈夫なのだろうか…」
応接室でマルセル様がコーヒーを飲みながら2階を気にしている。
「アゼリアは病人です。カイザード王太子様は良識ある方でしょうから…多分大丈夫だとは思いますが」
そう言いながら、ヨハン先生も天井の方をチラチラと見ている。私の中ではアゼリア様とカイザード王太子様はお互いに両思いだと信じている。アゼリア様はずっと勉強やお稽古ごとばかりで恋愛小説も療養生活に入ってから読み始めたような方だから、男の人の気持ちや自分の恋心にすら気付いていないように見えるけれど。
だから私は言った。
「ようやくお互いの念願が叶って再会出来たのですから、お2人だけにさせておいてあげませんか?」
するとマルセル様が驚いたように私を見た。
「え?!念願叶って再会出来た?!一体どういう事だ?」
まさかマルセル様はあの場に流れた2人の雰囲気に気付かれなかったのだろうか?
「…」
ヨハン先生も驚いたようにマルセル様を見ている。ひょっとするとマルセル様も恋愛には疎いのだろうか
「マルセル様、ひょっとして…」
私が口を開きかけた時…。
「あ、カイザード王太子様」
扉の方を向いていたヨハン先生が口を開いた。
「「え?」」
私とマルセル様は同時に声を上げ、扉の方を見るとそこには青ざめた顔でどこか落胆した様子のカイザード王太子様が立っていた。
「カイザード王太子様、一体どうされたのですか?顔色が悪いですよ?」
ヨハン先生が慌てて立ち上がると声を掛けた。
「アゼリアとは話が出来たのですか?」
マルセル様が尋ねる。
「アゼリアとは話は…出来たよ。だけど少し…疲れているようなので休ませて上げることにしたんだ…」
ここへ来た時は元気があったカイザード王太子様は今にも倒れてしまうのではないかと心配になるくらい、青ざめている。…ひょっとするとアゼリア様の余命を聞かされてショックを受けてしまったのかもしれない。
「カイザード王太子様、少し休んでいきませんか?お茶をお淹れします」
私が声を掛けると首を振った。
「いや…今日のところはもう帰るよ。アゼリアに会わせてくれてありがとう」
カイザード王太子様は笑ったけれど、無理をして笑っているのは私の目から見ても明らかだった。
「送りましょう」
マルセル様は立ち上がったけれど、カイザード王太子様は言った。
「大丈夫、馬車なら診療所の前に停めてあるし…1人で帰れるよ」
「それならせめて外まで送らせて下さい」
ヨハン先生の言葉に私もマルセル様も立ち上がった―。
****
「どうぞお気をつけてお帰り下さい」
ヨハン先生が馬車の前に立っているカイザード王太子様に声を掛ける。
「はい…。ところでアゼリアはまだこの診療所にいますか?」
「そうですね…恐らく後数日はいると思います。まだあまり体調が良くはないので。マルセル様のお父様の診察も入っていますし」
ヨハン先生はチラリとマルセル様を見ると言った。
「そうですか…ではまたアゼリアのお見舞いに来ても良いですか?」
カイザード王太子様は遠慮がちに尋ねてきた。
「ええ、アゼリアに確認してみますね」
「…」
マルセル様はそんなお2人の会話を神妙な面持ちで聞いている。
カイザード王太子様は私達が見守る中、馬車に乗り込んだ。
「アゼリアに宜しく伝えて下さい」
最後にその言葉を残し、扉は閉じられて走り去って行った。
「一体…何があったのだろう?」
事情を何も分かっていないマルセル様が走り去る馬車を見守りながら首を傾げた。
「「…」」
何となく事情を察していた私とヨハン先生は黙ってお互いに目をチラリと合わせるのだった―。
****
「私、アゼリア様の様子を見てきます」
診療所に戻ると私は2人に言った。
「ああ、そうだね。頼むよ」
ヨハン先生の言葉に私は頷くと、2階へ向かった。
ギシギシと鳴る木の階段を踏みしめながら2階に登り、私はアゼリア様の部屋の前で足を止めた。
「アゼリアさ…」
その時…。
「ウ…ウウ…ご、ごめんなさい…カイ…」
部屋の扉は少しだけ開かれていて、そこからアゼリア様のすすり泣く声が聞こえてきた―。
応接室でマルセル様がコーヒーを飲みながら2階を気にしている。
「アゼリアは病人です。カイザード王太子様は良識ある方でしょうから…多分大丈夫だとは思いますが」
そう言いながら、ヨハン先生も天井の方をチラチラと見ている。私の中ではアゼリア様とカイザード王太子様はお互いに両思いだと信じている。アゼリア様はずっと勉強やお稽古ごとばかりで恋愛小説も療養生活に入ってから読み始めたような方だから、男の人の気持ちや自分の恋心にすら気付いていないように見えるけれど。
だから私は言った。
「ようやくお互いの念願が叶って再会出来たのですから、お2人だけにさせておいてあげませんか?」
するとマルセル様が驚いたように私を見た。
「え?!念願叶って再会出来た?!一体どういう事だ?」
まさかマルセル様はあの場に流れた2人の雰囲気に気付かれなかったのだろうか?
「…」
ヨハン先生も驚いたようにマルセル様を見ている。ひょっとするとマルセル様も恋愛には疎いのだろうか
「マルセル様、ひょっとして…」
私が口を開きかけた時…。
「あ、カイザード王太子様」
扉の方を向いていたヨハン先生が口を開いた。
「「え?」」
私とマルセル様は同時に声を上げ、扉の方を見るとそこには青ざめた顔でどこか落胆した様子のカイザード王太子様が立っていた。
「カイザード王太子様、一体どうされたのですか?顔色が悪いですよ?」
ヨハン先生が慌てて立ち上がると声を掛けた。
「アゼリアとは話が出来たのですか?」
マルセル様が尋ねる。
「アゼリアとは話は…出来たよ。だけど少し…疲れているようなので休ませて上げることにしたんだ…」
ここへ来た時は元気があったカイザード王太子様は今にも倒れてしまうのではないかと心配になるくらい、青ざめている。…ひょっとするとアゼリア様の余命を聞かされてショックを受けてしまったのかもしれない。
「カイザード王太子様、少し休んでいきませんか?お茶をお淹れします」
私が声を掛けると首を振った。
「いや…今日のところはもう帰るよ。アゼリアに会わせてくれてありがとう」
カイザード王太子様は笑ったけれど、無理をして笑っているのは私の目から見ても明らかだった。
「送りましょう」
マルセル様は立ち上がったけれど、カイザード王太子様は言った。
「大丈夫、馬車なら診療所の前に停めてあるし…1人で帰れるよ」
「それならせめて外まで送らせて下さい」
ヨハン先生の言葉に私もマルセル様も立ち上がった―。
****
「どうぞお気をつけてお帰り下さい」
ヨハン先生が馬車の前に立っているカイザード王太子様に声を掛ける。
「はい…。ところでアゼリアはまだこの診療所にいますか?」
「そうですね…恐らく後数日はいると思います。まだあまり体調が良くはないので。マルセル様のお父様の診察も入っていますし」
ヨハン先生はチラリとマルセル様を見ると言った。
「そうですか…ではまたアゼリアのお見舞いに来ても良いですか?」
カイザード王太子様は遠慮がちに尋ねてきた。
「ええ、アゼリアに確認してみますね」
「…」
マルセル様はそんなお2人の会話を神妙な面持ちで聞いている。
カイザード王太子様は私達が見守る中、馬車に乗り込んだ。
「アゼリアに宜しく伝えて下さい」
最後にその言葉を残し、扉は閉じられて走り去って行った。
「一体…何があったのだろう?」
事情を何も分かっていないマルセル様が走り去る馬車を見守りながら首を傾げた。
「「…」」
何となく事情を察していた私とヨハン先生は黙ってお互いに目をチラリと合わせるのだった―。
****
「私、アゼリア様の様子を見てきます」
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「ああ、そうだね。頼むよ」
ヨハン先生の言葉に私は頷くと、2階へ向かった。
ギシギシと鳴る木の階段を踏みしめながら2階に登り、私はアゼリア様の部屋の前で足を止めた。
「アゼリアさ…」
その時…。
「ウ…ウウ…ご、ごめんなさい…カイ…」
部屋の扉は少しだけ開かれていて、そこからアゼリア様のすすり泣く声が聞こえてきた―。
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