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第6章 3 悪女ジェシカ、令嬢達に嫌われる
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1
憂鬱な気分のまま城の周りを歩いていると、昨日助けを求めた青年が馬を連れて荷台から荷物を降ろしていた。
そうだ、ついでに昨日のお礼を言っておこう。
「こんにちは。」
背後から声をかけると、青年は振り返り、私を見ると驚いた。
「ジェ、ジェシカお嬢様・・・!こ、今度はどのようなご用件でしょうか・・?」
妙にビクビクした態度を取っているなあ・・・?やっぱりそれほどジェシカはここでは恐れられていると言う事なのか・・・。まあ、仕方ないよね。今からでも少しずつジェシカの評価を上げていけるように努力していかないと。
「昨日は連れの男性を助けて頂いて有難うございました。」
ペコリと頭を下げると、青年は意外そうな顔つきをした。
「あの・・・今、俺に・・言った言葉・・・ですよね?」
「はい、そうですけど?」
「し、信じられません・・・。」
青年は青ざめた顔で言う。
やれやれ・・こうなったら今迄の事を釈明しなければならない様だ。
「あの、私実は記憶喪失になってしまって、ここに住んでいた時の記憶が全く残っていないんです。以前に何か失礼な事をしていたのでしたら謝罪させて下さい。」
「い、いえ!ジェシカお嬢様に謝罪をして貰うなんてそんな恐れ多い・・・っ!」
青年は慌てたように両手を振って言った。
「ところで、今こちらで何をしていたのですか?」
「あ・・俺はこの城の庭の管理をしているんですよ。それで庭造りの肥料とかを運んでいたんですよ。」
「そうなんですか、ご苦労様です。それで城の近くに住んでいたんですね。」
「ええ・・・まあそんな所です・・。」
どうも青年の歯切れが悪い。何故だろう?すると青年が言った。
「あの、ジェシカお嬢様・・・敬語で話されると、どうも勝手が違うと言うか、その・・落ち着かないので普通に話して頂けませんか?」
ああ、そういう事ね。
「うん、普通に話せばいいのね?ごめんなさい。忙しい所、呼び止めてしまって。
それじゃお仕事頑張ってね。」
私はヒラヒラと手を振って。青年と別れた。
はあ・・・それにしてもダンスパーティーか・・・出たくないなあ。どうすれば出ないで済むのだろう?誰に聞けば詳しく教えて貰えるのかな?一番いいのはマリウスに聞く事なのだろうけど、先程のメイドの女の子に冷たい態度を取ったマリウスを見ているので、口も聞きたくは無かった。
そこへ兄のアダムが鞄を持って外へ出てくるのが見えた。あ、もしかすると今から出勤するのだろうか?
「お兄様。」
私は兄に声をかけた。
「何だ、ジェシカじゃないか。珍しいな、お前が外に出ているなんて。一体どうしたのだ?」
アダムは不思議そうな顔をして私を見た。
「今からお仕事に行かれるのですか?」
「ああ、そうだ。」
「どうやって町まで出ているのですか?」
アダムは溜息をつくと言った。
「ジェシカ・・・お前は本当に記憶喪失になってしまったのだな?以前のお前は私と会話すらしようとしなかったというのに・・・。」
え?そうだったの?どうしてだろう・・・。アダムはとても真面目そうだし、何よりイケメンなのに・・。
「そうだったのですか・・・何故だったのでしょうね。」
ポツリと言うとアダムは言った。
「以前のジェシカは良く言っていた。私みたいな生真面目で地味な男は本当につまらないと・・。」
何と!ジェシカは自分の兄に向ってそのような口を・・・何て礼儀知らずな女だったのだろう・・・。ああ、嫌だ嫌だ。よりにもよって私が一番嫌いなタイプの人間になってしまうなんて・・。
「それは・・・何て失礼な事を言っていたのでしょう・・。どうもすみませんでした。」
私は深々と頭を下げた。それを見てキョトンとする兄。次に笑い出した。
「ハハハ・・・。まさかジェシカから頭を下げて貰う日がやって来るとは思わなかったな。それじゃ、私はそろそろ仕事に行くから。」
兄はそう言うと、私に背を向けて歩き出した。うん?そう言えばアダムの仕事は町で法律関係の事務所に勤めているってミアに聞いていたっけ・・・。
私も一緒に町へ行ってみたいな・・・。
「あの、お兄様。町まではどうやって行くのですか?」
「うん?それは車で行っているが・・・。何だ、乗りたいのか?」
おおっ!流石は話が早いっ!
「はい、是非!一緒に連れて行って下さいませんか?」
「う~ん・・・連れて行く分には構わないが・・・私の仕事は終わるのが18時を過ぎるが、帰りはどうするのだ?」
「うっ!そ、それは・・・。」
私が言い淀んでいると兄が言った。
「まあ、いい。車に乗ってから話をしよう。」
そして兄に連れられて車庫に行くと、そこにはレトロカーが5台も並んでいた。
おおっ!こ、これは・・・マニアが見たら泣いて喜ぶような車ばかりだ。
その中で兄は車体の長い屋根付きの車を選ぶと言った。
「よし、今日はジェシカもいるからこの車にしよう。」
そう言うとアダムはドアを開けると私に手を差し伸べた。
「さあ、おいで。ジェシカ。」
おお~っ!なんてジェントルマンなんだろう!私はすっかり感動してしまった。
オズオズとアダムの方に手を伸ばすと、アダムは私の手をしっかり握りしめ、車の助手席に乗り込ませてくれた。
「あ、私お父様とお母様に何も言わずに出て来てしまいました!」
するとアダムは言った。
「何だ、ジェシカはそんな事を気にしていたのか?以前のお前なら無断外泊なんて当然のようにしていたのに。」
アハハハと笑いながらアダムは言う。うう・・・知れば知る程、このジェシカという人間は救いようが無い。とんだあばずれ女だったようだ。
「それは・・・さぞお父様やお母様、お兄様にもご心配おかけしてしまいましたね。」
私は溜息をつきながら言うと、アダムは言った。
「まあ、そんなジェシカの居場所をいつでも突き止め、城に連れ帰って来ていたのがマリウスだったからね。それにしてもマリウスは不思議な男だよ・・・。お前がどんな場所にいようが、必ず見つけ出してきたのだから。本当に・・何故だろう?」
アダムが不思議そうに言うのを私は黙って聞いていた。マリウスは今のジェシカになる前からマーキングを付けていたのか・・・。
「あの、実はお兄様に相談があるんです。今お話ししてもよろしいですか?」
アダムは運転しながら前を向いて答えた。
「私に相談・・・・?これも初めての事だな?どんな内容だい?」
「実は・・・今度のパーティーなんですけど・・・私、出たくないんです。どうすれば出席しないでもすむでしょうか?」
「え・・ええ?!ジェシカ・・・それ本気で言ってるのか?!」
流石のアダムもこの相談には驚いたのか、私の方を向いた。
「そんなに以外・・・ですか?」
「ああ、何と言ってもジェシカ。お前はパーティーが大好きで、どんな遠くでも必ず参加していたのだぞ?ダンスを踊るのが大好きだったから・・・。でも・・まあ、お前の評判があまり良く無かったから・・・いつもお前の方から積極的に誘ってみても相手の男性からは1曲ずつしか踊ってくれなかったけれども・・。」
アダムは気を使いながら私に話してくれた。でもその話はある意味私にとってはラッキーな話であった。
「あの、つまり・・・私がダンスパーティーに行っても、踊りの相手が見つからないかもしれないって事ですか?」
私は嬉しい気持ちを押し殺してアダムに尋ねた。
「あ、ああ・・。お前には酷な話かもしれないけれど・・・。」
アダムの目には同情が浮かんでいたが、私にとってはこれ程嬉しい事は無い。つまり、私はダンスパーティーに行っても壁の花になるので、ダンスをする必要は無い。よし、それなら・・私はダンスでは無く、料理を堪能する事にしよう!
「ところで、ジェシカ。ダンスパーティーに付き添ってもらうパートナーはどうするんだ?」
「パートナー?それは絶対に必要なのですか?私・・・1人で参加しようと思っていたのですけど・・?」
それを聞いたアダムは突然急ブレーキを踏むと、慌てたように私を見た。
「ジェ、ジェシカッ!ほ、本気で言ってるのか?そんな事。」
「はい・・・。何かおかしいですか?」
「おかしいも何も・・・ジェシカ・・・1人で参加して恥をかいてもいいのかい?」
「でも、パートナーと参加した場合、必ず1回はその相手とダンスを踊らなければならないんですよね?」
「ま、まあ・・・そういう事にはなるが・・・。」
アダムは再び車を走らせると返事をした。
「だったら、私恥をかいたほうがいいんです。ダンスを踊るよりよほどましですから。」
私は外の景色を見ながら答えた。
そんな私をアダムは不思議そうに見るのだった—。
2
ジェシカの住む国の王都は、それは立派な都市だった。大きな建物が立ち並び、道路も綺麗な石畳で舗装されている。
馬車に乗っている人々はまばらで、路面電車や車が行き交いしている。
まるで私がいた世界のヨーロッパの国を彷彿させるような光景だった。
やっぱり、この世界は私が小説の中で描いていた通りの世界なんだ・・・。
小説の中の設定は、文明と魔法が入り交ざった世界観で描いていた。
今まさに、その世界が私の目の前で繰り広げられている・・・感動を覚えつつ、見る物全てに心を奪われていた。
すると突然アダムから声をかけられた。
「すまない、ジェシカ。私は今からこのビルの事務所で仕事があるんだ。ジェシカが暫くこの都市に残ると言うなら、よければお昼は2人で何処かで食事をしよう。このビルの3Fが私が働いている事務所なんだ。どうする?」
「でも・・・それではお兄様に御迷惑では?」
「そんな事はないさ。たった1人の妹なのに、迷惑に感じるはずはないだろう?それともマリウスを呼ぼうか?」
私はそこですかさず反応した。
「止めてくださいッ!マリウスだけは呼ばないで!」
あんな乙女心を平気で踏みにじるような男の顔など見たくも無い。
「どうしたんだ・・・?マリウスと何かあったのか?」
「・・・・。」
私が応えないでいると、アダムは言った。
「まあいい。2人の間に何があったのかは・・・聞かないでおくよ。それじゃお昼は2人で食事を取るって事にしておこうか?」
「はい、それで是非お願いします。」
「それじゃ12時になったら、このビルの3Fの事務所においで。待っているから。」
アダムは笑顔で言った。
「はい、お願いします。」
私が頭を下げた所で、アダムは尋ねて来た。
「ところでジェシカ。・・・お金は持って来ているのかい?」
言われて私は気が付いた。そうだ・・・何も持たないで出て来てしまったからお金を持って来ていないんだった。
「い、いえ・・・。お金を持たずに出て来てしまいました・・・。」
アダムはクスリと笑った。
「珍しい事もあるものだな。ジェシカがお金を持たずに都市へ来るなんて。」
そして小さな布袋に小金貨1枚を入れて手渡してきた。小金貨は・・確か日本円で5万円位・・。え?5万円?!
「お、お兄様・・・っ!こ、このお金・・!」
私が布袋を握りしめて言うと、逆にアダムから変な顔をされてしまった。
「え?足りなかったか?もう1枚渡そうか?」
「い、いえ!むしろその逆ですっ!こんな大金頂けませんっ!」
「ハハハ・・・本当にジェシカはまるで別人になったな。普段のお前なら、これっぽっちしか寄こさないの?!って言われる所なのに。これは少ないけれど私からのお小遣いだよ。何か欲しい物が合ったら、好きな物を買うといい。」
アダムは本当に優しい人なんだな・・・・。
「い、いえ。そんな事はありません。お兄様・・・本当に有難うございます。」
私は布袋をギュッと握りしめると言った。
「ああ。それじゃ12時になったら事務所においで。」
「はい。」
そしてアダムは車に乗って駐車場へ向かい、私はその後ろ姿に手を振って見送りをした。
「ふ~っ。さて、何処へ行ってみようかな?」
私は伸びをすると、辺りをキョロキョロみわたした。
この通りはオフィス街なのだろうか。仕立ての良いスーツを着た男性達や、上品なタイトなロングスカート姿の女性たちが数多く行き交っている。
路面電車の走るメインストリートには数多くの飲食店やら、雑貨店が軒を連ねていた。
「そうだ、本屋さんは無いかな?」
これだけ巨大な都市なら本屋だって沢山あるはずだ。久しぶりにアカシックレコードについても調べたいし・・・。
私は防寒着の襟を正すと、本屋を探して歩き出そうとした時に声をかけられた。
「あら、もしかすると貴女はジェシカ・リッジウェイ様ではありませんか?」
「え?」
その声に振り向くと、3人の女性たちが後ろに立っていた。全員私と同じ年頃のようだ。女性達はいずれも高級そうな足首まである防寒着を着こみ、これまた高級そうな帽子に、皮の手袋をはめていた。
「あら・・・やはりジェシカ様でしたのね。後ろ姿を見て、もしやと思ったのですが・・・それにしても・・。」
1人の意地の悪そうな金の巻き毛の女性が私をジロジロと見ながら言った。
「一体どうなさったのですか?ジェシカ様ともあろうお方が随分みすぼらしい身なりをしていらっしゃいますが・・・?しかも従者のマリウス様を連れていらっしゃいませんし・・・。」
「ええ、ほんと。別人かと思いましたわ。」
「セント・レイズ学院へ入られて、少々田舎臭くなられたのかしら?」
何やら悪意のこもった目で私を見ながら意地悪そうに口々に言う3人。
「え・・・?そうですか?この防寒着、軽くて動きやすくて中々いいですよ?」
今私が着ていた防寒着は、フードの付いた膝丈のダウンコートである。とても軽いからお気に入りの上着なのだが、どちらかというとデザインは庶民的で男女兼用にも見えるけれども。
「まあ!ジェシカ・リッジウェイ様ともあろうお方からそのような台詞が飛び出して来るなんて・・・!」
わざと大きな声を出す令嬢。
それにしても・・・・。
「あの~すみませんが、失礼ですが貴女方はどちら様でしょうか?宜しければお名前を教えて頂けませんか?」
「な・・・何ですって?!こ、この期に及んでまだそのような事を言われるのですか?!」
「お、落ち着いて下さい、キャロル様。」
「ほ・・本当にどこまでも私達を馬鹿にされるお方ですわね・・・!」
あ、何だか余計に怒り出してきちゃった。まずい事を言ってしまったのかもしれない・・・。さて、どうしようかな・・・。よし、ここは素直に謝って置こう。
「申し訳ございません。皆様方!」
私は頭を深々と下げると言った。
「「「え・・・・?」」」
3人の令嬢に困惑の色が浮かぶ。
「私・・・実は学院に入学直後、ちょっとした事故に遭いまして、それで過去の記憶を全て無くしてしまったのです。なので・・・貴女方のお名前がどうしても分からないものですから・・。もしよろしければお名前を教えて頂けないでしょうか?」
「あ・・貴女、ふざけていらっしゃるの?」
「でも・・確かに以前のジェシカ様とは雰囲気が違うような気がしますけど・・?」
「いえ、これは演技かもしれませんわよ?きっとまた何処かにマリウス様を隠して置いて、そして頃合いを見計らってマリウス様を呼び出すつもりかもしれませんわ。」
あ・・・駄目だ。この3人の令嬢達と話していても拉致があかない。いいや、こちらで適当に名前を付けてしまおう。
まずは金髪の縦ロール女性をA嬢、そばかす女性をB嬢、ガリガリに痩せた女性をC嬢としておこう。
「だ、大体ジェシカ様は過去に私達にどんな酷い事をしたのか覚えていらっしゃらないととぼけるおつもりですか?!」
金髪縦ロール女性の言葉を聞いて、私は以前マリウスが語った事を思い出した。まさか・・この令嬢達のドレスを過去にわざと破いたりとか・・・?
「あ、あの・・・どんな酷い事をしたのでしょう?教えて下さいっ!」
私が思わず金髪縦ロール女性の手を両手で握りしめて迫ると、ヒッと声を出されて驚かれてしまった。
「な・な・いきなり手を握って何をされるのですか?!」
A嬢は私の手を振りほどくと言った。
「あ、すみません。つい・・・。」
いけない、いけない。つい興奮してしまった。
「全く・・・今度はどんな手を使って嫌がらせをするおつもりなのでしょうね?!」
C嬢はツンとそっぽを向くと言った。
「あの、今までの私の犯してきた蛮行を伺いたいので、よろしければ近くのカフェでお茶でもしてお話をお聞かせ願いませんか?」
私が提案すると、3人の顔色が変わった。
「お・・・お茶ですって・・・・?」
「い、いや・・あの恐怖のお茶会が蘇る・・・」
「こ・こ・今度は何をお茶に混ぜるおつもりですの?!」
え?ちょっと待って。ジェシカ・・・一体この3人の女性に何をやらかしたのよ!
ああ、マリウスがいれば何か分かったかもしれないのに・・・。
「あ、あの・・・?」
私が一歩近づくと、3名の令嬢は後ずさり、B嬢が言った。
「と・・とにかく、ジェシカ様とは親しくするつもりはありませんからね!ま、参りましょう?!」
そう言って3名の令嬢は逃げるように去ってしまった。
結局ジェシカがあの令嬢達に何をしたのかは分からずじまいだったが・・・私はここの国での生活が先行き不安に感じるのだった—。
3
令嬢3人が去った後、私はブラブラ町を散策する事にした。
美味しそうなケーキ屋さんを覗いたり、雑貨屋さんに入ったり・・・。
そして一際大きな本屋さんを見つけた。
ここならアカシックレコードに関する本を見つけられるかな・・・?
私は中へ入ると、本を探し始めた。
・・・う~ん、無いなあ・・・。
やっぱり特殊な本だから、中々書店では取り扱いしていないのかな?
私はアカシックレコードの本探しは諦めて、何冊かロマンス小説を手に取り、パラパラと試し読みしてみた。うん、この小説なんか面白そう。
早速カウンターに行って2冊の本を購入すると、私はアダムが働いているビル迄戻ってきた。
何処かにカフェが無いかな・・・。辺りを探すと、カフェが目に止まった。よし、あの店に入ろうかな?
店に入ると、上品な音楽が流れていて中々雰囲気のある店内だった。
私は窓際の席に座ると、コーヒーを注文し、読書にふけった。どれくらい時間が経過しただろうか。私の向かい側に誰か座る気配を感じた・・・が、私は顔を上げる事も無く読書を続けていると、ゴホンと何故か咳払いが聞こえた。
「?」
顔を上げると、私のテーブルの向かい側に見知らぬ男性が1人座っている。そして何故かその男性は私の顔をじっと見つめていた。
もしかすると、このカフェは混んでいるのかな?
辺りをキョロキョロ見渡してみると、うん。確かにほとんどの席が埋まっている。
そうか、だから相席になったのか。なら気にせずに読書を続けよう。
そして私は再び本に目を落した。
「ゴホン」
するともう一度男性は咳ばらいをする。変な人だな・・・うん、知らんふりしておこう。
その時だ。
「おい、お前・・・ジェシカ・リッジウェイじゃないのか?」
突然男性が声をかけてきた。
「え?」
突然名前を呼ばれて私は驚いて顔を上げた。
灰色の髪に、黒い瞳の男性は何故か私を睨み付けるように見ている。ひょっとして・・、また以前のジェシカの関係者なのだろうか?
「うん・・・?何かお前、顔つきもそうだが、随分雰囲気が変わったな・・?着ている服も今までとは何だか違うし・・本当にジェシカ・リッジウェイなのか?」
男性はマジマジと私を見つめながら言った。
その一言で分かった。ああ、やっぱりね・・・。以前のジェシカの知り合いか・・。
「はい・・ジェシカ・リッジウェイですけど?」
「な・何だ?やっぱりそうだったんだな?俺を覚えているだろう?まあ、残念だったな。お前の婚約者候補から俺が外れて・・・。」
目の前の男性は何故かニヤニヤしながら言った。
ふ~ん・・・そうか、この男性は私の婚約者候補だったんだ・・・えええっ?!婚約者候補?!
私は驚き、改めて目の前の男性をまじまじと見つめた。それを何を勘違いしたのか男性は言った。
「何だ?今になって俺の事が惜しくなったのか?でも生憎だったな。俺は幾ら美人でもお前のような悪女はお断りだからな。お前が以前虐めていた心優しい令嬢と親しくなって、彼女と婚約する事になったんだ。」
名前も知らない男性はぺらぺらと勝手に喋っている。要約すると、つまりこの男性の話では私はある貴族令嬢を虐めていたのだが、それを見かねたこの男性がその令嬢を庇い、その事がきっかけで2人は急速に親しくなっていき・・・晴れて婚約をする事になったと言う訳か。つまり・・・ジェシカは2人のキューピッドになったんじゃないの?
「それはおめでとうございます。どうぞ彼女とお幸せになって下さいね。」
私はにっこり微笑むと言った。
「!」
何故かその男性は身体を強張らせて私を見る。やっぱり日頃のジェシカの行動から、今の私の態度が信用出来ないのだろう。そこで私は続けた。
「では、その御令嬢に伝えておいて頂けますか?今まで貴女を虐めてしまい、申し訳ございませんでしたと。」
私は深々と頭を下げた。
男性は少しの間呆気に取られていたようだった。
「ところで、式はいつ頃挙げられるのですか?今までの非礼のお詫びも兼ねてお2人に結婚祝いのプレゼントを送らせて頂きたいと思いますので。」
「・・・おい、ジェシカ。」
男性は私を睨み付けるように言った。
「はい。」
「お前・・・・今度は一体何を企んでいるんだ?」
「企む・・・?」
うん?この男性は一体何を言い出すのだろう?
「そうか、あれだろう?お前、他にも何人かの婚約者候補に断られたから、焦りを感じて、俺の心を取り戻そうと演技しているんだろう?」
男性は私を指さしながら言った。・・・人の事を指さしては失礼に当たる事を知らない訳じゃあるまいし。それにどうもこの男性は自意識過剰のようだ。こういう男性は正直苦手なタイプである。
「いえ、別に演技をしているつもりはありませんよ?それに・・・実は今まで黙っておりましたが、私はセント・レイズ学院に入学直後、事故に遭って記憶喪失になってしまったので、正直言いますと・・・貴方のお名前も分からないですし、私が虐めた令嬢の記憶も全く無いのです。それに性格も変わったと家族や下僕にも言われました。」
まさか、別の世界からやって来た人間だとは言う訳にいかないしね・・。
「お、おい・・待てよ、今の話は本当なのか?!じゃあ、さっきから取っているその態度も・・演技じゃ無いと・・・。」
男性は何故か顔面が蒼白になっている。
「はい、演技ではありません。でも記憶が無いとは言え、私は貴方にも、令嬢にも酷い事をしていたようですね・・。本当に申し訳ございませんでした。」
「おい、ジェシカ・・・。お前・・・。」
男性の声は何故か震えている。
「はい?何でしょう?」
私は愛想笑いをした。まだこの人は私に用事があるのだろうか?もうそろそろ私を解放してくれないかな~。読書の続きも読みたいし、何よりアダムとの待ち合わせが近いんじゃないかな?私はチラリと店の壁にかけてある時計を見ると、もう12時になろうとしている。そろそろ行かなくては・・。
ガタンと私は椅子から立ち上がった。
「おい?どうしたんだ、ジェシカ?」
男性は焦ったように私に声をかける。
そこで私は目の前の男性に言った。
「あの、すみません・・・。そろそろよろしいでしょうか?人と待ち合わせをしておりますので。」
「え?お前・・・誰かと約束があったのか?誰だ?トビーか?それともあいつ・・・ルーカスか?!」
何やら聞いたことも無い男性の名前が飛び出してくるが、私にはさっぱり何の事だか分からない。
「いえ、すみません・・・。今の方達のお名前も覚えていないのですが・・・。」
はあ・・・勘弁してよ、もう。
「それでは失礼します。」
今度こそ本当に行かなくては。
私はにっこり微笑むと、名前も聞いていない男性を1人残してカフェを後にした。
「はあ・・・。全く何だったんだろう、今の男性は・・・。アダムに聞いてみれば何か分かるかな?」
よし、2人で一緒にお昼を食べる時、先程の話を尋ねてみよう。
そして私はアダムの働いているオフィスへと向かった。
コンコン。
アダムに教えて貰った部屋のドアをノックすると、すぐにドアが開けられた。
「ああ、ジェシカ。時間ピッタリだったね。それじゃ食事に行こうか?」
「あの・・・一緒に働いている方はいないのですか?」
「そうか。ジェシカは知らなかったね。このオフィスは私が1人で仕事をしているんだよ。もう少し事業が拡大したら何人か人を雇うつもりなんだけどね。」
アダムは少し照れたように言った。
おおっ!アダムはなんて凄い人なのだろう!公爵家の人間でありながら、その身分に甘んじる事も無く、王都で事務所を抱える起業家なんて・・・!おまけにイケメンとくれば世の女性達もきっと放って置かないはずだ・・・・。
アダムが連れて来てくれたお店は肉料理がメインの上品な店だった。
「ジェシカは肉料理が好きだろう?何でも好きなメニューを選ぶといい。」
「ありがとうございます。お兄様。」
そこで私はビーフシチューとパンのセットを注文した。兄のアダムは角切りステーキのランチセットを注文し、二人で上品な味わいのお肉料理に舌鼓を打った。
食後のコーヒーを飲みながら、私は先程カフェでの出来事を話すとアダムの表情が曇った。
「そうか・・・あの男・・チャールズに会ったのか。」
「え?チャールズっていう名前なんですか?」
知らなかった・・・。最も私も名前すら尋ねなかったけどね。
「ああ、一応ジェシカの婚約者候補だったんだよ。でも・・チャールズが心変わりをして、断りを入れてきたんだ。他にも何人か婚約者候補がお前にはいたんだけどね・・。」
ははあん。つまり、ジェシカが余りにも悪女だから相手から一方的に断られてきたっていう訳ね。ほんと、どれだけ嫌な女だったんだろう。
「大丈夫ですよ、お兄様。それは記憶を失う前の私の話ですよね?今の私には婚約者とか、結婚という話には全く興味が無いので、気にもしていませんから。」
そう。今の私の目標は将来的にやがて訪れる破滅への道を回避する為、誰も知らない場所へ逃げて、自立した生活を送る事なのだから—。
憂鬱な気分のまま城の周りを歩いていると、昨日助けを求めた青年が馬を連れて荷台から荷物を降ろしていた。
そうだ、ついでに昨日のお礼を言っておこう。
「こんにちは。」
背後から声をかけると、青年は振り返り、私を見ると驚いた。
「ジェ、ジェシカお嬢様・・・!こ、今度はどのようなご用件でしょうか・・?」
妙にビクビクした態度を取っているなあ・・・?やっぱりそれほどジェシカはここでは恐れられていると言う事なのか・・・。まあ、仕方ないよね。今からでも少しずつジェシカの評価を上げていけるように努力していかないと。
「昨日は連れの男性を助けて頂いて有難うございました。」
ペコリと頭を下げると、青年は意外そうな顔つきをした。
「あの・・・今、俺に・・言った言葉・・・ですよね?」
「はい、そうですけど?」
「し、信じられません・・・。」
青年は青ざめた顔で言う。
やれやれ・・こうなったら今迄の事を釈明しなければならない様だ。
「あの、私実は記憶喪失になってしまって、ここに住んでいた時の記憶が全く残っていないんです。以前に何か失礼な事をしていたのでしたら謝罪させて下さい。」
「い、いえ!ジェシカお嬢様に謝罪をして貰うなんてそんな恐れ多い・・・っ!」
青年は慌てたように両手を振って言った。
「ところで、今こちらで何をしていたのですか?」
「あ・・俺はこの城の庭の管理をしているんですよ。それで庭造りの肥料とかを運んでいたんですよ。」
「そうなんですか、ご苦労様です。それで城の近くに住んでいたんですね。」
「ええ・・・まあそんな所です・・。」
どうも青年の歯切れが悪い。何故だろう?すると青年が言った。
「あの、ジェシカお嬢様・・・敬語で話されると、どうも勝手が違うと言うか、その・・落ち着かないので普通に話して頂けませんか?」
ああ、そういう事ね。
「うん、普通に話せばいいのね?ごめんなさい。忙しい所、呼び止めてしまって。
それじゃお仕事頑張ってね。」
私はヒラヒラと手を振って。青年と別れた。
はあ・・・それにしてもダンスパーティーか・・・出たくないなあ。どうすれば出ないで済むのだろう?誰に聞けば詳しく教えて貰えるのかな?一番いいのはマリウスに聞く事なのだろうけど、先程のメイドの女の子に冷たい態度を取ったマリウスを見ているので、口も聞きたくは無かった。
そこへ兄のアダムが鞄を持って外へ出てくるのが見えた。あ、もしかすると今から出勤するのだろうか?
「お兄様。」
私は兄に声をかけた。
「何だ、ジェシカじゃないか。珍しいな、お前が外に出ているなんて。一体どうしたのだ?」
アダムは不思議そうな顔をして私を見た。
「今からお仕事に行かれるのですか?」
「ああ、そうだ。」
「どうやって町まで出ているのですか?」
アダムは溜息をつくと言った。
「ジェシカ・・・お前は本当に記憶喪失になってしまったのだな?以前のお前は私と会話すらしようとしなかったというのに・・・。」
え?そうだったの?どうしてだろう・・・。アダムはとても真面目そうだし、何よりイケメンなのに・・。
「そうだったのですか・・・何故だったのでしょうね。」
ポツリと言うとアダムは言った。
「以前のジェシカは良く言っていた。私みたいな生真面目で地味な男は本当につまらないと・・。」
何と!ジェシカは自分の兄に向ってそのような口を・・・何て礼儀知らずな女だったのだろう・・・。ああ、嫌だ嫌だ。よりにもよって私が一番嫌いなタイプの人間になってしまうなんて・・。
「それは・・・何て失礼な事を言っていたのでしょう・・。どうもすみませんでした。」
私は深々と頭を下げた。それを見てキョトンとする兄。次に笑い出した。
「ハハハ・・・。まさかジェシカから頭を下げて貰う日がやって来るとは思わなかったな。それじゃ、私はそろそろ仕事に行くから。」
兄はそう言うと、私に背を向けて歩き出した。うん?そう言えばアダムの仕事は町で法律関係の事務所に勤めているってミアに聞いていたっけ・・・。
私も一緒に町へ行ってみたいな・・・。
「あの、お兄様。町まではどうやって行くのですか?」
「うん?それは車で行っているが・・・。何だ、乗りたいのか?」
おおっ!流石は話が早いっ!
「はい、是非!一緒に連れて行って下さいませんか?」
「う~ん・・・連れて行く分には構わないが・・・私の仕事は終わるのが18時を過ぎるが、帰りはどうするのだ?」
「うっ!そ、それは・・・。」
私が言い淀んでいると兄が言った。
「まあ、いい。車に乗ってから話をしよう。」
そして兄に連れられて車庫に行くと、そこにはレトロカーが5台も並んでいた。
おおっ!こ、これは・・・マニアが見たら泣いて喜ぶような車ばかりだ。
その中で兄は車体の長い屋根付きの車を選ぶと言った。
「よし、今日はジェシカもいるからこの車にしよう。」
そう言うとアダムはドアを開けると私に手を差し伸べた。
「さあ、おいで。ジェシカ。」
おお~っ!なんてジェントルマンなんだろう!私はすっかり感動してしまった。
オズオズとアダムの方に手を伸ばすと、アダムは私の手をしっかり握りしめ、車の助手席に乗り込ませてくれた。
「あ、私お父様とお母様に何も言わずに出て来てしまいました!」
するとアダムは言った。
「何だ、ジェシカはそんな事を気にしていたのか?以前のお前なら無断外泊なんて当然のようにしていたのに。」
アハハハと笑いながらアダムは言う。うう・・・知れば知る程、このジェシカという人間は救いようが無い。とんだあばずれ女だったようだ。
「それは・・・さぞお父様やお母様、お兄様にもご心配おかけしてしまいましたね。」
私は溜息をつきながら言うと、アダムは言った。
「まあ、そんなジェシカの居場所をいつでも突き止め、城に連れ帰って来ていたのがマリウスだったからね。それにしてもマリウスは不思議な男だよ・・・。お前がどんな場所にいようが、必ず見つけ出してきたのだから。本当に・・何故だろう?」
アダムが不思議そうに言うのを私は黙って聞いていた。マリウスは今のジェシカになる前からマーキングを付けていたのか・・・。
「あの、実はお兄様に相談があるんです。今お話ししてもよろしいですか?」
アダムは運転しながら前を向いて答えた。
「私に相談・・・・?これも初めての事だな?どんな内容だい?」
「実は・・・今度のパーティーなんですけど・・・私、出たくないんです。どうすれば出席しないでもすむでしょうか?」
「え・・ええ?!ジェシカ・・・それ本気で言ってるのか?!」
流石のアダムもこの相談には驚いたのか、私の方を向いた。
「そんなに以外・・・ですか?」
「ああ、何と言ってもジェシカ。お前はパーティーが大好きで、どんな遠くでも必ず参加していたのだぞ?ダンスを踊るのが大好きだったから・・・。でも・・まあ、お前の評判があまり良く無かったから・・・いつもお前の方から積極的に誘ってみても相手の男性からは1曲ずつしか踊ってくれなかったけれども・・。」
アダムは気を使いながら私に話してくれた。でもその話はある意味私にとってはラッキーな話であった。
「あの、つまり・・・私がダンスパーティーに行っても、踊りの相手が見つからないかもしれないって事ですか?」
私は嬉しい気持ちを押し殺してアダムに尋ねた。
「あ、ああ・・。お前には酷な話かもしれないけれど・・・。」
アダムの目には同情が浮かんでいたが、私にとってはこれ程嬉しい事は無い。つまり、私はダンスパーティーに行っても壁の花になるので、ダンスをする必要は無い。よし、それなら・・私はダンスでは無く、料理を堪能する事にしよう!
「ところで、ジェシカ。ダンスパーティーに付き添ってもらうパートナーはどうするんだ?」
「パートナー?それは絶対に必要なのですか?私・・・1人で参加しようと思っていたのですけど・・?」
それを聞いたアダムは突然急ブレーキを踏むと、慌てたように私を見た。
「ジェ、ジェシカッ!ほ、本気で言ってるのか?そんな事。」
「はい・・・。何かおかしいですか?」
「おかしいも何も・・・ジェシカ・・・1人で参加して恥をかいてもいいのかい?」
「でも、パートナーと参加した場合、必ず1回はその相手とダンスを踊らなければならないんですよね?」
「ま、まあ・・・そういう事にはなるが・・・。」
アダムは再び車を走らせると返事をした。
「だったら、私恥をかいたほうがいいんです。ダンスを踊るよりよほどましですから。」
私は外の景色を見ながら答えた。
そんな私をアダムは不思議そうに見るのだった—。
2
ジェシカの住む国の王都は、それは立派な都市だった。大きな建物が立ち並び、道路も綺麗な石畳で舗装されている。
馬車に乗っている人々はまばらで、路面電車や車が行き交いしている。
まるで私がいた世界のヨーロッパの国を彷彿させるような光景だった。
やっぱり、この世界は私が小説の中で描いていた通りの世界なんだ・・・。
小説の中の設定は、文明と魔法が入り交ざった世界観で描いていた。
今まさに、その世界が私の目の前で繰り広げられている・・・感動を覚えつつ、見る物全てに心を奪われていた。
すると突然アダムから声をかけられた。
「すまない、ジェシカ。私は今からこのビルの事務所で仕事があるんだ。ジェシカが暫くこの都市に残ると言うなら、よければお昼は2人で何処かで食事をしよう。このビルの3Fが私が働いている事務所なんだ。どうする?」
「でも・・・それではお兄様に御迷惑では?」
「そんな事はないさ。たった1人の妹なのに、迷惑に感じるはずはないだろう?それともマリウスを呼ぼうか?」
私はそこですかさず反応した。
「止めてくださいッ!マリウスだけは呼ばないで!」
あんな乙女心を平気で踏みにじるような男の顔など見たくも無い。
「どうしたんだ・・・?マリウスと何かあったのか?」
「・・・・。」
私が応えないでいると、アダムは言った。
「まあいい。2人の間に何があったのかは・・・聞かないでおくよ。それじゃお昼は2人で食事を取るって事にしておこうか?」
「はい、それで是非お願いします。」
「それじゃ12時になったら、このビルの3Fの事務所においで。待っているから。」
アダムは笑顔で言った。
「はい、お願いします。」
私が頭を下げた所で、アダムは尋ねて来た。
「ところでジェシカ。・・・お金は持って来ているのかい?」
言われて私は気が付いた。そうだ・・・何も持たないで出て来てしまったからお金を持って来ていないんだった。
「い、いえ・・・。お金を持たずに出て来てしまいました・・・。」
アダムはクスリと笑った。
「珍しい事もあるものだな。ジェシカがお金を持たずに都市へ来るなんて。」
そして小さな布袋に小金貨1枚を入れて手渡してきた。小金貨は・・確か日本円で5万円位・・。え?5万円?!
「お、お兄様・・・っ!こ、このお金・・!」
私が布袋を握りしめて言うと、逆にアダムから変な顔をされてしまった。
「え?足りなかったか?もう1枚渡そうか?」
「い、いえ!むしろその逆ですっ!こんな大金頂けませんっ!」
「ハハハ・・・本当にジェシカはまるで別人になったな。普段のお前なら、これっぽっちしか寄こさないの?!って言われる所なのに。これは少ないけれど私からのお小遣いだよ。何か欲しい物が合ったら、好きな物を買うといい。」
アダムは本当に優しい人なんだな・・・・。
「い、いえ。そんな事はありません。お兄様・・・本当に有難うございます。」
私は布袋をギュッと握りしめると言った。
「ああ。それじゃ12時になったら事務所においで。」
「はい。」
そしてアダムは車に乗って駐車場へ向かい、私はその後ろ姿に手を振って見送りをした。
「ふ~っ。さて、何処へ行ってみようかな?」
私は伸びをすると、辺りをキョロキョロみわたした。
この通りはオフィス街なのだろうか。仕立ての良いスーツを着た男性達や、上品なタイトなロングスカート姿の女性たちが数多く行き交っている。
路面電車の走るメインストリートには数多くの飲食店やら、雑貨店が軒を連ねていた。
「そうだ、本屋さんは無いかな?」
これだけ巨大な都市なら本屋だって沢山あるはずだ。久しぶりにアカシックレコードについても調べたいし・・・。
私は防寒着の襟を正すと、本屋を探して歩き出そうとした時に声をかけられた。
「あら、もしかすると貴女はジェシカ・リッジウェイ様ではありませんか?」
「え?」
その声に振り向くと、3人の女性たちが後ろに立っていた。全員私と同じ年頃のようだ。女性達はいずれも高級そうな足首まである防寒着を着こみ、これまた高級そうな帽子に、皮の手袋をはめていた。
「あら・・・やはりジェシカ様でしたのね。後ろ姿を見て、もしやと思ったのですが・・・それにしても・・。」
1人の意地の悪そうな金の巻き毛の女性が私をジロジロと見ながら言った。
「一体どうなさったのですか?ジェシカ様ともあろうお方が随分みすぼらしい身なりをしていらっしゃいますが・・・?しかも従者のマリウス様を連れていらっしゃいませんし・・・。」
「ええ、ほんと。別人かと思いましたわ。」
「セント・レイズ学院へ入られて、少々田舎臭くなられたのかしら?」
何やら悪意のこもった目で私を見ながら意地悪そうに口々に言う3人。
「え・・・?そうですか?この防寒着、軽くて動きやすくて中々いいですよ?」
今私が着ていた防寒着は、フードの付いた膝丈のダウンコートである。とても軽いからお気に入りの上着なのだが、どちらかというとデザインは庶民的で男女兼用にも見えるけれども。
「まあ!ジェシカ・リッジウェイ様ともあろうお方からそのような台詞が飛び出して来るなんて・・・!」
わざと大きな声を出す令嬢。
それにしても・・・・。
「あの~すみませんが、失礼ですが貴女方はどちら様でしょうか?宜しければお名前を教えて頂けませんか?」
「な・・・何ですって?!こ、この期に及んでまだそのような事を言われるのですか?!」
「お、落ち着いて下さい、キャロル様。」
「ほ・・本当にどこまでも私達を馬鹿にされるお方ですわね・・・!」
あ、何だか余計に怒り出してきちゃった。まずい事を言ってしまったのかもしれない・・・。さて、どうしようかな・・・。よし、ここは素直に謝って置こう。
「申し訳ございません。皆様方!」
私は頭を深々と下げると言った。
「「「え・・・・?」」」
3人の令嬢に困惑の色が浮かぶ。
「私・・・実は学院に入学直後、ちょっとした事故に遭いまして、それで過去の記憶を全て無くしてしまったのです。なので・・・貴女方のお名前がどうしても分からないものですから・・。もしよろしければお名前を教えて頂けないでしょうか?」
「あ・・貴女、ふざけていらっしゃるの?」
「でも・・確かに以前のジェシカ様とは雰囲気が違うような気がしますけど・・?」
「いえ、これは演技かもしれませんわよ?きっとまた何処かにマリウス様を隠して置いて、そして頃合いを見計らってマリウス様を呼び出すつもりかもしれませんわ。」
あ・・・駄目だ。この3人の令嬢達と話していても拉致があかない。いいや、こちらで適当に名前を付けてしまおう。
まずは金髪の縦ロール女性をA嬢、そばかす女性をB嬢、ガリガリに痩せた女性をC嬢としておこう。
「だ、大体ジェシカ様は過去に私達にどんな酷い事をしたのか覚えていらっしゃらないととぼけるおつもりですか?!」
金髪縦ロール女性の言葉を聞いて、私は以前マリウスが語った事を思い出した。まさか・・この令嬢達のドレスを過去にわざと破いたりとか・・・?
「あ、あの・・・どんな酷い事をしたのでしょう?教えて下さいっ!」
私が思わず金髪縦ロール女性の手を両手で握りしめて迫ると、ヒッと声を出されて驚かれてしまった。
「な・な・いきなり手を握って何をされるのですか?!」
A嬢は私の手を振りほどくと言った。
「あ、すみません。つい・・・。」
いけない、いけない。つい興奮してしまった。
「全く・・・今度はどんな手を使って嫌がらせをするおつもりなのでしょうね?!」
C嬢はツンとそっぽを向くと言った。
「あの、今までの私の犯してきた蛮行を伺いたいので、よろしければ近くのカフェでお茶でもしてお話をお聞かせ願いませんか?」
私が提案すると、3人の顔色が変わった。
「お・・・お茶ですって・・・・?」
「い、いや・・あの恐怖のお茶会が蘇る・・・」
「こ・こ・今度は何をお茶に混ぜるおつもりですの?!」
え?ちょっと待って。ジェシカ・・・一体この3人の女性に何をやらかしたのよ!
ああ、マリウスがいれば何か分かったかもしれないのに・・・。
「あ、あの・・・?」
私が一歩近づくと、3名の令嬢は後ずさり、B嬢が言った。
「と・・とにかく、ジェシカ様とは親しくするつもりはありませんからね!ま、参りましょう?!」
そう言って3名の令嬢は逃げるように去ってしまった。
結局ジェシカがあの令嬢達に何をしたのかは分からずじまいだったが・・・私はここの国での生活が先行き不安に感じるのだった—。
3
令嬢3人が去った後、私はブラブラ町を散策する事にした。
美味しそうなケーキ屋さんを覗いたり、雑貨屋さんに入ったり・・・。
そして一際大きな本屋さんを見つけた。
ここならアカシックレコードに関する本を見つけられるかな・・・?
私は中へ入ると、本を探し始めた。
・・・う~ん、無いなあ・・・。
やっぱり特殊な本だから、中々書店では取り扱いしていないのかな?
私はアカシックレコードの本探しは諦めて、何冊かロマンス小説を手に取り、パラパラと試し読みしてみた。うん、この小説なんか面白そう。
早速カウンターに行って2冊の本を購入すると、私はアダムが働いているビル迄戻ってきた。
何処かにカフェが無いかな・・・。辺りを探すと、カフェが目に止まった。よし、あの店に入ろうかな?
店に入ると、上品な音楽が流れていて中々雰囲気のある店内だった。
私は窓際の席に座ると、コーヒーを注文し、読書にふけった。どれくらい時間が経過しただろうか。私の向かい側に誰か座る気配を感じた・・・が、私は顔を上げる事も無く読書を続けていると、ゴホンと何故か咳払いが聞こえた。
「?」
顔を上げると、私のテーブルの向かい側に見知らぬ男性が1人座っている。そして何故かその男性は私の顔をじっと見つめていた。
もしかすると、このカフェは混んでいるのかな?
辺りをキョロキョロ見渡してみると、うん。確かにほとんどの席が埋まっている。
そうか、だから相席になったのか。なら気にせずに読書を続けよう。
そして私は再び本に目を落した。
「ゴホン」
するともう一度男性は咳ばらいをする。変な人だな・・・うん、知らんふりしておこう。
その時だ。
「おい、お前・・・ジェシカ・リッジウェイじゃないのか?」
突然男性が声をかけてきた。
「え?」
突然名前を呼ばれて私は驚いて顔を上げた。
灰色の髪に、黒い瞳の男性は何故か私を睨み付けるように見ている。ひょっとして・・、また以前のジェシカの関係者なのだろうか?
「うん・・・?何かお前、顔つきもそうだが、随分雰囲気が変わったな・・?着ている服も今までとは何だか違うし・・本当にジェシカ・リッジウェイなのか?」
男性はマジマジと私を見つめながら言った。
その一言で分かった。ああ、やっぱりね・・・。以前のジェシカの知り合いか・・。
「はい・・ジェシカ・リッジウェイですけど?」
「な・何だ?やっぱりそうだったんだな?俺を覚えているだろう?まあ、残念だったな。お前の婚約者候補から俺が外れて・・・。」
目の前の男性は何故かニヤニヤしながら言った。
ふ~ん・・・そうか、この男性は私の婚約者候補だったんだ・・・えええっ?!婚約者候補?!
私は驚き、改めて目の前の男性をまじまじと見つめた。それを何を勘違いしたのか男性は言った。
「何だ?今になって俺の事が惜しくなったのか?でも生憎だったな。俺は幾ら美人でもお前のような悪女はお断りだからな。お前が以前虐めていた心優しい令嬢と親しくなって、彼女と婚約する事になったんだ。」
名前も知らない男性はぺらぺらと勝手に喋っている。要約すると、つまりこの男性の話では私はある貴族令嬢を虐めていたのだが、それを見かねたこの男性がその令嬢を庇い、その事がきっかけで2人は急速に親しくなっていき・・・晴れて婚約をする事になったと言う訳か。つまり・・・ジェシカは2人のキューピッドになったんじゃないの?
「それはおめでとうございます。どうぞ彼女とお幸せになって下さいね。」
私はにっこり微笑むと言った。
「!」
何故かその男性は身体を強張らせて私を見る。やっぱり日頃のジェシカの行動から、今の私の態度が信用出来ないのだろう。そこで私は続けた。
「では、その御令嬢に伝えておいて頂けますか?今まで貴女を虐めてしまい、申し訳ございませんでしたと。」
私は深々と頭を下げた。
男性は少しの間呆気に取られていたようだった。
「ところで、式はいつ頃挙げられるのですか?今までの非礼のお詫びも兼ねてお2人に結婚祝いのプレゼントを送らせて頂きたいと思いますので。」
「・・・おい、ジェシカ。」
男性は私を睨み付けるように言った。
「はい。」
「お前・・・・今度は一体何を企んでいるんだ?」
「企む・・・?」
うん?この男性は一体何を言い出すのだろう?
「そうか、あれだろう?お前、他にも何人かの婚約者候補に断られたから、焦りを感じて、俺の心を取り戻そうと演技しているんだろう?」
男性は私を指さしながら言った。・・・人の事を指さしては失礼に当たる事を知らない訳じゃあるまいし。それにどうもこの男性は自意識過剰のようだ。こういう男性は正直苦手なタイプである。
「いえ、別に演技をしているつもりはありませんよ?それに・・・実は今まで黙っておりましたが、私はセント・レイズ学院に入学直後、事故に遭って記憶喪失になってしまったので、正直言いますと・・・貴方のお名前も分からないですし、私が虐めた令嬢の記憶も全く無いのです。それに性格も変わったと家族や下僕にも言われました。」
まさか、別の世界からやって来た人間だとは言う訳にいかないしね・・。
「お、おい・・待てよ、今の話は本当なのか?!じゃあ、さっきから取っているその態度も・・演技じゃ無いと・・・。」
男性は何故か顔面が蒼白になっている。
「はい、演技ではありません。でも記憶が無いとは言え、私は貴方にも、令嬢にも酷い事をしていたようですね・・。本当に申し訳ございませんでした。」
「おい、ジェシカ・・・。お前・・・。」
男性の声は何故か震えている。
「はい?何でしょう?」
私は愛想笑いをした。まだこの人は私に用事があるのだろうか?もうそろそろ私を解放してくれないかな~。読書の続きも読みたいし、何よりアダムとの待ち合わせが近いんじゃないかな?私はチラリと店の壁にかけてある時計を見ると、もう12時になろうとしている。そろそろ行かなくては・・。
ガタンと私は椅子から立ち上がった。
「おい?どうしたんだ、ジェシカ?」
男性は焦ったように私に声をかける。
そこで私は目の前の男性に言った。
「あの、すみません・・・。そろそろよろしいでしょうか?人と待ち合わせをしておりますので。」
「え?お前・・・誰かと約束があったのか?誰だ?トビーか?それともあいつ・・・ルーカスか?!」
何やら聞いたことも無い男性の名前が飛び出してくるが、私にはさっぱり何の事だか分からない。
「いえ、すみません・・・。今の方達のお名前も覚えていないのですが・・・。」
はあ・・・勘弁してよ、もう。
「それでは失礼します。」
今度こそ本当に行かなくては。
私はにっこり微笑むと、名前も聞いていない男性を1人残してカフェを後にした。
「はあ・・・。全く何だったんだろう、今の男性は・・・。アダムに聞いてみれば何か分かるかな?」
よし、2人で一緒にお昼を食べる時、先程の話を尋ねてみよう。
そして私はアダムの働いているオフィスへと向かった。
コンコン。
アダムに教えて貰った部屋のドアをノックすると、すぐにドアが開けられた。
「ああ、ジェシカ。時間ピッタリだったね。それじゃ食事に行こうか?」
「あの・・・一緒に働いている方はいないのですか?」
「そうか。ジェシカは知らなかったね。このオフィスは私が1人で仕事をしているんだよ。もう少し事業が拡大したら何人か人を雇うつもりなんだけどね。」
アダムは少し照れたように言った。
おおっ!アダムはなんて凄い人なのだろう!公爵家の人間でありながら、その身分に甘んじる事も無く、王都で事務所を抱える起業家なんて・・・!おまけにイケメンとくれば世の女性達もきっと放って置かないはずだ・・・・。
アダムが連れて来てくれたお店は肉料理がメインの上品な店だった。
「ジェシカは肉料理が好きだろう?何でも好きなメニューを選ぶといい。」
「ありがとうございます。お兄様。」
そこで私はビーフシチューとパンのセットを注文した。兄のアダムは角切りステーキのランチセットを注文し、二人で上品な味わいのお肉料理に舌鼓を打った。
食後のコーヒーを飲みながら、私は先程カフェでの出来事を話すとアダムの表情が曇った。
「そうか・・・あの男・・チャールズに会ったのか。」
「え?チャールズっていう名前なんですか?」
知らなかった・・・。最も私も名前すら尋ねなかったけどね。
「ああ、一応ジェシカの婚約者候補だったんだよ。でも・・チャールズが心変わりをして、断りを入れてきたんだ。他にも何人か婚約者候補がお前にはいたんだけどね・・。」
ははあん。つまり、ジェシカが余りにも悪女だから相手から一方的に断られてきたっていう訳ね。ほんと、どれだけ嫌な女だったんだろう。
「大丈夫ですよ、お兄様。それは記憶を失う前の私の話ですよね?今の私には婚約者とか、結婚という話には全く興味が無いので、気にもしていませんから。」
そう。今の私の目標は将来的にやがて訪れる破滅への道を回避する為、誰も知らない場所へ逃げて、自立した生活を送る事なのだから—。
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