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※魔界のノア 前編 ~ジェシカとの記憶~(イラスト有り)(性的描写有り)
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1
あの日—毒の矢に射抜かれたジェシカを救う為、僕達は『ワールズ・エンド』へ向かった。
そこで門番をしていた聖剣士はジェシカの為に七色に光り輝く花を探して摘んで来てくれた。
けれど—
この花の管理をしていた魔族の女・・・フレアに見つかってしまい、この花と引き換えに僕に魔界へ来るようにフレアは命じて来た。
・・・断る理由が何処にある?
もう二度とジェシカに会えないかもしれないけれど・・・彼女が助かるならば、僕なんてどうなったって構わない。
だってどうせ家でも居場所が無く、学院だって・・・それは以前に比べれば大分居心地が良くなったとはいえ、まともに授業に出る事が出来る環境ではないのだから、僕がこの世界にいる意味なんて、見いだせない。
それよりもジェシカを助ける事が出来るなら、それこそ僕の存在意義があると言える・・・僕はそう思っていた。
魔界—。
そこは想像以上に僕にとっては辛い場所だった。まさか・・・これ程までに寒い場所だったなんて・・・。
1日中、昼なのか夜なのかも分からない世界。青く澄み切った空も見る事が出来ないし、満天の星空を見る事も叶わない世界。
そして・・・・魔界は魔族達の身体も・・・冷え切っていた・・・。
初めて魔界に着いた時、あまりの寒さに僕は縮こまっていた。
フレアは何故そこまで僕が寒がっていたのか理解出来ない様子だったけれど・・・
それは彼女に触れてみて、初めて分かった。
魔界にやって来た僕は、この世界でも容姿が気に入られたのか、ひっきりなしに魔族の女性達が僕の元へ訪れて来た。
そこで与えられた僕の役目は・・・・・。
人間界で暮していた時と同様、男娼の役目だった。
聞いた話によるとここは魔界でも第3階層と呼ばれる世界で、上級魔族だけが住む世界だと言う。そして、上級魔族は何故か他の魔族達に比べると出生率が大幅に低く、中には人間界へと行き、そこで人と結婚して家族を持つ魔族達も中にはいるという話だった。初めてその話を聞いたときは驚いたけども、考えてみれば『ワールズ・エンド』で門番をしていた聖剣士・・・確か名前はマシューだったか・・?彼も人間と魔族とのハーフだったから、そう珍しい話では無かったのかもしれない。知らなかったのは僕達人間だけ・・・という事だったのだろう。
とにかく、魔族の女たちは人間の男と言う事で物珍しさもあってか、僕に抱かれたいと言ってひっきりなしにやってきた。そして僕はこの魔界で暮していく為に・・・嫌々彼女達の相手をせざるを得なかった。
だけど、彼女達の肌はびっくりする位に冷え切っていて寒かった。
いつも寒さに耐えながら女性達を相手にしていたけれども、行為の後は僕の身体はすっかり冷え切って、体調を崩して寝込んでしまう日々が続いていた。
そんな僕をフレアは心配して、わざわざ自分の部屋に暖炉を作って用意してくれたりしたけれども、ここ魔界では暖炉の炎でさえ、僕を温めてくれることは決して無かった・・・。
そう、僕は・・・魔界へ来てからはいつだって寒さに震えていたんだ・・・。
僕をここへ連れて来たフレアという女性はとにかく気まぐれだった。
時には強引に僕に自分の相手をさせたりもしたけど、僕の体調が優れない時は、なるべく他の魔族の女達を近付けないようにしてくれたりと便宜を図ってくれていた。
けれどもフレアは常に僕を監視し、自由を奪われた暮らしを強いられてきた。
唯一、僕が自由を得られるのは・・夜、眠りに就いた時だけ。
ここ、魔界では不思議な事に眠った時に、実際に自分の見ている夢の世界の中に入り込めることだった。
その事に気付いたのは、僕が夢の中で初めてジェシカを見た時だった。
その日の夜・・・僕はいつものように暖炉に火を起こしたままベッドを炎の側に寄せて、眠りに就いた。
そして・・夢を見た。
ここはどこだろう・・・。僕は真っ白い花畑の中にいた。見上げるとピンク色に覆われた空、そして空中に浮かぶのは・・・あれは魔界城だろうか・・・?
ボンヤリとした頭で城を見上げていると、ふいに背後から声をかけられた。
「あの・・・すみません。ここは何処なのでしょうか?」
え?まさか・・・今の声は・・・?
僕は驚いて振り返った。するとそこに立っていたのは・・・ジェシカじゃないか!
「ノ・・・ノア先輩?!」
ジェシカは目を見開くと僕の方へ駆け寄って来た。だけど、ジェシカ以上に僕は驚いていた。嘘だ、何故ジェシカがここにいるんだ?
「ジェシカ・・・。」
僕は愛する女性の名前を呼んだ。
「ノア先輩?何故こんな場所にいるのですか?ここは一体どこですか?」
ジェシカは僕に縋りつくように話しかけて来た。
夢にまで見たジェシカが今目の前に立っている。本当は嬉しくて堪らないのに、僕の口から出てきたのは全く違う台詞だった。
「ジェシカ・・・駄目だよ・・・。君はこんな所に来てはいけない。」
「な、何言ってるんですか?ノア先輩、ここが何処かは分かりませんが私と一緒に帰りましょう!ダニエル先輩も待っているんですよ?」
ジェシカは必死になって僕の腕を取って言う。本当は君と一緒に帰りたい。だけど・・・僕はフレアと約束したんだ。
僕の人生を一生フレアに捧げると—。だから僕はジェシカの言葉に首を振った。
「ジェシカ・・・・嬉しかったよ。君がここまで僕に会いに来てくれて・・・。だけど君はこれ以上この場所にいてはいけないよ。」
僕は悲しみをこらえてジェシカに言う。しかし、ジェシカは僕の服の裾を握りしめると言った。
「だ・・・駄目ですよ・・。先輩を1人残して・・私だけ帰れるわけ無いじゃ無いですか・・・。」
ジェシカ・・・君は僕を必要としてくれているのかい・・・?
僕はジェシカを思い切り抱きしめた。なんて温かいんだろう・・・ジェシカの身体は魔族の女達とは違って、とても温かく・・・心が満たされていくのを感じた。
「ジェシカ・・・。」
僕はジェシカの髪に自分の顔を埋めた。柔らかい波打つ髪の毛からは甘い香りがして・・・少しの間だけ、僕はその香りに酔いしれた。
そしてジェシカに言う。
「ジェシカ・・・元気で・・。」
僕はこの時、初めてジェシカにキスをした。それはとても甘美なキスだった。
ずっとこうしていたい・・・。だけど、いつまでも魔界にジェシカを引き留める訳にはいかない・・・!僕は自分の理性を押さえてジェシカを突き飛ばす。
途端に地面が割れて、ジェシカはそこに飲み込まれていく。
「ノ・ノア先輩ーッ!!」
ジェシカが必死で僕に手を伸ばして来るけれど・・・・僕はその手を掴めない。
そして僕は泣きながらジェシカが飲まれていった地面を覗き込み・・・・夢から覚めた。激しい喪失感・・・。そして・・・夢の中でもいい、もう一度だけでもジェシカに会いたい・・・!この日を境に僕は絶望する世界に少しだけ希望を見いだせるようになった。
そして、ついにその日はやってきた―。
この日の夜、フレアは魔族のパーティーに出席する為に初めて家を空ける事になった。やっと彼女の監視から逃れられる夜がやって来たのだ。
僕は早々にベッドに入ると、強くジェシカの事を思いながら眠りに就く・・・・。
気付いてみると僕は子供の姿で部屋の中に立っていた。
窓から空を見上げると星空が見えている。星・・・?やった・・・!僕は夢の中で人間界に来ることが出来たんだ!けど・・・肝心の月は雲に隠れてみる事が出来ない。
そうか・・・だから僕は今子供の姿をしているのか。月さえ出てくれれば・・僕は元の姿に戻れるのに・・・。満月の光は魔力をより一層強めてくれるから・・・。
広い部屋にベッドが置かれていて、誰かが寝ている気配を感じる。
もしかして・・・あれは・・ジェシカ・・?
そっとベッドに近付くと、やはりそこに眠っていたのはジェシカだった。
白いシーツにウェーブの長い髪の毛を広げてジェシカは静かに眠りに就いている。
その姿は・・・まさに僕の女神そのものだった。
ジェシカ・・・!
ジェシカと話がしたい、僕はここにいるよって笑いかけたい・・・。
僕はたまらずに眠っているジェシカを揺さぶって彼女を起こす—。
2
「ジェシカ、ジェシカ。」
ぐっすり眠っているジェシカの身体を揺すった。
「う~ん・・・。」
ジェシカは気だるそうに寝返りを打ったけれど、目を開けてゆっくりとベッドから起き上がってくれた。そして目の前に座っている僕と目が合う。
ジェシカの綺麗な紫色の瞳に僕の姿が映っているけど・・・。
「な・・・なんて可愛いの~っ!!」
言うとジェシカは僕をギュッと抱きしめると、自分の頬に僕の頬を摺り寄せた。
う・・・うわっ!
こ、こんな事・・・されたのは生れて初めてだ!しかもジェシカはこれでもかという位ギュウギュウに抱きしめて来る。
「う、うわっ!ジェシカッ!く、苦しいってばっ!」
息が詰まりそうになって必死にもがいた。
「あ、ご・ごめんね。」
その時になってジェシカは僕を思い切り締めあげている事に気付いたのか、手を離すと謝って来た。それにしても、小柄なジェシカに締め付けられるとは思いもしなかった。これ程までに僕の身体は小さな子供に戻っているって事なのか。
・・・何かショックだ。
「ねえ、僕。どこの子なの?こんな夜に知らない人のお家に来ていたらパパとママが心配するよ?お姉さんがおうちまで連れて行ってあげようか?場所は分かる?」
だけど、ジェシカは僕のそんな複雑な気持ちに全く気付かない様子で、完全に小さな子ども扱いをしてくる。だけど・・・ジェシカは多分子供が好きなんだね。きっと素敵なお母さんになれそうだ。そして僕は彼女と家庭を築いた様子を想像してみた。
でも、取り合えずジェシカにはきちんと説明しないと。
「ジェシカ。僕の事が分からない?」
「え・・・?」
ジェシカの瞳をじっと見つめて問いかけたけど、彼女には戸惑いの表情が浮かんでいる。そして、何かに気付いたかのようにおもむろにジェシカは尋ねて来た。
「ねえ。そう言えば・・・どうして私の名前を僕は知っているの?」
僕はそれには答えず、窓の外を見た。・・・もうすぐ分厚い雲に覆われた月が顔を覗かせそうだ・・・。
「ねえ、カーテンを開けて窓の外を見て。今は満月が雲で隠れちゃっているよね?」
その時、ジェシカは僕に言われて初めて窓の外を眺めた。
「ほら、雲が晴れるよ・・・。」
窓から月を眺めているジェシカに言う。
ジェシカは言われた通り、じっと月の様子を観察していた。・・やがて、雲が晴れて行き・・・僕は自分の身体に力が漲っていくのを感じ始めた。
小さかった身体が徐々に元の姿へと戻って行く・・・。
「確かに雲が晴れて、月が見えるようになったけど・・・。」
ジェシカが視線を戻しながら僕に言う。そして、その大きな瞳を見開いた。
「ノ・・・ノア先輩?!」
ああ・・やっと僕は僕の姿でジェシカに再会する事が出来た。戸惑っているジェシカに歩み寄ると、彼女の頬に両手を添えて言った。
「こんばんは、ジェシカ。・・・いきなり訪ねてきて驚かせたよね?」
「お、驚くも何も・・・・。」
ジェシカは声を震わせると、一気に話始めた。何故か自分も含めて、皆が僕の存在を忘れてしまっている事、そして万能薬の花を取りに行った彼等の話も何処かあやふやな内容に変わっている事等々・・・。そして僕にその理由を教えて欲しいとお願いして来た。
「ジェシカ・・・。それを知ってどうするの・・・?」
理由なんか知ったって、どうする事も出来ないのに。
「だって・・・絶対にノア先輩は私を助けるために何か大きな代償を支払ったに決まっているからです。夢の中でしかノア先輩と会えないなんて・・・思い出せないなんて、絶対おかしな話じゃ無いですか!」
それでも尚、食い下がって来るジェシカに僕は全てを説明する事にした。すると話を聞いていたジェシカの目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。
ジェシカ・・・僕の為に悲しんでくれるの?
だから僕は彼女を慰める、どうか泣かないで、女神を助けるのにこの命を捧げるのなんかちっとも惜しくは無いって事を彼女に伝えてあげないと。
「で、でも・・・。」
尚も言い淀むジェシカに僕は言った。
「今まではジェシカが夢の中で僕に会いに来てくれた。そして今夜は僕から初めてジェシカに会いに来た特別な記念日だよ。でも・・・夢の中でもジェシカに会えるのは今日が最後になってしまう・・・。僕の人間界で使える魔力はもう底を尽きているんだ。今日は最初の満月。月の力が一番強く、魔力を補える夜だったから、そして魔族の女の監視の目が緩んだから、ようやく・・ジェシカ、君に会いに来れたんだよ。」
そう、僕には自分自身の事が良く分かっている。もう僕は半分魔族に近い身体になってきている・・・。いずれ僕は完全に魔族になってしまうだろう。そうなると・・もうこの素敵な夢の世界に戻ってくる事は出来るはずが無い。
「ノア先輩・・・。」
ジェシカは目に涙を一杯溜めている。それを見ていると僕の胸は締め付けられそうに切なくなり・・・。
「ジェシカ・・・愛してる・・・。本当はずっと君を抱きしめていたい・・離したく無い・・・っ!」
僕はジェシカの身体を力強く抱きしめた。するとジェシカは泣きじゃくりながら縋りついて来てくれた。今・・・この瞬間だけでも僕はジェシカを独り占め出来ているんだ・・・。なら・・・ならジェシカ。最後のお願いを・・聞き入れてくれるかな・・?
「もうこれが最後になるかもしれないから・・・僕は君のぬくもりを感じたい・・・。駄目・・・かな?」
夜明け前にはまた再びあの冷たい魔界に帰らなくてはいけない。そして・・・もう二度とこの温かい世界に戻ってくる事は叶わないだろう。
じっとジェシカから目を離さずに見つめた。するとジェシカは僕の首に両腕を回すと、耳元で囁いた。
「駄目じゃ・・・ないです。」
ジェシカから許しを貰った。僕はより一層強くジェシカを抱きしめ、無言で唇を奪うと、そのまま彼女をベッドの上に押し倒し・・・・。
そこから先は・・・もう夢中だった。
どうか、このまま永遠に時が止まってくれればいいのに、この幸せがずっと続けばいいのに・・・と願いながら、愛するジェシカを抱いた―。
やがて幸せな時間の後・・・僕の腕の中でまどろんでいるジェシカに囁いた。
「ありがとう、ジェシカ。最後に・・・僕のお願いを聞いてくれて・・。」
するとジェシカは僕の顔を泣きそうな目で見つめてきた。
「最後なんて・・そんな言い方しないで下さいっ!わ、私は・・・絶対にノア先輩を諦めません。例え、目が覚めて先輩の事を忘れても・・必ず先輩の事を思い出して、そして魔界まで助けに行きますから!」
言いながら僕の首に腕を回して抱き付いてくるジェシカ。本当に・・・?ジェシカ。
本当に君は・・・僕を助けに来てくれるの・・?
そしてジェシカは驚くべき提案をしてきた。自分にマーキングをしてくれと言って来たんだ。
・・・信じられなかった。こんな事がマリウスやアラン王子にバレたらジェシカの立場はまずくなるに決まっているのに・・・。
だけど、それと同時に、今まで生きてきてこれ程幸せを感じた事は無かった。だから僕は・・。
「愛しているよ・・・ジェシカ。」
もう一度ジェシカと身体を重ねた・・・。
「ジェシカ、これをあげるよ。」
僕はジェシカに2つのピアスを渡した。
「ピアス・・・ですか?」
ジェシカは不思議そうな顔で僕を見上げる。
「うん、このピアスには・・・僕の想いが詰まっている。どうか・・・受け取ってくれる?」
「はい。」
素直に頷くジェシカ。
「僕が・・・つけてあげるね。」
これは・・・僕からジェシカへの最初で最後のプレゼント。
ジェシカの耳にピアスを付けてあげると言った。
「ジェシカ・・・・。君の気持ちだけありがたく受け取っておくよ。僕の事は・・・本当に忘れてしまっても構わないからね。今夜の幸せな思い出があるから、それだけで僕はこの先もずっと魔界で生きていけるよ。」
「え?!な、何を言ってるんですか?ノア先輩・・・!」
「さよなら、ジェシカ。元気でね・・・。」
そして自分の意識を魔界へ戻す。
泣きながら僕に手を伸ばすジェシカの姿を最後に目に焼き付けながら—。
あの日—毒の矢に射抜かれたジェシカを救う為、僕達は『ワールズ・エンド』へ向かった。
そこで門番をしていた聖剣士はジェシカの為に七色に光り輝く花を探して摘んで来てくれた。
けれど—
この花の管理をしていた魔族の女・・・フレアに見つかってしまい、この花と引き換えに僕に魔界へ来るようにフレアは命じて来た。
・・・断る理由が何処にある?
もう二度とジェシカに会えないかもしれないけれど・・・彼女が助かるならば、僕なんてどうなったって構わない。
だってどうせ家でも居場所が無く、学院だって・・・それは以前に比べれば大分居心地が良くなったとはいえ、まともに授業に出る事が出来る環境ではないのだから、僕がこの世界にいる意味なんて、見いだせない。
それよりもジェシカを助ける事が出来るなら、それこそ僕の存在意義があると言える・・・僕はそう思っていた。
魔界—。
そこは想像以上に僕にとっては辛い場所だった。まさか・・・これ程までに寒い場所だったなんて・・・。
1日中、昼なのか夜なのかも分からない世界。青く澄み切った空も見る事が出来ないし、満天の星空を見る事も叶わない世界。
そして・・・・魔界は魔族達の身体も・・・冷え切っていた・・・。
初めて魔界に着いた時、あまりの寒さに僕は縮こまっていた。
フレアは何故そこまで僕が寒がっていたのか理解出来ない様子だったけれど・・・
それは彼女に触れてみて、初めて分かった。
魔界にやって来た僕は、この世界でも容姿が気に入られたのか、ひっきりなしに魔族の女性達が僕の元へ訪れて来た。
そこで与えられた僕の役目は・・・・・。
人間界で暮していた時と同様、男娼の役目だった。
聞いた話によるとここは魔界でも第3階層と呼ばれる世界で、上級魔族だけが住む世界だと言う。そして、上級魔族は何故か他の魔族達に比べると出生率が大幅に低く、中には人間界へと行き、そこで人と結婚して家族を持つ魔族達も中にはいるという話だった。初めてその話を聞いたときは驚いたけども、考えてみれば『ワールズ・エンド』で門番をしていた聖剣士・・・確か名前はマシューだったか・・?彼も人間と魔族とのハーフだったから、そう珍しい話では無かったのかもしれない。知らなかったのは僕達人間だけ・・・という事だったのだろう。
とにかく、魔族の女たちは人間の男と言う事で物珍しさもあってか、僕に抱かれたいと言ってひっきりなしにやってきた。そして僕はこの魔界で暮していく為に・・・嫌々彼女達の相手をせざるを得なかった。
だけど、彼女達の肌はびっくりする位に冷え切っていて寒かった。
いつも寒さに耐えながら女性達を相手にしていたけれども、行為の後は僕の身体はすっかり冷え切って、体調を崩して寝込んでしまう日々が続いていた。
そんな僕をフレアは心配して、わざわざ自分の部屋に暖炉を作って用意してくれたりしたけれども、ここ魔界では暖炉の炎でさえ、僕を温めてくれることは決して無かった・・・。
そう、僕は・・・魔界へ来てからはいつだって寒さに震えていたんだ・・・。
僕をここへ連れて来たフレアという女性はとにかく気まぐれだった。
時には強引に僕に自分の相手をさせたりもしたけど、僕の体調が優れない時は、なるべく他の魔族の女達を近付けないようにしてくれたりと便宜を図ってくれていた。
けれどもフレアは常に僕を監視し、自由を奪われた暮らしを強いられてきた。
唯一、僕が自由を得られるのは・・夜、眠りに就いた時だけ。
ここ、魔界では不思議な事に眠った時に、実際に自分の見ている夢の世界の中に入り込めることだった。
その事に気付いたのは、僕が夢の中で初めてジェシカを見た時だった。
その日の夜・・・僕はいつものように暖炉に火を起こしたままベッドを炎の側に寄せて、眠りに就いた。
そして・・夢を見た。
ここはどこだろう・・・。僕は真っ白い花畑の中にいた。見上げるとピンク色に覆われた空、そして空中に浮かぶのは・・・あれは魔界城だろうか・・・?
ボンヤリとした頭で城を見上げていると、ふいに背後から声をかけられた。
「あの・・・すみません。ここは何処なのでしょうか?」
え?まさか・・・今の声は・・・?
僕は驚いて振り返った。するとそこに立っていたのは・・・ジェシカじゃないか!
「ノ・・・ノア先輩?!」
ジェシカは目を見開くと僕の方へ駆け寄って来た。だけど、ジェシカ以上に僕は驚いていた。嘘だ、何故ジェシカがここにいるんだ?
「ジェシカ・・・。」
僕は愛する女性の名前を呼んだ。
「ノア先輩?何故こんな場所にいるのですか?ここは一体どこですか?」
ジェシカは僕に縋りつくように話しかけて来た。
夢にまで見たジェシカが今目の前に立っている。本当は嬉しくて堪らないのに、僕の口から出てきたのは全く違う台詞だった。
「ジェシカ・・・駄目だよ・・・。君はこんな所に来てはいけない。」
「な、何言ってるんですか?ノア先輩、ここが何処かは分かりませんが私と一緒に帰りましょう!ダニエル先輩も待っているんですよ?」
ジェシカは必死になって僕の腕を取って言う。本当は君と一緒に帰りたい。だけど・・・僕はフレアと約束したんだ。
僕の人生を一生フレアに捧げると—。だから僕はジェシカの言葉に首を振った。
「ジェシカ・・・・嬉しかったよ。君がここまで僕に会いに来てくれて・・・。だけど君はこれ以上この場所にいてはいけないよ。」
僕は悲しみをこらえてジェシカに言う。しかし、ジェシカは僕の服の裾を握りしめると言った。
「だ・・・駄目ですよ・・。先輩を1人残して・・私だけ帰れるわけ無いじゃ無いですか・・・。」
ジェシカ・・・君は僕を必要としてくれているのかい・・・?
僕はジェシカを思い切り抱きしめた。なんて温かいんだろう・・・ジェシカの身体は魔族の女達とは違って、とても温かく・・・心が満たされていくのを感じた。
「ジェシカ・・・。」
僕はジェシカの髪に自分の顔を埋めた。柔らかい波打つ髪の毛からは甘い香りがして・・・少しの間だけ、僕はその香りに酔いしれた。
そしてジェシカに言う。
「ジェシカ・・・元気で・・。」
僕はこの時、初めてジェシカにキスをした。それはとても甘美なキスだった。
ずっとこうしていたい・・・。だけど、いつまでも魔界にジェシカを引き留める訳にはいかない・・・!僕は自分の理性を押さえてジェシカを突き飛ばす。
途端に地面が割れて、ジェシカはそこに飲み込まれていく。
「ノ・ノア先輩ーッ!!」
ジェシカが必死で僕に手を伸ばして来るけれど・・・・僕はその手を掴めない。
そして僕は泣きながらジェシカが飲まれていった地面を覗き込み・・・・夢から覚めた。激しい喪失感・・・。そして・・・夢の中でもいい、もう一度だけでもジェシカに会いたい・・・!この日を境に僕は絶望する世界に少しだけ希望を見いだせるようになった。
そして、ついにその日はやってきた―。
この日の夜、フレアは魔族のパーティーに出席する為に初めて家を空ける事になった。やっと彼女の監視から逃れられる夜がやって来たのだ。
僕は早々にベッドに入ると、強くジェシカの事を思いながら眠りに就く・・・・。
気付いてみると僕は子供の姿で部屋の中に立っていた。
窓から空を見上げると星空が見えている。星・・・?やった・・・!僕は夢の中で人間界に来ることが出来たんだ!けど・・・肝心の月は雲に隠れてみる事が出来ない。
そうか・・・だから僕は今子供の姿をしているのか。月さえ出てくれれば・・僕は元の姿に戻れるのに・・・。満月の光は魔力をより一層強めてくれるから・・・。
広い部屋にベッドが置かれていて、誰かが寝ている気配を感じる。
もしかして・・・あれは・・ジェシカ・・?
そっとベッドに近付くと、やはりそこに眠っていたのはジェシカだった。
白いシーツにウェーブの長い髪の毛を広げてジェシカは静かに眠りに就いている。
その姿は・・・まさに僕の女神そのものだった。
ジェシカ・・・!
ジェシカと話がしたい、僕はここにいるよって笑いかけたい・・・。
僕はたまらずに眠っているジェシカを揺さぶって彼女を起こす—。
2
「ジェシカ、ジェシカ。」
ぐっすり眠っているジェシカの身体を揺すった。
「う~ん・・・。」
ジェシカは気だるそうに寝返りを打ったけれど、目を開けてゆっくりとベッドから起き上がってくれた。そして目の前に座っている僕と目が合う。
ジェシカの綺麗な紫色の瞳に僕の姿が映っているけど・・・。
「な・・・なんて可愛いの~っ!!」
言うとジェシカは僕をギュッと抱きしめると、自分の頬に僕の頬を摺り寄せた。
う・・・うわっ!
こ、こんな事・・・されたのは生れて初めてだ!しかもジェシカはこれでもかという位ギュウギュウに抱きしめて来る。
「う、うわっ!ジェシカッ!く、苦しいってばっ!」
息が詰まりそうになって必死にもがいた。
「あ、ご・ごめんね。」
その時になってジェシカは僕を思い切り締めあげている事に気付いたのか、手を離すと謝って来た。それにしても、小柄なジェシカに締め付けられるとは思いもしなかった。これ程までに僕の身体は小さな子供に戻っているって事なのか。
・・・何かショックだ。
「ねえ、僕。どこの子なの?こんな夜に知らない人のお家に来ていたらパパとママが心配するよ?お姉さんがおうちまで連れて行ってあげようか?場所は分かる?」
だけど、ジェシカは僕のそんな複雑な気持ちに全く気付かない様子で、完全に小さな子ども扱いをしてくる。だけど・・・ジェシカは多分子供が好きなんだね。きっと素敵なお母さんになれそうだ。そして僕は彼女と家庭を築いた様子を想像してみた。
でも、取り合えずジェシカにはきちんと説明しないと。
「ジェシカ。僕の事が分からない?」
「え・・・?」
ジェシカの瞳をじっと見つめて問いかけたけど、彼女には戸惑いの表情が浮かんでいる。そして、何かに気付いたかのようにおもむろにジェシカは尋ねて来た。
「ねえ。そう言えば・・・どうして私の名前を僕は知っているの?」
僕はそれには答えず、窓の外を見た。・・・もうすぐ分厚い雲に覆われた月が顔を覗かせそうだ・・・。
「ねえ、カーテンを開けて窓の外を見て。今は満月が雲で隠れちゃっているよね?」
その時、ジェシカは僕に言われて初めて窓の外を眺めた。
「ほら、雲が晴れるよ・・・。」
窓から月を眺めているジェシカに言う。
ジェシカは言われた通り、じっと月の様子を観察していた。・・やがて、雲が晴れて行き・・・僕は自分の身体に力が漲っていくのを感じ始めた。
小さかった身体が徐々に元の姿へと戻って行く・・・。
「確かに雲が晴れて、月が見えるようになったけど・・・。」
ジェシカが視線を戻しながら僕に言う。そして、その大きな瞳を見開いた。
「ノ・・・ノア先輩?!」
ああ・・やっと僕は僕の姿でジェシカに再会する事が出来た。戸惑っているジェシカに歩み寄ると、彼女の頬に両手を添えて言った。
「こんばんは、ジェシカ。・・・いきなり訪ねてきて驚かせたよね?」
「お、驚くも何も・・・・。」
ジェシカは声を震わせると、一気に話始めた。何故か自分も含めて、皆が僕の存在を忘れてしまっている事、そして万能薬の花を取りに行った彼等の話も何処かあやふやな内容に変わっている事等々・・・。そして僕にその理由を教えて欲しいとお願いして来た。
「ジェシカ・・・。それを知ってどうするの・・・?」
理由なんか知ったって、どうする事も出来ないのに。
「だって・・・絶対にノア先輩は私を助けるために何か大きな代償を支払ったに決まっているからです。夢の中でしかノア先輩と会えないなんて・・・思い出せないなんて、絶対おかしな話じゃ無いですか!」
それでも尚、食い下がって来るジェシカに僕は全てを説明する事にした。すると話を聞いていたジェシカの目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。
ジェシカ・・・僕の為に悲しんでくれるの?
だから僕は彼女を慰める、どうか泣かないで、女神を助けるのにこの命を捧げるのなんかちっとも惜しくは無いって事を彼女に伝えてあげないと。
「で、でも・・・。」
尚も言い淀むジェシカに僕は言った。
「今まではジェシカが夢の中で僕に会いに来てくれた。そして今夜は僕から初めてジェシカに会いに来た特別な記念日だよ。でも・・・夢の中でもジェシカに会えるのは今日が最後になってしまう・・・。僕の人間界で使える魔力はもう底を尽きているんだ。今日は最初の満月。月の力が一番強く、魔力を補える夜だったから、そして魔族の女の監視の目が緩んだから、ようやく・・ジェシカ、君に会いに来れたんだよ。」
そう、僕には自分自身の事が良く分かっている。もう僕は半分魔族に近い身体になってきている・・・。いずれ僕は完全に魔族になってしまうだろう。そうなると・・もうこの素敵な夢の世界に戻ってくる事は出来るはずが無い。
「ノア先輩・・・。」
ジェシカは目に涙を一杯溜めている。それを見ていると僕の胸は締め付けられそうに切なくなり・・・。
「ジェシカ・・・愛してる・・・。本当はずっと君を抱きしめていたい・・離したく無い・・・っ!」
僕はジェシカの身体を力強く抱きしめた。するとジェシカは泣きじゃくりながら縋りついて来てくれた。今・・・この瞬間だけでも僕はジェシカを独り占め出来ているんだ・・・。なら・・・ならジェシカ。最後のお願いを・・聞き入れてくれるかな・・?
「もうこれが最後になるかもしれないから・・・僕は君のぬくもりを感じたい・・・。駄目・・・かな?」
夜明け前にはまた再びあの冷たい魔界に帰らなくてはいけない。そして・・・もう二度とこの温かい世界に戻ってくる事は叶わないだろう。
じっとジェシカから目を離さずに見つめた。するとジェシカは僕の首に両腕を回すと、耳元で囁いた。
「駄目じゃ・・・ないです。」
ジェシカから許しを貰った。僕はより一層強くジェシカを抱きしめ、無言で唇を奪うと、そのまま彼女をベッドの上に押し倒し・・・・。
そこから先は・・・もう夢中だった。
どうか、このまま永遠に時が止まってくれればいいのに、この幸せがずっと続けばいいのに・・・と願いながら、愛するジェシカを抱いた―。
やがて幸せな時間の後・・・僕の腕の中でまどろんでいるジェシカに囁いた。
「ありがとう、ジェシカ。最後に・・・僕のお願いを聞いてくれて・・。」
するとジェシカは僕の顔を泣きそうな目で見つめてきた。
「最後なんて・・そんな言い方しないで下さいっ!わ、私は・・・絶対にノア先輩を諦めません。例え、目が覚めて先輩の事を忘れても・・必ず先輩の事を思い出して、そして魔界まで助けに行きますから!」
言いながら僕の首に腕を回して抱き付いてくるジェシカ。本当に・・・?ジェシカ。
本当に君は・・・僕を助けに来てくれるの・・?
そしてジェシカは驚くべき提案をしてきた。自分にマーキングをしてくれと言って来たんだ。
・・・信じられなかった。こんな事がマリウスやアラン王子にバレたらジェシカの立場はまずくなるに決まっているのに・・・。
だけど、それと同時に、今まで生きてきてこれ程幸せを感じた事は無かった。だから僕は・・。
「愛しているよ・・・ジェシカ。」
もう一度ジェシカと身体を重ねた・・・。
「ジェシカ、これをあげるよ。」
僕はジェシカに2つのピアスを渡した。
「ピアス・・・ですか?」
ジェシカは不思議そうな顔で僕を見上げる。
「うん、このピアスには・・・僕の想いが詰まっている。どうか・・・受け取ってくれる?」
「はい。」
素直に頷くジェシカ。
「僕が・・・つけてあげるね。」
これは・・・僕からジェシカへの最初で最後のプレゼント。
ジェシカの耳にピアスを付けてあげると言った。
「ジェシカ・・・・。君の気持ちだけありがたく受け取っておくよ。僕の事は・・・本当に忘れてしまっても構わないからね。今夜の幸せな思い出があるから、それだけで僕はこの先もずっと魔界で生きていけるよ。」
「え?!な、何を言ってるんですか?ノア先輩・・・!」
「さよなら、ジェシカ。元気でね・・・。」
そして自分の意識を魔界へ戻す。
泣きながら僕に手を伸ばすジェシカの姿を最後に目に焼き付けながら—。
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なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
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2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
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この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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