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第4章 11 説得
しおりを挟む「駄目だっ!そんなの認める訳が無いだろうっ?!」
開口一番・・・デヴィットが言った。ああ・・・やっぱりね、そう言うと思ったよ。
「ま、待って下さい!え・・と・・デヴィットさん。俺達も中には忍び込んだことがあるんですよ。しかも驚くぐらいにあっさりと簡単に。」
グレイが興奮しているデヴィットを必死に宥めるように説得している。
「お前達はいい!魔法も使えるし剣だって使えるじゃ無いか。だがジェシカはどうだ?魔法も使えないし、剣だって使えない。いや、そもそもこの細腕じゃ剣を持つ事だって不可能だ。こんなか弱い女を敵の本拠地に・・・しかもあの薄汚い聖女が狙ってるんだぞ・・・?そんな場所へ俺の聖女を・・・ジェシカをやれるかっ!」
デヴィットは私を羽交い絞めにしながらグレイに抗議した。く・苦しい・・・。
「ちょっと!どさくさに紛れてジェシカに抱き付くなっ!この獣めっ!」
ダニエル先輩が喚く。
「煩い!俺は獣なんかじゃないっ!」
言い返すデヴィット。
「ま、待って下さいっ!わ・・私の話も聞いて下さいっ!」
必死でデヴィットの腕から逃れると言った。
「何も私1人で神殿に潜り込もうと思っているつもりではありません。」
「そんなのは当たり前だ。」
ムットしたように言うデヴィット。
「あの・・・ここにいる全員で・・・神殿に潜り込めたらなって思うんですけど・・・。あ、でも・・マイケルさんは残っていて下さい。」
「ええ~お嬢さん・・・。俺は行ったら駄目なのかい?」
すかさず反応するマイケルさん。
「はい・・・マイケルさんは私同様・・魔法を使えませんから・・・。私達と一緒にいたら・・・反って危険だと思うので。」
「う~ん・・・。お嬢さんがそう言うなら・・・いいよ、君の言うとおりにするね。」
「はい、ありがとうございます。」
「神殿の兵士の中には兜を身に着けている兵士が何人もいるんだ。その連中を背後から襲って鎧から兜まで全て奪って変装すればばれないはずだ。現に俺達は誰にも気付かれる事無く神殿の最上階・・・ソフィーとアラン王子の元へ辿り着く事が出来ましたからね。」
ルークが言う。
「え?何?そうだったの?だったらどうしてアラン王子を連れて逃げなかったのさ。」
ダニエル先輩が不思議そうに首をかしげる。
「う・・・・。」
「そ、それは・・・。」
2人は顔を赤らめ、口を閉ざしてしまった。その態度を見て私はピンときた。
もしかしてさっき2人が話していたのは・・・そこできっとソフィーとアラン王子の行為を目にしてしまったんだ・・・。
「何だ?何故黙るんだ?ちゃんと説明しろ。」
ああっ!デヴィットが2人に迫っている・・・。
「ま、まあまあ。タイミングが悪くてきっと助け出せなかったんですよ。ね?グレイ、ルーク。」
2人の代わりに私がデヴィットに応えると言った。
「神殿には数多くの兵士が集められているので・・・全員の顔と名前の把握なんて不可能だと思うんです。だから・・・紛れ込みやすいかなって思って・・・。駄目・・・ですか・・?」
上目遣いにデヴィットを見る。デヴィットさえ陥落する事が出来れば・・・後は絶対になんとかなるはず・・・
「う・・・そ、そんな目で・・お、俺を見るな・・・っ!」
デヴィットは私から顔を背けようとするも・・・。
「あああっ!分かった!俺の負けだ!いいだろう・・全員で・・あ、マイケルは留守番で神殿に乗り込むぞっ!」
とうとう観念したのか、デヴィットが折れた。やった―!これでアラン王子に近付く事が出来る・・・。
「まずはやみくもに神殿に乗り込んでも駄目だ。と言う訳で・・・。」
デヴィットはグレイとルークを見ると言った。
「お前らはもう寮に帰れ。門限があるだろう?」
言われてみると確かに・・・時計の針はもうそろそろ夜の10時になろうとしている。
「ええ?!そ、そんなっ!」
「何故、俺達だけ?俺達もここに泊めて下さいよ。」
グレイ、ルークが交互に泣きつく。
「駄目だっ!この部屋は4人で借りる契約を結んでいるんだ。お前達は頭数に入っていない。」
頑なに2人を拒絶するデヴィット。グレイとルークが必死にデヴィットに縋りついている。
しかし・・・アラン王子には虐げられ・・・デヴィットには逆らえず・・・とことん不運な彼等だなあ・・。
「まあまあ、別に構わないじゃ無いか。ほら、この部屋はこんなに広いんだし・・彼等にはソファで寝て貰えばいいじゃ無いか。」
ニコニコ顔で言うマイケルさん。
・・・じゃんけんとかクジ引きとかで誰がベッドを使えるかは決めないんですね・・・。
「ええ、俺はソファでも構いません!」
「この部屋に泊れるなら何処に寝たって構いません!」
グレイとルークが即答する。ええええ?!いいの?そんな簡単に決めちゃって?!
「グ、グレイ・・。ルーク・・・。貴方たちは・・それでもいいの?」
「ああ、お前の側に居られれば何処で寝たって構わないさ。」
グレイは笑顔で答える。
「そ、そうだ・・・。グレイの・・言う通り・・だ。」
ルークは頬を赤く染めながら言う。
「おい、お前達。ソフィーは俺の聖女なんだ。半径1m以上近付くなよ。」
私を腕に囲い込みながらデヴィットが彼等をジロリと見て威嚇する。
う~ん・・・デヴィットは・・・アラン王子に性格が似ている気がする。だから・・・きっとあの2人もデヴィットに逆らえないんだろうな・・・。
その時、不意に声をかけられた。
「お嬢さん、さっき話していた美味しいお酒を買って来たよ。早速2人で飲んでみないかい?」
「マイケルさんがグラスをを持って立っていた。」
「うわあ・・。本当に買って来てくれたんですね?どうもありがとうございます。」
笑顔で答えると、ダニエル先輩が言った。
「あ、何?2人だけで飲むつもりなの?僕だって当然一緒に飲むからね!」
そして私の手を引くとリビングルームへ移動し・・・ソファに座った。
「あの・・・ダニエル先輩・・。」
「うん?何だい、ジェシカ。」
「何故・・ダニエル先輩の膝の上に乗っているのでしょうか・・?」
「フフ・・・。それはね、僕がそうしたいからだよ。ね、ジェシカ・・・。」
私の耳元に息を吹きかけながらダニエル先輩が言う。こ・・・これはまさか・・すでにダニエル先輩は酔っているのでは・・・?
「あ!ダニエル!お前・・・俺が目を離した隙に・・・ジェシカに何をしてるんだっ?」
声が上がった方向を見ると・・・やはりデヴィットだった。グラスを用意していたのだろうか?デヴィットの持っている銀のトレーにはグラスが沢山つみあげあれている。
おや・・・意外とデヴィットは世話好きなのかもしれない。
「ほら、早くジェシカを降ろせ。と言うか、お前もお前だ。何故素直にダニエルの膝の上に乗るんだ?乗るなら俺の膝の上にして置け。いいか?分かったな?」
そしてデヴィットは言いたい事だけ言うと、すぐに奥のカウンターへ引っ込んでしまった。
うん?何だかどさくさに紛れて妙な事を言われた気がしたけど・・聞かなかった事にしよう。
「え~。と言う訳で、ダニエル先輩。膝から降ろして頂けませんか?」
しかしダニエル先輩は私の腰に手を回し、しっかりホールドして離そうとしない。
そして潤んだ瞳で私を見つめると言った。
「いいじゃないか・・・。だって・・・ずっと君が側にいなくて・・・寂しかったんだよ・・。」
「え・・?」
言いながら徐々にダニエル先輩が顔を近付けてきて・・・・。
「はいはい~。そこまでだよ。」
突然マイケルさんがダニエル先輩の腕を振りほどき、私を引き剥がした。
「何するんだよ!折角いいところだったのに!」
ダニエル先輩が怒って抗議するとマイケルさんは言った。
「はいはい、抜け駆けは禁止だよ。さあ、お嬢さん。今彼等に手伝って貰っておつまみを沢山作っているからね~。」
言いながらマイケルさんはテーブルに次々と料理を並べていく。
「す・・すごい!いつの間に用意していたんですか?」
「大した事ないよ、これ位・・・。俺はね、お嬢さん。料理を作る事が大好きなんだ。」
「すごいですね・・尊敬します!」
私は両手を胸の前で組んでマイケルさんを見上げると、ダニエル先輩は面白くなさそうな顔をして何やらブツブツ独り言を言ってる。
「あの、私もお手伝いしますよ。」
「うん、それじゃ出来上がった料理を運んでもらおうかな?」
「はい!」
この日の夜は皆でお酒を飲んだり、食べたりと、おお賑わいの夜となった。
そして、夜は更けてゆく—。
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