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第5章 2 アラン王子の救出
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今、私達はバラバラになって神殿内を探索している。ダニエル先輩はノア先輩を探すと言い、先に神殿の中へと潜入していた。
私は姿を完全に消しているのでデヴィットと共に行動しているのだが、前後に並んで歩き、会話を交わす事もしていない。
それにしても・・・なんて広さなのだろう。
『ワールズ・エンド』へ行った時は門がある1階にしか言った事が無かったのだが、神殿は7階建ての構造となっている。果たして、何故これほどまでの巨大建造物にする必要があったのだろうか?確かに私は小説の中で神殿の事について記述したが、これ程巨大な建造物を想像して書いた事は無かった。やはり、この世界は私のPCに収められていた、『聖剣士と剣の乙女』のanotherの世界なのかもしれない・・・。
私とデヴィットはくまなく神殿を探し続け・・・・神殿の最上階に辿りいた時・・・ついにアラン王子を発見した。
アラン王子は何か台座の上のようなものに寝かされている。そしてソフィーはどうやらその様子をじっと伺っているようにも見えた。
それにしても・・・ソフィーは一体何と言う姿をしているのだろう。
まるで一昔前に流行したフワフワでフリルたっぷりのウェディングドレスのような服を着ている。・・・趣味悪すぎ・・・。私はそのドレスを見た時、咄嗟にそう思ってしまった。
「くそ・・・っ!一体何をしてるんだ?あいつ等は・・・。」
デヴィットは苛立ちを含んだ声で呟いている。・・・本当に彼等は何をしているのだろうか?台座に寝かされたアラン王子は・・・てっきり眠っているのかと思っていたが、目は開いている。しかし・・・あの綺麗なアイスブルーの瞳は何処にもなく、青黒く濁った瞳は・・・光を失い、口は半開きのまま、瞬き1つしていなかった。そしてアラン王子の四肢は力なくだらんとしている。・・・何て酷い姿に・・・。あのアラン王子が・・・ソフィーによってあんな酷い目に・・・。
部屋の中は怪しげな甘ったるい匂いが充満している・・。そして時折、風に乗って運ばれてくる呪文のような言葉がソフィーの口から紡ぎ出されている様だった。
やがてソフィーが言った。
「さあ、アラン王子・・・。いい加減にあのジェシカの記憶を完全に消しなさい。
ジェシカ・リッジウェイは・・・『魔界の門』の封印を解き・・・この世界から・・・太陽の光と星々・・・月の光を奪った憎むべき悪女・・・。」
しかし、アラン王子は虚ろな瞳のまま・・・口を開いた。
「ジェ・・ジェシカは・・・俺が憎むべき相手・・・・い、いや・・彼女は悪女なんかじゃない・・。お・・・俺は・・・ジェシカを・・・」
苦し紛れに呟くアラン王子の言葉が・・・何故か私の耳にはっきり聞こえてきた。
「!」
ア・・・アラン王子・・・。酷い・・ソフィー・・・・!アラン王子を愛しているのなら・・・どうしてそんな酷い事が出来るの?
思わず目に涙が浮かんできて・・・デヴィットが無言で私の手を握りしめて来た。
「チッ!・・本当に・・・中々しぶといわね、アラン王子・・・。だけど・・いつまでも私を受け入れずに抵抗を続けていると・・・今に死ぬことになるわよ?」
ソフィーはまるで恐ろしい魔女のような台詞をアラン王子にぶつける。
「やはり・・・もっと香料を・・増やした方がいいかもしれなわね・・・。」
言いながら、ソフィーはお香を焚いている容器に何かを加えている。
そして容器のふたを閉めると言った。
「アラン王子・・。早く私の全てを受け入れてね・・・・。そして・・・あの女を私の元へ連れて来て頂戴・・・。」
ソフィーはアラン王子に口付けすると、台座にアラン王子を残したまま、その場を後にした―。
「ジェシカ・・・・どうやら・・・ソフィーの奴・・立ち去ったようだな?」
デヴィットは辺りの様子を探りながら言った。
「は、はい・・・。」
「よし、それじゃジェシカ。絶対に俺の側から離れるなよ・・・。今からアラン王子の元へ行く。だが・・・少しでも危険を感じたら・・・その時は転移魔法で逃げるからな・・・・いいか?」
「はい・・・・。分かりました。」
私達は手を繋ぎ、ゆっくりとアラン王子に近付いて行った。
「くそっ!一体何だ・・・・?この・・部屋中に充満する甘ったるい匂いは・・・。」
デヴィットが忌々し気に言う。だけど・・私はこの匂いを知っている。これは・・・ソフィーが得意の催眠暗示をかける時に使用している香料に違いない・・・・。
私はデヴィットの袖を引いて言った。
「デヴィットさん・・・。これはソフィーが催眠暗示をかける時に使用する香料です・・。まずは・・この匂いを止めないと・・・っ!」
「香料・・・あった!あれかっ?!」
デヴィットはアラン王子の四隅に置かれた陶器の入れ物を発見すると、素早く蓋を開け、中身を全部床にぶちまけると、足で踏みつけて火を消した。
「アラン王子・・・。」
私は力なく寝かされているアラン王子の傍へ行くと、顔を覗き込んでみた。けれど、アラン王子のどす黒く濁った瞳は私の姿を映していない。
何て酷い姿に・・・。私は思わずそっとアラン王子の頬に左手を添えた。
すると途端に私の左腕が光り輝き、それに伴いアラン王子の右手も光り出したのだ。
こ、これは・・・まさか・・・?!
「まさかっ・・・!」
デヴィットも声を上げている。
その時・・・私は気が付いた。アラン王子の瞳が徐々に光を取り戻し・・・真っ青だった顔に血色が戻っていくのを・・・。
「こ・・・これは・・・?」
思わず言葉に出すと、いつの間にか私のすぐ側に立っていたデヴィットが語った。
「聖女が・・・聖剣士に触れたから・・・解毒作用が起こったんだ・・・。」
「え・・?」
私は背後に立つデヴィットを振り返った。するとデヴィットは悲し気に微笑むと言った。
「つまり・・・アラン王子は・・・間違いなく、ジェシカ。お前の聖剣士だって事だ。その証拠に・・見て見ろよ。アラン王子の様子を・・・。」
「あ・・・・。」
アラン王子は暫くは自分の身に何が起こったのか、信じられない様子で床の上に寝そべったままの姿勢でいたが、鎧兜に身を包んだデヴィットを認めると起き上がった。
「何だ・・・?お前は・・・ソフィーの兵士じゃ無いか・・・。ここはお前たちは立ち入り禁止区域だった・・・はずだぞ・・?でも・・それにしては妙だ・・。やけに頭がすっきりしている。」
アラン王子は身体を起こしながら言うと、デヴィットが言った。
「ほう、それは良かったな。アラン王子・・・それなら・・今一発ここで殴らせろ。」
デヴィットがとんでもないことを言って来た。ちなみに・・私はまだ薬の効果と姿を消すマントを羽織っているのでアラン王子は私の事は全く認識出来ていない。
「な・・何?お前一体何を・・・。」
アラン王子が最後まで言葉を発する前にデヴィットは問答無用でいきなりアラン王子の右頬を拳で殴りつけた。アラン王子はそのまま床に倒れ込み、デヴィットに怒鳴りつけた。
「き・・・貴様っ!一介の兵士が・・王子の俺に何をするんだっ!俺の国へ報告すれば・・・いつでも牢獄に送れるんだぞッ!」
「ほーう。それだけ無駄口を叩けるのなら・・もう問題無いな。よし、今からここを逃げるぞ。」
言いながらデヴィットは兜を剥ぎ取ると、アラン王子がデヴィットを指さして言った。
「お・・・お前はあの時の・・・ジェシカの聖剣士・・・っ!」
「ああ、そうだ。俺の名前は・・・デヴィット。でも知ってるだろうな。何せお前の腕の中で愛しいジェシカが俺の名を呼んだのをお前は聞いていたからなあ?」
ああ・・・!もう、一体いつまでこんな不毛な言い争いをしているのだろう!
痺れを切らした私は・・・とうとう自分からマントを脱ぎ棄てた。
途端に現れる私の姿を見たアラン王子の目が驚愕に見開かれる。
「ま・・まさか・・・ジェシカかっ?!」
「ああ、そうだ。俺の大切な聖女、ジェシカだ。」
デヴィットはアラン王子に見せつけるかのように私をグイッと抱き寄せると言った。
「どうする?俺達と一緒に来るか?それとも・・・ソフィーの側に・・いるか?」
「そんなの・・・聞くまでも無い・・・っ!」
そして、私達はデヴィットの転移魔法で神殿から脱出した―。
私は姿を完全に消しているのでデヴィットと共に行動しているのだが、前後に並んで歩き、会話を交わす事もしていない。
それにしても・・・なんて広さなのだろう。
『ワールズ・エンド』へ行った時は門がある1階にしか言った事が無かったのだが、神殿は7階建ての構造となっている。果たして、何故これほどまでの巨大建造物にする必要があったのだろうか?確かに私は小説の中で神殿の事について記述したが、これ程巨大な建造物を想像して書いた事は無かった。やはり、この世界は私のPCに収められていた、『聖剣士と剣の乙女』のanotherの世界なのかもしれない・・・。
私とデヴィットはくまなく神殿を探し続け・・・・神殿の最上階に辿りいた時・・・ついにアラン王子を発見した。
アラン王子は何か台座の上のようなものに寝かされている。そしてソフィーはどうやらその様子をじっと伺っているようにも見えた。
それにしても・・・ソフィーは一体何と言う姿をしているのだろう。
まるで一昔前に流行したフワフワでフリルたっぷりのウェディングドレスのような服を着ている。・・・趣味悪すぎ・・・。私はそのドレスを見た時、咄嗟にそう思ってしまった。
「くそ・・・っ!一体何をしてるんだ?あいつ等は・・・。」
デヴィットは苛立ちを含んだ声で呟いている。・・・本当に彼等は何をしているのだろうか?台座に寝かされたアラン王子は・・・てっきり眠っているのかと思っていたが、目は開いている。しかし・・・あの綺麗なアイスブルーの瞳は何処にもなく、青黒く濁った瞳は・・・光を失い、口は半開きのまま、瞬き1つしていなかった。そしてアラン王子の四肢は力なくだらんとしている。・・・何て酷い姿に・・・。あのアラン王子が・・・ソフィーによってあんな酷い目に・・・。
部屋の中は怪しげな甘ったるい匂いが充満している・・。そして時折、風に乗って運ばれてくる呪文のような言葉がソフィーの口から紡ぎ出されている様だった。
やがてソフィーが言った。
「さあ、アラン王子・・・。いい加減にあのジェシカの記憶を完全に消しなさい。
ジェシカ・リッジウェイは・・・『魔界の門』の封印を解き・・・この世界から・・・太陽の光と星々・・・月の光を奪った憎むべき悪女・・・。」
しかし、アラン王子は虚ろな瞳のまま・・・口を開いた。
「ジェ・・ジェシカは・・・俺が憎むべき相手・・・・い、いや・・彼女は悪女なんかじゃない・・。お・・・俺は・・・ジェシカを・・・」
苦し紛れに呟くアラン王子の言葉が・・・何故か私の耳にはっきり聞こえてきた。
「!」
ア・・・アラン王子・・・。酷い・・ソフィー・・・・!アラン王子を愛しているのなら・・・どうしてそんな酷い事が出来るの?
思わず目に涙が浮かんできて・・・デヴィットが無言で私の手を握りしめて来た。
「チッ!・・本当に・・・中々しぶといわね、アラン王子・・・。だけど・・いつまでも私を受け入れずに抵抗を続けていると・・・今に死ぬことになるわよ?」
ソフィーはまるで恐ろしい魔女のような台詞をアラン王子にぶつける。
「やはり・・・もっと香料を・・増やした方がいいかもしれなわね・・・。」
言いながら、ソフィーはお香を焚いている容器に何かを加えている。
そして容器のふたを閉めると言った。
「アラン王子・・。早く私の全てを受け入れてね・・・・。そして・・・あの女を私の元へ連れて来て頂戴・・・。」
ソフィーはアラン王子に口付けすると、台座にアラン王子を残したまま、その場を後にした―。
「ジェシカ・・・・どうやら・・・ソフィーの奴・・立ち去ったようだな?」
デヴィットは辺りの様子を探りながら言った。
「は、はい・・・。」
「よし、それじゃジェシカ。絶対に俺の側から離れるなよ・・・。今からアラン王子の元へ行く。だが・・・少しでも危険を感じたら・・・その時は転移魔法で逃げるからな・・・・いいか?」
「はい・・・・。分かりました。」
私達は手を繋ぎ、ゆっくりとアラン王子に近付いて行った。
「くそっ!一体何だ・・・・?この・・部屋中に充満する甘ったるい匂いは・・・。」
デヴィットが忌々し気に言う。だけど・・私はこの匂いを知っている。これは・・・ソフィーが得意の催眠暗示をかける時に使用している香料に違いない・・・・。
私はデヴィットの袖を引いて言った。
「デヴィットさん・・・。これはソフィーが催眠暗示をかける時に使用する香料です・・。まずは・・この匂いを止めないと・・・っ!」
「香料・・・あった!あれかっ?!」
デヴィットはアラン王子の四隅に置かれた陶器の入れ物を発見すると、素早く蓋を開け、中身を全部床にぶちまけると、足で踏みつけて火を消した。
「アラン王子・・・。」
私は力なく寝かされているアラン王子の傍へ行くと、顔を覗き込んでみた。けれど、アラン王子のどす黒く濁った瞳は私の姿を映していない。
何て酷い姿に・・・。私は思わずそっとアラン王子の頬に左手を添えた。
すると途端に私の左腕が光り輝き、それに伴いアラン王子の右手も光り出したのだ。
こ、これは・・・まさか・・・?!
「まさかっ・・・!」
デヴィットも声を上げている。
その時・・・私は気が付いた。アラン王子の瞳が徐々に光を取り戻し・・・真っ青だった顔に血色が戻っていくのを・・・。
「こ・・・これは・・・?」
思わず言葉に出すと、いつの間にか私のすぐ側に立っていたデヴィットが語った。
「聖女が・・・聖剣士に触れたから・・・解毒作用が起こったんだ・・・。」
「え・・?」
私は背後に立つデヴィットを振り返った。するとデヴィットは悲し気に微笑むと言った。
「つまり・・・アラン王子は・・・間違いなく、ジェシカ。お前の聖剣士だって事だ。その証拠に・・見て見ろよ。アラン王子の様子を・・・。」
「あ・・・・。」
アラン王子は暫くは自分の身に何が起こったのか、信じられない様子で床の上に寝そべったままの姿勢でいたが、鎧兜に身を包んだデヴィットを認めると起き上がった。
「何だ・・・?お前は・・・ソフィーの兵士じゃ無いか・・・。ここはお前たちは立ち入り禁止区域だった・・・はずだぞ・・?でも・・それにしては妙だ・・。やけに頭がすっきりしている。」
アラン王子は身体を起こしながら言うと、デヴィットが言った。
「ほう、それは良かったな。アラン王子・・・それなら・・今一発ここで殴らせろ。」
デヴィットがとんでもないことを言って来た。ちなみに・・私はまだ薬の効果と姿を消すマントを羽織っているのでアラン王子は私の事は全く認識出来ていない。
「な・・何?お前一体何を・・・。」
アラン王子が最後まで言葉を発する前にデヴィットは問答無用でいきなりアラン王子の右頬を拳で殴りつけた。アラン王子はそのまま床に倒れ込み、デヴィットに怒鳴りつけた。
「き・・・貴様っ!一介の兵士が・・王子の俺に何をするんだっ!俺の国へ報告すれば・・・いつでも牢獄に送れるんだぞッ!」
「ほーう。それだけ無駄口を叩けるのなら・・もう問題無いな。よし、今からここを逃げるぞ。」
言いながらデヴィットは兜を剥ぎ取ると、アラン王子がデヴィットを指さして言った。
「お・・・お前はあの時の・・・ジェシカの聖剣士・・・っ!」
「ああ、そうだ。俺の名前は・・・デヴィット。でも知ってるだろうな。何せお前の腕の中で愛しいジェシカが俺の名を呼んだのをお前は聞いていたからなあ?」
ああ・・・!もう、一体いつまでこんな不毛な言い争いをしているのだろう!
痺れを切らした私は・・・とうとう自分からマントを脱ぎ棄てた。
途端に現れる私の姿を見たアラン王子の目が驚愕に見開かれる。
「ま・・まさか・・・ジェシカかっ?!」
「ああ、そうだ。俺の大切な聖女、ジェシカだ。」
デヴィットはアラン王子に見せつけるかのように私をグイッと抱き寄せると言った。
「どうする?俺達と一緒に来るか?それとも・・・ソフィーの側に・・いるか?」
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