70 / 98
24 置き去り
しおりを挟む
「あれは一年ほど前の戦場でのことだった。その日も、ミレーユは父親の命令で無理やり戦争に行かされた。それは相手の戦力が倍以上、上回っていたからだったらしい。他の戦場にも兵士がかりだされていたためにミレーユが出向くことになったんだ」
ぽつりぽつりとジェイクは語り始めた。
「ミレーユのように魔法を使える者は僅かだ。特に炎を操れるような魔術師はそうそういない。魔法使いが一人いるだけで、百人分の兵力になると言われているくらいだからな」
私は黙って彼の話を聞いていた。
私は、かつて本物のユリアナだった頃、数多の戦場で戦ってきた。でも一度も魔法使いはいなかった。
「戦いは圧倒的にミレーユが率いる部隊が有利だった……何しろ、遠くに離れた敵も炎の魔法で攻撃できるのだから。けれど……誤算があった。それは敵の部隊は銃を装備していたことだった。先頭部隊は銃を構え、一斉に攻撃を始めた」
ジェイクの説明は私が夢で見た光景と同じだった。
「ユリアナが率いる部隊は次々と敵の攻撃を受け、倒れていった。危うくミレーユも命を落としそうになったが、一人の兵士の犠牲で死なずに済んだ。だが……自分の眼前で、しかも自分をかばったせいで、死んでしまった兵士を前に……ミレーユはあまりのショックで力が暴走してしまい……気づけば当たり一面焼け野原で敵味方を問わず、黒焦げの死体の山が……出来ていたそうだ……」
「同じです……夢で見た光景と……夢でさえ、私はあんなにもショックを受けたのですから、ミレーユの衝撃は相当だったかもしれませんね」
「確かにそうかも知れない……その後、放心状態のミレーユを連れ帰ってきたのが、ほんの僅か生き残った兵士たちだった。その後彼女は高熱を出して一週間も意識が戻らなかったんだ……」
「そうだったのですね……」
やはり、ジェイクはミレーユのことなら何でも知っている。ミレーユはジェイクを単なる政略結婚の相手と割り切っていたけれども、ジェイクは……
「どうかしたのか?」
「い、いえ。なんでもありません。それで、エドモントたちは……? ベルンハルト家の元・騎士たちはどうしていますか?」
「彼らなら、次の仲間たちを捜すために、旅立った。そしてそのまま敵討ちの旅に出ると言っていた」
「え……? う、嘘ですよね?」
ジェイクの言葉に耳を疑う。
「……嘘じゃない。彼らはユリアナには危険な目に遭ってもらいたくはないんだ。何しろ、たった一人だけ生き残ったベルンハルト公爵家の人間だから」
「そんな! 私が何の為に、ここまで来たと思っているのか分かっていたはずですよね!? それなのに……置き去りにして……私に手を引けというのですか!?」
気づけば、私は叫んでいた――
ぽつりぽつりとジェイクは語り始めた。
「ミレーユのように魔法を使える者は僅かだ。特に炎を操れるような魔術師はそうそういない。魔法使いが一人いるだけで、百人分の兵力になると言われているくらいだからな」
私は黙って彼の話を聞いていた。
私は、かつて本物のユリアナだった頃、数多の戦場で戦ってきた。でも一度も魔法使いはいなかった。
「戦いは圧倒的にミレーユが率いる部隊が有利だった……何しろ、遠くに離れた敵も炎の魔法で攻撃できるのだから。けれど……誤算があった。それは敵の部隊は銃を装備していたことだった。先頭部隊は銃を構え、一斉に攻撃を始めた」
ジェイクの説明は私が夢で見た光景と同じだった。
「ユリアナが率いる部隊は次々と敵の攻撃を受け、倒れていった。危うくミレーユも命を落としそうになったが、一人の兵士の犠牲で死なずに済んだ。だが……自分の眼前で、しかも自分をかばったせいで、死んでしまった兵士を前に……ミレーユはあまりのショックで力が暴走してしまい……気づけば当たり一面焼け野原で敵味方を問わず、黒焦げの死体の山が……出来ていたそうだ……」
「同じです……夢で見た光景と……夢でさえ、私はあんなにもショックを受けたのですから、ミレーユの衝撃は相当だったかもしれませんね」
「確かにそうかも知れない……その後、放心状態のミレーユを連れ帰ってきたのが、ほんの僅か生き残った兵士たちだった。その後彼女は高熱を出して一週間も意識が戻らなかったんだ……」
「そうだったのですね……」
やはり、ジェイクはミレーユのことなら何でも知っている。ミレーユはジェイクを単なる政略結婚の相手と割り切っていたけれども、ジェイクは……
「どうかしたのか?」
「い、いえ。なんでもありません。それで、エドモントたちは……? ベルンハルト家の元・騎士たちはどうしていますか?」
「彼らなら、次の仲間たちを捜すために、旅立った。そしてそのまま敵討ちの旅に出ると言っていた」
「え……? う、嘘ですよね?」
ジェイクの言葉に耳を疑う。
「……嘘じゃない。彼らはユリアナには危険な目に遭ってもらいたくはないんだ。何しろ、たった一人だけ生き残ったベルンハルト公爵家の人間だから」
「そんな! 私が何の為に、ここまで来たと思っているのか分かっていたはずですよね!? それなのに……置き去りにして……私に手を引けというのですか!?」
気づけば、私は叫んでいた――
48
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
【完結】婚約破棄はいいですよ?ただ…貴方達に言いたいことがある方々がおられるみたいなので、それをしっかり聞いて下さいね?
水江 蓮
ファンタジー
「ここまでの悪事を働いたアリア・ウィンター公爵令嬢との婚約を破棄し、国外追放とする!!」
ここは裁判所。
今日は沢山の傍聴人が来てくださってます。
さて、罪状について私は全く関係しておりませんが折角なのでしっかり話し合いしましょう?
私はここに裁かれる為に来た訳ではないのです。
本当に裁かれるべき人達?
試してお待ちください…。
婚約破棄は構いませんが、私が管理していたものは全て引き上げます 〜成金伯爵家令嬢は、もう都合のいい婚約者ではありません〜
藤原遊
ファンタジー
成金と揶揄される伯爵家の令嬢である私は、
名門だが実情はジリ貧な公爵家の令息と婚約していた。
公爵家の財政管理、契約、商会との折衝――
そのすべてを私が担っていたにもかかわらず、
彼は隣国の王女と結ばれることになったと言い出す。
「まあ素敵。では、私たちは円満に婚約解消ですね」
そう思っていたのに、返ってきたのは
「婚約破棄だ。君の不出来が原因だ」という言葉だった。
……はぁ?
有責で婚約破棄されるのなら、
私が“善意で管理していたもの”を引き上げるのは当然でしょう。
資金も、契約も、人脈も――すべて。
成金伯爵家令嬢は、
もう都合のいい婚約者ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる