里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
2 / 72

第2話 内密で様子を見に行きます

しおりを挟む
「こ、こ、こ…。」

父は離婚届があまりにショックだったのか言葉が出なくなってしまった。

「大変!お父さんがショックで鶏になってしまったわ!」

マリーもパニックのあまり、わけの分からない事をいう。そして当の私が1人冷静に離婚届とセットで郵送されてきた手紙に目を通していた。手紙の内容はこうだった。

『フェリシアへ 
君と結婚して、早2年の歳月が流れたが未だに君は子供を産まない。父も母もこれ以上孫を待つのは限界だ、そんな嫁はさっさと離婚してもっと年の若い女性と再婚するようにと勧めている。今まで父と母を説得してきたが、これ以上は限界だ。やはり俺も子供が欲しい。今回、君が実家に里帰りしたのも何かの縁だろう。このまま俺と離婚してくれ。同封した離婚届けにサイン後、速やかに俺の元へ送るように。君の持っていたドレスとアクセサリーはコネリー家で買ったものなので返却は出来ない。しかし恨むのはやめてくれよ?これは君が子供を出産できなかった罰だと思ってくれ。尚、慰謝料にも応じられない。君の次の幸せを心より祈る。
デニムより 』

は?何これ…全く意味が分からないのですけど?

「な、な、何だっ?!こ、こ、このふざけた内容の手紙はっ!」

父は今にも卒倒しそうな勢いで髪をかきむしっている。

「本当にふざけた手紙ね…!私が出産したばかりの身体でなければゴルフクラブを持って殴り込みに行ってやるのに…っ!!もともと子供なんか生まれっこ無いのに!」

普段はおしとやかだが、怒りのあまり理性が切れると豹変する妹の顔が久々に現れた。

そう、何故妹が『生まれっこ無いのに!』と言ったのかは理由がある。それは結婚して2年になるのに私、フェリシア・コネリーとデニム・コネリーは世間でいう『白い結婚』のままだったからだ。
デニムは初めから私との結婚を拒絶していた。恐らく結婚当初から今回の計画を練っていたのかもしれない…。

 あれは2年前の事だった。
元々私たち一家は貴族ではなく、商売で財を成したいわゆる成金家系だった。見栄っ張りの父と母はどうしても貴族の仲間入りをしたく、ありとあらゆる方法で貴族になる方法を探し…ついに、今にも没落寸前の伯爵家に目を付けた。そこの子息と私の年齢がたまたま近いという事と、私には恋人も決まった相手もいなかったことから当人同士の意見を無視し、お互いに顔も知らないまま結婚式を挙げることになってしまったのだった―。

この私たちの結婚により、コネリー家は大金を得ることが出来、我が家は伯爵家の称号を得る事が出来た。
 教会で初めて顔を合わせた夫であるデニムは当時23歳で、栗毛色の髪を持つ中々のハンサムな男性で優しい面立ちをしていた。きっとこの人となら初対面でもうまくやって行けるだろうと思っていたのに…。

「やられたわ…。デニムは初めから私とは離婚するつもりで結婚したのね。あれほど結婚を嫌がっていたのに、最終的には素直に応じたからおかしいと思っていたのよ。だけどデニムの両親だって、私たちの結婚生活がどういう状態か知っていたはずなのに‥。」

私とデニムがあの屋敷で寝室が別々だったのは彼の両親だけでなく、全ての使用人が
知っていた。食事だって私だけは別室で食べさせられ、彼らの一家団欒には入れて貰えなかった。それでも私はあの家の為に精一杯尽くしてきたつもりだったのに、まさかこのような言いがかりをつけられて離婚届けを送り付けてくるとは…。

「どうするのだ?フェリシア。まさかこのまま離婚届にサインをして書類を送るつもりなのか?」

どうしても貴族という称号を手放したくない父はオロオロしている。

「何言ってるのっ?!お父さん!こんなの離婚に決まっているでしょうっ?!剃刀と一緒にサインをした離婚届を送り付けてやればいいのよっ!」

一方の妹は怒りが収まらない。

「まあまあ‥‥2人とも落ち着いて。」

私は冷静に言う。

「何か妙案があるのかい?」

「離婚する気になったのね?!」

父とマリーが尋ねてくる。

「離婚届にサインもしないし、郵送もしない。とりあえず…内密で様子を見に行ってくるわ。」

まずは敵情視察?からだ。

離婚するのは少しも構わないけれども、このままおとなしく離婚などしてやるものですか―。





しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さくら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

処理中です...