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マルセルの章 ㉝ 君に伝えたかった言葉
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ガタンッ!!
突然席を立つ音が聞こえた。
「「え?」」
俺とカイは驚いた。突然イングリット嬢が立ち上がったのだ。しかもその顔は青ざめている。
「どうしたんだ?イングリット嬢」
声を掛けると震えながら彼女は言った。
「あ、あの…わ、私…急用を思い出したので帰ります…!」
「なら、送ろう。カイ、すみませんが…」
言いかけた時、イングリット嬢は口調を強めた。
「いいえっ!私のことなら大丈夫ですっ!どうか…カイザード様とマルセル様はそのままお話しを続けて下さい!」
「しかし…」
「ええ、僕の事なら大丈夫だから…」
するとイングリット嬢は俺を見た。
「マルセル様、カイザード様と明後日、『キーナ』に行かれるのですよね?その為に色々お話するべきことがあるのではないですか?私の事なら大丈夫ですから」
「しかし…」
「お願いですから!先に…帰らせて下さい…」
イングリット嬢は懇願する目で俺を見つめてきた。仕方ない…まだ肝心の話は出来ていないが、今はカイとの話のほうが重要だ。それに何よりイングリット嬢が1人になりたがっているように感じた。
「わ、分かった…。それじゃ気をつけて帰るんだよ?」
「え、ええ…。ではお先に失礼致します。カイザード様…どうぞお元気で行ってらっしゃいませ」
イングリット嬢はドレスの裾をつまんで俺たちに挨拶をするとそのまま店を出ていってしまった。
「…。1人で帰して大丈夫だろうか…」
ポツリと呟くとカイが言った。
「まぁ仕方ないよ。ショックだったんだろう。でも悪いことしてしまったかな…恋人を引き離す様な真似を僕がしてしまったのだから」
「え?恋人?何の事ですか?」
カイの言っている意味がよく分からなかったので聞き直した。
「え…?君とイングリットさんは恋人同士だろう?」
すると今度はカイが驚いた様子で尋ねてきた。
「まさか!違いますよ。俺と彼女は単なる友人です。ただ彼女の両親に誤解されて今にも結婚させられそうになっているのです。それでどうすれば誤解を解いて結婚の話を無かった事にすれば良いか2人で話し合う為に今夜は会っていただけですよ」
「…」
しかし何故かカイは目を見開いて俺を見ている。
「カイ?どうしたのですか?」
「マルセル…君はまさか本気でそんな事を言っているのかい?」
「え?一体どういう意味ですか?」
訳が分からず首を傾げる。
「僕の目から見ても…2人は何処からどう見ても良い雰囲気に見えたよ?」
「え…?カイまで何を言っているのですか?ハハハ…そんな冗談は…」
しかし、カイは真剣な顔で俺を見ている。
「ま、まさか…」
カイは頷くと言った。
「マルセル…君はどう思っているかは知らないが、イングリット嬢の君を見る目は…完全に君に恋している目に見えた。きっとイングリット嬢の中ではもう君の事を恋人として見ていたと思うよ?」
「そ、そんな何故…俺は彼女に好意を寄せる素振りを…」
そこまで言いかけて今までの事を振り返ってみた。そう言えば母にもフットマンにも…何故か同僚女性にまで妙な事を言われた気がする…。
「マルセル…今夜は誰が誘ってここへ連れて来たんだい?」
「それは…俺が彼女を誘って、そしてこの店に連れてきたのも…俺です。大事な話があるからと言って…」
するとカイはため息をつくと言った。
「そんな思わせぶりな言い方で、こんなに雰囲気の良い店に誘われれば…デートに誘われたのだと誰だって勘違いするんじゃないかな…。でも僕もいけなかったよ。イングリット嬢のあの反応を見るまでは半信半疑だったから…すまなかった」
カイは俺に頭を下げてきた―。
突然席を立つ音が聞こえた。
「「え?」」
俺とカイは驚いた。突然イングリット嬢が立ち上がったのだ。しかもその顔は青ざめている。
「どうしたんだ?イングリット嬢」
声を掛けると震えながら彼女は言った。
「あ、あの…わ、私…急用を思い出したので帰ります…!」
「なら、送ろう。カイ、すみませんが…」
言いかけた時、イングリット嬢は口調を強めた。
「いいえっ!私のことなら大丈夫ですっ!どうか…カイザード様とマルセル様はそのままお話しを続けて下さい!」
「しかし…」
「ええ、僕の事なら大丈夫だから…」
するとイングリット嬢は俺を見た。
「マルセル様、カイザード様と明後日、『キーナ』に行かれるのですよね?その為に色々お話するべきことがあるのではないですか?私の事なら大丈夫ですから」
「しかし…」
「お願いですから!先に…帰らせて下さい…」
イングリット嬢は懇願する目で俺を見つめてきた。仕方ない…まだ肝心の話は出来ていないが、今はカイとの話のほうが重要だ。それに何よりイングリット嬢が1人になりたがっているように感じた。
「わ、分かった…。それじゃ気をつけて帰るんだよ?」
「え、ええ…。ではお先に失礼致します。カイザード様…どうぞお元気で行ってらっしゃいませ」
イングリット嬢はドレスの裾をつまんで俺たちに挨拶をするとそのまま店を出ていってしまった。
「…。1人で帰して大丈夫だろうか…」
ポツリと呟くとカイが言った。
「まぁ仕方ないよ。ショックだったんだろう。でも悪いことしてしまったかな…恋人を引き離す様な真似を僕がしてしまったのだから」
「え?恋人?何の事ですか?」
カイの言っている意味がよく分からなかったので聞き直した。
「え…?君とイングリットさんは恋人同士だろう?」
すると今度はカイが驚いた様子で尋ねてきた。
「まさか!違いますよ。俺と彼女は単なる友人です。ただ彼女の両親に誤解されて今にも結婚させられそうになっているのです。それでどうすれば誤解を解いて結婚の話を無かった事にすれば良いか2人で話し合う為に今夜は会っていただけですよ」
「…」
しかし何故かカイは目を見開いて俺を見ている。
「カイ?どうしたのですか?」
「マルセル…君はまさか本気でそんな事を言っているのかい?」
「え?一体どういう意味ですか?」
訳が分からず首を傾げる。
「僕の目から見ても…2人は何処からどう見ても良い雰囲気に見えたよ?」
「え…?カイまで何を言っているのですか?ハハハ…そんな冗談は…」
しかし、カイは真剣な顔で俺を見ている。
「ま、まさか…」
カイは頷くと言った。
「マルセル…君はどう思っているかは知らないが、イングリット嬢の君を見る目は…完全に君に恋している目に見えた。きっとイングリット嬢の中ではもう君の事を恋人として見ていたと思うよ?」
「そ、そんな何故…俺は彼女に好意を寄せる素振りを…」
そこまで言いかけて今までの事を振り返ってみた。そう言えば母にもフットマンにも…何故か同僚女性にまで妙な事を言われた気がする…。
「マルセル…今夜は誰が誘ってここへ連れて来たんだい?」
「それは…俺が彼女を誘って、そしてこの店に連れてきたのも…俺です。大事な話があるからと言って…」
するとカイはため息をつくと言った。
「そんな思わせぶりな言い方で、こんなに雰囲気の良い店に誘われれば…デートに誘われたのだと誰だって勘違いするんじゃないかな…。でも僕もいけなかったよ。イングリット嬢のあの反応を見るまでは半信半疑だったから…すまなかった」
カイは俺に頭を下げてきた―。
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