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マルセルの章 ㉞ 君に伝えたかった言葉
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「マルセル…これからどうするんだい?謝罪…しに行くのかい」
カイの質問に思わず言葉を無くしてしまった。謝罪?そもそも何と謝罪すればよいのだろう?
「イングリット譲に好意を持たせるような行動を取って申し訳ないという事を謝罪すれば良いのでしょうか…?それとも、そもそもイングリット譲と俺は元々恋人同士でも何でも無く、結婚の話は無かった事にして欲しいと彼女の両親に謝罪しに行くことなのでしょうか…?」
自問自答するようにカイに尋ねた。
「…」
カイも俺の言葉に少しの間、口を閉ざしていたが…。
「マルセル、君はイングリット嬢の事をどう思っていたんだい?」
「え…?」
「つまり、彼女に対して好意を持っていたかどうかだよ」
カイはワインを口にすると尋ねてきた。
「好意というよりは、好きか嫌いかを尋ねられればすぐに答えられるのですが…嫌いでは無かったです。ただ、好きかどうかを尋ねられると…」
そして口を閉ざした。
「そうなのか…でも僕から見れば少なくとも君はイングリット譲と話をしている時、とても楽しげに見えたよ」
「そ、そうなのですか…?自分では少しも気づきませんでした」
他者から見れば、そんな風に見えたのか…。
「それで、どうするんだい?」
カイの言葉に俺は悩んだ。だが、今は明後日の面接に集中したい。話をしに行くのは面接の後でもいいだろう。
「カイ…。俺は今は明後日に行われる面接に集中したいです。『キーナ』から戻って来てから…イングリット嬢の事は考えます」
「…」
カイはまたしても考え込む素振りを見せていた。そして俺を見ると言った。
「そうだね…。これはマルセルとイングリット嬢の問題だから…僕が口を挟む権利は無いし、確かに明後日の面接の備えも必要だしね。よし、それじゃマルセルに面接でどんな事を質問されるか教えておくよ」
「はい、お願いします」
そしてその夜、俺は店の閉店時間ギリギリまでカイに面接についての内容と対策を教えてもらった―。
****
帰宅したのは深夜0時を過ぎていた。
すっかり静まり返ったエントランスの扉を開けて室内へ入り、自室を目指し廊下を歩いていると背後から声を掛けられた。
「お帰り、マルセル。随分遅かったわね」
「うわぁあっ!!」
突然声を掛けられ、俺は情けない声を上げてしまった。
「ちょ!ちょっとマルセルッ!いきなり大声を出さないで頂戴っ!」
「あ…か、母さん…只今戻りました…」
母は難しい顔をして、俺を見ると言った。
「マルセル、大事な話があるの。私の部屋に来なさい」
「は、はい…」
大事な話?一体何だろう?だが俺も丁度話があったので都合がよい。
前を歩く母の後をついて歩いていくと部屋の中へと入っていく。俺も母の後に続いて部屋の中へ足を踏み入れた。
「座りなさい、マルセル」
母は自室のソファに座ると、向かい側の席を勧めてきた。
「はい」
大人しく座ると、母が言った。
「マルセル、イングリットさんのお父様から電話が入ったのよ。2人の結婚話はなかったことにしてくれと」
「えっ?!何ですってっ?!」
いきなりの話に耳を疑った。
「…酷く立腹されていたようだけど…元々私の目にはマルセルがあまりこの結婚話に乗り気では無い様子が分かったけれど…」
母は一度ため息をつくと言った。
「マルセル、貴方一体何をやらかしたの?」
母は俺をじっと見つめた―。
カイの質問に思わず言葉を無くしてしまった。謝罪?そもそも何と謝罪すればよいのだろう?
「イングリット譲に好意を持たせるような行動を取って申し訳ないという事を謝罪すれば良いのでしょうか…?それとも、そもそもイングリット譲と俺は元々恋人同士でも何でも無く、結婚の話は無かった事にして欲しいと彼女の両親に謝罪しに行くことなのでしょうか…?」
自問自答するようにカイに尋ねた。
「…」
カイも俺の言葉に少しの間、口を閉ざしていたが…。
「マルセル、君はイングリット嬢の事をどう思っていたんだい?」
「え…?」
「つまり、彼女に対して好意を持っていたかどうかだよ」
カイはワインを口にすると尋ねてきた。
「好意というよりは、好きか嫌いかを尋ねられればすぐに答えられるのですが…嫌いでは無かったです。ただ、好きかどうかを尋ねられると…」
そして口を閉ざした。
「そうなのか…でも僕から見れば少なくとも君はイングリット譲と話をしている時、とても楽しげに見えたよ」
「そ、そうなのですか…?自分では少しも気づきませんでした」
他者から見れば、そんな風に見えたのか…。
「それで、どうするんだい?」
カイの言葉に俺は悩んだ。だが、今は明後日の面接に集中したい。話をしに行くのは面接の後でもいいだろう。
「カイ…。俺は今は明後日に行われる面接に集中したいです。『キーナ』から戻って来てから…イングリット嬢の事は考えます」
「…」
カイはまたしても考え込む素振りを見せていた。そして俺を見ると言った。
「そうだね…。これはマルセルとイングリット嬢の問題だから…僕が口を挟む権利は無いし、確かに明後日の面接の備えも必要だしね。よし、それじゃマルセルに面接でどんな事を質問されるか教えておくよ」
「はい、お願いします」
そしてその夜、俺は店の閉店時間ギリギリまでカイに面接についての内容と対策を教えてもらった―。
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帰宅したのは深夜0時を過ぎていた。
すっかり静まり返ったエントランスの扉を開けて室内へ入り、自室を目指し廊下を歩いていると背後から声を掛けられた。
「お帰り、マルセル。随分遅かったわね」
「うわぁあっ!!」
突然声を掛けられ、俺は情けない声を上げてしまった。
「ちょ!ちょっとマルセルッ!いきなり大声を出さないで頂戴っ!」
「あ…か、母さん…只今戻りました…」
母は難しい顔をして、俺を見ると言った。
「マルセル、大事な話があるの。私の部屋に来なさい」
「は、はい…」
大事な話?一体何だろう?だが俺も丁度話があったので都合がよい。
前を歩く母の後をついて歩いていくと部屋の中へと入っていく。俺も母の後に続いて部屋の中へ足を踏み入れた。
「座りなさい、マルセル」
母は自室のソファに座ると、向かい側の席を勧めてきた。
「はい」
大人しく座ると、母が言った。
「マルセル、イングリットさんのお父様から電話が入ったのよ。2人の結婚話はなかったことにしてくれと」
「えっ?!何ですってっ?!」
いきなりの話に耳を疑った。
「…酷く立腹されていたようだけど…元々私の目にはマルセルがあまりこの結婚話に乗り気では無い様子が分かったけれど…」
母は一度ため息をつくと言った。
「マルセル、貴方一体何をやらかしたの?」
母は俺をじっと見つめた―。
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