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ヤンの章 ⑧ アゼリアの花に想いを寄せて
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「メロディ…」
僕はため息をつくとメロディ見た。彼女は何故かとても思いつめた様子で僕を見ている。
「『ハイネ』の町は遠すぎるよ。汽車を2回乗り換えて…5時間はかかるような場所じゃないか」
「ええ、そうよ。だから私は寮に入るんだから」
「例え、奨学金を貰えたとしても…生活費が払えないよ」
「だ、だったら私がお父さんに言ってあげる。出世払いでヤンにお金を貸してあげてって…。ね?だから…」
けれど徐々にメロディの声が小さくなってくる。彼女だって自分では分かっているんだ。滅茶苦茶な事を言っているということが…。
「メロディが僕の為に言ってくれている気持ちはありがたいけど…僕はもうレストランで働くって決めてるんだ。そして働いて得たお金を…少しでも今まで僕の世話をしてくれた教会に寄付したいんだよ。それに何より…」
「何よりって…何よ?」
「ここ『リンデン』にはアゼリア様のお墓があるんだよ。『ハイネ』なんて遠くに行ってしまったら、もう月命日にお墓参り出来なくなるよ」
「…本気で…本気でそんな事言ってるの?ヤン…」
メロディの声が震えている。
「そうだよ」
だって…。これが…今の僕に出来る精一杯の贖罪だから。…目の前で息を引き取っていくアゼリア様を見捨ててしまった僕の罪…。
「い、いい加減にしてよっ!」
突然メロディが町中にも関わらず大きな声を上げた。
「何よっ!いつまでいつまでもアゼリア様って…。アゼリア様が亡くなってどれだけの月日が経ったと思っているの?10年よ?10年っ!ヤンはその間、一度もアゼリア様の月命日のお墓参りを欠かしたことは無いけれど…もういい加減に終わりにしたらどうなの?!この先何十年も…ずっとそうやって生きていくの?この土地に縛り付けられて一生を終えるつもりなのっ?!」
メロディは肩で息をしながら僕を見た。
「メ、メロディ…」
「私…私はね…もういい加減…貴方に自由になって貰いたいのよ…」
いつしかメロディの目には涙が浮かんでいた―。
****
「ふぅ…」
メロディと別れ、教会へ戻る道すがらため息をついた。あの後メロディを何とか落ち着かせて家に帰らせたけど…。
「一体、どうしてメロディはあんなに『ハイネ』行きを僕に勧めるんだろう?1人で見知らぬ土地へ行くのが不安なのかな…?」
メロディにはピアノの才能がある。きっと将来有望なピアニストになるに違いない。僕はここ『リンデン』から一生離れることは無いだろうけど…メロディには僕の分まで頑張って、世界を飛び回って欲しい…。それが僕の願いだった。
****
「ただいま…」
「お帰りなさい、ヤン!」
教会に戻ると、慌てた様子でシスターアンジュが駆けつけてきた。
「どうしたんですか?シスターアンジュ」
「え、ええ…実は貴方に会いにベンジャミンが来ているのよ」
「え?ベンジャミン先生が?」
ベンジャミン先生はこの教会の出身で、弁護士をしている。一体この僕にどんな用事があるのだろう?
「そうよ。応接室に来ているからすぐに行ってあげて」
「はい」
僕はシスターアンジュに促され、応接室へ向かった―。
僕はため息をつくとメロディ見た。彼女は何故かとても思いつめた様子で僕を見ている。
「『ハイネ』の町は遠すぎるよ。汽車を2回乗り換えて…5時間はかかるような場所じゃないか」
「ええ、そうよ。だから私は寮に入るんだから」
「例え、奨学金を貰えたとしても…生活費が払えないよ」
「だ、だったら私がお父さんに言ってあげる。出世払いでヤンにお金を貸してあげてって…。ね?だから…」
けれど徐々にメロディの声が小さくなってくる。彼女だって自分では分かっているんだ。滅茶苦茶な事を言っているということが…。
「メロディが僕の為に言ってくれている気持ちはありがたいけど…僕はもうレストランで働くって決めてるんだ。そして働いて得たお金を…少しでも今まで僕の世話をしてくれた教会に寄付したいんだよ。それに何より…」
「何よりって…何よ?」
「ここ『リンデン』にはアゼリア様のお墓があるんだよ。『ハイネ』なんて遠くに行ってしまったら、もう月命日にお墓参り出来なくなるよ」
「…本気で…本気でそんな事言ってるの?ヤン…」
メロディの声が震えている。
「そうだよ」
だって…。これが…今の僕に出来る精一杯の贖罪だから。…目の前で息を引き取っていくアゼリア様を見捨ててしまった僕の罪…。
「い、いい加減にしてよっ!」
突然メロディが町中にも関わらず大きな声を上げた。
「何よっ!いつまでいつまでもアゼリア様って…。アゼリア様が亡くなってどれだけの月日が経ったと思っているの?10年よ?10年っ!ヤンはその間、一度もアゼリア様の月命日のお墓参りを欠かしたことは無いけれど…もういい加減に終わりにしたらどうなの?!この先何十年も…ずっとそうやって生きていくの?この土地に縛り付けられて一生を終えるつもりなのっ?!」
メロディは肩で息をしながら僕を見た。
「メ、メロディ…」
「私…私はね…もういい加減…貴方に自由になって貰いたいのよ…」
いつしかメロディの目には涙が浮かんでいた―。
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「ふぅ…」
メロディと別れ、教会へ戻る道すがらため息をついた。あの後メロディを何とか落ち着かせて家に帰らせたけど…。
「一体、どうしてメロディはあんなに『ハイネ』行きを僕に勧めるんだろう?1人で見知らぬ土地へ行くのが不安なのかな…?」
メロディにはピアノの才能がある。きっと将来有望なピアニストになるに違いない。僕はここ『リンデン』から一生離れることは無いだろうけど…メロディには僕の分まで頑張って、世界を飛び回って欲しい…。それが僕の願いだった。
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「ただいま…」
「お帰りなさい、ヤン!」
教会に戻ると、慌てた様子でシスターアンジュが駆けつけてきた。
「どうしたんですか?シスターアンジュ」
「え、ええ…実は貴方に会いにベンジャミンが来ているのよ」
「え?ベンジャミン先生が?」
ベンジャミン先生はこの教会の出身で、弁護士をしている。一体この僕にどんな用事があるのだろう?
「そうよ。応接室に来ているからすぐに行ってあげて」
「はい」
僕はシスターアンジュに促され、応接室へ向かった―。
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