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ヤンの章 ㉔ アゼリアの花に想いを寄せて
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シスターアンジュが手紙を読み終えた。
「…」
僕の目からは大粒の涙がれていた。
僕だけじゃない。
手紙を読んだシスターアンジュも泣いていたし、ディータもヨナスも、マリーも皆泣いていた。
「ねぇ~…どうして皆泣いてるの?」
ただ1人、幼いカレンだけが僕たちが何故泣いているのか理解出来ていなかった。
「可愛そうなアゼリア…こんな事を…胸の内で考えていたのね…」
シスターアンジュは泣きながら修道服のスカートをギュッと握りしめた。
「可哀相…貴族の家に貰われたからって…幸せになれるとは限らなかったのね…」
ずっと貴族の養子になることを夢見ていたマリーの両眼からは涙が流れ落ちている。
「アゼリア様…可哀相だ…」
「う、うん…」
ディータの言葉にヨナスが頷く。
僕は知らなかった。初めて教会でアゼリア様に会った時の事は今でも忘れない。僕があげた粗末な薔薇の花をとても喜んでくれた。貴族のお嬢様なら欲しいものは何でも手に入る筈だったのに…。なのに、アゼリア様は違った。
驚いたことにアゼリア様は誰かからプレゼントを貰った事がほとんどないと言ったのだから。
「ヤン…」
シスターアンジュが涙をハンカチで拭きなが僕を見た。
「は、はい…」
「これで…分ったでしょう?アゼリアの胸の内が…」
「え…?」
「貴方はアゼリアの望みを叶えてあげたのよ?」
「僕が…アゼリア様の望みを…?」
「ええそうよ。アゼリアの望みは自分が神様の元に召される時には誰か、たった一人でも構わないから最期を傍で見届けて貰いたいと言う事だったのよ?そしてアゼリアの死を看取ったのが…ヤン。貴方なのだから」
「あ…」
そうか、そういう事になるのか…。
「貴方はいつまでもアゼリアの死の事で自分を責めていたけれど、でもそうじゃなかったのよ。貴方は…アゼリアの最期の望みを叶えて上げたのだから。きっと感謝していると思うわ」
「そうよ、ヤン!」
マリーが泣きはらした目で僕を見る。
「あ…本当に…?本当に僕は…アゼリア様の望みを…?」
再び両眼から涙が溢れて来た。そして薔薇の花を渡した時のアゼリア様の声が脳裏に響いた。
『ありがとう…とっても嬉しいわ』
「アゼリア様…。ア、アゼリア様…」
僕は皆の前で、亡きアゼリア様を思って、泣き続けた―。
****
18時―
僕は深呼吸すると目の前の扉をノックした。
コンコン
「…どうぞ」
「失礼します」
声が聞こえたので扉を開けて、部屋の中へと入った。
「あれ?ヤンじゃないか?どうしたんだ?」
書斎机で仕事をしていたベンジャミン先生が驚いた様子で僕を見た。先生の周りには他に5人の男女が仕事をしていた。彼らは皆先生の法律事務所のスタッフだった。
「お仕事中、申し訳ございません。お伝えしたい事があって伺いました。お話はすぐに済みますので」
するとベンジャミン先生は立ち上がった。
「そうか、この部屋の奥にもう一つ部屋があるんだ。そこで話を聞くよ」
「ありがとうございます」
頭を下げ、ベンジャミン先生に連れられ奥の部屋に行くとそこは応接室になっていた。茶色の革張りの3人掛けソファがテーブルを挟んで置かれている。
「ヤンも座りなよ」
ソファに座ったベンジャミン先生が声を掛けてきた。
「はい」
「それで、今日は返事を貰えそうなのかな?」
僕が座るとすぐにベンジャミン先生が尋ねて来た。
「はい、決めました。ベンジャミン先生、どうか僕を先生の養子にして下さい」
そして頭を下げた。
「君ならそう言ってくれると思っていたよ」
顔を上げると、そこには笑顔で僕を見るベンジャミン先生の姿があった―。
「…」
僕の目からは大粒の涙がれていた。
僕だけじゃない。
手紙を読んだシスターアンジュも泣いていたし、ディータもヨナスも、マリーも皆泣いていた。
「ねぇ~…どうして皆泣いてるの?」
ただ1人、幼いカレンだけが僕たちが何故泣いているのか理解出来ていなかった。
「可愛そうなアゼリア…こんな事を…胸の内で考えていたのね…」
シスターアンジュは泣きながら修道服のスカートをギュッと握りしめた。
「可哀相…貴族の家に貰われたからって…幸せになれるとは限らなかったのね…」
ずっと貴族の養子になることを夢見ていたマリーの両眼からは涙が流れ落ちている。
「アゼリア様…可哀相だ…」
「う、うん…」
ディータの言葉にヨナスが頷く。
僕は知らなかった。初めて教会でアゼリア様に会った時の事は今でも忘れない。僕があげた粗末な薔薇の花をとても喜んでくれた。貴族のお嬢様なら欲しいものは何でも手に入る筈だったのに…。なのに、アゼリア様は違った。
驚いたことにアゼリア様は誰かからプレゼントを貰った事がほとんどないと言ったのだから。
「ヤン…」
シスターアンジュが涙をハンカチで拭きなが僕を見た。
「は、はい…」
「これで…分ったでしょう?アゼリアの胸の内が…」
「え…?」
「貴方はアゼリアの望みを叶えてあげたのよ?」
「僕が…アゼリア様の望みを…?」
「ええそうよ。アゼリアの望みは自分が神様の元に召される時には誰か、たった一人でも構わないから最期を傍で見届けて貰いたいと言う事だったのよ?そしてアゼリアの死を看取ったのが…ヤン。貴方なのだから」
「あ…」
そうか、そういう事になるのか…。
「貴方はいつまでもアゼリアの死の事で自分を責めていたけれど、でもそうじゃなかったのよ。貴方は…アゼリアの最期の望みを叶えて上げたのだから。きっと感謝していると思うわ」
「そうよ、ヤン!」
マリーが泣きはらした目で僕を見る。
「あ…本当に…?本当に僕は…アゼリア様の望みを…?」
再び両眼から涙が溢れて来た。そして薔薇の花を渡した時のアゼリア様の声が脳裏に響いた。
『ありがとう…とっても嬉しいわ』
「アゼリア様…。ア、アゼリア様…」
僕は皆の前で、亡きアゼリア様を思って、泣き続けた―。
****
18時―
僕は深呼吸すると目の前の扉をノックした。
コンコン
「…どうぞ」
「失礼します」
声が聞こえたので扉を開けて、部屋の中へと入った。
「あれ?ヤンじゃないか?どうしたんだ?」
書斎机で仕事をしていたベンジャミン先生が驚いた様子で僕を見た。先生の周りには他に5人の男女が仕事をしていた。彼らは皆先生の法律事務所のスタッフだった。
「お仕事中、申し訳ございません。お伝えしたい事があって伺いました。お話はすぐに済みますので」
するとベンジャミン先生は立ち上がった。
「そうか、この部屋の奥にもう一つ部屋があるんだ。そこで話を聞くよ」
「ありがとうございます」
頭を下げ、ベンジャミン先生に連れられ奥の部屋に行くとそこは応接室になっていた。茶色の革張りの3人掛けソファがテーブルを挟んで置かれている。
「ヤンも座りなよ」
ソファに座ったベンジャミン先生が声を掛けてきた。
「はい」
「それで、今日は返事を貰えそうなのかな?」
僕が座るとすぐにベンジャミン先生が尋ねて来た。
「はい、決めました。ベンジャミン先生、どうか僕を先生の養子にして下さい」
そして頭を下げた。
「君ならそう言ってくれると思っていたよ」
顔を上げると、そこには笑顔で僕を見るベンジャミン先生の姿があった―。
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