転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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5章 10 監禁、そして罰

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 私がロザリンによって囚われて、5日が経過していた――


――午前7時

 私は窓から外の景色を眺めていた。この部屋はテラスもない、高い場所にあった。


「今日で5日目……皆はどうしているのかしら……」

きっと、心配しているに違いない。真っ先に浮かんだのはエイダの顔だった。

「エイダ……」

ポツリと呟いたとき。
ガチャガチャと鍵が開けられる音が聞こえて、ロザリンが部屋に現れた。

「ほら、食事よ。この私自らが届けているのだから、ありがたく食べることね」

ワゴンを押しながらロザリンは部屋に入ってくると、私を睨みつけてきた。
もうロザリンは私の前でもヴェールを被ることはしなくなっていた。朝日の下で見るロザリンの顔は……未だになれない。

「あ、ありがとう……」

ゾッとする気持ちを押さえてお礼を述べると、ロザリンがワゴンから手を離してズカズカと近づいてきた。

「お礼を言う前に、まずは私の火傷の傷をを治すことが先でしょう! 一体いつになったら私の怪我を治せるのよ!」

ロザリンの右手には短鞭が握りしめられている。

「そ、そんな事を言われても……まだ無理なのよ……」

ユニスとして生きていた頃は、全く魔法を使うことが出来なかった。そして突然発動した禁忌魔法で私は6年間も眠りに就いてしまった。
魔術の勉強をろくに受けていない私に、治癒魔法が使えるはずもない。

現に、ロザリンに命じられて傷跡を治そうと何度も試みたが……一向に治癒魔法を使うことが出来ずにいた。

私の言葉がロザリンの逆鱗に触れたのだろう。

「嘘言うんじゃないわよ! この役立たずが!」

ロザリンが右腕を振り上げた。

鞭打たれる!

思わず目を閉じたとき。

「やめるんだ!! ロザリン!」

突如、リオンの声が部屋に響いた。
顔を上げると、息を切らせたリオンがこちらへ向ってきた。

「何よ! 邪魔する気!?」

「ロザリン! クラリスに手を出すな!! いくら光の属性だからといって、誰もが治癒魔法を使えるわけではないだろう!?」

そしてロザリンの腕を掴むリオン。

「離しなさいよ!! リオンッ! また指輪で苦しめられたいの!?」

「それでも構わない! 罰を与えるなら俺にしろ! 彼女を傷つけるな!」

「な、何よ……だったら、お望み通りリオンに罰を与えてやるわ!」

リオンに罰を与える……!?

「やめて! ロザリンッ!」

止めようとするも、リオンは首を振る。

「いいんだ。ロザリン、君の気が済むまでやればいい」

「! またその女をかばうのね……! だったら覚悟しなさい!」

ロザリンは叫ぶと、短鞭をリオンに振り下ろした――


****

「う……」

床の上に、ボロボロになったリオンが倒れていた。彼の服はところどころ裂け、白いシャツにはあちこちに血が滲んでいる。

ロザリンはリオンが倒れて動けなくなるまで鞭打つと、そのまま部屋を出て行ってしまったのだ。

「リオン……大丈夫? しっかりして……」

倒れているリオンに声をかけるも、返事がない。

「リオン……」

意識の無いリオンに呼びかける。
これだ。このことが理由で私は屋敷を逃げることが出来ずにいたのだ。

この部屋の鍵はロザリンが手にしている。
私は時を止める禁忌魔法を使うことが出来る。いざとなれば、この魔法を使ってロザリンから鍵を奪って逃げることが出来た。

けれどロザリンから忠告されていた。
もしここから逃げたら、代わりにリオンを痛めつけると。ロザリンには私がリオンを気にかけていることがバレているのだ。

リオンは、すでに何度も私の身代わりで罰を与えられている。もうこれ以上、わたしの眼の前で彼が傷つけられるのを見るのは限界だった。

「ごめんなさい……リオン……」

気を失っているリオンの身体にそっと触れた――

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