2 / 119
第2話 私の秘密
しおりを挟む
7時―
両親と5歳年上の兄と一緒に家族揃って朝食を食べていた。
「アンジェラ。今日も学校の帰りに店に寄るのか?」
父がフォークとナイフを動かしながら尋ねて来た。
「はい、そうです。でも納品だけしてくるのですぐに戻ってきます」
「そうよね。貴女がお店を開けるのはもう少し先ですものね」
母がスープを飲みながら私を見た。
「アンジェラ…お前は子爵家の令嬢でありながら、町で店を開くなんて事が世間に知られたらどうするんだ?特にお前の許婚のニコラスに知られたら何を言われるか分ったものじゃないぞ?」
今年23歳になるダンテお兄様が話しかけてきた。ニコラスとは私と同じ18歳の青年であり、一応私の許婚でもある。
「私はお店に出るときは眼鏡にカツラをかぶる予定ですからバレる事は無いと思います。それにニコラス様は私が何をしようが、興味を持ちませんから」
私の言葉に父の顔が曇った。
「アンジェラ…すまないな。ニコラス様の父君から是非、お前を息子の妻に迎えたいと押し切られてしまったばかりに…」
「気にしないで下さい、お父様。家同士の結婚なのですから。私は別に幸せな結婚等望んでいませんもの」
そう、だって私には前世の記憶があるのだから―。
****
私、アンジェラ・ベルモンドは家族に秘密を持っている。
実は前世の記憶を持ってこの世に生まれて来た。
前世の私は日本で生まれ育ち、手芸作家として活躍していた。元々手芸が趣味でネット販売をしている内に話題になり、いつしかプロの手芸作家として活躍していたのだ。私生活も順調で優しい恋人と結婚秒読みの段階だった。
幸せになれるはずだったのに…。
ある日突然私は病に倒れてしまったのだ。そして闘病生活の末、28歳の若さで世を去り…目覚めればベビーベッドの中だった。
前世の大人の記憶を持っている為か、私は早熟な子供だった。そこが気に入られてしまったのだろう。
15歳の時に父と一緒に伯爵家であるニコラスの屋敷を訪ねた際、彼の父親に気に入られ、気付けば私はいつの間にかニコラス・コンラートの許婚にされてしまっていた。
しかし、彼には平民である幼馴染の大切な少女、パメラ・カストロフ・ウッドがいた―。
****
「私はもともとニコラス様には何の興味も抱いておりませんからあの方に恋人がいようがいまいが関係ありません。だからどうか気になさらないで下さいね」
両親に心配を掛けないように、ニッコリと笑みを浮かべた。そう、だって私が恋する相手は今も前世の恋人の彼だけだから…。
「まぁ…アンジェラアがそれで構わないなら…私からは何も言う事は無いが…すまないな」
父は申し訳なさそうな顔で私を見た。
「いいんですよ。どうか気にしないで下さいね。それでは食事も済んだことですし、学校へ行く準備があるのでこれで失礼します」
ガタンと席を立ち、私は家族に挨拶するとダイニングルームを出て行った。
私の興味は今のところ、手芸だけだ。ニコラスもパメラも…そして2人の取り巻き達も何かにつけて私に言いがかりをつけてくるが、所詮私から見れば彼らは全員お子様だ。そんな連中を相手にしている程私は暇人では無い。何しろ半月後には私の手作り品の雑貨屋さんがオープンするのだから。
「まだ登校するまでには時間があるわね…。部屋に戻ってパッチワークの続きをしなくちゃ」
私は急ぎ足で自室へ向かった―。
両親と5歳年上の兄と一緒に家族揃って朝食を食べていた。
「アンジェラ。今日も学校の帰りに店に寄るのか?」
父がフォークとナイフを動かしながら尋ねて来た。
「はい、そうです。でも納品だけしてくるのですぐに戻ってきます」
「そうよね。貴女がお店を開けるのはもう少し先ですものね」
母がスープを飲みながら私を見た。
「アンジェラ…お前は子爵家の令嬢でありながら、町で店を開くなんて事が世間に知られたらどうするんだ?特にお前の許婚のニコラスに知られたら何を言われるか分ったものじゃないぞ?」
今年23歳になるダンテお兄様が話しかけてきた。ニコラスとは私と同じ18歳の青年であり、一応私の許婚でもある。
「私はお店に出るときは眼鏡にカツラをかぶる予定ですからバレる事は無いと思います。それにニコラス様は私が何をしようが、興味を持ちませんから」
私の言葉に父の顔が曇った。
「アンジェラ…すまないな。ニコラス様の父君から是非、お前を息子の妻に迎えたいと押し切られてしまったばかりに…」
「気にしないで下さい、お父様。家同士の結婚なのですから。私は別に幸せな結婚等望んでいませんもの」
そう、だって私には前世の記憶があるのだから―。
****
私、アンジェラ・ベルモンドは家族に秘密を持っている。
実は前世の記憶を持ってこの世に生まれて来た。
前世の私は日本で生まれ育ち、手芸作家として活躍していた。元々手芸が趣味でネット販売をしている内に話題になり、いつしかプロの手芸作家として活躍していたのだ。私生活も順調で優しい恋人と結婚秒読みの段階だった。
幸せになれるはずだったのに…。
ある日突然私は病に倒れてしまったのだ。そして闘病生活の末、28歳の若さで世を去り…目覚めればベビーベッドの中だった。
前世の大人の記憶を持っている為か、私は早熟な子供だった。そこが気に入られてしまったのだろう。
15歳の時に父と一緒に伯爵家であるニコラスの屋敷を訪ねた際、彼の父親に気に入られ、気付けば私はいつの間にかニコラス・コンラートの許婚にされてしまっていた。
しかし、彼には平民である幼馴染の大切な少女、パメラ・カストロフ・ウッドがいた―。
****
「私はもともとニコラス様には何の興味も抱いておりませんからあの方に恋人がいようがいまいが関係ありません。だからどうか気になさらないで下さいね」
両親に心配を掛けないように、ニッコリと笑みを浮かべた。そう、だって私が恋する相手は今も前世の恋人の彼だけだから…。
「まぁ…アンジェラアがそれで構わないなら…私からは何も言う事は無いが…すまないな」
父は申し訳なさそうな顔で私を見た。
「いいんですよ。どうか気にしないで下さいね。それでは食事も済んだことですし、学校へ行く準備があるのでこれで失礼します」
ガタンと席を立ち、私は家族に挨拶するとダイニングルームを出て行った。
私の興味は今のところ、手芸だけだ。ニコラスもパメラも…そして2人の取り巻き達も何かにつけて私に言いがかりをつけてくるが、所詮私から見れば彼らは全員お子様だ。そんな連中を相手にしている程私は暇人では無い。何しろ半月後には私の手作り品の雑貨屋さんがオープンするのだから。
「まだ登校するまでには時間があるわね…。部屋に戻ってパッチワークの続きをしなくちゃ」
私は急ぎ足で自室へ向かった―。
205
あなたにおすすめの小説
王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした
まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる