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第19話 昨夜の報告
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翌日―
試作品として昨夜作ったペンケースをカバンに入れて、私は登校した。
「アンジェラお嬢様、今日は何時にお迎えに上がればいいですか?」
学園に着いて馬車を降りるとジムさんが尋ねて来た。
「今日は納品は無いから15時半に迎えに来てくれる?」
「え?そんなに早い時間で大丈夫なのですか?」
「ええ、実は手芸店に行きたいの。いつものお店」
「ああ、分りました『トワール』ですね?いいですよ。帰りに寄りましょう」
ジムさんが笑顔で返事をする。
『トワール』とは私の行きつけの手芸店だった。
「ええ、お願いね。それじゃ行って来るわね」
ジムさんに手を振ると彼も帽子を外して頭を下げた。
「はい、いってらっしゃいませ」
****
校舎へ向かう学生達に紛れて歩いていると背後から私の名を呼ぶ声が聞こえて来た。
「アンジェラーッ!」
ふり向くとペリーヌが早足でこちらへ向かって歩いて来る。
「おはよう、ペリーヌ」
立ち止まってペリーヌに挨拶した。
「おはよう、アンジェラ。教室まで一緒に行きましょう?」
「ええ」
そして私達は一緒に並んで歩き始めた。
「ねぇ、アンジェラ。ひょっとしてまた遅くまで裁縫をしていたんじゃないの?」
ペリーヌが尋ねて来た。
「え?やっぱり分った?」
「ええ、だって目の下にクマが出来てるわよ?」
「そう…実はね、昨夜突然ニコラスと両親が屋敷を訪ねて来たのよ」
「え?何故?」
ペリーヌが驚いた様に目を見開いた。そこで私は昨日の出来事を語った。
屋敷に帰るとニコラスがメイドを激怒していた事、そしてメイドに手を上げようとしたので立ちはだかると今度は私が叩かれそうになった事。それを父が止めに入ってくれた事を。
「全くニコラスは本当に迷惑な男ね。それで?話の続きは?」
「ええ、それでね…」
その時、私達の前方をパメラと彼女の3人の友人たちが歩いているのが目に入った。
「あら?珍しいわね。ニコラスが一緒にいないなんて」
ペリーヌが首を傾げながら言う。
「確かにそうね…あ。もしかして昨夜の出来事が原因かしら?」
「そう言えばまだ話を全部聞いていなかったわね。続きを教えてくれる?」
教室までの道のりはまだある。最後まで話をする余裕はありそうだ。そこで私はその後の続きを全て語った。我が屋敷でニコラスと両親が大喧嘩を始めたことや、今後私に手を上げるような真似を1回でもすれば私の方から婚約破棄を申し出る権利を得た事を全て語った。
「結局ニコラス達は22時に帰って行ったのよ。全く無駄な時間を取らされてしまったわ。お陰で昨夜はあまり作品作りに時間を取れなかったのよ」
「成程、それで昨夜は寝不足だったと言う訳ね?でも知らなかったわ…まさかパメラがニコラスの両親から嫌われていたなんてね。それなのに図々しくあの2人はべったりしていたのだから…でも、今一緒にいないと言う事は…ひょっとして何かあったんじゃないのかしら?」
ペリーヌはパメラたちを見ながら言った。
「ええ…そうかも知れないわね…。もし仮にパメラがニコラスの両親にくぎを刺されたとなれば、少しは自分の身の程をわきまえるんじゃないかしら?」
「そうよね。結局所詮パメラは平民だもの。自分がニコラスに大切にされているからって勘違いしていたのよ。でもそのニコラスから切られれば少しは自分の置かれている立場を自覚するかもね」
けれども、私とぺリーヌはパメラの事を良く理解していなかった。
パメラはニコラスに負けず劣らず愚かな人間だと言う事を―。
試作品として昨夜作ったペンケースをカバンに入れて、私は登校した。
「アンジェラお嬢様、今日は何時にお迎えに上がればいいですか?」
学園に着いて馬車を降りるとジムさんが尋ねて来た。
「今日は納品は無いから15時半に迎えに来てくれる?」
「え?そんなに早い時間で大丈夫なのですか?」
「ええ、実は手芸店に行きたいの。いつものお店」
「ああ、分りました『トワール』ですね?いいですよ。帰りに寄りましょう」
ジムさんが笑顔で返事をする。
『トワール』とは私の行きつけの手芸店だった。
「ええ、お願いね。それじゃ行って来るわね」
ジムさんに手を振ると彼も帽子を外して頭を下げた。
「はい、いってらっしゃいませ」
****
校舎へ向かう学生達に紛れて歩いていると背後から私の名を呼ぶ声が聞こえて来た。
「アンジェラーッ!」
ふり向くとペリーヌが早足でこちらへ向かって歩いて来る。
「おはよう、ペリーヌ」
立ち止まってペリーヌに挨拶した。
「おはよう、アンジェラ。教室まで一緒に行きましょう?」
「ええ」
そして私達は一緒に並んで歩き始めた。
「ねぇ、アンジェラ。ひょっとしてまた遅くまで裁縫をしていたんじゃないの?」
ペリーヌが尋ねて来た。
「え?やっぱり分った?」
「ええ、だって目の下にクマが出来てるわよ?」
「そう…実はね、昨夜突然ニコラスと両親が屋敷を訪ねて来たのよ」
「え?何故?」
ペリーヌが驚いた様に目を見開いた。そこで私は昨日の出来事を語った。
屋敷に帰るとニコラスがメイドを激怒していた事、そしてメイドに手を上げようとしたので立ちはだかると今度は私が叩かれそうになった事。それを父が止めに入ってくれた事を。
「全くニコラスは本当に迷惑な男ね。それで?話の続きは?」
「ええ、それでね…」
その時、私達の前方をパメラと彼女の3人の友人たちが歩いているのが目に入った。
「あら?珍しいわね。ニコラスが一緒にいないなんて」
ペリーヌが首を傾げながら言う。
「確かにそうね…あ。もしかして昨夜の出来事が原因かしら?」
「そう言えばまだ話を全部聞いていなかったわね。続きを教えてくれる?」
教室までの道のりはまだある。最後まで話をする余裕はありそうだ。そこで私はその後の続きを全て語った。我が屋敷でニコラスと両親が大喧嘩を始めたことや、今後私に手を上げるような真似を1回でもすれば私の方から婚約破棄を申し出る権利を得た事を全て語った。
「結局ニコラス達は22時に帰って行ったのよ。全く無駄な時間を取らされてしまったわ。お陰で昨夜はあまり作品作りに時間を取れなかったのよ」
「成程、それで昨夜は寝不足だったと言う訳ね?でも知らなかったわ…まさかパメラがニコラスの両親から嫌われていたなんてね。それなのに図々しくあの2人はべったりしていたのだから…でも、今一緒にいないと言う事は…ひょっとして何かあったんじゃないのかしら?」
ペリーヌはパメラたちを見ながら言った。
「ええ…そうかも知れないわね…。もし仮にパメラがニコラスの両親にくぎを刺されたとなれば、少しは自分の身の程をわきまえるんじゃないかしら?」
「そうよね。結局所詮パメラは平民だもの。自分がニコラスに大切にされているからって勘違いしていたのよ。でもそのニコラスから切られれば少しは自分の置かれている立場を自覚するかもね」
けれども、私とぺリーヌはパメラの事を良く理解していなかった。
パメラはニコラスに負けず劣らず愚かな人間だと言う事を―。
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