お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
75 / 119

第75話 早急に話したい事

「あの…ところでアンジェラさん…」

「は、はいっ!」

一体どんな話が出て来るのだろう?緊張していた私は直立不動の姿勢で返事をする。

「その…場所を変えてお話し出来ませんか?ここでは職員室から丸見えになってしまいますので…」

何処か照れくさそうなデリクさん。

「え?あっ!」

建物の方を見ると、職員室にいる教師達が私達の事をじっと凝視していた。そして私の視線に気付くと慌てたように顔をそらす。

「た、確かにこの場所では職員室から丸見えですね…。ではどちらへ行きましょうか?」

「それなら中庭へ行きませんか?もう放課後ですし、誰もいないと思うので」

「はい…」

デリクさんの誘いに返事をした時、私は大事な事を忘れていることに気がついた。

「あ!そ、そうだわっ!ジムさん!」

「え?どうかしましたか?」

怪訝そうに首を傾げるデリクさんに言った。

「申し訳ありません。実は迎えの馬車の時間を14時半に頼んでいたのです」

「14時半ですか?」

デリクさんは袖をまくって腕時計を見ると眉をしかめた。

「ああ…もうすぐ15時になりますね」

「ええっ?!」

大変だっ!30分もジムさんを待たせてしまっている。

「デリクさん、申し訳ございません。お話はまた改めてお願い出来ますか?」

「ええ、構いません。それでは…いきなりですが、今夜アンジェラさんの邸宅にお邪魔しても宜しいでしょうか?出来れば早急にお話したい事がありまして…」

デリクさんが申し訳無さげに言う。

「え?今夜…ですか?」

まさかいきなり今夜を指定してくるなんて…ひょっとすると急ぎの用なのだろうか?

き、気になる…。

「駄目…でしょうか?」

「い、いえ!大丈夫ですっ!家族は大歓迎で迎えてくれると思います。お時間は何時頃でしょうか?」

「そうですね…あまり中途半端な時間にお邪魔してはご迷惑でしょうから…21時頃はいかがでしょうか?その頃なら御夕食も済んでいますよね?30分程お時間頂ければ大丈夫ですので」

「はい、私は大丈夫です」

「本当ですか?ああ…良かった。どうもお引き止めして申し訳ございませんでした」

デリクさんは頭を下げると足早に去って行った。

「デリクさん…」

私はほんの少しだけその場に佇み…その後、慌ててジムさんの待つ馬車乗り場へと向かった―。


****

 正門の側にある馬車乗り場へ行くとそこには御者台に座ったジムさんが空を眺めていた。停車している馬車は我が家の馬車だけだった。

「ジムさーん!」

「あ、アンジェラ様っ!」

「ご、ごめんなさい…遅くなってしまって…」

ここまで走ってきたので息を切らせながらジムさんに謝った。

「何を仰っているのですか。私の事は気にされなくて大丈夫ですから。それでは参りましょうか?」

「ええ」



ガラガラガラ…


一体デリクさんの話は何だろう?


 馬車に揺られながら、私はニコラスの事等すっかり忘れ、デリクさんの事ばかり考えながら家路についた―。






感想 310

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした

まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】 その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

クリスティーヌの本当の幸せ

宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。 この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。