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第16章 18 待ち伏せ
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今日は遅番だった。大田先輩や女性先輩達と店のシャッターを全て閉め終えた。
「ではお疲れ様でした。」
私が挨拶すると2人の女性先輩が私に言った。
「ええ、お疲れ様。」
「本当にご飯一緒に食べて帰らないの?」
「はい、今夜はちょっと疲れているので…すみません」
女性先輩達に頭を下げて足早に歩いていると、背後から声を掛けられた。
「加藤さん」
振り向くとそこに立っていたのは太田先輩だった。
「あ、先輩」
「駅まで一緒に帰ろうか?」
「は、はい…」
本当は1人きりになりたかったけど、先輩の誘いなら断るわけにはいかない。
何か聞かれるんじゃないかな…。そんなふうに思っていると、案の定先輩が尋ねてきた。
「加藤さん、何だかここ数日…随分元気が無かったけど、何かあった?」
まだ直人さんの事を誰かに話すのは辛かった。涙が出てきそうになるから。
「いえ、別に何もありませんけど?」
けれど先輩は納得してくれない。
「う~ん…そうかなぁ?俺には元気があるように見えないけど…」
「気のせいですよ。私は何もいつもと変わりませんから」
大田先輩の方を見上げて口を開いたその時、不意に前方から声を掛けられた。
「失礼ですけど、貴女加藤鈴音さんね?」
「え?」
不意に話しかけられて、正面に立っていた女性を見て私は自分の顔色が変わるのを感じた。
「あ、貴女は…」
自分の声が震えているのが分かった。だって目の前にいるのは川口さんと一緒に写っていた女性だったから。
「どうしたんだ?加藤さん」
一緒にいた大田先輩が心配そうに声を掛けてきた。
「ふ~ん…私を見てそんなに驚くなんて…やっぱり貴女私の事知ってるのね。それにしても…」
女性はチラリと太田先輩を見ると言った。
「貴女、直人と別れたばかりなのに…もう次の男を見つけていたのね?」
女性は私をどこか軽蔑するような目で見るとフッと笑った。私は酷く失礼な事を言われているのは分かっていたけれども、女性の口から出会ってまだ間もないはずなのに
『直人』と、まるで長年交際してきたような呼び方をしている事に胸がズキリと傷んだ。私が黙っているのを不快に感じたのか女性が言う。
「何よ、やっぱり図星だったのね。この事直人に報告しておくわ」
その言葉に驚いて私は焦った。
「そんな、違います!」
嫌だ、直人さんとは別れてしまったけど…誤解されたくなかった。すると太田先輩が言った。
「君、誰かは知らないがこの女性を侮辱するのはやめてくれないか?俺はこの女性と同じ会社の人間で彼女は後輩だ。憶測で物を言うなんて失礼だろう?」
言い方は丁寧だったけど、その話し方は鋭かった。
「…っ!」
女性は一瞬鋭い顔つきで大田先輩を睨みつけたが私に言った。
「話があるのよ。ちょっと付き合ってくれるかしら?まさか断るつもりじゃないわよね?貴女だって私と話がしたいんじゃないの?」
それは有無を言わさない強い物言いだった。
「加藤さん…」
太田先輩が心配そうに私を見ている。本当は…すぐにでもこの場から逃げたい。だけどそんな事をしてもきっとまたこの女性は私の前に現れるだろう…そんな予感がした。
「分かりました…お話伺います」
「そう、素直に応じてくれて助かるわ」
女性はにっこり笑った。
「え?加藤さん?本当にいいのか?」
太田先輩が声を掛けてくる。そこで私は向き直ると言った。
「すみません、先輩。どうぞお先にお帰り下さい。お疲れ様でした」
そして頭を下げる。
「あ、ああ…それじゃまた明日」
「はい、また明日」
太田先輩は何度かこちらを振り返りながら駅へ向かって歩いて行く。その様子をじっと見つめていた女性が言った。
「やっぱり貴女、あの男性と出来てるんじゃないの?」
「違います。あの人はただの会社の先輩ですから」
そこだけは誤解されたくなかったので毅然とした態度で私は言う。
「そう?貴女はそう思ってるのね?でも…まぁいいわ。付いてきて頂戴」
女性は私に背を向けて歩き出した。私は…無言で彼女の後をついていった―。
「ではお疲れ様でした。」
私が挨拶すると2人の女性先輩が私に言った。
「ええ、お疲れ様。」
「本当にご飯一緒に食べて帰らないの?」
「はい、今夜はちょっと疲れているので…すみません」
女性先輩達に頭を下げて足早に歩いていると、背後から声を掛けられた。
「加藤さん」
振り向くとそこに立っていたのは太田先輩だった。
「あ、先輩」
「駅まで一緒に帰ろうか?」
「は、はい…」
本当は1人きりになりたかったけど、先輩の誘いなら断るわけにはいかない。
何か聞かれるんじゃないかな…。そんなふうに思っていると、案の定先輩が尋ねてきた。
「加藤さん、何だかここ数日…随分元気が無かったけど、何かあった?」
まだ直人さんの事を誰かに話すのは辛かった。涙が出てきそうになるから。
「いえ、別に何もありませんけど?」
けれど先輩は納得してくれない。
「う~ん…そうかなぁ?俺には元気があるように見えないけど…」
「気のせいですよ。私は何もいつもと変わりませんから」
大田先輩の方を見上げて口を開いたその時、不意に前方から声を掛けられた。
「失礼ですけど、貴女加藤鈴音さんね?」
「え?」
不意に話しかけられて、正面に立っていた女性を見て私は自分の顔色が変わるのを感じた。
「あ、貴女は…」
自分の声が震えているのが分かった。だって目の前にいるのは川口さんと一緒に写っていた女性だったから。
「どうしたんだ?加藤さん」
一緒にいた大田先輩が心配そうに声を掛けてきた。
「ふ~ん…私を見てそんなに驚くなんて…やっぱり貴女私の事知ってるのね。それにしても…」
女性はチラリと太田先輩を見ると言った。
「貴女、直人と別れたばかりなのに…もう次の男を見つけていたのね?」
女性は私をどこか軽蔑するような目で見るとフッと笑った。私は酷く失礼な事を言われているのは分かっていたけれども、女性の口から出会ってまだ間もないはずなのに
『直人』と、まるで長年交際してきたような呼び方をしている事に胸がズキリと傷んだ。私が黙っているのを不快に感じたのか女性が言う。
「何よ、やっぱり図星だったのね。この事直人に報告しておくわ」
その言葉に驚いて私は焦った。
「そんな、違います!」
嫌だ、直人さんとは別れてしまったけど…誤解されたくなかった。すると太田先輩が言った。
「君、誰かは知らないがこの女性を侮辱するのはやめてくれないか?俺はこの女性と同じ会社の人間で彼女は後輩だ。憶測で物を言うなんて失礼だろう?」
言い方は丁寧だったけど、その話し方は鋭かった。
「…っ!」
女性は一瞬鋭い顔つきで大田先輩を睨みつけたが私に言った。
「話があるのよ。ちょっと付き合ってくれるかしら?まさか断るつもりじゃないわよね?貴女だって私と話がしたいんじゃないの?」
それは有無を言わさない強い物言いだった。
「加藤さん…」
太田先輩が心配そうに私を見ている。本当は…すぐにでもこの場から逃げたい。だけどそんな事をしてもきっとまたこの女性は私の前に現れるだろう…そんな予感がした。
「分かりました…お話伺います」
「そう、素直に応じてくれて助かるわ」
女性はにっこり笑った。
「え?加藤さん?本当にいいのか?」
太田先輩が声を掛けてくる。そこで私は向き直ると言った。
「すみません、先輩。どうぞお先にお帰り下さい。お疲れ様でした」
そして頭を下げる。
「あ、ああ…それじゃまた明日」
「はい、また明日」
太田先輩は何度かこちらを振り返りながら駅へ向かって歩いて行く。その様子をじっと見つめていた女性が言った。
「やっぱり貴女、あの男性と出来てるんじゃないの?」
「違います。あの人はただの会社の先輩ですから」
そこだけは誤解されたくなかったので毅然とした態度で私は言う。
「そう?貴女はそう思ってるのね?でも…まぁいいわ。付いてきて頂戴」
女性は私に背を向けて歩き出した。私は…無言で彼女の後をついていった―。
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