2 / 17
第1話 私が婚約した話
しおりを挟む
私の名前はフローラ・ハイネス。侯爵家の長女として両親、そして2歳年上の兄、レナートと4人で幸せに暮らしている。そして私には15歳の時に伯爵家の長男で同い年のノエル・チェスター様と婚約を結んだ。
ノエル様と初めて会ったのは忘れもしない。我が家で初のガーデニングパーティーが行われた私のデビュタントの日でもあった。そのパーティーに出席していたノエル様こそが私の遅い初恋相手になるとは夢にも思いもしなかった。
あの当時の私は引っ込み思案なうえ、人づきあいがとても苦手でのパーティーにすっかり気後れしてしまい、邸宅の薔薇園に逃げていた。そこへ偶然ノエル様が現れて、隠れていた私を見つけてくれたのだ。
会場では主役である私の姿が見えないと言う事で大騒ぎになり、出席者総出で私の捜索をする事になったらしい。そして私の顔も知らないノエル様が偶然バラ園に隠れていた私を発見し、パーティー会場へ連れ戻してくれたのだ。
それだけじゃない、ノエル様はダンスのパートナーになってくれて、つたない踊りしか出来ない私をノエル様の巧みなリードのお陰で見事なダンスを人々の前で披露する事が出来たのだった。
もう、この段階で私はすっかりノエル様のとりこになり・・それに気づいた私を溺愛する父が後日チェスター家に私とノエル様の婚約話を持ちこみ、私と彼は婚約を結ぶ事が出来たのだ。
憧れのノエル様と婚約する事が出来た私は天にも昇るような気持だったのだけども、その反面罪悪感で一杯だった。
だって、何故なら彼が私と婚約する事が出来たのは・・・私の方が爵位が上だったから。ただ、それだけの理由。
だから私は少しでもノエル様に恥をかかせない為に魅力的な存在になれるように努力した。
引っ込み思案の性格を社交的にするために、無理をして色々なパーティーに参加し、徐々に度胸を付けていった。
そして外見も少しでも美しくなれる様に美を磨く努力をした。
例えばこの黒髪・・・・色だけは変えようがなかったけれども、ある意味この黒を逆手に取ってみようと考えた。
黒髪はきちんと髪のお手入れをすれば美しい光沢が生まれ、いわゆる天使の輪と呼ばれるサラサラつやつやの髪に生まれ変わらせる事が出来ると美容師のアドバイス受けた。
そこで私は髪のお手入を頑張って続け、ついに念願の美しい黒髪を手に入れる事が出来た。
更に私は地味な顔を少しでもカバーする為に、女性らしいスタイルを維持する事に努力した。適度な運動、美肌に効果のあると言われる食事に心がけ、睡眠をたっぷり取る・・・。そして他の貴族令嬢達から、称賛されるようになれたのだが・・・地味な顔だけはどうしようもなく、その事がずっとコンプレックスになっていた。
ある昼下がりの午後―
青空の下で私は仲の良い貴族令嬢達とお茶会を開いていた。
「本当にフローラ様の髪はお美しいわ。」
私と同い年のマルティナ様が紅茶を飲みながら言う。
「ええ、本当に・・・そしてその美しいお肌に完璧なボディ。同じ女性として憧れてしまいますわ。」
金の髪のベアトリーチェ様がマカロンを口に入れながら私を見た。
「何を仰っておられるのですか?私にとっては貴女の金の髪の方が余程美しいと思いますわ。」
私はベアトリーチェ様に微笑みながら言った。そんな時・・・。
「あら?こちらへ近付いてこられるのは・・ノエル様と・・・遠縁のクリスタ様ではありませんか?」
レベッカ様の言葉に私は振り向くと、確かにこちらに向かって歩いて来るのは私の愛しい婚約者のノエル様と、彼の幼馴染のクリスタ様だった。
「まあ、本当だわ。ノエル様とクリスタ様ね。」
私は笑顔で言うが、他の友人達は怪訝そうな顔になり、互いの顔を見渡している。
・・・・どうかしたのかだろうか?でも、そんな事よも今重要なのはノエル様がこちらへ向かって来ていると言う事。
「今日は、ノエル様、クリスタ様っ!」
私は立ち上がって手を振るとノエル様が笑顔で手を振り返してくれる。
「こんにちは、フローラ、そして御友人の皆様。」
ノエル様は笑顔で友人達に挨拶をする。
「「「こんにちは。」」」
3人の令嬢達は綺麗に声を揃えながら挨拶を返した。
「あ、あの・・フローラ様・・。」
するとノエル様の背後にいたクリスタ様がモジモジしながら私に話しかけてきた。
「あ、あの・・・私も皆様のお茶会い混ぜて頂けないかしら・・・。」
「ええ、勿論ですわ。人数は多いほど楽しいですから。いいですわよね?皆様。」
振り返り、私は3人の友人達に声を掛けたのだが・・・。
「い、いえ。私達は・・そろそろお暇させて頂きますわ。」
マルティナ様は言いながら立ち上がると、他の2人も立ち上がった。
「え・・・?何故ですの?」
私が尋ねると、令嬢達は次々と自分達の今日の予定を話し出した。
するとマルティナはピアノのレッスン、ベアトリーチェはダンスのレッスン、そしてレベッカは刺繍の先生が屋敷に尋ねて来るそうだ。
「そうでしたか・・皆様お忙しかったのですね・・。」
私が残念そうに言うと、3人は申し訳なさそうに俯き、今度は必ず埋め合わせをさせて貰うと約束をしてくれた。
そして3人供、帰ってしまった後・・・。
「3人だけになってしまいましたわね・・・。」
私がポツリと言うと、クリスタ様は寂しそうに頷いた。
「まあ、いいさ。僕達3人でお茶会をすればいいじゃないか。」
ノエル様はクリスタ様を元気づけるように笑顔で言った。それはとても素敵な笑顔だった。
「ええ、そうね。」
クリスタ様も元気を取り戻すと、ノエル様と視線を合わせて微笑みあう。ああ・・・やっぱりノエル様はとても親切なお方だ・・・。私は視線を合わせて微笑み合うノエル様とクリスタ様を見つめるのだった―。
ノエル様と初めて会ったのは忘れもしない。我が家で初のガーデニングパーティーが行われた私のデビュタントの日でもあった。そのパーティーに出席していたノエル様こそが私の遅い初恋相手になるとは夢にも思いもしなかった。
あの当時の私は引っ込み思案なうえ、人づきあいがとても苦手でのパーティーにすっかり気後れしてしまい、邸宅の薔薇園に逃げていた。そこへ偶然ノエル様が現れて、隠れていた私を見つけてくれたのだ。
会場では主役である私の姿が見えないと言う事で大騒ぎになり、出席者総出で私の捜索をする事になったらしい。そして私の顔も知らないノエル様が偶然バラ園に隠れていた私を発見し、パーティー会場へ連れ戻してくれたのだ。
それだけじゃない、ノエル様はダンスのパートナーになってくれて、つたない踊りしか出来ない私をノエル様の巧みなリードのお陰で見事なダンスを人々の前で披露する事が出来たのだった。
もう、この段階で私はすっかりノエル様のとりこになり・・それに気づいた私を溺愛する父が後日チェスター家に私とノエル様の婚約話を持ちこみ、私と彼は婚約を結ぶ事が出来たのだ。
憧れのノエル様と婚約する事が出来た私は天にも昇るような気持だったのだけども、その反面罪悪感で一杯だった。
だって、何故なら彼が私と婚約する事が出来たのは・・・私の方が爵位が上だったから。ただ、それだけの理由。
だから私は少しでもノエル様に恥をかかせない為に魅力的な存在になれるように努力した。
引っ込み思案の性格を社交的にするために、無理をして色々なパーティーに参加し、徐々に度胸を付けていった。
そして外見も少しでも美しくなれる様に美を磨く努力をした。
例えばこの黒髪・・・・色だけは変えようがなかったけれども、ある意味この黒を逆手に取ってみようと考えた。
黒髪はきちんと髪のお手入れをすれば美しい光沢が生まれ、いわゆる天使の輪と呼ばれるサラサラつやつやの髪に生まれ変わらせる事が出来ると美容師のアドバイス受けた。
そこで私は髪のお手入を頑張って続け、ついに念願の美しい黒髪を手に入れる事が出来た。
更に私は地味な顔を少しでもカバーする為に、女性らしいスタイルを維持する事に努力した。適度な運動、美肌に効果のあると言われる食事に心がけ、睡眠をたっぷり取る・・・。そして他の貴族令嬢達から、称賛されるようになれたのだが・・・地味な顔だけはどうしようもなく、その事がずっとコンプレックスになっていた。
ある昼下がりの午後―
青空の下で私は仲の良い貴族令嬢達とお茶会を開いていた。
「本当にフローラ様の髪はお美しいわ。」
私と同い年のマルティナ様が紅茶を飲みながら言う。
「ええ、本当に・・・そしてその美しいお肌に完璧なボディ。同じ女性として憧れてしまいますわ。」
金の髪のベアトリーチェ様がマカロンを口に入れながら私を見た。
「何を仰っておられるのですか?私にとっては貴女の金の髪の方が余程美しいと思いますわ。」
私はベアトリーチェ様に微笑みながら言った。そんな時・・・。
「あら?こちらへ近付いてこられるのは・・ノエル様と・・・遠縁のクリスタ様ではありませんか?」
レベッカ様の言葉に私は振り向くと、確かにこちらに向かって歩いて来るのは私の愛しい婚約者のノエル様と、彼の幼馴染のクリスタ様だった。
「まあ、本当だわ。ノエル様とクリスタ様ね。」
私は笑顔で言うが、他の友人達は怪訝そうな顔になり、互いの顔を見渡している。
・・・・どうかしたのかだろうか?でも、そんな事よも今重要なのはノエル様がこちらへ向かって来ていると言う事。
「今日は、ノエル様、クリスタ様っ!」
私は立ち上がって手を振るとノエル様が笑顔で手を振り返してくれる。
「こんにちは、フローラ、そして御友人の皆様。」
ノエル様は笑顔で友人達に挨拶をする。
「「「こんにちは。」」」
3人の令嬢達は綺麗に声を揃えながら挨拶を返した。
「あ、あの・・フローラ様・・。」
するとノエル様の背後にいたクリスタ様がモジモジしながら私に話しかけてきた。
「あ、あの・・・私も皆様のお茶会い混ぜて頂けないかしら・・・。」
「ええ、勿論ですわ。人数は多いほど楽しいですから。いいですわよね?皆様。」
振り返り、私は3人の友人達に声を掛けたのだが・・・。
「い、いえ。私達は・・そろそろお暇させて頂きますわ。」
マルティナ様は言いながら立ち上がると、他の2人も立ち上がった。
「え・・・?何故ですの?」
私が尋ねると、令嬢達は次々と自分達の今日の予定を話し出した。
するとマルティナはピアノのレッスン、ベアトリーチェはダンスのレッスン、そしてレベッカは刺繍の先生が屋敷に尋ねて来るそうだ。
「そうでしたか・・皆様お忙しかったのですね・・。」
私が残念そうに言うと、3人は申し訳なさそうに俯き、今度は必ず埋め合わせをさせて貰うと約束をしてくれた。
そして3人供、帰ってしまった後・・・。
「3人だけになってしまいましたわね・・・。」
私がポツリと言うと、クリスタ様は寂しそうに頷いた。
「まあ、いいさ。僕達3人でお茶会をすればいいじゃないか。」
ノエル様はクリスタ様を元気づけるように笑顔で言った。それはとても素敵な笑顔だった。
「ええ、そうね。」
クリスタ様も元気を取り戻すと、ノエル様と視線を合わせて微笑みあう。ああ・・・やっぱりノエル様はとても親切なお方だ・・・。私は視線を合わせて微笑み合うノエル様とクリスタ様を見つめるのだった―。
33
あなたにおすすめの小説
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
婚約破棄までの七日間
たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!
※少しだけ内容を変更いたしました!!
※他サイト様でも掲載始めました!
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
悪役令嬢は断罪されない
竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。
王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。
私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!!
だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。
おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。
2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます!
→続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751
→王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる