15 / 17
第14話 二度目の悪役令嬢の高笑い
しおりを挟む
私は信じられない気持ちでノエル様を見た。まさか・・・ノエル様の家は私が嫁ぐ時に持たされる持参金が無ければ生活できない程・・生活に困窮していたのだろうか?それでノエル様はご両親から私と絶対に婚約を破棄しないように言い含められて・・?
それなら、お父様に相談して私がノエル様と結婚する時に持たされるはずの持参金を援助という形でチェスター家に渡すことはできないだろうか?
私が色々思案していると、再びノエル様が声を掛けてきた。
「ねえ。聞いてる?フローラ。僕は絶対に君とは婚約破棄したくないんだ。」
必死で訴えてくるノエル様を見て私はだんだん気の毒になってきた。お可哀相なノエル様・・・。持参金が必要な為に私と別れる事も出来ないのでクリスタ様と結ばれる事も叶わない・・・。ひょっとするとクリスタ様がいつまでも病弱なのも愛する人と結ばれない苦しみが、心だけでなく、身体も蝕んでしまっているのかも。
それならやはりすぐにノエル様とクリスタ様の前から私は消えなければならない。
でもそうなるには私が見るに堪えないくらの悪い女を演じなければノエル様のご両親は納得しないかもしれない。あれほどの性悪女なら結婚を無理強いさせるわけにはいかなと思えるほどに・・。
それでは・・今から悪役令嬢を演じさせて頂きます。でもそうするには病床におられるクリスタ様の前で演じるわけにはいかない。
コホンと咳払いをすると私は言った。
「ノエル様。少し廊下に出て頂けませんか?お話したいことがございますので。」
「う、うん。分かったよ。」
私たちはドアを開けて部屋の外へ出た。
「それで、フローラ。話って何?」
ノエル様は真剣な瞳で私を見つめてくる。ああ・・・そのノエル様の瞳に映される姿が常に私だったら良かったのに・・。でも、それは叶わぬ願い。私が好きなのはノエル様だけど、ノエル様が好きな女性は私ではないのだから。
私は深呼吸した―。
「オーホッホッホッ!」
突然の高笑いにノエル様は明らかに驚いたように肩をびくりと震わせ、私を見た。
「な?何?!またその笑い?一体どうしちゃったの?フローラ?」
「ノエル様、何故もっとちゃんとクリスタ様を看てあげないのですか?クリスタ様が喘息の発作を起こされたのはノエル様がクリスタ様のお身体の事を考えておられなかったからですよ?貴方のクリスタ様へのお気持ちはそれっぽっちのものだったのですか?」
「え?そ、そんな事は無いよ。僕はいつだってクリスタの事はきちんと考えているし、彼女の健康状態も看ているつもりだよ?」
ノエル様の言葉を聞きながら、私は密かに傷ついていた。やはりノエル様はクリスタ様の事を大切に思っているのだと言う事が様々と感じられたからだ。
「さようでございましたか。それではこの先も是非そうして下さいませ。」
「え?」
「ですから、ノエル様が本来お傍に置くべきお方はクリスタ様だと言う事です。」
「ちょ、ちょっと待って・・・。フローラ、君・・一体何を言ってるの?」
ノエル様の顔が青冷めている。
「まだお分かりにならないのですか?ノエル様が本来選ぶべきお相手は私では無く、クリスタ様と言う事です。ご理解頂けましたか?」
私はわざと冷たい視線でノエル様を見つめた。でも・・・本当ならこんな真似はしたくないのに・・・。
「ねえ、フローラ。君は何か勘違いしているようだね?確かにクリスタは僕にとって大切な存在だけど、フローラ。君の事も僕は大切に思っているよ?クリスタよりもずっと大事に思っているんだよ?」
けれどもノエル様が必死に訴えれば訴える程、私の心は悲しくなっていく。あんな台詞を言う程に、チェスター家は追い詰められているのだろうか?
こうなれば私は徹底的に悪役令嬢を演じ、ノエル様に嫌われなければ・・・。
私は深呼吸しすると、ノエル様を見つめて口を開いた―。
それなら、お父様に相談して私がノエル様と結婚する時に持たされるはずの持参金を援助という形でチェスター家に渡すことはできないだろうか?
私が色々思案していると、再びノエル様が声を掛けてきた。
「ねえ。聞いてる?フローラ。僕は絶対に君とは婚約破棄したくないんだ。」
必死で訴えてくるノエル様を見て私はだんだん気の毒になってきた。お可哀相なノエル様・・・。持参金が必要な為に私と別れる事も出来ないのでクリスタ様と結ばれる事も叶わない・・・。ひょっとするとクリスタ様がいつまでも病弱なのも愛する人と結ばれない苦しみが、心だけでなく、身体も蝕んでしまっているのかも。
それならやはりすぐにノエル様とクリスタ様の前から私は消えなければならない。
でもそうなるには私が見るに堪えないくらの悪い女を演じなければノエル様のご両親は納得しないかもしれない。あれほどの性悪女なら結婚を無理強いさせるわけにはいかなと思えるほどに・・。
それでは・・今から悪役令嬢を演じさせて頂きます。でもそうするには病床におられるクリスタ様の前で演じるわけにはいかない。
コホンと咳払いをすると私は言った。
「ノエル様。少し廊下に出て頂けませんか?お話したいことがございますので。」
「う、うん。分かったよ。」
私たちはドアを開けて部屋の外へ出た。
「それで、フローラ。話って何?」
ノエル様は真剣な瞳で私を見つめてくる。ああ・・・そのノエル様の瞳に映される姿が常に私だったら良かったのに・・。でも、それは叶わぬ願い。私が好きなのはノエル様だけど、ノエル様が好きな女性は私ではないのだから。
私は深呼吸した―。
「オーホッホッホッ!」
突然の高笑いにノエル様は明らかに驚いたように肩をびくりと震わせ、私を見た。
「な?何?!またその笑い?一体どうしちゃったの?フローラ?」
「ノエル様、何故もっとちゃんとクリスタ様を看てあげないのですか?クリスタ様が喘息の発作を起こされたのはノエル様がクリスタ様のお身体の事を考えておられなかったからですよ?貴方のクリスタ様へのお気持ちはそれっぽっちのものだったのですか?」
「え?そ、そんな事は無いよ。僕はいつだってクリスタの事はきちんと考えているし、彼女の健康状態も看ているつもりだよ?」
ノエル様の言葉を聞きながら、私は密かに傷ついていた。やはりノエル様はクリスタ様の事を大切に思っているのだと言う事が様々と感じられたからだ。
「さようでございましたか。それではこの先も是非そうして下さいませ。」
「え?」
「ですから、ノエル様が本来お傍に置くべきお方はクリスタ様だと言う事です。」
「ちょ、ちょっと待って・・・。フローラ、君・・一体何を言ってるの?」
ノエル様の顔が青冷めている。
「まだお分かりにならないのですか?ノエル様が本来選ぶべきお相手は私では無く、クリスタ様と言う事です。ご理解頂けましたか?」
私はわざと冷たい視線でノエル様を見つめた。でも・・・本当ならこんな真似はしたくないのに・・・。
「ねえ、フローラ。君は何か勘違いしているようだね?確かにクリスタは僕にとって大切な存在だけど、フローラ。君の事も僕は大切に思っているよ?クリスタよりもずっと大事に思っているんだよ?」
けれどもノエル様が必死に訴えれば訴える程、私の心は悲しくなっていく。あんな台詞を言う程に、チェスター家は追い詰められているのだろうか?
こうなれば私は徹底的に悪役令嬢を演じ、ノエル様に嫌われなければ・・・。
私は深呼吸しすると、ノエル様を見つめて口を開いた―。
13
あなたにおすすめの小説
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
婚約破棄までの七日間
たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!
※少しだけ内容を変更いたしました!!
※他サイト様でも掲載始めました!
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
悪役令嬢は断罪されない
竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。
王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。
私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!!
だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。
おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。
2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます!
→続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751
→王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる