悪役令嬢は高らかに笑う

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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第13話 届かぬ手紙

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 なんの音沙汰もないまま、あの手紙の件から早くも1月が経過していた。そして何を考えているのか分からないが、クリスタ様とノエル様は毎週末わが邸宅に2人で遊びに来ているのだが・・・そこに私の姿は無い。


「今日も来ておりますね・・・。クリスタ様とノエル様・・・。」

私付きのメイドが部屋の窓の外を見ながら言う。

「ええ、そうね。」

私はわざと興味なさ気にメイドの持ってきてくれた紅茶と御茶菓子を口にしながら本を読んでいる。

「フローラ様にお目通りを願うどころか、お2人でフローラ様のお部屋が見える庭でお話だけされて、夕方前に帰られるなんて・・。」

メイドは溜息をつきながら言う。

「きっとこのお庭が気に入ったんじゃないかしら?」

私は気にも留めない風に言ったが、本当は内心気になって気になって仕方がなかった。一体、ノエル様もクリスタ様も何を考えているのだろう?ノエル様は手紙の返事は一切よこさないし、かと言って私を呼び出そうとする気配すらない・・。
ここまで来ると、私の心は精神的に限界を迎えていた。
もう、こうなれば自分から動くしかないかもしれない・・・。

私は覚悟を決めた―。





 この日、私はマルティナ様とベアトリーチェ様と庭でお茶会を開いていた。

「よろしかったのですか?本日はノエル様とクリスタ様がいらっしゃる日なのでは・・?」

遠慮がちにマルティナ様が尋ねてきた。

「ええ、いいんですのよ。気になさらないで下さい。」

私はカップにお茶を注ぎながら言う。そして女3人で話をしていると・・やはり私の計画通り、ノエル様とクリスタ様がこちらへと近づいてきた―。



 そして今・・・。

結局、マルティナ様とベアトリーチェ様はクリスタ様とノエル様が近付いてきた段階で帰ってしまった。2人ともそれぞれ用事があると言っていたけれども・・・今にして思えば、おそらくこの2人と話がしたくなかったからなのかもしれない。
けれど・・・マルティナ様とベアトリーチェ様がきっかけでノエル様に近づけるチャンスが出来たのだから・・。私は思い切って手紙の事を聞くことにした。

「「あの。」」

え・・?

なんと私とノエル様の声が偶然ハモった。

「え・・と・・。どうぞ、フローラから。」

ノエル様はモジモジしながら私に言う。

「いえいえ、ノエル様の方からどうぞ。」

するとクリスタ様が言った。

「あら、ノエル。ここはレディーファーストでいきましょう?どうぞ、フローラ様から。」

「う、うん。そうだね。フローラ、先に君から話をしていいよ。」

ノエルはコホンと咳払いをすると言った。

「そうですか・・?ならお言葉に甘えて先に発言させて頂きます。ノエル様、何故お手紙の返事を頂けないのでしょうか?」

「え?!そ、それを言うなら・・ぼくだって同じだよ・・。フローラ。何故・・手紙の返事をくれないの?」

「「は?」」

私達は互いに手紙が届いていなかった事を改めて知った。すると・・・。

「ゴホッゴホッ!!」

突然クリスタ様が激しく咳をしだした。

「だ、大丈夫かい?クリスタッ!」

ノエル様が慌ててクリスタ様の背中をさする。

「ノ、ノエル・・く、苦しいわ・・。」

クリスタ様は胸を押さえながらノエル様を見ている。

「ノエル様、クリスタ様にはお部屋で休まれたほうがよろしいかと思われます。客室へ案内いたしますので、そちらでお休みして頂きましょう。ご案内いたしますね。」

私は立ち上がった。

「う、うん。ありがとう。」

ノエル様はクリスタを背中に背負うと、私の後に続いた。



「どうぞ、こちらでお休みください。」

「ありがとう。フローラ。」

客室に案内するとノエル様は部屋の中へと入り、クリスタ様をベッドへ降ろした。

「それではごゆっくりお休みください、クリスタ様。」

「あ、ありがとうございます、フローラ様。」

クリスタ様は赤い顔で私を見つめる。

「それじゃ後で様子を見に来るね。」

ノエル様は何故かクリスタ様を1人部屋に残そうとしている。なので私は悪役令嬢らしく言った。

「あら?ノエル様は喘息で苦しまれているクリスタ様を1人、お部屋に残していかれるおつもりですか?」

・・本当なら高笑いをしながら言いたかったけれども、クリスタ様の具合が悪ければそれも出来ない。

「え?そういうわけでは・・・。」

「それではお加減が良く成り次第、お帰りになられた方がよいですよ。やはりご自宅が一番ゆっくりできるでしょうから。どうぞ、クリスタ様とお幸せに。」

するとそれを聞いたノエル様の顔色がサッと青ざめた。

「あ、あのね。フローラ。何か勘違いしているかもしれないけれど・・・僕は君と婚約破棄するつもりはないからね?」

「え・・?」

今度は私の顔色が青ざめる番だった—。
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