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第12話 悪役令嬢を演じます
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2人がボート遊びに行っている間、私は池のほとりにある白いベンチに座り、本を読むことにした。もちろん読む本は『悪役令嬢は高らかに笑う』だ。
この小説の通りにふるまえば、きっと秒の速さでノエル様は婚約破棄にうなずいてくれるはず・・・。でも出来れば少しはためらって欲しいなと複雑な気持ちを抱えつつ私は本を開くと、朗読した。
「『オーホッホッホッ!さあ、早く彼から離れなさいっ!この方は私の婚約者なのよ。離れなければ今すぐ城の騎士に貴女を捕まえさせるわよっ!』悪役令嬢である彼女の甲高い耳障りな笑い声は2人の恋人同士の仲を引き裂く合図でもあった・・。」
そこまで読むと私はしおりを挟んで本をパタンと閉じた。なるほど・・・・甲高い笑い声は確かに悪役令嬢を演じるには効果的なのかもしれない・・。
その時・・
「フローラ様ー!」
私を呼ぶクリスタ様の声が聞こえた。顔を上げると、クリスタ様が私の方に向かって駆けよって来る姿が目に入った。そしてその後ろをノエル様が追っている。
「駄目だよ、クリスタッ!走ったら喘息が!」
するとクリスタ様は足を止めると、ノエル様が追いついてクリスタ様の右手を取ると、2人で仲睦まじく歩きながらこちらへ向かってやって来る。私はその様子を黙って見ていたが、心はズキズキと痛んでいた。
「フローラ様、ボート・・・とっても素敵でした。」
クリスタ様は私の傍まで来ると目をキラキラさせて言った。
「うん、本当に良かったよ。ありがとう、フローラ。」
ノエル様も私に笑みを浮かべてこちらを見る。
「オーホッホッホッ!それは良かったですわっ!お二人とも楽しめたようで何よりですわねっ!」
私は右手を腰に当て、口元を左手の甲で隠し、背中をのけぞらせながら言った。
うう・・・我ながら何て恥ずかしい姿を晒しているのだろう。
「え・・?フローラ様・・・?」
「ど、どうしたんだい?フローラ・・。」
クリスタ様もノエル様もあっけに取られて私を見ている。でも、ここで恥ずかしがってはいけない。私は完璧な悪役令嬢を演じてノエル様と完全に縁を切らなければならないのだから。
そして私は懐から婚約破棄を申し入れた手紙をスッとノエル様に手渡した。
「ノエル様、こちらのお手紙・・邸宅へ帰られてから目を通して下さいまし。よろしいですか?必ずお返事を下さいませ。」
普段とは違う強引な口調で私は言った。
実は今日この日の為に、念のために同様の手紙を私は用意していたのだ。
「え・・?これは・・?」
ノエル様は不思議そうに手紙を受け取ると私を見た。
「内容は申し上げられません。それでは後はお二人でお楽しみ下さいませ。私は本日はもう引き下がらせて頂きますので。」
そして私は2人にくるりと背を向けると歩き出した。
「ええっ?!そんな!フローラ様ッ!」
何故か残念そうにクリスタ様が呼び止めようとする。
「待ってっ!フローラッ!」
そしてノエル様までもが私を呼ぶ。そこで私は振り向くと2人に言った。
「あいにく私はあなた方と違って何かと忙しいんですの。なので放っておいて下さりませんか?この池が気に入られたのでしたら、今後もどうぞご自由にお使いください。それでは私はこれで失礼致します。」
そして私は再び2人に背を向け、歩き去って行った。きっと今日ノエル様は帰宅後、私の手紙を目にするだろう。そして喜んで婚約破棄を受け入れるはずだ。
さようなら、ノエル様。
私は本当に貴方の事が大好きでした―。
この小説の通りにふるまえば、きっと秒の速さでノエル様は婚約破棄にうなずいてくれるはず・・・。でも出来れば少しはためらって欲しいなと複雑な気持ちを抱えつつ私は本を開くと、朗読した。
「『オーホッホッホッ!さあ、早く彼から離れなさいっ!この方は私の婚約者なのよ。離れなければ今すぐ城の騎士に貴女を捕まえさせるわよっ!』悪役令嬢である彼女の甲高い耳障りな笑い声は2人の恋人同士の仲を引き裂く合図でもあった・・。」
そこまで読むと私はしおりを挟んで本をパタンと閉じた。なるほど・・・・甲高い笑い声は確かに悪役令嬢を演じるには効果的なのかもしれない・・。
その時・・
「フローラ様ー!」
私を呼ぶクリスタ様の声が聞こえた。顔を上げると、クリスタ様が私の方に向かって駆けよって来る姿が目に入った。そしてその後ろをノエル様が追っている。
「駄目だよ、クリスタッ!走ったら喘息が!」
するとクリスタ様は足を止めると、ノエル様が追いついてクリスタ様の右手を取ると、2人で仲睦まじく歩きながらこちらへ向かってやって来る。私はその様子を黙って見ていたが、心はズキズキと痛んでいた。
「フローラ様、ボート・・・とっても素敵でした。」
クリスタ様は私の傍まで来ると目をキラキラさせて言った。
「うん、本当に良かったよ。ありがとう、フローラ。」
ノエル様も私に笑みを浮かべてこちらを見る。
「オーホッホッホッ!それは良かったですわっ!お二人とも楽しめたようで何よりですわねっ!」
私は右手を腰に当て、口元を左手の甲で隠し、背中をのけぞらせながら言った。
うう・・・我ながら何て恥ずかしい姿を晒しているのだろう。
「え・・?フローラ様・・・?」
「ど、どうしたんだい?フローラ・・。」
クリスタ様もノエル様もあっけに取られて私を見ている。でも、ここで恥ずかしがってはいけない。私は完璧な悪役令嬢を演じてノエル様と完全に縁を切らなければならないのだから。
そして私は懐から婚約破棄を申し入れた手紙をスッとノエル様に手渡した。
「ノエル様、こちらのお手紙・・邸宅へ帰られてから目を通して下さいまし。よろしいですか?必ずお返事を下さいませ。」
普段とは違う強引な口調で私は言った。
実は今日この日の為に、念のために同様の手紙を私は用意していたのだ。
「え・・?これは・・?」
ノエル様は不思議そうに手紙を受け取ると私を見た。
「内容は申し上げられません。それでは後はお二人でお楽しみ下さいませ。私は本日はもう引き下がらせて頂きますので。」
そして私は2人にくるりと背を向けると歩き出した。
「ええっ?!そんな!フローラ様ッ!」
何故か残念そうにクリスタ様が呼び止めようとする。
「待ってっ!フローラッ!」
そしてノエル様までもが私を呼ぶ。そこで私は振り向くと2人に言った。
「あいにく私はあなた方と違って何かと忙しいんですの。なので放っておいて下さりませんか?この池が気に入られたのでしたら、今後もどうぞご自由にお使いください。それでは私はこれで失礼致します。」
そして私は再び2人に背を向け、歩き去って行った。きっと今日ノエル様は帰宅後、私の手紙を目にするだろう。そして喜んで婚約破棄を受け入れるはずだ。
さようなら、ノエル様。
私は本当に貴方の事が大好きでした―。
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