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第10章 14 そして、『カウベリー』へ―
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午前8時半―
コンコン
アパートメントにノックの音が響き渡った。
「ヒルダ様、アンナ様達がいらしたようですよ。」
カミラが出かける準備をしていたヒルダに声を掛けてきた。
「ええ、そうね。カミラ。私が応対するわ。」
ヒルダは言うと、キャリーケースを引きずりながら玄関へと向かいドアを開けた。
「おはようございます、ヒルダ様。」
そこには白い息を吐きながら笑顔のアンナが立っていた。背後には侍女のコゼットもいる。
「おはようございます、アンナ様。コゼットさん。どうぞよろしくお願いします。」
するといつの間にかカミラも玄関へ出てきており、アンナとコゼットに頭を下げた。
「おはようございます。どうぞヒルダ様の事・・・よろしくお願い致します。」
「ええ、任せて頂戴。必ず今日ヒルダ様をお母様に会わせて差し上げますから。さ、ヒルダ様。馬車を外で待たせているの。すぐに行きましょう。」
「ええ・・・。」
そしてヒルダ達は外に出ると、既にそこには御者を乗せた馬車が待機していた。
先にアンナが乗り込むと、次にヒルダが続いた。ヒルダは手すりにつかまって馬車に乗り込むときにカミラを振り向くと言った。
「カミラ・・それでは行って来るわね。」
「ええ・・、ヒルダ様。お帰りをお待ちしております。」
ヒルダは少しだけ口元に笑みを浮かべると、馬車に乗り込んだ。そしてその後を侍女のコゼットが続く。
全員が乗り込むとアンナが言った。
「それじゃ、出して頂戴。」
「はい、承知しました。」
御者は言うと、掛け声をかけて馬を走らせた。
ガラガラガラ・・・・
馬車が走り去って行く後姿を、カミラはいつまでも見送っていた―。
ロータス駅は冬休みと言う事もあり、多くの人でごった返しになっていた。
『カウベリー』駅まではローカル列車で一番最後の終着駅である。
(こんなに人が多くいるのに・・・座席は大丈夫なのかしら・・。)
ヒルダがホームで戸惑っていると、アンナが声を掛けてきた。
「ヒルダ様、こっちよ、来て下さいな。」
アンナに言われた方向へ足を向けると、そこは一等車両の座席がある場所だった。
「私達は一等車両に乗って『カウベリー』まで行くのですよ。」
コゼットはニコニコしながら言う。
「まあ・・そうだったの?」
ヒルダは驚いた。一等車両は全席指定で立派な皮張りのボックスシートになっている。この車両では飲み物や食べ物の無料サービスもあり、料金は普通車両のおよそ3倍はあるのだ。
(お兄様・・・私の為にわざわざ一等車両の席を用意してくれたのかしら・・・?)
ヒルダは知らなかった。本当はこの席を用意したのがエドガーでは無く、アンナであると言う事を―。アンナは足の不自由なヒルダを気遣い、乗り心地の良い一等車両の座席を用意しておいたのである。しかし、アンナはその事を一言も口にはしなかった。それだけヒルダの置かれた境遇に心を痛め、ヒルダの力になりたいと思っていたのだった。
ボーッ・・・
やがて、汽笛を鳴らし、ヒルダ達を乗せた列車は懐かしい故郷である『カウベリー』へと向けて・・走り始めた。
窓の外を眺めると、見る見るうちに『ロータス』駅は小さく、遠ざかっていく。
(お母様・・・どうか・・待っていて下さい。お父様・・・騙すような真似をして里帰りする私をお許し下さい・・。そして、お兄様・・・本当に・・ありがとうございます・・。)
ヒルダは心の中で祈り・・・懐かしいカウベリーに思いを馳せた。
故郷には愛するルドルフがいる事も知らずに―。
コンコン
アパートメントにノックの音が響き渡った。
「ヒルダ様、アンナ様達がいらしたようですよ。」
カミラが出かける準備をしていたヒルダに声を掛けてきた。
「ええ、そうね。カミラ。私が応対するわ。」
ヒルダは言うと、キャリーケースを引きずりながら玄関へと向かいドアを開けた。
「おはようございます、ヒルダ様。」
そこには白い息を吐きながら笑顔のアンナが立っていた。背後には侍女のコゼットもいる。
「おはようございます、アンナ様。コゼットさん。どうぞよろしくお願いします。」
するといつの間にかカミラも玄関へ出てきており、アンナとコゼットに頭を下げた。
「おはようございます。どうぞヒルダ様の事・・・よろしくお願い致します。」
「ええ、任せて頂戴。必ず今日ヒルダ様をお母様に会わせて差し上げますから。さ、ヒルダ様。馬車を外で待たせているの。すぐに行きましょう。」
「ええ・・・。」
そしてヒルダ達は外に出ると、既にそこには御者を乗せた馬車が待機していた。
先にアンナが乗り込むと、次にヒルダが続いた。ヒルダは手すりにつかまって馬車に乗り込むときにカミラを振り向くと言った。
「カミラ・・それでは行って来るわね。」
「ええ・・、ヒルダ様。お帰りをお待ちしております。」
ヒルダは少しだけ口元に笑みを浮かべると、馬車に乗り込んだ。そしてその後を侍女のコゼットが続く。
全員が乗り込むとアンナが言った。
「それじゃ、出して頂戴。」
「はい、承知しました。」
御者は言うと、掛け声をかけて馬を走らせた。
ガラガラガラ・・・・
馬車が走り去って行く後姿を、カミラはいつまでも見送っていた―。
ロータス駅は冬休みと言う事もあり、多くの人でごった返しになっていた。
『カウベリー』駅まではローカル列車で一番最後の終着駅である。
(こんなに人が多くいるのに・・・座席は大丈夫なのかしら・・。)
ヒルダがホームで戸惑っていると、アンナが声を掛けてきた。
「ヒルダ様、こっちよ、来て下さいな。」
アンナに言われた方向へ足を向けると、そこは一等車両の座席がある場所だった。
「私達は一等車両に乗って『カウベリー』まで行くのですよ。」
コゼットはニコニコしながら言う。
「まあ・・そうだったの?」
ヒルダは驚いた。一等車両は全席指定で立派な皮張りのボックスシートになっている。この車両では飲み物や食べ物の無料サービスもあり、料金は普通車両のおよそ3倍はあるのだ。
(お兄様・・・私の為にわざわざ一等車両の席を用意してくれたのかしら・・・?)
ヒルダは知らなかった。本当はこの席を用意したのがエドガーでは無く、アンナであると言う事を―。アンナは足の不自由なヒルダを気遣い、乗り心地の良い一等車両の座席を用意しておいたのである。しかし、アンナはその事を一言も口にはしなかった。それだけヒルダの置かれた境遇に心を痛め、ヒルダの力になりたいと思っていたのだった。
ボーッ・・・
やがて、汽笛を鳴らし、ヒルダ達を乗せた列車は懐かしい故郷である『カウベリー』へと向けて・・走り始めた。
窓の外を眺めると、見る見るうちに『ロータス』駅は小さく、遠ざかっていく。
(お母様・・・どうか・・待っていて下さい。お父様・・・騙すような真似をして里帰りする私をお許し下さい・・。そして、お兄様・・・本当に・・ありがとうございます・・。)
ヒルダは心の中で祈り・・・懐かしいカウベリーに思いを馳せた。
故郷には愛するルドルフがいる事も知らずに―。
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