231 / 566
第10章 14 そして、『カウベリー』へ―
しおりを挟む
午前8時半―
コンコン
アパートメントにノックの音が響き渡った。
「ヒルダ様、アンナ様達がいらしたようですよ。」
カミラが出かける準備をしていたヒルダに声を掛けてきた。
「ええ、そうね。カミラ。私が応対するわ。」
ヒルダは言うと、キャリーケースを引きずりながら玄関へと向かいドアを開けた。
「おはようございます、ヒルダ様。」
そこには白い息を吐きながら笑顔のアンナが立っていた。背後には侍女のコゼットもいる。
「おはようございます、アンナ様。コゼットさん。どうぞよろしくお願いします。」
するといつの間にかカミラも玄関へ出てきており、アンナとコゼットに頭を下げた。
「おはようございます。どうぞヒルダ様の事・・・よろしくお願い致します。」
「ええ、任せて頂戴。必ず今日ヒルダ様をお母様に会わせて差し上げますから。さ、ヒルダ様。馬車を外で待たせているの。すぐに行きましょう。」
「ええ・・・。」
そしてヒルダ達は外に出ると、既にそこには御者を乗せた馬車が待機していた。
先にアンナが乗り込むと、次にヒルダが続いた。ヒルダは手すりにつかまって馬車に乗り込むときにカミラを振り向くと言った。
「カミラ・・それでは行って来るわね。」
「ええ・・、ヒルダ様。お帰りをお待ちしております。」
ヒルダは少しだけ口元に笑みを浮かべると、馬車に乗り込んだ。そしてその後を侍女のコゼットが続く。
全員が乗り込むとアンナが言った。
「それじゃ、出して頂戴。」
「はい、承知しました。」
御者は言うと、掛け声をかけて馬を走らせた。
ガラガラガラ・・・・
馬車が走り去って行く後姿を、カミラはいつまでも見送っていた―。
ロータス駅は冬休みと言う事もあり、多くの人でごった返しになっていた。
『カウベリー』駅まではローカル列車で一番最後の終着駅である。
(こんなに人が多くいるのに・・・座席は大丈夫なのかしら・・。)
ヒルダがホームで戸惑っていると、アンナが声を掛けてきた。
「ヒルダ様、こっちよ、来て下さいな。」
アンナに言われた方向へ足を向けると、そこは一等車両の座席がある場所だった。
「私達は一等車両に乗って『カウベリー』まで行くのですよ。」
コゼットはニコニコしながら言う。
「まあ・・そうだったの?」
ヒルダは驚いた。一等車両は全席指定で立派な皮張りのボックスシートになっている。この車両では飲み物や食べ物の無料サービスもあり、料金は普通車両のおよそ3倍はあるのだ。
(お兄様・・・私の為にわざわざ一等車両の席を用意してくれたのかしら・・・?)
ヒルダは知らなかった。本当はこの席を用意したのがエドガーでは無く、アンナであると言う事を―。アンナは足の不自由なヒルダを気遣い、乗り心地の良い一等車両の座席を用意しておいたのである。しかし、アンナはその事を一言も口にはしなかった。それだけヒルダの置かれた境遇に心を痛め、ヒルダの力になりたいと思っていたのだった。
ボーッ・・・
やがて、汽笛を鳴らし、ヒルダ達を乗せた列車は懐かしい故郷である『カウベリー』へと向けて・・走り始めた。
窓の外を眺めると、見る見るうちに『ロータス』駅は小さく、遠ざかっていく。
(お母様・・・どうか・・待っていて下さい。お父様・・・騙すような真似をして里帰りする私をお許し下さい・・。そして、お兄様・・・本当に・・ありがとうございます・・。)
ヒルダは心の中で祈り・・・懐かしいカウベリーに思いを馳せた。
故郷には愛するルドルフがいる事も知らずに―。
コンコン
アパートメントにノックの音が響き渡った。
「ヒルダ様、アンナ様達がいらしたようですよ。」
カミラが出かける準備をしていたヒルダに声を掛けてきた。
「ええ、そうね。カミラ。私が応対するわ。」
ヒルダは言うと、キャリーケースを引きずりながら玄関へと向かいドアを開けた。
「おはようございます、ヒルダ様。」
そこには白い息を吐きながら笑顔のアンナが立っていた。背後には侍女のコゼットもいる。
「おはようございます、アンナ様。コゼットさん。どうぞよろしくお願いします。」
するといつの間にかカミラも玄関へ出てきており、アンナとコゼットに頭を下げた。
「おはようございます。どうぞヒルダ様の事・・・よろしくお願い致します。」
「ええ、任せて頂戴。必ず今日ヒルダ様をお母様に会わせて差し上げますから。さ、ヒルダ様。馬車を外で待たせているの。すぐに行きましょう。」
「ええ・・・。」
そしてヒルダ達は外に出ると、既にそこには御者を乗せた馬車が待機していた。
先にアンナが乗り込むと、次にヒルダが続いた。ヒルダは手すりにつかまって馬車に乗り込むときにカミラを振り向くと言った。
「カミラ・・それでは行って来るわね。」
「ええ・・、ヒルダ様。お帰りをお待ちしております。」
ヒルダは少しだけ口元に笑みを浮かべると、馬車に乗り込んだ。そしてその後を侍女のコゼットが続く。
全員が乗り込むとアンナが言った。
「それじゃ、出して頂戴。」
「はい、承知しました。」
御者は言うと、掛け声をかけて馬を走らせた。
ガラガラガラ・・・・
馬車が走り去って行く後姿を、カミラはいつまでも見送っていた―。
ロータス駅は冬休みと言う事もあり、多くの人でごった返しになっていた。
『カウベリー』駅まではローカル列車で一番最後の終着駅である。
(こんなに人が多くいるのに・・・座席は大丈夫なのかしら・・。)
ヒルダがホームで戸惑っていると、アンナが声を掛けてきた。
「ヒルダ様、こっちよ、来て下さいな。」
アンナに言われた方向へ足を向けると、そこは一等車両の座席がある場所だった。
「私達は一等車両に乗って『カウベリー』まで行くのですよ。」
コゼットはニコニコしながら言う。
「まあ・・そうだったの?」
ヒルダは驚いた。一等車両は全席指定で立派な皮張りのボックスシートになっている。この車両では飲み物や食べ物の無料サービスもあり、料金は普通車両のおよそ3倍はあるのだ。
(お兄様・・・私の為にわざわざ一等車両の席を用意してくれたのかしら・・・?)
ヒルダは知らなかった。本当はこの席を用意したのがエドガーでは無く、アンナであると言う事を―。アンナは足の不自由なヒルダを気遣い、乗り心地の良い一等車両の座席を用意しておいたのである。しかし、アンナはその事を一言も口にはしなかった。それだけヒルダの置かれた境遇に心を痛め、ヒルダの力になりたいと思っていたのだった。
ボーッ・・・
やがて、汽笛を鳴らし、ヒルダ達を乗せた列車は懐かしい故郷である『カウベリー』へと向けて・・走り始めた。
窓の外を眺めると、見る見るうちに『ロータス』駅は小さく、遠ざかっていく。
(お母様・・・どうか・・待っていて下さい。お父様・・・騙すような真似をして里帰りする私をお許し下さい・・。そして、お兄様・・・本当に・・ありがとうございます・・。)
ヒルダは心の中で祈り・・・懐かしいカウベリーに思いを馳せた。
故郷には愛するルドルフがいる事も知らずに―。
2
あなたにおすすめの小説
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる