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第5章 8 それぞれのクリスマス 4
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「こんばんは、ハリス様。そして…ヒルダ様」
「こんばんは。アンナ様」
ヒルダは弱々しげに微笑む。
「ヒルダ様…」
アンナは涙ぐむとヒルダに駆け寄った。
「大丈夫ですか?ヒルダ様。」
「まだ、正直なところ大丈夫ではありませんが…ご心配していただき、ありがとうございます」
ヒルダは丁寧に頭を下げた。
「ヒルダ様…私もルドルフ様の事は知っています。お話ししたことありますから。とても良い方でしたからきっと神様の元へいけたはずです。クリスマス礼拝でルドルフ様の事をお祈りしましょう。私もお祈り致しますから」
「あ、ありがとうございます…」
涙ぐみながらヒルダはアンナにお礼を言う。その様子を見てハリスは言った。
「本当にアンナ嬢は心優しい方だ。まさにエドガーの将来の伴侶にふさわしい方だとは思わないかい、ヒルダ」
「はい、私もそう思います。将来アンナ様が義理の家族になる事はとても嬉しいです」
ヒルダはアンナに言う。
「ヒ、ヒルダ様…ありがとうございます」
アンナは頬を染めてヒルダを見る。しかし、ヒルダの言葉はエドガーに絶望をもたらすものだった。
(ヒルダ…ッ!やはり父は俺のヒルダに対する思いに気付いているのだ。だからその事を牽制するために…わざとあんな話しを…!)
そして同時に悟った。ヒルダにとっては、所詮自分は1人の男としては見てもらえない。恐らく自分からヒルダに愛を告げない限り…兄妹の関係は決して変わらないのだと…。
「エドガー様、どうされたのですか?」
気付けば、いつの間にかアンナがエドガーのそばに寄り、手をつないでいた。
「あ、ああ。何でもない。それでは教会へ行こうか?アンナ嬢」
「はい、エドガー様。あの、私の馬車で一緒に行きませんか?」
「そうだね。それじゃ父とヒルダも一緒に…」
言いかけるとハリスが口を挟んだ。
「いや、私とヒルダは別の馬車に乗ることにしよう。婚約者同士、2人きりで話もあるだろうし…」
「まあ…ハリス様…」
アンナが頬を染める。
「分かりました。それではアンナ嬢、一緒に参りましょう」
エドガーは腕を差し出すと、アンナは嬉しそうにその腕につかまる。そして2人がエントランスへ向かって歩きだすとハリスもヒルダに声を掛けた。
「では、ヒルダ。我々も行こう」
「はい、お父様」
ヒルダはハリスにつかまり、左足を引きずるように歩き出した―。
****
雪がうっすら積もった道を走る馬車の中、ハリスとヒルダは向かい合わせに座っていた。
「ヒルダ…本当にすまなかったな」
ポツリとハリスが言った。
「お父様?」
「お前をここから追い出さなければ…こんな事にはならなかったのかもしれないが…あの時は本当にどうしようも無かったんだ…ああでもしなければ領民たちの怒りが収まらず…だが、その事でこんな結果を招いてしまったのかもしれない」
「お父様…いいえ、私が全ていけなかったんです。嘘をつかずに初めから全て正直に話していればこんな事には…」
ヒルダは涙ぐんだ。
「ヒルダ…」
ハリスはヒルダの隣に座ると肩を抱き寄せた。
「マーガレットから聞いたよ。ヒルダは…大学へ行きたいのだろう?」
「はい…」
「安心しろ。学費なら出してやる。ヒルダの好きなように生きればいい。それが私に出来るお前への罪滅ぼしだからな…。だから勉強を頑張るのだぞ?」
「ありがとうございます。お父様…」
ヒルダはハリスの肩に頭をもたれかけ、瞳を閉じた―。
「こんばんは。アンナ様」
ヒルダは弱々しげに微笑む。
「ヒルダ様…」
アンナは涙ぐむとヒルダに駆け寄った。
「大丈夫ですか?ヒルダ様。」
「まだ、正直なところ大丈夫ではありませんが…ご心配していただき、ありがとうございます」
ヒルダは丁寧に頭を下げた。
「ヒルダ様…私もルドルフ様の事は知っています。お話ししたことありますから。とても良い方でしたからきっと神様の元へいけたはずです。クリスマス礼拝でルドルフ様の事をお祈りしましょう。私もお祈り致しますから」
「あ、ありがとうございます…」
涙ぐみながらヒルダはアンナにお礼を言う。その様子を見てハリスは言った。
「本当にアンナ嬢は心優しい方だ。まさにエドガーの将来の伴侶にふさわしい方だとは思わないかい、ヒルダ」
「はい、私もそう思います。将来アンナ様が義理の家族になる事はとても嬉しいです」
ヒルダはアンナに言う。
「ヒ、ヒルダ様…ありがとうございます」
アンナは頬を染めてヒルダを見る。しかし、ヒルダの言葉はエドガーに絶望をもたらすものだった。
(ヒルダ…ッ!やはり父は俺のヒルダに対する思いに気付いているのだ。だからその事を牽制するために…わざとあんな話しを…!)
そして同時に悟った。ヒルダにとっては、所詮自分は1人の男としては見てもらえない。恐らく自分からヒルダに愛を告げない限り…兄妹の関係は決して変わらないのだと…。
「エドガー様、どうされたのですか?」
気付けば、いつの間にかアンナがエドガーのそばに寄り、手をつないでいた。
「あ、ああ。何でもない。それでは教会へ行こうか?アンナ嬢」
「はい、エドガー様。あの、私の馬車で一緒に行きませんか?」
「そうだね。それじゃ父とヒルダも一緒に…」
言いかけるとハリスが口を挟んだ。
「いや、私とヒルダは別の馬車に乗ることにしよう。婚約者同士、2人きりで話もあるだろうし…」
「まあ…ハリス様…」
アンナが頬を染める。
「分かりました。それではアンナ嬢、一緒に参りましょう」
エドガーは腕を差し出すと、アンナは嬉しそうにその腕につかまる。そして2人がエントランスへ向かって歩きだすとハリスもヒルダに声を掛けた。
「では、ヒルダ。我々も行こう」
「はい、お父様」
ヒルダはハリスにつかまり、左足を引きずるように歩き出した―。
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雪がうっすら積もった道を走る馬車の中、ハリスとヒルダは向かい合わせに座っていた。
「ヒルダ…本当にすまなかったな」
ポツリとハリスが言った。
「お父様?」
「お前をここから追い出さなければ…こんな事にはならなかったのかもしれないが…あの時は本当にどうしようも無かったんだ…ああでもしなければ領民たちの怒りが収まらず…だが、その事でこんな結果を招いてしまったのかもしれない」
「お父様…いいえ、私が全ていけなかったんです。嘘をつかずに初めから全て正直に話していればこんな事には…」
ヒルダは涙ぐんだ。
「ヒルダ…」
ハリスはヒルダの隣に座ると肩を抱き寄せた。
「マーガレットから聞いたよ。ヒルダは…大学へ行きたいのだろう?」
「はい…」
「安心しろ。学費なら出してやる。ヒルダの好きなように生きればいい。それが私に出来るお前への罪滅ぼしだからな…。だから勉強を頑張るのだぞ?」
「ありがとうございます。お父様…」
ヒルダはハリスの肩に頭をもたれかけ、瞳を閉じた―。
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