8 / 77
8 2人の為に気配を隠して
しおりを挟む
ガラガラガラガラ・・・
走り続ける馬車の中。2人は窓の外を眺めながら仲良さげに話している。私は2人の邪魔にならないように息をひそめて、反対側の窓から見える景色を眺めていた。
それにしても・・ヘンリーは何所へ連れて行ってくれるのだろう?出来ればあまり遠くへは行かないで欲しい。何故なら馬車が止まったら、私はそこで2人きりにしてあげようと思っていたから。
チラリと横目で2人の様子を伺うと、ヘンリーとキャロルは楽しそうに微笑みながら話をしている。・・本当にお似合いの2人だと思った。ヘンリーは私と会っているとき、一度もあんな笑顔を見せてくれた事は無かった。きっと・・・ヘンリーにとって私と会っている時間は・・苦痛でしか無かったのかもしれない。楽しいと思っていたのは私だけだったのだ。私は・・ずっと今までヘンリーから貴重な時間を奪っていたんだ・・。何て酷いことをしてしまっていたのだろう・・。改めてヘンリーに対して申し訳ない気持ちで一杯になった。でも・・今はキャロルと楽しそうに笑いあっている。それにキャロルも幸せそうだ。
良かった・・・2人を引き合わせてあげられて・・・。
私は、無理やり自分にそう言い聞かせた―。
****
馬車は暫く走り続け・・・突然ピタリと止まった。
「着いたよ、キャロル。」
ヘンリーがキャロルに声を掛けたので、私は初めてここがどこなのか分った。窓の外を見ると、そこには動物園があった。
「まあ。動物園ね?」
キャロルが嬉しそうに声を上げているのを私は黙って聞いていた。
キイ~・・・。
御者の若い男性がドアを開けて、じっと私を見つめていたがおもむろに手を伸ばして来た。
「どうぞ、降りて下さい。」
御者の男性の顔には・・・私に対する同情の表情が浮かんでいた。きっと彼は私が許嫁であるヘンリーに馬車に乗るときに手も貸してもらえず、自分でドアを閉めた姿を見て・・気の毒に思ってくれたのかもしれない。思わず目頭が熱くなりかけたけれども、私はそれを必死にこらえてお礼を言った。
「ありがとう。」
そして彼の手を借りて、私は馬車から降りた。
「キャロル、気を付けて降りるんだよ。」
私が降りるとすぐにヘンリーが降りて、キャロルに手を差し出す。私はそれを見ない様に視線をそらせていた。
「それじゃ、俺達が戻るまでお前はここで待っていろよ。」
ヘンリーは御者の男性に命じる。
「はい、かしこまりました。」
御者の男性は帽子を取って頭を深々と下げた。
「よし、それじゃ行こうか。」
ヘンリーがキャロルに声を掛けた。
「ええ、そうね。行きましょう、テア。」
キャロルが少し2人から距離を空けて立っていた私を振り返ると言った。その時でさえ、やはりヘンリーは険しい顔で私を見る。ここは・・気を利かせないといけない。
「あ、あのね・・・ここから先は2人で行って来て。私は1人で自由に見て回りたいから。」
「え・・・?そうなの・・?」
キャロルの顔が曇るけれどもヘンリーの顔は明らかに嬉しそうに見えた。
「ええ。ごめんね・・・。キャロル。ヘンリー・・・。」
「キャロル、テアがああ言ってるから・・2人で回ろう。」
ヘンリーがキャロルに手を差し伸べた。
「ええ・・・。」
キャロルは申し訳なさげに私を見た。
「あのね・・・後私はここから1人で帰るから。2人でゆっくりしてきて。」
「そう?テアがそこまで言うなら・・・。」
言いながらキャロルはチラリとヘンリーを見る。やっぱり・・キャロルもヘンリーの事が気になっていたんだ。
「ええ。それじゃ・・私、先に行くわね。」
そして私は2人の前をさっさと歩きだした。動物園を一周したら・・ここを出て何処かで時間を潰してから辻馬車を拾って帰ろう・・・。
私は心の中でそう決めた―。
走り続ける馬車の中。2人は窓の外を眺めながら仲良さげに話している。私は2人の邪魔にならないように息をひそめて、反対側の窓から見える景色を眺めていた。
それにしても・・ヘンリーは何所へ連れて行ってくれるのだろう?出来ればあまり遠くへは行かないで欲しい。何故なら馬車が止まったら、私はそこで2人きりにしてあげようと思っていたから。
チラリと横目で2人の様子を伺うと、ヘンリーとキャロルは楽しそうに微笑みながら話をしている。・・本当にお似合いの2人だと思った。ヘンリーは私と会っているとき、一度もあんな笑顔を見せてくれた事は無かった。きっと・・・ヘンリーにとって私と会っている時間は・・苦痛でしか無かったのかもしれない。楽しいと思っていたのは私だけだったのだ。私は・・ずっと今までヘンリーから貴重な時間を奪っていたんだ・・。何て酷いことをしてしまっていたのだろう・・。改めてヘンリーに対して申し訳ない気持ちで一杯になった。でも・・今はキャロルと楽しそうに笑いあっている。それにキャロルも幸せそうだ。
良かった・・・2人を引き合わせてあげられて・・・。
私は、無理やり自分にそう言い聞かせた―。
****
馬車は暫く走り続け・・・突然ピタリと止まった。
「着いたよ、キャロル。」
ヘンリーがキャロルに声を掛けたので、私は初めてここがどこなのか分った。窓の外を見ると、そこには動物園があった。
「まあ。動物園ね?」
キャロルが嬉しそうに声を上げているのを私は黙って聞いていた。
キイ~・・・。
御者の若い男性がドアを開けて、じっと私を見つめていたがおもむろに手を伸ばして来た。
「どうぞ、降りて下さい。」
御者の男性の顔には・・・私に対する同情の表情が浮かんでいた。きっと彼は私が許嫁であるヘンリーに馬車に乗るときに手も貸してもらえず、自分でドアを閉めた姿を見て・・気の毒に思ってくれたのかもしれない。思わず目頭が熱くなりかけたけれども、私はそれを必死にこらえてお礼を言った。
「ありがとう。」
そして彼の手を借りて、私は馬車から降りた。
「キャロル、気を付けて降りるんだよ。」
私が降りるとすぐにヘンリーが降りて、キャロルに手を差し出す。私はそれを見ない様に視線をそらせていた。
「それじゃ、俺達が戻るまでお前はここで待っていろよ。」
ヘンリーは御者の男性に命じる。
「はい、かしこまりました。」
御者の男性は帽子を取って頭を深々と下げた。
「よし、それじゃ行こうか。」
ヘンリーがキャロルに声を掛けた。
「ええ、そうね。行きましょう、テア。」
キャロルが少し2人から距離を空けて立っていた私を振り返ると言った。その時でさえ、やはりヘンリーは険しい顔で私を見る。ここは・・気を利かせないといけない。
「あ、あのね・・・ここから先は2人で行って来て。私は1人で自由に見て回りたいから。」
「え・・・?そうなの・・?」
キャロルの顔が曇るけれどもヘンリーの顔は明らかに嬉しそうに見えた。
「ええ。ごめんね・・・。キャロル。ヘンリー・・・。」
「キャロル、テアがああ言ってるから・・2人で回ろう。」
ヘンリーがキャロルに手を差し伸べた。
「ええ・・・。」
キャロルは申し訳なさげに私を見た。
「あのね・・・後私はここから1人で帰るから。2人でゆっくりしてきて。」
「そう?テアがそこまで言うなら・・・。」
言いながらキャロルはチラリとヘンリーを見る。やっぱり・・キャロルもヘンリーの事が気になっていたんだ。
「ええ。それじゃ・・私、先に行くわね。」
そして私は2人の前をさっさと歩きだした。動物園を一周したら・・ここを出て何処かで時間を潰してから辻馬車を拾って帰ろう・・・。
私は心の中でそう決めた―。
308
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
かつて番に婚約者を奪われた公爵令嬢は『運命の番』なんてお断りです。なのに獣人国の王が『お前が運命の番だ』と求婚して来ます
神崎 ルナ
恋愛
「運命の番に出会ったからローズ、君との婚約は解消する」
ローズ・ファラント公爵令嬢は婚約者のエドモンド・ザックランド公爵令息にそう言われて婚約を解消されてしまう。
ローズの居るマトアニア王国は獣人国シュガルトと隣接しているため、数は少ないがそういった可能性はあった。
だが、今回の婚約は幼い頃から決められた政略結婚である。
当然契約違反をしたエドモンド側が違約金を支払うと思われたが――。
「違約金? 何のことだい? お互いのうちどちらかがもし『運命の番』に出会ったら円満に解消すること、って書いてあるじゃないか」
確かにエドモンドの言葉通りその文面はあったが、タイミングが良すぎた。
ここ数年、ザックランド公爵家の領地では不作が続き、ファラント公爵家が援助をしていたのである。
その領地が持ち直したところでこの『運命の番』騒動である。
だが、一応理には適っているため、ローズは婚約解消に応じることとなる。
そして――。
とあることを切っ掛けに、ローズはファラント公爵領の中でもまだ発展途上の領地の領地代理として忙しく日々を送っていた。
そして半年が過ぎようとしていた頃。
拙いところはあるが、少しずつ治める側としての知識や社交術を身に付けつつあったローズの前に一人の獣人が現れた。
その獣人はいきなりローズのことを『お前が運命の番だ』と言ってきて。
※『運命の番』に関する独自解釈がありますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる