許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
10 / 77

10 プレゼントの意味は

しおりを挟む
 屋敷に帰ると母は不在だった。メイドに尋ねると、ドイル男爵家の婦人のお茶会に呼ばれて出かけているとのことだった。夕食までには帰宅する予定だと教えてもらった。

「そう?ありがとう。」

教えてくれたメイドにお礼を伝えると、私は自分の部屋を目指して歩きながら安堵のため息をついた。なぜなら3人で出かけたはずなのに、また私は1人で帰宅してきてしまったから。この事実を母に知られてしまえば、またヘンリーがとがめられて機嫌を悪くしてしまいかねない。
ほっとしながら私は自室に戻り、部屋でお気に入りの恋愛小説を呼んでいるときにふと気が付いた。

「あ!ど、どうしよう・・。ヘンリーとキャロルはいつ屋敷に戻って来るのかしら・・・。」

もし母が帰宅する前に2人が戻ってこなかったら?帰る時間が重なって鉢合わせをしてしまったら?
そう考えると気が気でならなかった。

「こんな事なら・・・ヘンリーの機嫌を損ねてもいいから帰ってきてもらう時間を決めて貰えば良かったわ・・・。」


ヘンリーの事で悩んだ私は・・再び頭が痛くなってきてしまった。最近はいつもこんな感じだ。私が悩むのは大抵がヘンリーの事ばかり。そしてその後は頭痛が起きてしまう。どうも・・ヘンリーは私にとって頭痛の種になってしまうみたいだった。

「きっと・・・それだけ私が真剣にヘンリーの事を好きな証よね・・・。」

私は自室に置いてある食器棚の引き出しを開けると、そこから鎮静成分のある茶葉を取りだし、ポットに入れた。
そしてお湯を取りに厨房へと向かった―。



 お湯をポットに分けてもらって自室へ向かって歩いているとエントランスが何やら騒がしいことに気が付いた。何事かと思って覗き込めば、そこにはヘンリーとキャロルの姿があったのだ。良かった・・・母よりも先に戻ってきてくれたんだ。

「お帰りなさい、ヘンリー。キャロル。」

声をかけると2人が同時に振り向いた。ヘンリーの手には何やら小さな紙バックが握られている。

「ただいま、テア。ごめんなさいね?貴女を先に帰らせるような事になってしまって・・。あら?テア。どうしたの?何だか顔色が悪いわ・・・。」

キャロルが心配そうな顔で尋ねてきた。

「え、ええ。ちょっと頭痛がするから痛み止めのお茶を飲もうかと思ってお湯をもらってきたところだったの。」

するとヘンリーが言った。

「何だ・・また片頭痛の持病が出たのか?全く・・だったら最初から今日だって無理して出かけることは無かったのに・・・。」

ヘンリーはむすっとした顔で私を見る。ヘンリーは気づいていないのだ。私という許嫁がいながらキャロルと2人で出かけるということがどれほどまずいのかという事に・・。だから私は目的地まではついて行って、後は2人きりにさせてあげたのだ。

「そうだったわね・・・ごめんなさい。」

ヘンリーに嫌われたくない私は素直に謝った。

「ヘンリー。その言い方は・・ちょっと酷いわ。」

するとそこにキャロルが口を挟んできた。

「私はテアと一緒に行動したかったのに・・ヘンリー。貴方と出かけるのは楽しいけど・・・私はテアも大切なの。だから明日の誘いはやっぱりお断りするわ。テアと一緒に過ごすことにするから。」

え・・?私はキャロルの言葉に耳を疑った・ひょっとして・・明日もキャロルを誘っていたの?私の時は・・1週間に1度か、2週間に1度位しか会ってくれなかったのに?
思わずヘンリーを見た途端・・私は背筋が寒くなってしまった。ヘンリーが物凄い目で私を睨んでいたからだ。これは・・きっとキャロルが私を優先したから彼の機嫌を損ねてしまったんだ。ヘンリーは私から視線をそらせると、再びキャロルを見た。

「そうか・・・分かったよ。でも・・これは貰ってくれるよね?僕からのプレゼント。」

ヘンリーはキャロルに紙袋を差し出す。

「だから・・そんな高価なもの貰えないと言ったじゃないの・・。」

キャロルはため息をつきながら私を見ると言った。

「あのね・・・2人で雑貨屋さんに行ったの。そしたら可愛らしいネックレスを見つけて眺めていたら・・彼がお店の人に話して買い上げてしまったのよ。」

「そ、そう・・。」

彼・・・キャロルは今、ヘンリーの事を彼と言った。それにネックレスを女の人にあげるのにはちゃんと意味がある事を私は知っている。

< あなたを束縛したい >

きっと・・・ヘンリーは分かっていてネックレスを買ってキャロルに・・・。
するとキャロルがとんでもないことを言った。

「そうだわ。テアはヘンリーの許嫁なんだから・・テアにこのネックレスを上げればいいじゃない。」

「え・・?」

「何だってっ?!テアにっ?!」

ヘンリーの言葉には・・はっきりと拒絶の色がにじんでいた―。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

かつて番に婚約者を奪われた公爵令嬢は『運命の番』なんてお断りです。なのに獣人国の王が『お前が運命の番だ』と求婚して来ます

神崎 ルナ
恋愛
「運命の番に出会ったからローズ、君との婚約は解消する」  ローズ・ファラント公爵令嬢は婚約者のエドモンド・ザックランド公爵令息にそう言われて婚約を解消されてしまう。  ローズの居るマトアニア王国は獣人国シュガルトと隣接しているため、数は少ないがそういった可能性はあった。  だが、今回の婚約は幼い頃から決められた政略結婚である。  当然契約違反をしたエドモンド側が違約金を支払うと思われたが――。 「違約金? 何のことだい? お互いのうちどちらかがもし『運命の番』に出会ったら円満に解消すること、って書いてあるじゃないか」  確かにエドモンドの言葉通りその文面はあったが、タイミングが良すぎた。  ここ数年、ザックランド公爵家の領地では不作が続き、ファラント公爵家が援助をしていたのである。  その領地が持ち直したところでこの『運命の番』騒動である。  だが、一応理には適っているため、ローズは婚約解消に応じることとなる。  そして――。  とあることを切っ掛けに、ローズはファラント公爵領の中でもまだ発展途上の領地の領地代理として忙しく日々を送っていた。  そして半年が過ぎようとしていた頃。  拙いところはあるが、少しずつ治める側としての知識や社交術を身に付けつつあったローズの前に一人の獣人が現れた。  その獣人はいきなりローズのことを『お前が運命の番だ』と言ってきて。        ※『運命の番』に関する独自解釈がありますm(__)m

処理中です...