許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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10 プレゼントの意味は

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 屋敷に帰ると母は不在だった。メイドに尋ねると、ドイル男爵家の婦人のお茶会に呼ばれて出かけているとのことだった。夕食までには帰宅する予定だと教えてもらった。

「そう?ありがとう。」

教えてくれたメイドにお礼を伝えると、私は自分の部屋を目指して歩きながら安堵のため息をついた。なぜなら3人で出かけたはずなのに、また私は1人で帰宅してきてしまったから。この事実を母に知られてしまえば、またヘンリーがとがめられて機嫌を悪くしてしまいかねない。
ほっとしながら私は自室に戻り、部屋でお気に入りの恋愛小説を呼んでいるときにふと気が付いた。

「あ!ど、どうしよう・・。ヘンリーとキャロルはいつ屋敷に戻って来るのかしら・・・。」

もし母が帰宅する前に2人が戻ってこなかったら?帰る時間が重なって鉢合わせをしてしまったら?
そう考えると気が気でならなかった。

「こんな事なら・・・ヘンリーの機嫌を損ねてもいいから帰ってきてもらう時間を決めて貰えば良かったわ・・・。」


ヘンリーの事で悩んだ私は・・再び頭が痛くなってきてしまった。最近はいつもこんな感じだ。私が悩むのは大抵がヘンリーの事ばかり。そしてその後は頭痛が起きてしまう。どうも・・ヘンリーは私にとって頭痛の種になってしまうみたいだった。

「きっと・・・それだけ私が真剣にヘンリーの事を好きな証よね・・・。」

私は自室に置いてある食器棚の引き出しを開けると、そこから鎮静成分のある茶葉を取りだし、ポットに入れた。
そしてお湯を取りに厨房へと向かった―。



 お湯をポットに分けてもらって自室へ向かって歩いているとエントランスが何やら騒がしいことに気が付いた。何事かと思って覗き込めば、そこにはヘンリーとキャロルの姿があったのだ。良かった・・・母よりも先に戻ってきてくれたんだ。

「お帰りなさい、ヘンリー。キャロル。」

声をかけると2人が同時に振り向いた。ヘンリーの手には何やら小さな紙バックが握られている。

「ただいま、テア。ごめんなさいね?貴女を先に帰らせるような事になってしまって・・。あら?テア。どうしたの?何だか顔色が悪いわ・・・。」

キャロルが心配そうな顔で尋ねてきた。

「え、ええ。ちょっと頭痛がするから痛み止めのお茶を飲もうかと思ってお湯をもらってきたところだったの。」

するとヘンリーが言った。

「何だ・・また片頭痛の持病が出たのか?全く・・だったら最初から今日だって無理して出かけることは無かったのに・・・。」

ヘンリーはむすっとした顔で私を見る。ヘンリーは気づいていないのだ。私という許嫁がいながらキャロルと2人で出かけるということがどれほどまずいのかという事に・・。だから私は目的地まではついて行って、後は2人きりにさせてあげたのだ。

「そうだったわね・・・ごめんなさい。」

ヘンリーに嫌われたくない私は素直に謝った。

「ヘンリー。その言い方は・・ちょっと酷いわ。」

するとそこにキャロルが口を挟んできた。

「私はテアと一緒に行動したかったのに・・ヘンリー。貴方と出かけるのは楽しいけど・・・私はテアも大切なの。だから明日の誘いはやっぱりお断りするわ。テアと一緒に過ごすことにするから。」

え・・?私はキャロルの言葉に耳を疑った・ひょっとして・・明日もキャロルを誘っていたの?私の時は・・1週間に1度か、2週間に1度位しか会ってくれなかったのに?
思わずヘンリーを見た途端・・私は背筋が寒くなってしまった。ヘンリーが物凄い目で私を睨んでいたからだ。これは・・きっとキャロルが私を優先したから彼の機嫌を損ねてしまったんだ。ヘンリーは私から視線をそらせると、再びキャロルを見た。

「そうか・・・分かったよ。でも・・これは貰ってくれるよね?僕からのプレゼント。」

ヘンリーはキャロルに紙袋を差し出す。

「だから・・そんな高価なもの貰えないと言ったじゃないの・・。」

キャロルはため息をつきながら私を見ると言った。

「あのね・・・2人で雑貨屋さんに行ったの。そしたら可愛らしいネックレスを見つけて眺めていたら・・彼がお店の人に話して買い上げてしまったのよ。」

「そ、そう・・。」

彼・・・キャロルは今、ヘンリーの事を彼と言った。それにネックレスを女の人にあげるのにはちゃんと意味がある事を私は知っている。

< あなたを束縛したい >

きっと・・・ヘンリーは分かっていてネックレスを買ってキャロルに・・・。
するとキャロルがとんでもないことを言った。

「そうだわ。テアはヘンリーの許嫁なんだから・・テアにこのネックレスを上げればいいじゃない。」

「え・・?」

「何だってっ?!テアにっ?!」

ヘンリーの言葉には・・はっきりと拒絶の色がにじんでいた―。


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