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56 逃げたヘンリ―
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「なるほど・・・貴方は仮にも私という許婚がいながら・・キャロルに告白したわけね?」
ヘンリーがボロを出せば出すほど・・私は自分の心が冷静になっていくのを感じた。てっきり、頭に血が上ってしまうかと思ったけれども、そうはならなかった。つまり私の中でヘンリーはすでに見切りをつけた存在になっていたという事だ。
「う・・うるさいっ!もとはと言えば・・・そう、告白をしたのは・・テアッ!お前のせいだっ!」
ヘンリーは私を指さすと言った。
「ええ?何故私が?」
あまりにも突拍子のないヘンリーの言葉に私の思考は一瞬フリーズしかけた。
「ああ、そうだ。お前がさりげなくキャロルと俺の仲を取り持とうとしてくれている事に気づいたから・・お、お前の要望に応えてキャロルに告白したんだ!」
「ふ~ん・・そうだったのね・・・。」
持ち前のヘンリーの思考に多少驚きつつ、あえて分かり切っている事を質問してみた。
「それで?告白した結果はどうなったの?」
「テ・・・テア・・お、お前・・・分かり切っていて、そんな事聞いてくるのか?」
「え?それじゃ・・・成功したのね?」
わざと嬉しそうに言ってあげた。
「こ・・この馬鹿っ!失敗したに決まってるだろう?!キャロルにはなぁ・・好きな奴がいるんだよっ!」
「え?キャロルに・・・好きな人が?」
知らなかった・・。キャロルはここにきてまだ日が浅いから、少なくとも大学の同級生ではないだろう。となると・・相手はキャロルの国元にいる男性に違いない。
私が考え込んでいることに気づいたのか、ヘンリーが口元に笑みを浮かべながら言った。
「テア・・・お前、キャロルの好きな奴が誰か気になって仕方ないんだろう・・?だがこの俺は知ってるぞ?どうだ?知りたいだろう?お前の態度次第では教えてやってもいいぞ・・?」
「私の態度次第・・?」
一体何を言い出す気だろう。けれど私はキャロルの許可なしにヘンリーの口から彼女の好きな男性の事を聞く気はなかった。聞くなら・・キャロルの口から聞きたいと思っていた。
「ああ、そうだ。さっきも言っただろう?キャロルたちを説得して・・俺もお前たちの仲間に加えると約束すれば教えてやるよ?どうだ?テアが俺を加えてくれれば・・今度こそお前に優しくしてやると約束するよ。」
ヘンリーは・・・プライドの塊だ。よほど大学構内でボッチになるのが嫌なようだ。だったら自分で友人が作れるように努力すればいいのに・・・彼はそれすら出来ない人間なのだ。
「悪いけど・・・その話なら聞かないわ。キャロルの口から・・直接聞きたいから。」
私がにべもなく断ると、ついにヘンリーが切れた。
「テアッ!お、お前は・・・こうして俺が頭を下げてやっているのに・・!」
頭など、会話が開始されてから一度も下げていないのにまたしても妙なことを口走ったヘンリー。
その時・・・。
「あら?遅いと思って迎えにきたら・・・こんなところで油を売っていたのね?」
背後でよく知る声が聞こえてきた。
「ヒクッ!」
再びヘンリーがしゃっくりをする。
「お母さん・・・。」
振り向くとそこには笑みをたたえた母が立っていた。
「テア・・・あまりにも帰ってくるのが遅いから・・心配になって迎えに来たのよ。それにしても・・・・あらあら・・。」
母を見て真っ青になって直立不動しているヘンリーをじろじろ見ながら母が言った。
「まさか大学構内にも・・こんな大きな害虫がいたとはね・・・。あれほど念入りに駆除したと思っていたのに・・。」
「お母さん・・・。」
「ここは・・・もう一度排除するべきかしら・・・?」
「マ・マダム・・・きゅ、急用を思い出したので・・・失礼いたしますっ!」
そしてヘンリーは脱兎の如く、駆けだしていった。
「さて。テア。帰りましょうか?」
「え、ええ・・・。」
唖然としながらも私は返事をした―。
*****
ガラガラガラガラ・・・
帰りの馬車の中・・向かい側に座る母は本を読んでいる。
「あの・・お母さん。私、ヘンリーとは・・・。」
すると母は言った。
「ええ、分かっているわ。今・・・お父さんが証拠集めのために奔走しているから・・もう少しお待ちなさい。ちゃんと責任は取らせるから大丈夫よ。」
「え?あ・・は、はい・・・。」
一体何の事だろう?
私は首を傾げた。
そして・・私は後に、何故ヘンリーと許婚同士になったのか・・・驚くべき真実を知る事になる。
そして、キャロルに隠された秘密も―。
ヘンリーがボロを出せば出すほど・・私は自分の心が冷静になっていくのを感じた。てっきり、頭に血が上ってしまうかと思ったけれども、そうはならなかった。つまり私の中でヘンリーはすでに見切りをつけた存在になっていたという事だ。
「う・・うるさいっ!もとはと言えば・・・そう、告白をしたのは・・テアッ!お前のせいだっ!」
ヘンリーは私を指さすと言った。
「ええ?何故私が?」
あまりにも突拍子のないヘンリーの言葉に私の思考は一瞬フリーズしかけた。
「ああ、そうだ。お前がさりげなくキャロルと俺の仲を取り持とうとしてくれている事に気づいたから・・お、お前の要望に応えてキャロルに告白したんだ!」
「ふ~ん・・そうだったのね・・・。」
持ち前のヘンリーの思考に多少驚きつつ、あえて分かり切っている事を質問してみた。
「それで?告白した結果はどうなったの?」
「テ・・・テア・・お、お前・・・分かり切っていて、そんな事聞いてくるのか?」
「え?それじゃ・・・成功したのね?」
わざと嬉しそうに言ってあげた。
「こ・・この馬鹿っ!失敗したに決まってるだろう?!キャロルにはなぁ・・好きな奴がいるんだよっ!」
「え?キャロルに・・・好きな人が?」
知らなかった・・。キャロルはここにきてまだ日が浅いから、少なくとも大学の同級生ではないだろう。となると・・相手はキャロルの国元にいる男性に違いない。
私が考え込んでいることに気づいたのか、ヘンリーが口元に笑みを浮かべながら言った。
「テア・・・お前、キャロルの好きな奴が誰か気になって仕方ないんだろう・・?だがこの俺は知ってるぞ?どうだ?知りたいだろう?お前の態度次第では教えてやってもいいぞ・・?」
「私の態度次第・・?」
一体何を言い出す気だろう。けれど私はキャロルの許可なしにヘンリーの口から彼女の好きな男性の事を聞く気はなかった。聞くなら・・キャロルの口から聞きたいと思っていた。
「ああ、そうだ。さっきも言っただろう?キャロルたちを説得して・・俺もお前たちの仲間に加えると約束すれば教えてやるよ?どうだ?テアが俺を加えてくれれば・・今度こそお前に優しくしてやると約束するよ。」
ヘンリーは・・・プライドの塊だ。よほど大学構内でボッチになるのが嫌なようだ。だったら自分で友人が作れるように努力すればいいのに・・・彼はそれすら出来ない人間なのだ。
「悪いけど・・・その話なら聞かないわ。キャロルの口から・・直接聞きたいから。」
私がにべもなく断ると、ついにヘンリーが切れた。
「テアッ!お、お前は・・・こうして俺が頭を下げてやっているのに・・!」
頭など、会話が開始されてから一度も下げていないのにまたしても妙なことを口走ったヘンリー。
その時・・・。
「あら?遅いと思って迎えにきたら・・・こんなところで油を売っていたのね?」
背後でよく知る声が聞こえてきた。
「ヒクッ!」
再びヘンリーがしゃっくりをする。
「お母さん・・・。」
振り向くとそこには笑みをたたえた母が立っていた。
「テア・・・あまりにも帰ってくるのが遅いから・・心配になって迎えに来たのよ。それにしても・・・・あらあら・・。」
母を見て真っ青になって直立不動しているヘンリーをじろじろ見ながら母が言った。
「まさか大学構内にも・・こんな大きな害虫がいたとはね・・・。あれほど念入りに駆除したと思っていたのに・・。」
「お母さん・・・。」
「ここは・・・もう一度排除するべきかしら・・・?」
「マ・マダム・・・きゅ、急用を思い出したので・・・失礼いたしますっ!」
そしてヘンリーは脱兎の如く、駆けだしていった。
「さて。テア。帰りましょうか?」
「え、ええ・・・。」
唖然としながらも私は返事をした―。
*****
ガラガラガラガラ・・・
帰りの馬車の中・・向かい側に座る母は本を読んでいる。
「あの・・お母さん。私、ヘンリーとは・・・。」
すると母は言った。
「ええ、分かっているわ。今・・・お父さんが証拠集めのために奔走しているから・・もう少しお待ちなさい。ちゃんと責任は取らせるから大丈夫よ。」
「え?あ・・は、はい・・・。」
一体何の事だろう?
私は首を傾げた。
そして・・私は後に、何故ヘンリーと許婚同士になったのか・・・驚くべき真実を知る事になる。
そして、キャロルに隠された秘密も―。
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