66 / 77
66 誰かに似た人
しおりを挟む
「ありがとう、帰りは辻馬車を拾って帰るから待っていなくて大丈夫よ?」
市立劇場の前で馬車を降りた私は御者に伝えた。
「はい、テア様。では楽しんできてください。」
「ええ。ありがとう。」
そして馬車は走り去り、私は手を振って見送った。
「今何時かしら・・・。」
ショルダーバッグにつけておいた懐中時計を確認すると時刻は9時半だった。
「あと30分で開演ね・・・。という事は、もう中に入れるのかしら?」
カツカツと石畳の上を靴音を鳴らしながら市立劇場の入り口を目指して歩いていると、すでに入り口前には列が出来ていた。並ぶ人たちはみんなカップルか友人、家族連れで、1人きりでいるのは私だけだった。それが無性に恥ずかしくて、うつむき加減に列に並んで待っていると、私の背後に並んでいた若い女性たちのささやき声が聞こえてきた。
「ねえ、あそこに1人で並んでいる人・・とても素敵だと思わない。」
「ええ、本当に素敵な人ね・・。連れはいないのかしら・・。」
「勇気があれば声を掛けるのに・・。」
しまいには随分と大胆なセリフ迄飛び出してきた。それにしても・・女性からそんな言葉を言わせるなんて一体どんな人なのだろう?少し興味がわいて、顔を上げてその人物を見て・・息が止まりそうになった。その男性はとても背が高く、金色に輝くふわふわした巻き毛に青い瞳の横顔が見えた。
「え・・?」
何故かその男性を見た時に、今朝見た夢の少年を思い出してしまった。顔までは覚えていなかったけれども、ふわふわした金の巻き毛・・・その少年が成長して目の前に現れたのではないかと錯覚するほどに。
「馬鹿ね・・私ったら。所詮ただの夢なのに・・。」
ぽつりと小声で呟くと、受付が始まったのが列が動き出した―。
****
「え・・?」
会場に入った時に、思わず口から言葉が漏れてしまった。何故なら私の左隣の座席が例の金の髪の男性だったからだ。それに右隣には小さな子供連れの家族が座っている。
え?一体どういう事?キャロルは私と一緒にこのコンサートへ来るつもりじゃなかったのだろうか?それなのに・・・な、何故・・・キャロルが座るべき席に・・・この男性が・・・?!
私はチラリと席に座るとき男性の顔を見た。彼は私の視線に気づかない様子で入り口でもらったパンフレットを読んでいる。その横顔は・・よく見るとキャロルに似ていた。
そうだ、私が最初に男性を見た時・・息が止まりそうになったのはキャロルに雰囲気がよく似ていたからだ。おそらくキャロルを男性にしてみると・・きっと彼のようになったであろうと思わせるほどによく似ていた。
ほんの少し、男性を見ていたつもりがいつの間にか私は凝視してしまっていたようだ。視線に気づいたのか男性が私を見てじっとこちらを見つめ、にっこりとほほ笑んできた。慌てて私も会釈をすると、すぐに前を向き・・・コンサートが始まるのをひたすら・・待った―。
ブーッ・・・・
やがて開演を知らせるブザーが鳴り響き・・・、前方の舞台の赤いステージ幕がスルスルと巻き上げられ、コンサートが始まった―。
****
パチパチパチパチ・・
クラシックコンサートが終わって拍手が響き渡った。私も一生懸命拍手をした。それにしても・・まさかこんなに素晴らしいコンサートだとは思わなかった。キャロルが選んだコンサートはまさに私の好みにピッタリだった。さすがは私の一番の親友。彼女と一緒にコンサートに来る事が出来なかったのは残念だけど・・・家に帰ってキャロルに会ったらお礼を言おう。
幕が下りて会場の人たちが立ち上がり・・・皆がぞろぞろと出口へ向かって歩き始めたので私も立ち上がった時に不意に隣に座っていた男性に声を掛けられた。
「テア、どこへ行くの?」
「え・・・?」
驚いて男性を見下ろすと、彼は青い瞳でじっと私を見つめ・・笑みを浮かべた―。
市立劇場の前で馬車を降りた私は御者に伝えた。
「はい、テア様。では楽しんできてください。」
「ええ。ありがとう。」
そして馬車は走り去り、私は手を振って見送った。
「今何時かしら・・・。」
ショルダーバッグにつけておいた懐中時計を確認すると時刻は9時半だった。
「あと30分で開演ね・・・。という事は、もう中に入れるのかしら?」
カツカツと石畳の上を靴音を鳴らしながら市立劇場の入り口を目指して歩いていると、すでに入り口前には列が出来ていた。並ぶ人たちはみんなカップルか友人、家族連れで、1人きりでいるのは私だけだった。それが無性に恥ずかしくて、うつむき加減に列に並んで待っていると、私の背後に並んでいた若い女性たちのささやき声が聞こえてきた。
「ねえ、あそこに1人で並んでいる人・・とても素敵だと思わない。」
「ええ、本当に素敵な人ね・・。連れはいないのかしら・・。」
「勇気があれば声を掛けるのに・・。」
しまいには随分と大胆なセリフ迄飛び出してきた。それにしても・・女性からそんな言葉を言わせるなんて一体どんな人なのだろう?少し興味がわいて、顔を上げてその人物を見て・・息が止まりそうになった。その男性はとても背が高く、金色に輝くふわふわした巻き毛に青い瞳の横顔が見えた。
「え・・?」
何故かその男性を見た時に、今朝見た夢の少年を思い出してしまった。顔までは覚えていなかったけれども、ふわふわした金の巻き毛・・・その少年が成長して目の前に現れたのではないかと錯覚するほどに。
「馬鹿ね・・私ったら。所詮ただの夢なのに・・。」
ぽつりと小声で呟くと、受付が始まったのが列が動き出した―。
****
「え・・?」
会場に入った時に、思わず口から言葉が漏れてしまった。何故なら私の左隣の座席が例の金の髪の男性だったからだ。それに右隣には小さな子供連れの家族が座っている。
え?一体どういう事?キャロルは私と一緒にこのコンサートへ来るつもりじゃなかったのだろうか?それなのに・・・な、何故・・・キャロルが座るべき席に・・・この男性が・・・?!
私はチラリと席に座るとき男性の顔を見た。彼は私の視線に気づかない様子で入り口でもらったパンフレットを読んでいる。その横顔は・・よく見るとキャロルに似ていた。
そうだ、私が最初に男性を見た時・・息が止まりそうになったのはキャロルに雰囲気がよく似ていたからだ。おそらくキャロルを男性にしてみると・・きっと彼のようになったであろうと思わせるほどによく似ていた。
ほんの少し、男性を見ていたつもりがいつの間にか私は凝視してしまっていたようだ。視線に気づいたのか男性が私を見てじっとこちらを見つめ、にっこりとほほ笑んできた。慌てて私も会釈をすると、すぐに前を向き・・・コンサートが始まるのをひたすら・・待った―。
ブーッ・・・・
やがて開演を知らせるブザーが鳴り響き・・・、前方の舞台の赤いステージ幕がスルスルと巻き上げられ、コンサートが始まった―。
****
パチパチパチパチ・・
クラシックコンサートが終わって拍手が響き渡った。私も一生懸命拍手をした。それにしても・・まさかこんなに素晴らしいコンサートだとは思わなかった。キャロルが選んだコンサートはまさに私の好みにピッタリだった。さすがは私の一番の親友。彼女と一緒にコンサートに来る事が出来なかったのは残念だけど・・・家に帰ってキャロルに会ったらお礼を言おう。
幕が下りて会場の人たちが立ち上がり・・・皆がぞろぞろと出口へ向かって歩き始めたので私も立ち上がった時に不意に隣に座っていた男性に声を掛けられた。
「テア、どこへ行くの?」
「え・・・?」
驚いて男性を見下ろすと、彼は青い瞳でじっと私を見つめ・・笑みを浮かべた―。
231
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
かつて番に婚約者を奪われた公爵令嬢は『運命の番』なんてお断りです。なのに獣人国の王が『お前が運命の番だ』と求婚して来ます
神崎 ルナ
恋愛
「運命の番に出会ったからローズ、君との婚約は解消する」
ローズ・ファラント公爵令嬢は婚約者のエドモンド・ザックランド公爵令息にそう言われて婚約を解消されてしまう。
ローズの居るマトアニア王国は獣人国シュガルトと隣接しているため、数は少ないがそういった可能性はあった。
だが、今回の婚約は幼い頃から決められた政略結婚である。
当然契約違反をしたエドモンド側が違約金を支払うと思われたが――。
「違約金? 何のことだい? お互いのうちどちらかがもし『運命の番』に出会ったら円満に解消すること、って書いてあるじゃないか」
確かにエドモンドの言葉通りその文面はあったが、タイミングが良すぎた。
ここ数年、ザックランド公爵家の領地では不作が続き、ファラント公爵家が援助をしていたのである。
その領地が持ち直したところでこの『運命の番』騒動である。
だが、一応理には適っているため、ローズは婚約解消に応じることとなる。
そして――。
とあることを切っ掛けに、ローズはファラント公爵領の中でもまだ発展途上の領地の領地代理として忙しく日々を送っていた。
そして半年が過ぎようとしていた頃。
拙いところはあるが、少しずつ治める側としての知識や社交術を身に付けつつあったローズの前に一人の獣人が現れた。
その獣人はいきなりローズのことを『お前が運命の番だ』と言ってきて。
※『運命の番』に関する独自解釈がありますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる