20 / 25
第20話 悪役令嬢、変身する
しおりを挟む
その日の夜―
バスルームから出て、ナイトウェアに着替えた私は鏡の前に立っていた。
「うん…ここが乙女ゲームの世界で私は悪役令嬢だったということが分かったのだから、自分を偽って生きるのはやめにしましょう。毎朝三つ編みするのも面倒だったし、視力が悪くないのに伊達メガネをするのも馬鹿らしくなって来たしね」
鏡の前でブツブツと独り言を呟く私。
第一あんな格好でいたから、ノエルに私がこの世界の悪役令嬢だと発見してもらうのも遅くなってしまったのだから…。
「よし!決めたわ!明日から素のままの自分で登校することに決めた!ありのままで生きていくわ!」
私は鏡の中の自分に誓った。それがどんな結果になるか気付きもせずに―。
****
翌朝
朝食の席に現れた私を見て父も母も、兄も驚いた顔で私を見た。
何故なら三つ編みをやめて髪をほどいて、伊達メガネをするのもやめにしたからだ。
両親、兄は私が18歳になって、ようやくお洒落に目覚めてくれたと涙を流して?喜んでくれるのだった―。
私が自分の身に起こった異変に気付いたのは学園に到着してすぐのことだった。
校舎を目指して歩いていると、何故か皆の視線が私に注がれている。
ひょっとして見知らぬ学生が歩いていると思われ、不審がられているのだろうか?
そしてすぐに後悔した。
こんなに注目を浴びるくらいなら、やはりいつもと同じ三つ編みメガネ姿で登校するべきだったと…。
するとその時―
「ちょっと!アリーナ・バローッ!!」
誰かに大声で名前を呼ばれた。
見ると、校舎前で腕組みをしたノエルがこちらを向いて立っていたのだ。
その言葉に驚いたのは、私の周囲にいた学生たちである。
彼らは皆、驚愕の目で私を見ている。
「え?アリーナ?」
「アリーナってあの…?」
「毎回試験でトップを取っている?!」
「彼女が…アリーナ・バローッ?!」
そう。
私は初等部から大学部迄、常に学年1位を取り続けていたので外見はあまり世間には知られていなかったけれども、知名度だけはあったのだ。
「アリーナッ!どうしたのよ!その格好!」
ノエルは私が大注目されているのに気付く様子も無く、ズカズカと近寄ってきた。
「ちょ、ちょっと!そんな大声で名前を呼ばないでよ!ただでさえ、皆から注目を浴びているみたいなのに…」
私は自分の顔を腕で隠しながらノエルに注意した。
「それは注目されるでしょうよ。そんな格好で登校してきたら…」
ノエルは呆れたように私を見た。
「え?やっぱり何か変だった?」
「変も何も…あ~もう…や~めた!何だか自分の口から言うのは悔しいんだもの」
何故かノエルは理由を話そうとはしてくれない。
「ええ~何でよ…教えてくれてもいいじゃない…」
「あのねぇ…何故自分が注目されているのか気付かない人に説明なんかしたくないわよ。それよりアルフォンソ様とのデートの約束、ちゃんと取り付けてくれたんでしょうね?」
ノエルが私の両肩をガシィッと掴んできた。
「ええ、勿論よ。ばっちり取り付けたわ。明日の朝10時に学園前の噴水広場で待ち合わせよ」
「ええっ?!ま、待ってよ。もう時間も待ち合わせ場所も決めてしまったのっ?!」
「え?駄目だった?」
なんだ。褒めてくれると思ったのに。
「別に駄目ってわけじゃないけど…出来ればアルフォンソ様と2人で決めたかったわ…」
「そうだったの?!知らなかったわ…。でも、明日の初デートで2回目のデートの約束をアルフォンソ王子と決めればいいじゃないの」
「そうね…それもそうよね。それじゃ私はもう行くわ!」
「駄目よ!そうはさせないわ!」
私はムンズとノエルの袖を握りしめた。
「キャッ!な、何よっ!離してよ!」
「いいえ、離さないわ。今日は私と1日一緒にいてもらうわよ!」
きっとノエルと一緒にいれば周囲の視線もさほど気になることは無い。
「ええ~!な、何で私と貴女が…」
ノエルが露骨に嫌そうな顔をした時、突如として笑顔になって声を上げた。
「あ!アルフォンソ様っ!」
「え?アルフォンソ王子?」
振り向くと、ノエルの視線の先にはアルフォンソ王子がいた。
「やぁ、ノエル…だっけ?おは…えっ?!」
アルフォンソ王子は驚いた顔で私を見る。…恐らく王子は私が誰なのか気付いたのだろう。
そしてじ~っと私に視線を送る。
しかし、その視線に全く気付いていないのか、ノエルはにこやかに話しかけてた。
「アルフォンソ様、明日のデート楽しみですね?」
「え?デート?う、うん。楽しみだよ…」
言いながら尚且未だに私に視線を送り続けるアルフォンソ王子。
ちょっと!ノエルが話しかけているのにあまりに失礼な態度じゃないの?!
「行きましょう!ノエルッ!」
これ以上王子に見つめられて、あらぬ疑いを掛けられるのは、はっきり言って迷惑極まりない。
「あ!ちょ、ちょっと!」
私は強引にノエルの手を引くとその場を立ち去った。
その後、少しだけノエルにグチグチ文句を言われた。
けれど私は彼女の言葉を全て聞き流した。
そしてこの後は強引に1日ノエルと行動したおかげで、あまり注目を浴びずに済んだのだった―。
****
放課後―
「ありがとう、ノエル。今日は1日貴方のお陰で助かったわ」
別れ際、帰りのスクールバスに乗りこむ際に私は彼女にお礼を述べた。
「う~ん…何だか釈然としないけど…まぁいいわ。貴方には借りがあるからね」
「そう言えば、明日はアルフォンソ王子とのデートだものね。きっとうまくいくわよ。応援してるからね!」
「ええ。ありがとう。それじゃ私は馬車に乗って帰るから。さよなら」
「ええ。さよなら」
そして私とノエルはその場で別れた―。
フフフ…明日はノエルとアルフォンソ王子との初デート。
いよいよ待ちに待っていたアルフォンソ王子との婚約解消は秒読みに入るのだ。
私は幸せな気持ちで家路につくのだった―。
バスルームから出て、ナイトウェアに着替えた私は鏡の前に立っていた。
「うん…ここが乙女ゲームの世界で私は悪役令嬢だったということが分かったのだから、自分を偽って生きるのはやめにしましょう。毎朝三つ編みするのも面倒だったし、視力が悪くないのに伊達メガネをするのも馬鹿らしくなって来たしね」
鏡の前でブツブツと独り言を呟く私。
第一あんな格好でいたから、ノエルに私がこの世界の悪役令嬢だと発見してもらうのも遅くなってしまったのだから…。
「よし!決めたわ!明日から素のままの自分で登校することに決めた!ありのままで生きていくわ!」
私は鏡の中の自分に誓った。それがどんな結果になるか気付きもせずに―。
****
翌朝
朝食の席に現れた私を見て父も母も、兄も驚いた顔で私を見た。
何故なら三つ編みをやめて髪をほどいて、伊達メガネをするのもやめにしたからだ。
両親、兄は私が18歳になって、ようやくお洒落に目覚めてくれたと涙を流して?喜んでくれるのだった―。
私が自分の身に起こった異変に気付いたのは学園に到着してすぐのことだった。
校舎を目指して歩いていると、何故か皆の視線が私に注がれている。
ひょっとして見知らぬ学生が歩いていると思われ、不審がられているのだろうか?
そしてすぐに後悔した。
こんなに注目を浴びるくらいなら、やはりいつもと同じ三つ編みメガネ姿で登校するべきだったと…。
するとその時―
「ちょっと!アリーナ・バローッ!!」
誰かに大声で名前を呼ばれた。
見ると、校舎前で腕組みをしたノエルがこちらを向いて立っていたのだ。
その言葉に驚いたのは、私の周囲にいた学生たちである。
彼らは皆、驚愕の目で私を見ている。
「え?アリーナ?」
「アリーナってあの…?」
「毎回試験でトップを取っている?!」
「彼女が…アリーナ・バローッ?!」
そう。
私は初等部から大学部迄、常に学年1位を取り続けていたので外見はあまり世間には知られていなかったけれども、知名度だけはあったのだ。
「アリーナッ!どうしたのよ!その格好!」
ノエルは私が大注目されているのに気付く様子も無く、ズカズカと近寄ってきた。
「ちょ、ちょっと!そんな大声で名前を呼ばないでよ!ただでさえ、皆から注目を浴びているみたいなのに…」
私は自分の顔を腕で隠しながらノエルに注意した。
「それは注目されるでしょうよ。そんな格好で登校してきたら…」
ノエルは呆れたように私を見た。
「え?やっぱり何か変だった?」
「変も何も…あ~もう…や~めた!何だか自分の口から言うのは悔しいんだもの」
何故かノエルは理由を話そうとはしてくれない。
「ええ~何でよ…教えてくれてもいいじゃない…」
「あのねぇ…何故自分が注目されているのか気付かない人に説明なんかしたくないわよ。それよりアルフォンソ様とのデートの約束、ちゃんと取り付けてくれたんでしょうね?」
ノエルが私の両肩をガシィッと掴んできた。
「ええ、勿論よ。ばっちり取り付けたわ。明日の朝10時に学園前の噴水広場で待ち合わせよ」
「ええっ?!ま、待ってよ。もう時間も待ち合わせ場所も決めてしまったのっ?!」
「え?駄目だった?」
なんだ。褒めてくれると思ったのに。
「別に駄目ってわけじゃないけど…出来ればアルフォンソ様と2人で決めたかったわ…」
「そうだったの?!知らなかったわ…。でも、明日の初デートで2回目のデートの約束をアルフォンソ王子と決めればいいじゃないの」
「そうね…それもそうよね。それじゃ私はもう行くわ!」
「駄目よ!そうはさせないわ!」
私はムンズとノエルの袖を握りしめた。
「キャッ!な、何よっ!離してよ!」
「いいえ、離さないわ。今日は私と1日一緒にいてもらうわよ!」
きっとノエルと一緒にいれば周囲の視線もさほど気になることは無い。
「ええ~!な、何で私と貴女が…」
ノエルが露骨に嫌そうな顔をした時、突如として笑顔になって声を上げた。
「あ!アルフォンソ様っ!」
「え?アルフォンソ王子?」
振り向くと、ノエルの視線の先にはアルフォンソ王子がいた。
「やぁ、ノエル…だっけ?おは…えっ?!」
アルフォンソ王子は驚いた顔で私を見る。…恐らく王子は私が誰なのか気付いたのだろう。
そしてじ~っと私に視線を送る。
しかし、その視線に全く気付いていないのか、ノエルはにこやかに話しかけてた。
「アルフォンソ様、明日のデート楽しみですね?」
「え?デート?う、うん。楽しみだよ…」
言いながら尚且未だに私に視線を送り続けるアルフォンソ王子。
ちょっと!ノエルが話しかけているのにあまりに失礼な態度じゃないの?!
「行きましょう!ノエルッ!」
これ以上王子に見つめられて、あらぬ疑いを掛けられるのは、はっきり言って迷惑極まりない。
「あ!ちょ、ちょっと!」
私は強引にノエルの手を引くとその場を立ち去った。
その後、少しだけノエルにグチグチ文句を言われた。
けれど私は彼女の言葉を全て聞き流した。
そしてこの後は強引に1日ノエルと行動したおかげで、あまり注目を浴びずに済んだのだった―。
****
放課後―
「ありがとう、ノエル。今日は1日貴方のお陰で助かったわ」
別れ際、帰りのスクールバスに乗りこむ際に私は彼女にお礼を述べた。
「う~ん…何だか釈然としないけど…まぁいいわ。貴方には借りがあるからね」
「そう言えば、明日はアルフォンソ王子とのデートだものね。きっとうまくいくわよ。応援してるからね!」
「ええ。ありがとう。それじゃ私は馬車に乗って帰るから。さよなら」
「ええ。さよなら」
そして私とノエルはその場で別れた―。
フフフ…明日はノエルとアルフォンソ王子との初デート。
いよいよ待ちに待っていたアルフォンソ王子との婚約解消は秒読みに入るのだ。
私は幸せな気持ちで家路につくのだった―。
13
あなたにおすすめの小説
【短編】誰も幸せになんかなれない~悪役令嬢の終末~
真辺わ人
恋愛
私は前世の記憶を持つ悪役令嬢。
自分が愛する人に裏切られて殺される未来を知っている。
回避したいけれど回避できなかったらどうしたらいいの?
*後編投稿済み。これにて完結です。
*ハピエンではないので注意。
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~
甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。
その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。
そんな折、気がついた。
「悪役令嬢になればいいじゃない?」
悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。
貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。
よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。
これで万事解決。
……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの?
※全12話で完結です。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います
珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。
最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。
それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。
モブ令嬢、当て馬の恋を応援する
みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる