ある日、悪役令嬢の私の前にヒロインが落ちてきました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第19話 デートの誘い

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「アルフォンソ王子にご挨拶申し上げます」

私は制服のスカートをつまむと頭を下げた。

「そんな堅苦しい挨拶はいらないからこっちへ来なよ」

ソファに座っている王子は手招きする。

「はい」

渋々王子の正面に置かれたソファの脇に立った。

「…座らないのか?」

怪訝そうな目で私を見る王子。

「はい、座れません。まだ座って良いと言う指示を頂いておりませんので」

「あ~…なるほど、そうか。別に僕とアリーナの仲だからそんなこと気にする必要無いのに…まぁいいか。座りなよ」

僕とアリーナの仲?
一体何の仲のことだろう?ひょっとして犬猿の仲のことを言っているのだろか?
謎を残しつつも、長丁場になりそうだったので座らせてもらうことにした。

「では、失礼致します」

アルフォンソ王子の向かい側に座ると、背筋を伸ばした。

「アリーナ」

「はい」

「もしかして緊張してる?そんな背筋を伸ばして」

緊張…別に王子を前に緊張しているわけではないが、これからノエルの訴えを王子に伝えなければならない。そのプレッシャーで緊張していると言えば、している…かもしれない。

「はい、そうですね。緊張しています」

「別に緊張する必要は全く無いから、もっと肩の力を抜きなよ」

「分かりました。そうさせて頂きます」

王子の機嫌を損ねない為には言うことを聞いていた方が良さそうだ。少しだけ肩の力を抜くと尋ねた。

「それで…?こちらにお越しいただくのは随分久しぶりですが…何か御用でしょうか?」

「うん…まぁ、それは…」

何故か王子は口ごもる。ひょっとすると私に何か言いにくい話をするつもりで来たのかもしれない。
ひょっとするとノエルと出会ったことで私との仮婚約の仲を終わらせたくなったのかもしれない。
けれど、未だにアルフォンソ王子は私の成績を超えたことが無い為に自分からは言い出しにくいのかも…?

だったら、私が仮婚約解消を申し出やすい雰囲気を作ってあげればいいのだ。

「あの、アルフォンソ王子。実は私も王子に大切なお話があります。なので本日こちらに足を運んでいただき、大変嬉しく思っております」

媚を売るように私は王子に笑いかけた。
こうしておけば頼みにくい話も切り出しやすくなるだろう。

「え?大切な話?一体それは何だい?」

王子が身を乗り出してきた。

「はい。実は…デートの誘いなのですが…」

「な、何っ?!デ、デートの誘いだってっ?!」

アルフォンソ王子の顔が真っ赤になった。

へぇ~。あんなに色々な女性をとっかえひっかえして遊んでいるのに、たかがデートの誘いでこんなに真っ赤になるなんて…。
ひょっとすると、そこまでノエルのことを本気に考えているのかもしれない。

「はい、デートです。それで…今度のお休みの日にデートしていただきたいのですが…」

「今度の休み…つまり、2日後だな?よし、いいだろう!ここに迎えにくればいいか?!」

「え?いいえ、まさか」

何故ノエルとのデートなのに、私の家に迎えに来る必要があるのだろう?

「それならどこがいいんだ?」

今ここで返事が欲しそうな王子。肝心なノエルを抜きにして勝手に進めても…まぁいいか。
だってデートに誘うように命令?してきたのはノエルの方なのだから、こっちで勝手に決めても良い。と言う風にここは解釈しておこう。

「そうですね…では学園前にある噴水広場はいかがですか?」

考えて見れば、私はノエルの家が何処にあるのか知らない。学園前の噴水広場は良くゲームの中でデートの待ち合わせ場所として利用されていたから…良しとしよう。

「分かった。それなら2日後の午前10時、噴水広場前で待ち合わせすることにしよう」

「ええ、そうですね。それが良いと思います。ではアルフォンソ王子のお話は何でしょう?」

「あ、ああ…それなのだが…もう良くなった」

「え?どういうことですか?」

「いや、本当に何でもない。忘れてくれ。それじゃ俺はもう帰る」

王子は立ち上がった。

「ではお見送りを…」

「いや、見送りはしなくていい。何しろずいぶん遅く帰って来たからな…疲れているだろうから見送りはいい。それではまたな」

「は、はい。また…」

「ああ」

頭を下げると、王子は笑顔で部屋を出て行った…。


バタン…

「はぁ~疲れた…やっぱり王子と1対1は疲れるわ」

扉が閉ざされ、私はソファに座り込んだ。

でも、あと少しで王子との腐れ縁も完全に切れる。

「あと少しの辛抱よ…」

晴れて自由の身となれる日のことを想像し…私はそっと目を閉じた―。
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