54 / 376
4-14 エルウィンの恫喝
「エ、エルウィンッ!き、貴様…ど、どういうつもりだっ?!叔父である私に…剣を向けるとはっ!」
ランベールは後ずさりながら真っ青になって叫んだ。
「どういうつもり?それはこちらの台詞だ。今この領民に何をしようとした?まさか…あの時の様に手を出すつもりではないだろうな?」
エルウィンはアリアドネを守るように抱きしめている左腕に力を込めた。
(あの時…?あの時っていつの話なの…?)
アリアドネはエルウィンの腕の中で気恥ずかしさもありながら、言葉の意味を考えていた。
「あ、あれは…ほんの少しだけ、可愛がってやろうと思っただけだ。むしろ、貧しい身分でありながら、私の寵愛を受けるのは悦ぶべき事では無いか?」
「何が寵愛だっ!まだ年若い娘に…自分の権力を振りかざして強引に自分の物にしただろうっ?!あの領民が自殺したのは…叔父上のせいだっ!」
エルウィンは怒りを露わに剣を向けたままランベールに言い放った。
(え…?自殺…?ランベール様に手を出された領民の女性が…?)
その言葉にアリアドネは震えた。その震えがエルウィンにも伝わったのだろう。
「落ち着け」
エルウィンが剣をランベールに向け、睨み付けた視線を逸らすことなくアリアドネにだけ聞こえるように小声で囁いた。
「え…?」
「大丈夫だ。俺が…絶対にお前に手出しをさせない。俺を信じろ」
(エルウィン様…!)
そして再びエルウィンはランベールに言った。
「叔父上…俺は国王陛下からこの城の城主として認められている。城の中で謀反を起こしたとして叔父上を処罰しても俺が咎められる事は無い…何なら今、ここで確かめてみましょうか?」
その言葉にランベールの顔から血の気が失せた。
「う…よ、よせ…エルウィン…。わ、分った。や、約束しよう。二度と領民には手を出さないと…な?」
「領民達だけでは無い。俺の指示の下で働いているメイド達と下働きの女達も含めてだ!」
エルウィンは吐き捨てるように言った。
「…っ!わ、分った…。そ、それじゃ…わ、私は部屋に戻るとしよう…」
ランベールは引きつった笑みを浮かべると、まるで逃げるようにその場を走り去って行った。
「…」
エルウィンはランベールが走り去ると、アリアドネから離れた。
そしてアリアドネに言った。
「…これで分っただろう?お前のような若い娘がむやみに城に立ち入るとどうなるか…。こんな事ではいけないのに…な」
エルウィンの言葉は何所か悲しげだった。
「城主様…?」
その時―。
「エルウィン様っ!」
背後でシュミットの声が聞こえ、エルウィンとアリアドネは同時に振り返った。
アリアドネはシュミットを見ると驚いた。
(シュミット様!何故ここに…?)
シュミットはエルウィンのクラバットで顔を隠すアリアドネをチラリと見ると、次に彼に声を掛けた。
「エルウィン様、先程ランベール様に剣を向けられていましたが…何かあったのですか?」
「…ああ。また叔父上の悪い癖が出た。叔父上はこの領民に興味を持ってしまったようだ。だから、剣を向けてほんの少しだけ威嚇して追い払ってやっただけだ」
エルウィンはチラリとアリアドネを見ると言った。
「え…領民…?」
シュミットは俯いて立っているアリアドネを見た。アリアドネはその視線を痛く感じ、クラバットを顔に巻いたまま、エルウィンに言った。
「城主様、このクラバットですが…お洗濯してお返し致します」
「洗濯…?別に構わん。好きにしろ。ただし、城を出るまでは顔に巻いておいた方がいい。お前は良くも悪くも目立ちすぎるからな」
そしてエルウィンはシュミットに声を掛けた。
「シュミット、お前が責任を持ってこの娘を仕事場へ送り届けてやれ」
「はい承知致しました」
シュミットは深々と頭を下げた。そしてエルウィンが背を向けて歩き出そうとした時…。
「城主様!」
アリアドネは勇気を振り絞ってエルウィンに声を掛けた。
「何だ?」
振り返るエルウィン。
「助けて頂き…。ありがとうございます」
そして深々と頭を下げた。
「別にどうって事は無い」
エルウィンは一言、それだけ告げると大股でその場を歩き去って行った―。
ランベールは後ずさりながら真っ青になって叫んだ。
「どういうつもり?それはこちらの台詞だ。今この領民に何をしようとした?まさか…あの時の様に手を出すつもりではないだろうな?」
エルウィンはアリアドネを守るように抱きしめている左腕に力を込めた。
(あの時…?あの時っていつの話なの…?)
アリアドネはエルウィンの腕の中で気恥ずかしさもありながら、言葉の意味を考えていた。
「あ、あれは…ほんの少しだけ、可愛がってやろうと思っただけだ。むしろ、貧しい身分でありながら、私の寵愛を受けるのは悦ぶべき事では無いか?」
「何が寵愛だっ!まだ年若い娘に…自分の権力を振りかざして強引に自分の物にしただろうっ?!あの領民が自殺したのは…叔父上のせいだっ!」
エルウィンは怒りを露わに剣を向けたままランベールに言い放った。
(え…?自殺…?ランベール様に手を出された領民の女性が…?)
その言葉にアリアドネは震えた。その震えがエルウィンにも伝わったのだろう。
「落ち着け」
エルウィンが剣をランベールに向け、睨み付けた視線を逸らすことなくアリアドネにだけ聞こえるように小声で囁いた。
「え…?」
「大丈夫だ。俺が…絶対にお前に手出しをさせない。俺を信じろ」
(エルウィン様…!)
そして再びエルウィンはランベールに言った。
「叔父上…俺は国王陛下からこの城の城主として認められている。城の中で謀反を起こしたとして叔父上を処罰しても俺が咎められる事は無い…何なら今、ここで確かめてみましょうか?」
その言葉にランベールの顔から血の気が失せた。
「う…よ、よせ…エルウィン…。わ、分った。や、約束しよう。二度と領民には手を出さないと…な?」
「領民達だけでは無い。俺の指示の下で働いているメイド達と下働きの女達も含めてだ!」
エルウィンは吐き捨てるように言った。
「…っ!わ、分った…。そ、それじゃ…わ、私は部屋に戻るとしよう…」
ランベールは引きつった笑みを浮かべると、まるで逃げるようにその場を走り去って行った。
「…」
エルウィンはランベールが走り去ると、アリアドネから離れた。
そしてアリアドネに言った。
「…これで分っただろう?お前のような若い娘がむやみに城に立ち入るとどうなるか…。こんな事ではいけないのに…な」
エルウィンの言葉は何所か悲しげだった。
「城主様…?」
その時―。
「エルウィン様っ!」
背後でシュミットの声が聞こえ、エルウィンとアリアドネは同時に振り返った。
アリアドネはシュミットを見ると驚いた。
(シュミット様!何故ここに…?)
シュミットはエルウィンのクラバットで顔を隠すアリアドネをチラリと見ると、次に彼に声を掛けた。
「エルウィン様、先程ランベール様に剣を向けられていましたが…何かあったのですか?」
「…ああ。また叔父上の悪い癖が出た。叔父上はこの領民に興味を持ってしまったようだ。だから、剣を向けてほんの少しだけ威嚇して追い払ってやっただけだ」
エルウィンはチラリとアリアドネを見ると言った。
「え…領民…?」
シュミットは俯いて立っているアリアドネを見た。アリアドネはその視線を痛く感じ、クラバットを顔に巻いたまま、エルウィンに言った。
「城主様、このクラバットですが…お洗濯してお返し致します」
「洗濯…?別に構わん。好きにしろ。ただし、城を出るまでは顔に巻いておいた方がいい。お前は良くも悪くも目立ちすぎるからな」
そしてエルウィンはシュミットに声を掛けた。
「シュミット、お前が責任を持ってこの娘を仕事場へ送り届けてやれ」
「はい承知致しました」
シュミットは深々と頭を下げた。そしてエルウィンが背を向けて歩き出そうとした時…。
「城主様!」
アリアドネは勇気を振り絞ってエルウィンに声を掛けた。
「何だ?」
振り返るエルウィン。
「助けて頂き…。ありがとうございます」
そして深々と頭を下げた。
「別にどうって事は無い」
エルウィンは一言、それだけ告げると大股でその場を歩き去って行った―。
あなたにおすすめの小説
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語