185 / 376
11-11 静かな戦い
しおりを挟む
一方そのその頃——
アイゼンシュタット城ではロイがたった1人きりで単独行動をしていた。
ロイは既に東塔の秘密の通路に入り込み、見張りの兵士たちを背後から一撃で次々と気絶させていった。
そして彼等から武器を奪い、さらに付近の部屋の中に隠しながら戦力を確実に奪っていたのだ。
今ロイの胸中にあるのは、もはやオズワルドへの報復だけであった。
オズワルドはロイにとって恩人であり、師匠でもあった。
姉を無惨に犯され、自殺に追い込まれた姉。
姉の死を目の当たりにし、絶望したロイを救ってくれたのはオズワルドだった。
子供時代に経験した壮絶な出来事でロイは心を閉ざし、誰にも心を許すことは無かった。ただ1人、オズワルドを除いては。
城内ではオズワルドを不気味がる者達ばかりだったが、ロイはそれでも構わないと思っていた。
彼だけが自分の唯一の理解者であり、崇拝すべき存在だったのだから周囲の評価などは全く関係はなかったのだ。
けれどアリアドネに出会ってからはロイにとっていちばん大切な存在はオズワルドからアリアドネへと変わった。
大好きだった姉の面影を色濃く宿したアリアドネをひと目見た瞬間から、ロイの心は奪われてしまった。
アリアドネがロイの世界で唯一無二の存在となった。
姉を守れなかった分、今度はアリアドネを自分の命に懸けても守ろうと決めていたのに…オズワルドはあっさりとダリウスにアリアドネを渡してしまった。
しかもダリウスはアリアドネを汚そうとしている。
その瞬間、ロイの脳裏に10年前のあの出来事が蘇った。
ミルバが獣達の手で無慈悲に犯される姿が――。
ロイの中で、オズワルドに対する激しい憎しみが生まれた。
そして気付けばオズワルドに剣を向ける自分がいた――。
****
ロイによって地下牢から逃げ出すことが出来た下働きの者達は外の見張りの兵士たちを背後からばれないように攻撃をしかけていた。
「おい?今何か音がしなかったか?」
南塔の裏門を見張っていた2人のうちの1人が仲間に声を掛けた。
「そうかぁ?俺は何も気づかなか……ゴフッ!」
突如、何処からともなく握りこぶし大の石が飛んできて兵士のこめかみを直撃した。
物言わずその場に倒れこむ仲間を目の当たりにし、狼狽える兵士。
「だ、誰だっ!」
剣を構えた瞬間、背後から力自慢の男が兵士の首を絞めあげた。
「グッ…」
少しの間兵士は苦し気に足をバタバタさせていたが、やがて動かなくなった。
「ふぅ…」
男が腕を緩めると、そのまま雪の中に崩れ落ちる兵士。
するとガサガサと茂みが動き、中からマリアとイゾルネが出て来た。
「さすがは力自慢のボビーだね。あんたは下働きよりも兵士の方が向いているんじゃないのかい?」
マリアがにっこり笑いながら兵士を絞めあげた男に声を掛けた。
「俺が兵士?冗談じゃない。戦うのは好きじゃないんだ。だけどそういうマリアだって、下働きにしておくのは勿体ない。ものすごくコントロールがいい投石だ。きっとお前なら一流の弓兵になれるんじゃないのかい?」
ボビーと呼ばれた男はニヤリと笑った。
「冗談じゃないよ、私だって戦いは性に合わない。でもエルウィン様の為なら戦いに身を投じても構わないけどね」
2人の話を聞いていたイゾルネが口を挟んできた。
「ほら!早くここを去らないと。まだ見張りは大勢残っているんだから。南塔の兵士や騎士様たちが拘束されてしまったのだから、私達だけでエルウィン様が来るまでに何とかしないとならないんだからね?」
「ああ、そうだったね。それじゃ武器を奪ったらずらかるよ!2人とも!」
マリアの言葉にボビーとイゾルネは頷いた。
早速3人は2人の兵士から武器を奪うと、茂みに隠して次の目的地へと急いだ。
(エルウィン様、早く戻ってきて下さい!)
マリアは駆けながら、エルウィンの帰還を待ち望むのだった――。
アイゼンシュタット城ではロイがたった1人きりで単独行動をしていた。
ロイは既に東塔の秘密の通路に入り込み、見張りの兵士たちを背後から一撃で次々と気絶させていった。
そして彼等から武器を奪い、さらに付近の部屋の中に隠しながら戦力を確実に奪っていたのだ。
今ロイの胸中にあるのは、もはやオズワルドへの報復だけであった。
オズワルドはロイにとって恩人であり、師匠でもあった。
姉を無惨に犯され、自殺に追い込まれた姉。
姉の死を目の当たりにし、絶望したロイを救ってくれたのはオズワルドだった。
子供時代に経験した壮絶な出来事でロイは心を閉ざし、誰にも心を許すことは無かった。ただ1人、オズワルドを除いては。
城内ではオズワルドを不気味がる者達ばかりだったが、ロイはそれでも構わないと思っていた。
彼だけが自分の唯一の理解者であり、崇拝すべき存在だったのだから周囲の評価などは全く関係はなかったのだ。
けれどアリアドネに出会ってからはロイにとっていちばん大切な存在はオズワルドからアリアドネへと変わった。
大好きだった姉の面影を色濃く宿したアリアドネをひと目見た瞬間から、ロイの心は奪われてしまった。
アリアドネがロイの世界で唯一無二の存在となった。
姉を守れなかった分、今度はアリアドネを自分の命に懸けても守ろうと決めていたのに…オズワルドはあっさりとダリウスにアリアドネを渡してしまった。
しかもダリウスはアリアドネを汚そうとしている。
その瞬間、ロイの脳裏に10年前のあの出来事が蘇った。
ミルバが獣達の手で無慈悲に犯される姿が――。
ロイの中で、オズワルドに対する激しい憎しみが生まれた。
そして気付けばオズワルドに剣を向ける自分がいた――。
****
ロイによって地下牢から逃げ出すことが出来た下働きの者達は外の見張りの兵士たちを背後からばれないように攻撃をしかけていた。
「おい?今何か音がしなかったか?」
南塔の裏門を見張っていた2人のうちの1人が仲間に声を掛けた。
「そうかぁ?俺は何も気づかなか……ゴフッ!」
突如、何処からともなく握りこぶし大の石が飛んできて兵士のこめかみを直撃した。
物言わずその場に倒れこむ仲間を目の当たりにし、狼狽える兵士。
「だ、誰だっ!」
剣を構えた瞬間、背後から力自慢の男が兵士の首を絞めあげた。
「グッ…」
少しの間兵士は苦し気に足をバタバタさせていたが、やがて動かなくなった。
「ふぅ…」
男が腕を緩めると、そのまま雪の中に崩れ落ちる兵士。
するとガサガサと茂みが動き、中からマリアとイゾルネが出て来た。
「さすがは力自慢のボビーだね。あんたは下働きよりも兵士の方が向いているんじゃないのかい?」
マリアがにっこり笑いながら兵士を絞めあげた男に声を掛けた。
「俺が兵士?冗談じゃない。戦うのは好きじゃないんだ。だけどそういうマリアだって、下働きにしておくのは勿体ない。ものすごくコントロールがいい投石だ。きっとお前なら一流の弓兵になれるんじゃないのかい?」
ボビーと呼ばれた男はニヤリと笑った。
「冗談じゃないよ、私だって戦いは性に合わない。でもエルウィン様の為なら戦いに身を投じても構わないけどね」
2人の話を聞いていたイゾルネが口を挟んできた。
「ほら!早くここを去らないと。まだ見張りは大勢残っているんだから。南塔の兵士や騎士様たちが拘束されてしまったのだから、私達だけでエルウィン様が来るまでに何とかしないとならないんだからね?」
「ああ、そうだったね。それじゃ武器を奪ったらずらかるよ!2人とも!」
マリアの言葉にボビーとイゾルネは頷いた。
早速3人は2人の兵士から武器を奪うと、茂みに隠して次の目的地へと急いだ。
(エルウィン様、早く戻ってきて下さい!)
マリアは駆けながら、エルウィンの帰還を待ち望むのだった――。
34
あなたにおすすめの小説
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
【完結】いくら溺愛されても、顔がいいから結婚したいと言う男は信用できません!
大森 樹
恋愛
天使の生まれ変わりと言われるほど可愛い子爵令嬢のアイラは、ある日突然騎士のオスカーに求婚される。
なぜアイラに求婚してくれたのか尋ねると「それはもちろん、君の顔がいいからだ!」と言われてしまった。
顔で女を選ぶ男が一番嫌いなアイラは、こっ酷くオスカーを振るがそれでもオスカーは諦める様子はなく毎日アイラに熱烈なラブコールを送るのだった。
それに加えて、美形で紳士な公爵令息ファビアンもアイラが好きなようで!?
しかし、アイラには結婚よりも叶えたい夢があった。
アイラはどちらと恋をする? もしくは恋は諦めて、夢を選ぶのか……最後までお楽しみください。
【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる
大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】
多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。
感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。
残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。
よろしくお願いいたします。
-----------------------------------------------------------
大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。
「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」
死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。
国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!?
「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」
エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって……
常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。
※どんな形であれハッピーエンドになります。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)
【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ!
完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。
崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド
元婚家の自業自得ざまぁ有りです。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位
2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位
2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位
2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位
2022/09/28……連載開始
虜囚の王女は言葉が通じぬ元敵国の騎士団長に嫁ぐ
あねもね
恋愛
グランテーレ国の第一王女、クリスタルは公に姿を見せないことで様々な噂が飛び交っていた。
その王女が和平のため、元敵国の騎士団長レイヴァンの元へ嫁ぐことになる。
敗戦国の宿命か、葬列かと見紛うくらいの重々しさの中、民に見守られながら到着した先は、言葉が通じない国だった。
言葉と文化、思いの違いで互いに戸惑いながらも交流を深めていく。
オッドアイの伯爵令嬢、姉の代わりに嫁ぐことになる~私の結婚相手は、青血閣下と言われている恐ろしい公爵様。でも実は、とっても優しいお方でした~
夏芽空
恋愛
両親から虐げられている伯爵令嬢のアリシア。
ある日、父から契約結婚をしろと言い渡される。
嫁ぎ先は、病死してしまった姉が嫁ぐ予定の公爵家だった。
早い話が、姉の代わりに嫁いでこい、とそういうことだ。
結婚相手のルシルは、人格に難があるともっぱらの噂。
他人に対してどこまでも厳しく、これまでに心を壊された人間が大勢いるとか。
赤い血が通っているとは思えない冷酷非道なその所業から、青血閣下、という悪名がついている。
そんな恐ろしい相手と契約結婚することになってしまったアリシア。
でも実際の彼は、聞いていた噂とは全然違う優しい人物だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる